爆弾専門家である夫との対決

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爆弾専門家である夫との対決

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息子の哲也(てつや)が幼稚園から拉致された。 見つかった時、彼の小さな体には時限爆弾が仕掛けられていた。 私は安井薫(やすい かおる)。...

Chương (1)

第1章

息子の哲也(てつや)が幼稚園から拉致された。 見つかった時、彼の小さな体には時限爆弾が仕掛けられていた。 私は安井薫(やすい かおる)。夫の伊藤一輝(いとう かずき)は、全国トップクラスの爆発物処理の専門家だ。 一輝は急いで現場に駆けつけた。 私は車内で、モニター画面をじっと見つめていた。 画面には、頭に粗末な麻袋を被らされ、全身が激しく震えている哲也が映っている。 一輝の初恋でありアシスタントでもある夏目奈々(なつめ なな)も現場に入っていた。 彼女は爆弾処理に行きたいと言い出した。 「一輝さん、私にも爆弾処理を手伝わせて!私だって、一輝さんのように人を助けたいの!」 一瞬の沈黙の後、一輝は優しい微笑みを浮かべた。 「落ち着いて。赤い線を切ってくれ。万一の時は、俺が責任をもつ」 奈々は覚悟を決めたように、ハサミを手に取った。 一瞬のためらいもなく、彼女はあの青い線を切った。 次の瞬間、爆弾のカウントダウンが、10分から一瞬で残り10秒へと切り替わった! 一輝と奈々は表情を一瞬で変え、パニック状態でその場から逃げ出そうとした。 私は焦り、哲也の元へ駆け寄ろうとした。 その時、小さな手が私の裾を引っ張った。 「ママ……パパが翔太(しょうた)をきっと助けてくれるよね……?」 ふと我に返ると、なんと私のそばに、哲也が立っていることに気づいた。 突然、今朝哲也が言ったことを思い出した。 「ママ!翔太が今日、どうしても僕と服を交換したいって言うんだ。僕の服の方がかっこいいって!」 翔太は奈々の息子、つまり哲也の腹違いの弟である。 第1話 息子の哲也(てつや)が幼稚園から拉致された。 見つかった時、彼の小さな体には時限爆弾が仕掛けられていた。 私は安井薫(やすい かおる)。夫の伊藤一輝(いとう かずき)は、全国トップクラスの爆発物処理の専門家だ。 一輝は急いで現場に駆けつけた。 私は車内で、モニター画面をじっと見つめていた。 画面には、頭に粗末な麻袋を被らされ、全身が激しく震えている哲也が映っている。 一輝の初恋でありアシスタントでもある夏目奈々(なつめ なな)も現場に入っていた。 彼女は爆弾処理に行きたいと言い出した。 「一輝さん、私にも爆弾処理を手伝わせて!私だって、一輝さんのように人を助けたいの!」 一瞬の沈黙の後、一輝は優しい微笑みを浮かべた。 「落ち着いて。赤い線を切ってくれ。万一の時は、俺が責任をもつ」 奈々は覚悟を決めたように、ハサミを手に取った。 一瞬のためらいもなく、彼女はあの青い線を切った。 次の瞬間、爆弾のカウントダウンが、10分から一瞬で残り10秒へと切り替わった! 一輝と奈々は表情を一瞬で変え、パニック状態でその場から逃げ出そうとした。 私は焦り、哲也の元へ駆け寄ろうとした。 その時、小さな手が私の裾を引っ張った。 「ママ……パパが翔太(しょうた)をきっと助けてくれるよね……?」 ふと我に返ると、なんと私のそばに、哲也が立っていることに気づいた。 突然、今朝哲也が言ったことを思い出した。 「ママ!翔太が今日、どうしても僕と服を交換したいって言うんだ。僕の服の方がかっこいいって!」 翔太は奈々の息子、つまり哲也の腹違いの弟である。 …… 去年、一輝の初恋の人、奈々が海外から帰ってきた。 彼女の傍らには、一輝によく似た目元の少年がいた。 これが原因で、一輝と激しい喧嘩になった。 だが一輝は冷たい口調で、ただこう言った。 「あれは、数年前に奈々に提供した精子で生まれた子供だ。 俺と奈々の間には何もない!勝手に推測するな」 この家庭のため、そして哲也にせめてもの幸せな子ども時代を送らせたいと思い、私は耐えてきた。 しかし、彼らはつけあがる一方だった。 一輝はコネを使い、奈々を爆発物処理班に入らせた。 奈々はさらに、翔太を哲也が通う幼稚園にまで入園させた。 子供の送迎時、奈々は毎回、敵意むき出しの視線を向けてきた。 私は哲也の無邪気な顔を見つめた。 彼にこれから起こりうるつらい目を見せるわけにはいかない。 急いで駆けつけてきた母に、哲也を預けた。 「お母さん、連れて帰って。用が済んだら戻るから」 車を降り、私はあの廃ビルへと走った。 建物の下に駆けつけた時、ちょうど慌てふためいて逃げ惑う一輝と奈々に出くわした。 ドカ――ン! 轟音が響き、大爆発を起こした。 ビル全体が激しく揺れた。 私は真っ青になり、炎上する現場をただ見つめ、一言も発せなかった。 しかし一輝は、何事もなかったかのような平然とした様子で近づいてきた。 「落ち着け、薫。奈々の手順に何の問題もなかった。 爆弾を仕掛けた犯人が狡猾すぎたんだ。爆弾の仕組みが複雑なので…… もう取り返せないことだ。奈々に文句をつけるような真似はしてくれるな。 いつものように奈々のことをとやかく言うのはやめてくれ……」 私はゆっくりとうなずき、声を絞り出すように答えた。 「ええ、もちろんとがめたりはしない」 一輝は満足そうだった。 傍らで、奈々は胸に手を当て、まだ動揺している様子で、どこか冷たい笑みを浮かべた。 その口調には、どこか見下すような賞賛がにじんでいた。 「薫さんって、本当に大人しいのね」 一輝は軽く鼻で笑い、三人だけに聞こえる声で言った。 「薫は俺の言いなりだ。逆らうなんて絶対にできないさ。 今回は哲也が死んだだけだぞ。 信じるか?今日死んだのがあいつの親だったとしても、あいつは結局、俺を追及する度胸なんてない」 私は怒りを押し殺し、ビルの上の方、爆発が発生した階を指さして言った。 「爆弾は爆発したけど、翔太くんが必ずしも……とは限らない。 急いで戻って確認して、まだ助かる可能性が――」 私の言葉が終わらないうちに、奈々が怒り狂ったように叫んだ。 「何をバカなこと言ってるのよ!爆発で死んだのは哲也くんであって、翔太じゃないわ! 翔太は無事なの!なんで翔太を呪うのよ!」 第2話 一輝は私の頬を容赦なく平手打ちして、私を叱りつけた。 「奈々に謝れ!」 私は焦りながら言った。 「今謝ってる場合じゃないよ。早く現場に行って確かめて!もしかしたらまだ間に合うかも……」 二人が動こうとしないのを見て、私は自分で行く決意をした。 どうあれ、翔太は無実だ。彼が死ぬのをただ傍観していることなど、私にはできなかった。 奈々はすぐに泣き出し、一輝の胸に顔を埋めた。 「一輝さん……薫さん、悲しすぎて気が変になってしまったのね…… ごめんなさい、私が全部悪いの、私が助けられなかったせいで……」 一輝は奈々を深く憐れんだ。 彼は走り寄って私の腕を掴み、勢いよく地面に押し付けて、無理やり奈々の方を向かせた。 「今すぐ奈々に謝れ!」 私は顔を上げた。 「私が悪いわけない!なぜ謝らなきゃいけないの! 爆弾を付けられていたのは、翔太くんに違いない! 哲也は、もうお母さんに連れられて実家に帰ったんだ!」 私の言葉は、一輝を完全に逆上させた。 彼は、私がそんな悪意に満ちた嘘で、彼の愛する奈々を傷つけようとしているのだと思い込んだのだ。 彼は私の後頭部を押さえつけ、容赦なく額を地面に叩きつけた。 硬い地面が皮膚を裂き、生温かい血が額を伝って流れ落ち、視界がぼんやりとなった。 「分かったか?!反省したか?!」 彼は怒鳴りつけてきた。 私は何も言わなかった。 すると彼は、それ以上どうすることもできず、苛立ちを露わにして私を突き放し、奈々を連れて立ち去った。 奈々が私のそばを通り過ぎる時、私だけに聞こえる声で言った。 「息子を失った気持ちはどう? 一輝さんが好きなのは、永遠に私だけよ。 あなたはただの私の代わりに過ぎない。彼との間に子供を持つなんて、おこがましいわ」 彼女の歪んだ表情を見て、私の心に残ったのは哀しみだけだった。 私はため息をつき、もう一度彼女に告げた。 「爆弾を付けられたのは、本当に翔太くんよ。今行けば、まだ……助けるチャンスがあるかもしれ……」 「でたらめを言わないで!」 彼女は私の言葉に刺さったかのように、逆上してその場を去った。 私はここを離れようと思ったが、結局は無実の翔太を死なせることができなかった。 急いで、黒煙が立ち上る廃ビルへ駆け込んだ。 現場は悲惨な状況だった。 爆心地に、小さな、血まみれで傷だらけの体が横たわっていた。 私は急いで駆け寄った。 翔太は全身傷だらけだったが、かすかながらも、まだ息をしている! 私に気づくと、彼はかすかに声を絞り出した。 「たすけ……て……」 自分の子供ではないが、その痛ましい姿に、涙が溢れて止まらなかった。 翔太を抱き上げ、一番近い病院へ走り出した。 走りながら、自分の体が血と爆煙で汚れているのを感じた。 翔太の体は爆発で焼け焦げていた。 その有様は、実に痛ましいものだった。 ようやく病院に辿り着くと、私は必死で叫んだ。 「助けてください!この子を助けて!」 腕の中の翔太は、完全に意識を失っていた。 第3話 しかしその時、一輝が目の前に現れた。 彼の後ろには、膝にほんの少し擦り傷があるだけの奈々が付いてきていた。 意識のない子供を抱く私を見て、彼は冷ややかに言った。 「救急でも順番待ちだろ?まったく常識がないな。 哲也が生きてたら、こんな母親見て恥ずかしがるぞ」 彼は、私が抱いている子を、亡くなった哲也だと決めつけた。 救急外来では、医師が翔太の様子を見に駆け出そうとしたが、奈々に呼び止められた。 「先生!私を先に診てください!足が痛くて!」 医師は彼女のほんの些細な擦り傷を見るなり、あきれたように言った。 「もう少し遅ければ放っておいても治ってた程度の傷です! まずはあの子!明らかに重傷です」 しかし奈々と一輝の二人は、救急外来の入り口を塞いで動かない。 私が中に入るのも医師が出てくるのも阻んで、どうしても奈々の傷を先に処置させろと迫る。 私はもう我慢できず、奈々に叫んだ。 「これは翔太くんよ!どうしてこんなに重傷を負った彼が、治療も受けられずにいるのを平気で見ていられるの?」 奈々は一輝に向かって泣きながら訴えた。 「一輝さん……哲也くんの事故以来、薫さんは翔太のことを恨み続けて、まるで狂ってるの! あの子が着てるのは、哲也くんの服でしょ?」 一輝は即座に私を激しく非難した。 「薫!お前がそんなにひどいとは思わなかった! 自分の子供が死んだからって、他人の子に恨みを向けるなんて! 奈々はあんなに善良で、真っ先に哲也を助けようとしたのに! 奈々の子供を呪うなんて、お前は最低だ!」 私は泣きながら説明し、子供の顔を見させようとした。 「違う!これが本当に翔太くんなの!」 しかし一輝の怒りは収まらない。 私は急に一輝に押しのけられ、抱きかかえていた翔太を落としてしまった。虫の息だった翔太は、冷たい地面に激しく叩きつけられた。 ボロボロの小さな体に残っていたかすかな動きは静かに、途切れた。 その瞬間、私の心は凍りついた。 はっと悟った。この惨劇の根源は、彼らが爆弾を仕掛けられたのが哲也だと誤解したことにある。 彼らの目的は、哲也の命を奪うことだった。 翔太を救うために、私はできる限りのことは全てやったのだ。 私は一瞬の沈黙の後、一輝をじっと見据え、冷静に言った。 「離婚しよう」 彼は嘲るように笑った。 「またバカなこと言って!早く家に帰ってよく反省しろ!」 全てがあまりにも滑稽だった。 彼らが翔太さえ大切にしないなら、私がここでこだわる意味などない。 私はくるりと背を向け、彼らに言った。 「離婚の書類は弁護士から送るわ」 奈々が私を呼び止めた。 「待って!」 彼女はスマホでライブ配信を始め、大げさに泣きじゃくりながらカメラに向かって訴えた。 「皆さん!本日、この街で爆発事件があり、大変悲しんでいます。 しかしこのお母さん、爆発で亡くなったお子さんを、こんなふうに病院に捨てようとしているんです! 母親として、どうしてこんなに冷酷でいられるのでしょう? 自分の子供をごみのように、病院の廊下に投げ出すなんて!」 そう言うと、彼女は生気のなくなった翔太の体を、アップで撮り続けた。 そして、また大げさに救急外来へ駆け込み、さっき自分が妨げていた医師の腕を掴み、泣きながら頼んだ。 「どうかあの子を助けてください!お願いします!」 医師は彼女の一貫しない態度に戸惑ったが、責任感を持って、急いで翔太の元へ駆け寄り、しゃがんで詳しく容態を確認した。 そして、痛ましそうに首を振った。 「この子は……もう間に合いません。もしさっきなら……間に合ったかもしれないのに……」 医師の言葉が終わらないうちに、一輝が遮るように大声で言った。 「先生のせいではありません!お疲れです!」 そう言うと、ほとんど無理やり医師を救急外来に戻した。 第4話 奈々のカメラが再び私に向けられた。 私を、無能で子供を失い、正気を失った最低な母親として描き出した。 私の心には怒りなんか湧いてこなかった。ただ、全てが空しく、馬鹿馬鹿しいと感じた。 何度も言った。この子は翔太だって。信じないなら、それでいい。 私は首を振り、静かにその場を離れようとした。 しかし病院の入り口で、大勢の人に囲まれてしまった。 皆、奈々の配信の影響で集まって来た人たちだ。 彼らは怒りを露わに私を非難した。 最初に手を出したのは誰か分からなかった。私に向けて物を投げ始めた。 ついに、逆上した女性が飛び出し、私の髪をがしっと掴んだ。 「どうして自分の子供を捨てるの!母親として最低よ!」 何度、どれほど強い力で殴られたか分からない。全身が軋み、激痛が走った。 内臓がやられたのか、突然、血を吐き出した。 ようやく周りの人々が少しずつ去っていった。 一輝は悲痛な表情で近づき、周囲の人々に向かって言った。 「妻の薫、強いショックで取り乱してしまいました。どうかお許しください。 今すぐ精神科病院に連れて行って治療を受けさせます」 そう言うと、彼が合図すると、奈々が私をがっちり押さえつけた。 奈々は私の耳元で、嘲笑うような口調で囁いた。 「薫さん、一輝さんは離婚なんかしないわよ!ただあなたの死を待つだけ。 哲也くんが死んだ今、あなたを精神科病院に入れることさえできれば、あなたの会社も財産も、全て一輝さんのものになる。 それから、きれいにあなたを消してしまえば、私と一輝さんはすっかりあなたの全てを手にできる。 哲也くんの相続分は、翔太が受け継げるし。ふふっ」 私は嘲るように、ゆっくりと口を開いた。 「死んだ子が、本当に哲也だと思う?」 私の平気さに、彼女は焦った。 怒りに震える声で低くうなった。 「私が手配して拉致させたのは、青いシャツを着た子供よ! 幼稚園でその服を着てたのは哲也くんだけ、間違いないわ!」 全身の血の気が引いた。 なるほど、これは偶然の事件じゃない。計画的な拉致だ! 私はスマホを取り出し、すぐに警察に通報しようとした。 一輝がスマホを奪い取ると、そのまま地面に叩きつけた。 「薫、諦めろ! 今は誰もが、お前は子供を失っておかしくなったと思ってる。 お前が何を言っても、誰も信じやしない」 遠くで、精神科病院の車がサイレンを鳴らせながら近づいてくる。 私は必死でもがいたが、二人に強く押さえつけられた。 その時、一輝のスマホが鳴った。母からのビデオ通話だ。 一輝は奈々に合図し、私の口を押さえさせ、隅に引きずり込ませた。 それから、嫌そうな顔で通話に出た。 母の慌てた声が受話器から聞こえた。 「一輝さん、薫はいつ帰ってくる?哲也がとっても寂しがってるのよ」 母の言葉を聞き、一輝の表情が次第に怪しげに歪んでいった。 スマホから、哲也の、いつものあの元気な声が聞こえてきた。 「パパ!ママは?いつお家に帰ってくるの?」 私をがっちり押さえていた奈々が、一瞬で体が固まり、表情が恐怖に染まった。 彼女は震える手で私を離し、スマホの画面を見つめた。 画面の中では、哲也が生き生きと跳ねながら、カメラに向かって手を振っていた。 哲也は奈々を見て、少し怖がりながらも、きちんと挨拶した。 「夏目さん、お久しぶり!」 奈々は数秒間呆然とした。 そして、次の瞬間、恐怖に引き裂かれるような叫び声を上げた。 「きゃあああ――!」 彼女は狂ったように、病院の中の、あの小さく冷たくなった遺体の方へ、走り出した。