彼氏が婚約式を葬式に…今更、後悔しても遅い

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彼氏が婚約式を葬式に…今更、後悔しても遅い

GoodNovel Hoàn thành

婚約披露パーティーの席だというのに、ある後輩から供花が贈られてきた。私が受け取らなかったことを理由に、高田正人(たかだ まさと)は会場...

Chương (1)

第1章

婚約披露パーティーの席だというのに、ある後輩から供花が贈られてきた。私が受け取らなかったことを理由に、高田正人(たかだ まさと)は会場を丸ごと葬儀場のような設えに変えてしまった。 喪服に着替えた正人は、小川柚(おがわ ゆず)に線香が詰まった籠を手渡しながら、私に聞こえるよう悪意たっぷりに言う。「柚の言う通りだ。結婚は愛の墓場……まさに、今のこの状況はぴったりだよな」 そして、正人が柚に線香を渡そうとしたその瞬間、手元が狂ったのか、籠が床に落ちてしまった。床に散らばった線香とともに、私たちの10年にわたる恋も、まるで葬られてしまったかのようだった。 それなのに、結婚式の新郎が自分ではないと知った途端、立ち去る私に正人は泣きながら縋り付いてきた。 しかし、私は笑いながら言い返す。「今更泣きついてくるなんて、遅すぎると思わない?」 第1話 婚約披露パーティーの席だというのに、ある後輩から供花が贈られてきた。私は当然それを断ったのだが、私が受け取らなかったことを理由に、高田正人(たかだ まさと)は会場を丸ごと葬儀場のような設えに変えてしまった。 喪服に着替えた正人は、小川柚(おがわ ゆず)に線香が詰まった籠を手渡しながら、私に聞こえるよう悪意たっぷりに言う。「柚の言う通りだ。結婚は愛の墓場……まさに、今のこの状況はぴったりだよな」 そして、正人が柚に線香を渡そうとしたその瞬間、手元が狂ったのか、籠が床に落ちてしまった。床に散らばった線香とともに、私たちの10年にわたる恋も、まるで葬られてしまったかのようだった。 それなのに、結婚式の新郎が自分ではないと知った途端、立ち去る私に正人は泣きながら縋り付いてきた。 しかし、私は笑いながら言い返す。「今更泣きついてくるなんて、遅すぎると思わない?」 …… バシンッ。怒りで顔を真っ赤にした正人の父親、高田剛(たかだ つよし)が、生まれて初めて正人を殴った。「何考えてるんだ!今すぐこいつらを叩き出して、恵美(えみ)に謝れ!」 正人は顔を背けた。殴られた頬は赤く腫れあがっているが、なぜだか口元には笑みが浮かべ、すごく機嫌が良さそうだった。 「謝る?なんで?これは俺と恵美の婚約披露パーティーだ。それに、当の恵美だって何も言ってないんだから、余計な口出しはしないでくれよな」正人はぐいっと私の肩を引き寄せ、耳元で熱い息を吹きかける。「なあ、恵美?」 しかし、私は生まれて初めて正人を無視して、ただ静かに、彼の足元に散らばっているバラの花びらを見つめた。 この時期にバラを手配するのはかなり大変だったから、一生懸命探したのにな…… 「自分が何をしてるか、分かってる?」私は静かに尋ねた。 正人の笑顔が凍りつき、自信に溢れていた目からは光が消え、私の肩を掴んでいた手からも力が抜けていく。私が正人の味方をしないことが、信じられないようだ。 「分かってるよ。けど、たかが婚約披露パーティーだろ?それに言われた通り、ちゃんとおとなしく来てやったのに」正人の顔からは表情が消えた。彼は近くにあったトレイから無造作に指輪を一つ取る。「輪っかをはめるだけなのに、何をそんなにピリピリしてるんだ?」 そして、正人は手を伸ばし、柚の左手を取って指輪をはめた。 「どうかな?」 柚は嬉しさの中にも、少し恥じらいを見せ正人の腕に抱きついた。「うん、すっごく!でも、恵美さんが……」 「恵美のことなんか気にするな。誰がつけたって同じなんだから」そう言う正人は、私を今にも殺しそうな目つきで睨んでいた。正人は昔から父親の剛を憎んでいて、少しのことでもよく突っかかっている。だから、さっき私が正人の味方をせず剛の味方をした、仕返しのつもりなのだろう。 私は笑みを浮かべ、代々受け継がれてきた結婚相手に渡すネックレスをそっと箱に戻す。 「そうだよね。誰につけても同じこと」 正人の言葉をそのまま返したからか、正人は表情をさらに厳しいものにし、私の耳元に口を寄せた。 「お前、今日はなんでも俺に逆らう気なのか?何か文句があるなら、家に帰ってから言えよな!」 正人が怒りで唇を震わせているのを見て、私の心にも憎しみが芽生えた。 正人と父親の折り合いが悪いのは、今に始まったことではない。これまでに長い時間があり、他にもいくらでも機会があったはずなのに……よりにもよって、私との婚約披露パーティーの日に、しかもこんなやり方で親に反抗するなんて。 私が口を開くより先に、正人の継母の高田智子(たかだ ともこ)が慌てて仲裁に入ってきた。 「恵美、正人はそんなつもりじゃ……あなたたち、もう何年も一緒にいるんだから、正人のこと分かってくれてるでしょ?だから、許してあげてくれないかしら?私たちはずっと、あなただけがうちのお嫁さんだと思ってるから。あ、それに、この指輪は汚れちゃったから、新しいのを買いに行かなきゃね」 正人はふっと鼻で笑い、心底馬鹿にしたように言う。「馬鹿馬鹿しい。ちょっと触っただけで汚れただって?じゃあ、俺に上から下までべたべた触られてる恵美はもっと汚いはずだけど?」 私は身体が固まった。後ろにいる両親の方を振り向けない。 これが雪の中で一晩中頭を下げ続けて、やっとのことで許してもらった婚約だと思うとなんだか情けなくなった。 すると、隣で柚が声を上げて笑い始めた。 「恵美さんって純情なのかと思ってたけど、結局はベッドで媚びるだけの女だったのね。ねぇ先輩、恵美さんがベッドでどんな風に乱れるか教えてよ」 「黙れ!」剛が怒鳴り、酒のボトルを掴んで投げつけようとするのを、私は慌てて止める。 しかし、正人は得意満面の笑みで、柚の言葉に乗っかった。 「お前は知らないだろうけど、ベットでの恵美は最高なん……」なんの躊躇いもなく話を続けた正人だったが、急に言葉を途中で止め、私の顔を見つめたまま、一言も話さなくなった。 そして、媚びるように続きを促している柚を荒々しく突き飛ばし、消え入りそうな声で私の名前を呼ぶ。 「恵美……」 第2話 結局、婚約披露パーティーはぎこちない雰囲気のまま幕を閉じた。あれから、正人はそれ以上ひどいことを言うことは無かったが、私が指輪を受け取ることはなかった。 私はソファに座りながら、母から送られてきたラインに目を通す。それは、正人とは別れ、大人しくお見合いをしろ、と説得するものだった。 でも、まだ諦めきれない。それに、正人が戻ってきて、10年間の恋にちゃんとけじめをつけてくれるかもしれない、そんなわずかな可能性を捨てられずにいた。 パーンッ。 顔を上げると、夜空いっぱいに花火が広がっている。そしてそこには、【高田正人と小川柚、永遠の愛を】と言う文字が…… 正人、あなたって本当にサプライズが上手いんだね。 私は、思わずふっと笑ってしまった。でも、自然と涙が溢れ、スマホの画面にぽつりと落ちる。そしてその画面には、今日が正人との10年目の記念日だという通知が表示されていた。 10年という月日。学校で孤立していた私の手を、正人が初めて引いてくれたあの日から、もうそんなに経つのか……しかし、正人は昔のまま、何も変わっていない。情熱的で、向こう見ずで、子供っぽいまま。 そんな時、正人のインスタが更新された。それは正人と柚が手を繋いで歩く後ろ姿の写真。 【親が決めた相手と結婚なんて、何時代の話なんだよ?恋愛なんて自由にするのが当たり前!】 そして私は、柚の指に光る小さな輝きから目が離せなかった。 私の親は正人と一緒になることに反対していた。だから、その指輪は親の決めた縁談に逆らうための、唯一の支えだったのに。今では、写真を見ているだけで、金属のひんやりとした感触が指に伝わってくる。 私はきゅっと唇をきつく結び、顔の涙を拭うと、正人の投稿に「いいね」をつけた。 そしてインスタを閉じ、母にお見合いに行くというメッセージを送る。 【お母さん、日程を調整してくれる?その日は空けるようにするから】 加えて、もう別れると決めた以上、同棲を続けるわけにはいかない。そう思いながら、翌日、会社から帰ってくると、寝室は見知らぬ物で埋め尽くされていた。 「あ、恵美。ちょうど良かった。柚がしばらくここに泊まるから、言っておこうと思って。昨日の夜、少し体を冷やしたみたいで風邪気味なんだよ。家にいてもらえれば、医者もいるし看病もしやすいからさ」と、ダイニングテーブルに座っていた正人が悪びれる様子もなく言ってきた。 家に常駐してくれている医者は、もともと私の慢性胃炎のために正人が手配してくれていたもの。しかし、今では柚がそのお世話になっているらしい。 そこへ、柚がパンケーキを手にキッチンから出てきた。「真ん中のお部屋が広かったから、お医者さんが来やすいかと思って、勝手に使わせてもらっちゃった。恵美さん、大丈夫だよね?」 私が答えようとしたら、正人が口を挟んできた。 「こいつは柚みたいにヤワじゃないから大丈夫だ。好きなように使ってくれ」そう言って、正人はやっと視線を向けた。「柚が料理上手だなんて知らなかった。ほら、お前も温かいうちに食え。けど、お前が帰ってくるのが遅かったから、俺がほとんど食べちまったけどな」 「先輩の口に合ったみたいで良かった。先輩のために、一生懸命練習したんだからね」柚はいつも私が座る場所に腰を下ろし、挑発するように私を見つめてきた。そして、さりげなく指輪を見せびらかす。「まあ、恵美さんの料理が、私の料理より先輩の舌に合ってるのかは、分からないけど、ね?」 二人の息は妙にぴったりで、私が口を挟む隙なんて最初からどこにもなかった。私は寝室のドアの前に立ち、乾いた笑いを漏らす。 「そんなことどうだっていいわ。だって、私は料理なんてできないし、する必要もないから。それに、シェフを雇うお金くらい、私にだってあるもの」 柚が顔を強張らせる。正人も眉をひそめ、一瞬動きを止めた。 「怒ったのか?そんな意地悪いこと言うなよ」 「別に怒ってないし、今日は荷物をまとめて、ここから出ていくために帰ってきただけだから」 すると正人が、ガタンッと音を立てて勢いよく立ち上がった。椅子が床に擦れて、耳障りな音が響く。 「恵美、いい加減にしろよな!俺が父さんをどれだけ憎んでるか、お前も知ってるはずだろ?あいつが母さんを死に追いやったあの日から、俺はあいつに死んでほしいとさえ思ってる。それなのに、なんで今になって父さんの味方なんかするんだよ!なんで俺に逆らうんだ?どうして、柚みたいに俺の側にいてくれないんだよ」 第3話 これ以上、どう味方をしろというのだろうか?この10年、正人が剛に反抗して無茶な行動をするたび、いつも後始末をしてきてあげたというのに。それに私が二宮(にのみや)家の娘だから、剛は私にいい顔をしてくれるが、そのせいで正人から数えきれないほどのひどい扱いを受けてきた。 私はただ、普通で幸せな結婚がしたかっただけ。でも正人にとっては、私たちの婚約披露パーティーを台無しにした柚のほうが大切だったようだ。 「お前、会社に入ってから本当に父さんそっくりになってきたよな。自分のことばかりで、俺の気持ちなんてまったく考えない。大体この結婚だって、一度でも反対したことあったか?父さんがお前を気に入ってるのを知ってて、それに乗っかっただけだろ!」 正人はそう言い募るうちに、次第に感情を高ぶらせ、声には悔しさと不満、そしてどこか拗ねたような響きまで滲み始めていた。 どうやら私の間違いだったようだ。両親に無理を言ってまでこの結婚を認めてもらうべきじゃなかった。10年も追いかけてきたこの恋に、素敵な結末が待っているなんて夢見た私が馬鹿だったのだ。 「じゃ、お二人とも末永くお幸せにね」もうなんの感情も感じなかった私は、ただ正人を見つめてそう言った。 欲しいものは、もう正人には与えられない。そう思いながら、入れ忘れた物はないかと辺りを見回していると、ベッドサイドテーブルが空っぽなのに気づいて、思わず声が漏れた。 「あの木の人形は?」 「なんだって?」興奮がまだ収まっていない正人は、私が何を言っているのか分かっていないようだ。 すると、そばにいた使用人がおどおどと口を開く。「あのお人形でしたら、小川様が誤って壊してしまいまして……旦那様から、捨てるようにと」 あの人形は、正人が18歳の誕生日に、私のために彫ってくれたプレゼントだった。どこへ引っ越すときも、必ず持って行っていた。もう10年以上も、ずっと一緒だったのに。 「もう出ていくくせに、人形なんか持って行ってどうするんだよ。それに、あれは俺が作ったんだから、俺の味方をする人間にしかやらない」正人は腹立ちまぎれに、そう吐き捨てた。 たしかに、その通りだ。別れるというのに、元カレのプレゼントを持っていくなんておかしいことだ。 「そうね。じゃあ、私たちの関係はここまでね。今までありがとう」私はそう言い残し、家を後にした。 一瞬躊躇ったがやはり追いかけようとした正人だったが、柚に引き留められた。 「先輩。今追いかけたら、先輩のお父さんの思うつぼよ。きっとどこかでほくそ笑んでるんだから。それに、先輩が恵美さんの言うことをなんでも聞くから、お父さんも強気で婚約話を進められたのよ」 正人は足を止め、閉まったドアを見つめる。 人形が壊れたんだ、きっと恵美は傷ついているだろう。 まあ、あいつが謝ってきたら、また新しいのを彫ってやればいいか、と正人は心の中で呟いた。 私は母に紹介された、安藤要(あんどう かなめ)という人物と会った。家柄も釣り合っていているし、性格は穏やかで、見た目も正人にひけをとらない。結婚相手としては申し分なかった。 しかも要は私の好きな白いバラの花束をくれた。 「実は俺たち、同じ大学の出身なんだよ」驚く私を見て、要は優しく微笑みながら言う。「君はコンテストやインターンで忙しそうだったから、覚えていなくても無理はないか」 あの頃の私は、頭の中が正人のことでいっぱいだった。会社に行くか正人に会うかの繰り返しで、周りのことにはほとんど関心がなかったのだ。 私が口を開こうとした、その時だった。突然、強い力で肩をつかまれ、ぐいっと後ろに引かれた。すかさず要がその腕をつかんで振り払い、私をかばうように前に立ってくれた。 「こいつは誰だ!」正人が険しい顔つきで、私を睨みつける。私の腕の中のバラの花束に気づくと、まるで棘が刺さったかのように、正人の瞳が痛みに歪んだ。 私は思わず花束を強く抱きしめる。「正人、やめて。ここで騒ぎを起こさないで。私たち、もう別れたんだから」 しかし、正人はくだらない冗談を聞いたかのように鼻で笑った。「別れた?俺から離れられるとでも思ってるのか?拗ねるのも大概にしろよ。別れるなんて、そんな軽々しく口にするな。今すぐその花を捨てろ!」 あまりにばかげた言い分に、私は返す言葉も見つからなかった。 「私、来月結婚するんだよ。正人、一体何をおかしなこと言ってるの?」 「知ってるよ、俺とだろ」そう言うと、正人は表情を緩めた。「もう考えたんだ。お前が結婚式をめちゃくちゃにされるのが嫌なら、父さんを式に呼ばなければいい。それなら文句ないだろ?」 要が眉をひそめる。「何か勘違いをしているようだけど?新郎は俺だ」