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新しいパパとママとの巡り会い
正月の前夜、私が窓をちゃんと閉めなかったせいで、妹がくしゃみをした。 父の楚山太郎(そやま たろう)と母の麻里子(まりこ)は怒って、私...
Chương (1)
第1章
正月の前夜、私が窓をちゃんと閉めなかったせいで、妹がくしゃみをした。
父の楚山太郎(そやま たろう)と母の麻里子(まりこ)は怒って、私を家から蹴り出し、真っ暗な中で薪を拾ってこいと命じた。
家の中では家族が集まり、笑いながら妹にお年玉を渡している。
私は泣きもせず、騒ぎもせず、慣れた手つきで背負い籠を背に、風雪の中を山へ向かった。
けれど薪は見つからず、代わりに男を見つけてしまった。
彼の脚は岩の隙間に挟まれ、血まみれで見るからに痛々しい。
私に気づいた彼は、かすれた声で言った。
「お嬢ちゃん、俺を助け出してくれたら、何でも望みを叶えてやる」
私はぼんやりと顔を上げ、視線を合わせた。
「本当に?じゃあ、私のお父さんになってほしい」
第1話
正月の前夜、私が窓をちゃんと閉めなかったせいで、妹がくしゃみをした。
父の楚山太郎(そやま たろう)と母の麻里子(まりこ)は怒って、私を家から蹴り出し、真っ暗な中で薪を拾ってこいと命じた。
家の中では家族が集まり、笑いながら妹にお年玉を渡している。
私は泣きもせず、騒ぎもせず、慣れた手つきで背負い籠を背に、風雪の中を山へ向かった。
けれど薪は見つからず、代わりに男を見つけてしまった。
彼の脚は岩の隙間に挟まれ、血まみれで見るからに痛々しい。
私に気づいた彼は、かすれた声で言った。
「お嬢ちゃん、俺を助け出してくれたら、何でも望みを叶えてやる」
私はぼんやりと顔を上げ、視線を合わせた。
「本当に?じゃあ、私のお父さんになってほしい」
その言葉を口にした瞬間、目の前の男はすでに意識を失っていた。
何度も考えた末、彼を引きずり出した。気を失ったままの彼を背負って足を引きずりながら家へ戻った。
太郎と麻里子に事情を話そうとしたその瞬間、迎えたのは太郎の平手打ちだった。
「お前の妹が湯を使うのを待ってるんだぞ。拾ってくるはずの薪はどこだ?その得体の知れないものは何だ!」
「ぼさっとしてないで!さっさと火を起こしなさい!」麻里子は眉をひそめ、ゴミでも見るような目で私を一瞥した。
私は唇を噛み、言葉を飲み込んだ。
こんな寒さの中、彼を外に放っておけば一晩で凍え死ぬかもしれない。しかも怪我までしているのに。
すると妹の裕子(ゆうこ)がぴょんと跳ねながら近づき、男の手首のブレスレットに目を留めた。
「わあ、このクローバーのブレスレットすっごくきれい!パパ、ママ、これ欲しい!」
彼女は家族の宝物。口に出せば、太郎と麻里子はいつだって頷くのだ。
案の定、太郎はまだ考え込んでいたが、麻里子が手を伸ばしてブレスレットの留め具を外そうとした。
「これ、なんで外れないのよ。
まあいい、中に入れなさい。目が覚めたらもらえばいいだろ。どうせ助けてやったんだから」
「やったー!私たち、人を助けたんだ!おばあちゃんも手伝って!」
妹は無邪気に歓声を上げた。
「お姉ちゃん、残り物は全部チクワ(飼い犬)にあげてね。特別にスペアリブを何本も取っておいたんだ、新年のプレゼントってことで!」
そのとき、妹は太郎と一緒に「人助けごっこ」をしていて、それらしく男の腕に包帯を巻いていた。
私に向かって呼びかけた後、何かを思い出したように、「あ、そうだ、お姉ちゃん、ご飯まだでしょ。じゃあ、チクワはどうするの?あげるって約束したのに……」
彼女は複雑な表情を浮かべ、大きな瞳が潤んでいた。
「あいつも食べるの?あいつに薪拾いひとつまともにできないのに、何ができるっていうの。正月早々、突っ立ってるのを見るだけで腹が立つわ」
祖母の菫(すみれ)が声を張り上げて怒鳴った。
そのとき、助けた男がようやく意識を取り戻し、ゆっくりと目を開けた。
妹はその手首を見つめながら、生意気に言った。
「助けてあげたのは私だよ。お礼してもらわなきゃ。そのブレスレット、私がもらうね」
男の視線が一巡したが、私のところには長く留まらなかった。
そしてためらうことなくブレスレットを外し、妹の白い手首にかけた。
「俺は木村和木です。友人と休暇中に事故に遭ってましたね。助けてもらって、本当にありがとうございます」
私が拾ってきたこの「父親」をじっと見つめ、自分が彼を助けたことを思い出してくれるのを期待していた。
けれど木村和木(きむら かずき)の視線は妹にしか向かず、私の存在など最初から見えていないみたいだった。
握りしめていた服の裾を、私はそっと放した。
いつもこうだ。両親も、祖母も。みんなが好きなのは、天真爛漫でお人形みたいに可愛がられている妹だけ。
無口で陰気な私なんて、誰も好きになってくれない。
妹はブレスレットを手に入れると、「人助けごっこ」にはもう興味を失い、ぴょんぴょん跳ねながら裏庭のチクワのところへ行ってしまった。
太郎はようやくうんざりしたように目の前の男を見て言った。
「そういうことなら、さっさと友達に迎えに来てもらえ。正月早々、人に迷惑かけるもんじゃないだろう」
太郎の視線が私の上を素通りしていった。棘が刺さったみたいだった。
「すみません、友達に電話がつながらなくて」
友達の話を出した途端、男の表情がようやく少し変わった。
困ったような顔をしていた両親は、結局「報酬を払うなら」という条件で承諾し、しぶしぶ泊まることを許してくれた。
そばで菫があからさまに目をむき、ぼそっと毒づく。
「まったく縁起が悪い、厄介者は厄介者を呼ぶんだから」
菫は私をにらみつけ、雑巾を顔めがけて投げつけた。
「さっさと行って食器を洗え」
湿った悪臭が鼻をつく。私はおとなしく雑巾を拾い、言われたとおりに働き始めた。
菫がこちらを見ていないのを確かめて、こっそり男のために冷たいお粥をよそった。
「食べて……飢え死にするよ」
第2話
彼は味気ない薄いお粥の椀をじっと見つめていた。
眉の奥に浮かんだ嫌悪を押し殺し、それでも受け取った。
私は少し惜しい気がした。それは本来、今夜の私の夕食だったのに。
「裕子、心配しないで。ほら、あのおじさん、面倒を見てる人がいるから、早く寝なさいね」
麻里子はまた抜け出してきた妹を抱き上げ、「パジャマのままじゃ風邪ひくわよ」と言った。
彼女は私を一瞥し、あからさまに嫌悪と非難の色を浮かべた。
「紀子(のりこ)、この人のことはちゃんと責任を持ってね。家に迷惑かけないで」
私は小声で「うん」と返事した。彼がお粥を飲み終わるまで待ち、支えながら薪小屋へ案内した。
「俺、ここで寝るのか?」
「うん、私のベッドを使って」
私は隅の鉄のベッドを指さした。
彼をそこへ座らせたあと、自分はベッドに上がり、慣れた手つきで新聞紙を風の吹き込む窓の隙間に詰めた。
そのあと、床に何枚かの厚紙を敷き、その上に古い布団を置いて、なんとか横になった。
「ここで寝るの?」
今度の彼は、さらに呆然としたように立ち尽くし、冷ややかな表情も崩れかけていた。
「これが君のベッド?さっきの子は妹じゃないの?本当の家族なのか?」
薄暗い灯りの下で、私は彼の問いには答えなかった。
和木はこめかみを押さえ、やや嫌そうな表情で、いわゆる「ベッド」を一瞥した。
それでもしぶしぶ横になった。
「これからはずっと薪小屋にいたほうがいい。妹の機嫌を損ねたら、追い出されるかもしれないから」
私はさらに身を縮め、自分の体を抱きしめて少しでも温まろうとした。
実のところ、少し後悔もしていた。
優しくしてくれる父親が欲しくて助けたのに、拾った父親は私のことなどまるで覚えていなかったのだ。
確かに、透き通るように美しい妹と比べれば、私は汚れていて痩せこけている。
父親が私を好まなくても、無理もないことだ。
もういい、善いことをしたと思えばいい。
いい父親は拾えなかったけれど、次は神様が私に母親を授けてくれますように。
ぼんやりとした意識のまま、私は眠りに落ちた。
朝の五時過ぎ、私は自然と目を覚ました。
「起きたの?こんなに早く?」
背後の和木が不思議そうに私を見つめていた。目の下には濃い隈ができていて、一晩中眠れなかったようだ。
「うん、薪を割ったり、雪かきをしたり、犬に餌をやったり、やることがいっぱいあるんだ。
父と母が起きる前に、朝食も作らなきゃ。安心して、先にあなたの分も取っておくからね。
……眠れなかったの?」
布団を整えながら、私は彼に尋ねた。
和木は、どうやら私の言葉の意味をすぐには理解できなかったようだ。
彼の顔はこわばり、喉が詰まったようだ。
「こんな寒いところで、よく眠れるな」
「慣れてるから」
私は床に置いてあった布団を抱えてベッドに戻し、「寒いならこれも掛けて。あとでご飯の時間になったら起こすね」と言った。
そう言って彼の反応を見ずに、私は背を向けて部屋を出た。
そろそろ夜が明けるから、今日使う薪を拾わなきゃ。
さもないと、祖母がまた木の枝で、鞭のように私の背中を叩きつける。
分厚く積もった雪を踏みしめ、私は必死に前へ進んだ。
懐中電灯の光が足元の深い雪をかすめ、木の後ろにある黒い影を照らした。
私は落ち着いたまま、慣れた手つきで光を遮った。
裏山にはいつも得体の知れない生き物が走り抜けていく。運が悪ければ、イノシシに出くわすこともある。
だが、私はもう慣れてしまっていて、驚くこともなかった。
振り向いてそっと立ち去ろうとしたその時、背後からかすかな呼び声が聞こえてきた。
「誰かいませんか、おーい、ここで凍え死ぬんじゃないだろうな」
そのとき初めて、それがどうやら女性の声だと気づいた。
まさか、神さまが母親を私のもとへ送ってくれたのだろうか。
私はその女性と目が合った。
彼女は美しい大きなウェーブ髪をしていて、大きな瞳を瞬かせながら私を見つめていた。
「どこから来た子?私、凍えて幻覚でも見てるのかしら?」
「違うよ。私と一緒に帰る?」
私は思い切って声をかけた。
女性があわててうなずくのを見て、ようやく彼女を連れて歩き出した。
帰る途中で、彼女の名が佐藤美希(さとう みき)だと知った。彼女も山に遊びに来ていたという。
ところが友人とはぐれ、大雪で道が閉ざされてしまった。
車は雪に埋もれ、山を下りて人を探すこともできず、そうして偶然、私と出会ったのだった。
家の前まで来たところで、私は足を止めた。
「あなたを泊めてあげる。でも、その代わりに私の母親になって、私を連れて行って」
美希は呆然とした。
私のボロボロの綿入れと、籠いっぱいの薪を見やりながら、彼女の目の色が少しずつ複雑に変わっていく。
「あなた、ここに一人で住んでいるの?」
彼女は玄関先に停まっている車を見つけ、疑わしげな表情を浮かべた。
私は目の奥が熱くなり、喉が詰まった。
「違うよ。父と母と祖母、それに妹もいる。みんな一緒にいるんだ」
美希は小さくため息をついた。「お嬢ちゃんね。あなたにはもうお母さんがいるんだから、私はあなたのお母さんにはなれないわ。あなたの本当のお母さんが悲しむもの」
私は服の裾をぎゅっと握りしめ、首を横に振った。「いいよ、こっちに来て。気をつけて、見つからないようにね。見つかったら、追い出されちゃうから」
そう言って、私は彼女を薪小屋へと案内した。
扉を開けた瞬間、中にいた和木がこちらを見つめ、その視線がぴたりと止まった。
美希は露骨に目をむいた。
和木も口元をわずかに引きつらせて、「奇遇だな」と言った。
二人はどうやら知り合いらしいが、私はそれを気にしている暇もなく、急いで薪を積み上げた。
「先に朝ごはんを作ってくるから、二人とも音を立てないでね」
第3話
私は足早に前庭へと入った。十分に気をつけていたつもりなのに、目を覚ました菫の顔色はひどく険しかった。
「朝っぱらからなんて騒がしいの。裕子がせっかく帰ってきたのに、あんた、嫉妬してわざと眠れないようにしてるんじゃないの?」
声は低く押さえつつも、その目つきには刺々しい怒気が宿っていた。
私がまだ朝食の支度も終えていないのを見ると、彼女はさらに怒りを募らせ、勢いよく私の髪をつかんだ。
「サボることも覚えたってわけ?今日は何時に起きたのよ!」
痛みに耐えながら、私は震える声で謝った。
「ごめんなさい、おばあさん、ごめんなさい。すぐにやります……」
菫の視線を感じながら、出来上がった朝食を二人の旅人にあまり多く盛ることができなかった。
それでもなお、頬に一発、平手が飛んできた。
「この怠け者で食いしん坊のゴミあさり!薪小屋へ戻れ。妹の前でうろつくんじゃないよ」
私は黙ってうつむき、その場をそそくさと離れた。
次の瞬間、もっとひどく叩かれるのではないかと怯えたから。
薪小屋に入ると、美希が私の姿に気づいて立ち上がった。彼女の視線が、まだ頬に残る赤い痕に留まり、驚いたように声を上げた。
「誰かに叩かれたの?」
和木は無言のままだったが、その顔色は明らかに険しかった。
私は聞こえないふりをして、外から小さな腰掛けを持ち込み、お椀一杯の味噌汁をそっと置いた。
「朝ごはん、二人で分けて。私は先に仕事に行くね」
美希が素早く手を伸ばして私の腕をつかんだ。
「じゃあ、あなたは?飲まないの?」
「もう飲んだわ」
嘘をついた途端、腹が情けなく鳴った。
「彼女、昨夜も何も口にしていなかった」
和木が不意に口を開き、漆黒の瞳で私をじっと見つめた。
「彼らに虐待されてるの?」と美希が眉をひそめて言った。
二人が何か言いかけたその時、外から菫の甲高い叫び声が響いた。
「紀子、どこで油を売ってるの、早く働きにこい!」
私は慌てて言葉を残した。
「ちゃんと飲みきってね、残したらまた怒られるから」
庭では、菫が飼っている鶏を捕まえていた。
普段は卵の数まで数えて隠すくらいなのに、私が一つでも盗み食いされるのを嫌がっていたくせに、妹が帰ってきたとたん、あっさり鶏を二羽も絞めると言い出した。
「子供ったらね、かしわのスープで栄養をつけなくちゃ。鶏は一羽ここに残して食べなよ。もう一羽は都会に持って帰りな」
彼女は慈愛に満ちた笑みを浮かべて父と母に向き合った。
まるで、私も同じ子どもであることなど、すっかり忘れてしまったかのように。
「さあ、あんたが鶏をしめなさい」
菫は包丁を私の手に押しつけた。
冷たい刃の背が指先に触れた瞬間、反射的に身がすくんだ。
「何ぼんやりしてるの?またサボる気か!」
菫の足が背中に当たると、私はよろりとした。
刃が私の手をかすめ、鶏の首を裂く。血が勢いよく噴き出し、顔じゅうに飛び散った。
手の傷口からも血が溢れたが、処置をする気にもなれずにいると、菫がそれを見て悲鳴を上げた。
「どきなさい、どきなさい!こんなこともできないなんて。
あんたの血、なんて汚いの。わざとやったんでしょ。今日の昼ご飯は抜きだよ」
私は朦朧としたまま薪小屋へ追い立てられた。
氷水に投げ込まれたかのように、体の震えが止まらない。
美希は外の騒ぎをとっくに聞きつけ、戸の隙間からそっとこちらを覗いていた。
彼女は慌てて私の手当てをしようとした。
手首を掴んだとたん、彼女の動きがぴたりと止まった。
私の腕は、骨と皮だけで、肉などほとんどついていない。
差し出された両手は、黒ずみ、荒れて、ひび割れた凍瘡で覆われていた。
外からは父と母、そして妹の声が聞こえてきた。
「山に雪が降ってすごくきれい!写真撮りに行こう!」
「はいはい、でも風邪ひかないように暖かくしてね」
「お姉ちゃんは?いつも山に行ってるし、案内してもらおうよ」
「呼ばなくていいわよ。あの子、私たちといても落ち着かないみたいだし」
美希の顔が沈んだ。
「それが、あなたの本当の両親なの?」
「たぶんね」
私は呟き、機械のように外へ歩き出した。
一日の仕事を繰り返したあと、私はこっそり薪小屋の二人に少し食べ物を持っていった。
その夜、美希は和木と同じベッドで眠るのを断り、代わりに私の隣で床に横になった。
彼女はそっと私の額に手で触れ、驚くほどの熱さに気づくと、慌てて自分のダウンジャケットを脱ぎ、私を包み込んだ。
今までにない香りと温もりが、全身を包み込んだ。
私は呆然としたまま、涙が知らないうちにこぼれ落ちた。
本能的に「お母さん」と呼びかけそうになったが、ぐっとこらえた。
熱のせいなのか、その夜、胸の奥までじんわりと温かかった。
翌朝目を覚ますと、外はもうすっかり明るくなった。
庭では菫が怒鳴っていて、私は反射的に飛び起きた。
「寝坊した!いや、私は――」
美希と和木も物音を聞きつけ、私を引き止めようとした。
だが、彼らの目に映ったのは、よろめきながら外へ飛び出し、菫の前で倒れ込む私の姿だった。
「このろくでなし、ますます怠けるようになったね?
まさか、薪小屋のあの厄介者の世話で手一杯なんじゃないだろうね?家の中はほったらかしで、外のことばかり世話を焼くなんて」
怒りに笑いを混ぜた菫は、私の髪をつかんでずるずると引きずり寄せた。
片手で傍らの雪かき用の鉄のスコップをつかむと、力任せに私の背中へと叩きつけた。
痛みに体が丸まり、息が荒く乱れた。
「つまんないよ、おばあちゃん。雪だるま作りたい」
そばにいた妹は、菫が怒り狂って私を殴っているというのに、まるで他人事のような顔をしていた。
そして目をくるりと動かすと、私を指さして言った。
「お姉ちゃんを雪だるまにしようよ」
彼女は雪をひとつかみすくい取ると、私の顔に押し当てた。そして無邪気に麻里子と太郎の方へ叫んだ。
「お父さん、お母さん、一緒に遊ぼうよ!」
麻里子と太郎が近づいてきて、地面に倒れ込んで息も絶え絶えの私には一瞥もくれず、妹に優しく手袋をはめてあげた。
「気をつけて、風邪ひかないようにね」
妹はケラケラと笑いながら、雪をすくって私の上にかけた。
冷たい雪のつぶてが、襟元からするりと落ちていった。
寒さに顔が青ざめ、私は震えを抑えられなかった。
そのとき、麻里子と太郎の叱責の声が耳に刺さる。
「たかが少しの雪じゃないか。妹に合わせてやることもできないの?」
突然、別の声が割って入った。
「この子、あなたたちが育てたくないなら、私が引き取る。
いくら欲しいんだ?金額を言ってみなさい」