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99回ドッキリ結婚、もう限界です!
5年目の記念日。たくさんの人に見守られる中、松本湊(まつもと みなと)は片膝をつく。 「葵(あおい)、俺と結婚してください」 しかし、私...
Chương (1)
第1章
5年目の記念日。たくさんの人に見守られる中、松本湊(まつもと みなと)は片膝をつく。
「葵(あおい)、俺と結婚してください」
しかし、私の心はまったく動かなかった。
やはり……次の瞬間、湊は指輪を投げ捨て、ウェディングドレスを燃やし、会場をめちゃくちゃにした。
それを見ている、彼の幼馴染である平野梨花(ひらの りか)もげらげらと笑っている。
こんなプロポーズはもう99回目。うつ病を患っている梨花を笑わせるためだけのただの悪ふざけ。
そして、湊の仲間たちも揶揄うように囃し立てる。
「葵さん、どうしたんだよ?今日はなんだかつれないな。早くうんって言ってあげなよ」
「俺たちは、君が本気にして慌てふためく面白い顔が見たいんだからさ」
私は特に取り乱すことなく、静かに口を開いた。
「ごめんね。私、一昨日婚約したんだ」
湊は一瞬呆気に取られたようだったが、すぐに鼻で笑って言った。
「俺以外に、お前をもらってくれるやつなんているわけないだろ?」
その一言で周りはどっと笑い出し、私がいつ結婚できるかなんて賭けを始める人までいた。
しかし、この人たちはまだ知らないのだ。
私がプロポーズされていると聞いた本当の婚約者が、今まさに私を迎えに来てくれていることを……
第1話
5年目の記念日。たくさんの人に見守られる中、松本湊(まつもと みなと)は片膝をつく。
「葵(あおい)、俺と結婚してください」
しかし、私の心はまったく動かなかった。
やはり……次の瞬間、湊は指輪を投げ捨て、ウェディングドレスを燃やし、会場をめちゃくちゃにした。
それを見ている、彼の幼馴染である平野梨花(ひらの りか)もげらげらと笑っている。
こんなプロポーズはもう99回目。うつ病を患っている梨花を笑わせるためだけのただの悪ふざけ。
そして、湊の仲間たちも揶揄うように囃し立てる。
「葵さん、どうしたんだよ?今日はなんだかつれないな。早くうんって言ってあげなよ」
「俺たちは、君が本気にして慌てふためく面白い顔が見たいんだからさ」
私は特に取り乱すことなく、静かに口を開いた。
「ごめんね。私、一昨日婚約したんだ」
湊は一瞬呆気に取られたようだったが、すぐに鼻で笑って言った。
「俺以外に、お前をもらってくれるやつなんているわけないだろ?」
その一言で周りはどっと笑い出し、私がいつ結婚できるかなんて賭けを始める人までいた。
しかし、この人たちはまだ知らないのだ。
私がプロポーズされていると聞いた本当の婚約者が、今まさに私を迎えに来てくれていることを……
……
彼らはどれくらい笑い続けていたのだろうか。
私がずっと黙っていることに気づいた誰かが、その場をとりなそうとした。
「なんだよ、葵さん。ただの冗談だろ?そんなに怒ることないんじゃないか?」
私は落ち着いて答える。
「怒ってなんかないよ」
それを見た梨花が、湊の胸にすり寄った。
「湊さん。もしかして葵さんは私のこと嫌いなのかなぁ?」
湊は私に視線を向けると、眉を顰めた。
「お前のせいで梨花が不機嫌になったじゃないか。謝れよ」
湊が本気で怒り出しそうなのを感じ取った私は、指をぎゅっと握りしめ、素直に頭を下げる。
「ごめんなさい、平野さん。嫌な気持ちにさせてしまって」
プライドとは大事なものなのだろうか?
ただ私が覚えているのは、梨花に謝らなかったせいで、前回、湊に地下室へ3日3晩閉じ込められたことだけ。
「そういうことで、私はもう帰ってもいいのかな?」
私は手元のバッグを手に取る。
しかし、湊が私を掴もうと腕を伸ばしてきたので、私は反射的に避けた。その拍子に、服がはだける。
服の下の肌には、やけどの痕やアレルギーの発疹、それに数々のいたずらでできた傷跡があった。
それを見た湊の顔が、一瞬で真っ青になる。
「なんでこんな酷いことになってるんだよ。あいつら、痕は残さないって約束してたのに」
私は心の中で冷たく笑った。
ドレスに火のつく粉を仕込んだり、ケーキに私がアレルギーのマンゴーを入れたり、ダンスシューズに釘を隠したり……これで無傷でいられるなら、それこそ奇跡だろう。
湊はさらに、私のズボンの裾をまくり上げた。
そこには、くっきりと手術痕が残っている。
私の夢はダンスをすることだった。しかし、この足を怪我してから、一度も踊っていない。
罪悪感で、湊の表情がますます歪んでいく。
「葵、俺は……」
「きゃっ!」
梨花が悲鳴をあげて、湊の胸に飛び込んだ。「気持ち悪い!」
湊はひどく険しい顔をする。
「ふざけるな、梨花。これは全部、葵が君を元気づけるためにつくった傷なんだぞ。感謝しろよな」
「違うよ。私が感謝するのは湊さん!だって、あなたが私のことを大事に思ってくれなかったら、こんなことまでしてくれないでしょ?」
そう言って、梨花は湊の腕に絡みついた。
「君のご両親が亡くなる前、君のことを頼まれたんだ。その時に、面倒を見るって約束した。ただそれだけだよ」
「じゃあ、私と葵さん、あなたの心の中ではどっちが大事なの?」
「もちろん葵に決まってるだろ?彼女は俺の……」
しかし、湊が言い終わる前に、梨花がつま先立ちで彼の唇を奪った。
すると、湊は感電したかのように固まった。だが、すぐに我に返ると、梨花の頭を引き寄せて、もっと深くキスをした。
「湊さん、やっぱり私のことが好きなのね」
梨花は湊の胸に顔をうずめて、泣きながら微笑んでいる。
しかし、その場から私がとっくにいなくなっていたことに、気づいている人は誰一人といなかった。
時を同じくして、入り口には迎えのマイバッハが到着していた。後ろに何台も車を引き連れているのを見て、思わず笑みがこぼれる。
「安心して。彼らが私に何かすることはないから」
私を奪いにきた男は、私の無事な姿を見てほっと息をつき、骨ばったきれいな手で助手席のドアを開けてくれた。
「ところで、結婚式のことなんだけど。君はどうしたい?」
……
第2話
入籍の手続きで必要になった際に、マイナンバーカードがまだ湊と一緒に住んでいた家に置いたままだったことに気づいた。
家に行き、玄関の暗証番号を私の誕生日で何回か試したのだが、開かなかった。しかし、梨花の誕生日を入れたら……
ドアが開いた。
中に入ってきた私を見て気まずそうに目をそらした湊だったが、声はなんだか嬉しそうに弾んでいる。
「どうしてここに来たんだ?」
梨花の靴が玄関に置いてあるのが目に入ったが、私は淡々と用件だけを告げた。
「マイナンバーカードを取りに来ただけだから」
「そんなもの、何に使うんだ?」
私は湊とこれ以上話したくなかった。早くマイナンバーカードを取って、この家から出たかった。
昔、私が使っていた部屋のドアを開けると、そこには湊のワイシャツ一枚をはおった梨花がいた。床には、使ったばかりのゴムがいくつか転がっている。
「きゃあっ!」
私の顔を見るなり、彼女は甲高い悲鳴をあげて駆け寄ってきた。そして、いきなり私の頬を強く叩く。
「誰が入っていいって言ったのよ!さっさと出ていって!」
叩かれた頬が、じんと熱を持って赤く腫れていく。それを見た湊が、私の前に割って入った。
「梨花、やめろよ。ここはもともと葵の部屋なんだから」
しかし梨花はまるで何かが壊れたみたいに、「出ていって!早くこの女を追い出してよ!」と狂ったように叫び続けている。
しかも、梨花の手にはさみが握られていて、それを私の治りかけの右足にぐさりと突き刺してきた。私は痛みに呻き声をあげる。
しかし、梨花の目に浮かんだ嘲るような笑みを見て分かった。わざとやったのだと……
だから、私は足からハサミを勢いよく引き抜くと、梨花に突きかかった。でも、湊が彼女を庇うように立ちはだかる。
「何すんだよ!」
湊は私を床に強く叩きつけると、ボディーガードを呼んで、私を物置部屋に閉じ込めた。
「葵、本当にお前にはがっかりしたよ。自分が悪いって認めて梨花に謝るまで、ここから出すつもりはないから」
ドアが閉められた。私はまだ血が流れている自分の足を見つめると、服を破いて応急手当をした。そして、携帯の最後の充電で、助けを求めるメッセージを送る。
夜中になると、隣の部屋からどんどん激しくなる二人の喘ぎ声が聞こえてきた。そのせいで何度も目が覚める。
どれくらいたっただろうか。やっと声が聞こえなくなったので、疲れきっていた私はすぐに眠りに落ちた。
しかし、その数分後。ドアを激しく叩く音で起こされ、そこには上半身裸の湊が立っていた。
「葵、体はどんな感じだ?大丈夫か?」
彼が何を考えているのか分からなくて、私は眉を顰める。
「ここから出して」
私がまだ話せるのを見た湊は、ぱっと顔を輝かせ、後ろにいた屈強な男たちに私を指さして言った。
「こいつを縛って、病院に連れていけ」
彼らの話を聞いて、大体の事情が分かった。梨花が大量出血して、すぐに輸血が必要らしい。
「この患者さんは右足の怪我でとても衰弱しています。だから、この状態で無理やり輸血をすれば、命に関わりますよ」
病院のベッドで横になっている私を見て、医師が湊にそう忠告した。
しかし湊は、少しも躊躇わずに言った。
「すぐに輸血してください!」
深い闇に落ちていった私は、いろんな夢を見た。
夢の中のまだ若い私は、湊と愛し合っていて、彼は一生愛すると、私に約束してくれた。
しかし、梨花がうつ病になってから、全てが変わってしまった。
全てに絶望した私は、自ら命を絶とうとした。
そんな私をどん底から救い出してくれたのは、あの男だった。
彼は言う。
「どんなことがあっても、生きろ!葵!
死ぬなんて許さない!葵!
葵!」
はっとして夢から覚めると、誰かが本当に私の名前を呼んでいた。どうやら、夢ではなかったようだ。
ベッドの側にはあの男がいて、ずっと看病してくれていたみたいだった。目を覚ました私を見て、彼の心配そうな顔がぱっと明るくなった。
「今すぐあいつらを警察に突き出して、君の仇をとってやるからな!」
男は親指と人差し指をこすり合わせていた。それは、彼がすごく怒っている時の癖。
しかし、私は咄嗟に男の言葉を遮った。
「待って。捕まえないで」
「分かった。じゃあ、やめておこう」
「あの人たちのためにあなたが手を汚す必要はないよ。やるなら、湊の会社を潰して。だって、あの人が一番好きなのはお金だから。全てを奪う方が、殺すよりずっとつらい復讐になるはず」
……
退院してからも1週間、ずっと寝て休んでいたし、湊の会社からももう辞めていたので、毎日がすごく退屈だった。
何かできることはないかと思い、自分で結婚式の準備を始めようとしたのだが、体にさわるからと言って、男は全く賛成してくれなかった。
それでも私がお願いし続けたら、最後には折れてくれた。
ネットで結婚式の準備について調べている時、ニュース速報が目に飛び込んできた。それは、梨花と湊の交際宣言の記事だった。
それに、湊の事業は最近すごく上手くいっているようで、ニュースでよく彼の名前を見かける。
記事には、仲睦まじそうに手を繋ぐ二人や観覧車でキスをしている写真が載っていて、こんな見出しが添えられていた。【これからの人生、君以外ありえない】
一瞬、息が止まった。
私と湊は5年も付き合ってたのに、彼はいつも仕事に影響が出るからと言って、私のことは公にしてくれなかった。
もし前の私だったら、嫉妬で狂いそうになり、湊と大喧嘩してただろう。
でも今の私は、この記事を見ても何も思わなかった。しかし、ページをスクロールしようとした時に、間違って、この記事を湊に共有してしまった。
その直後、湊から電話がかかってきた。
「あれは梨花が勝手に新聞社に送りつけたんだ。俺の彼女は、今でもお前だけだから」
もうとっくに別れていることを言おうとした時、電話の向こうから、はしゃいだ声が聞こえてきた。
「湊さん!先生に妊娠してるって言われたの!双子だって!」
「ほ……本当か?」
電話越しの梨花の声は、興奮を隠しきれていない。
「ねえ、私たち結婚しようよ。生まれてくる赤ちゃんに、父親がいないなんてかわいそうだもん!」
……
私はそのまま電話を切ると、湊の連絡先を削除し、ブロックした。
湊の会社への攻撃に集中してくれているのか、男は毎日夜遅くまで忙しそうだった。
一緒にウェディングドレスを見に行こうと男が誘ってくれたのだが、私は断った。
「一人で大丈夫。せっかくだから、何軒かまわってゆっくり選んでみるよ。暇つぶしにもなるしね」
なのに、運命のいたずらなのだろうか。最初に入ったドレスショップで、腕を組んで歩く湊と梨花にばったり会ってしまった。おそらく、二人もウェディングドレスを選びに来たのだろう。
私に気づいた湊は、まるで悪戯が見つかった子供のように慌て、梨花の手を振り払った。
「葵、これは……」
しかし、梨花は私を敵意むきだしの目で睨みつけてきた。
「私たちのことつけて来たの?」
湊は気まずそうに目をそらす。
「葵。違うんだ、話を聞いて……」
私は左手の薬指にはめた指輪をわざと彼らに見せつけるように、指をそっと揺らす。
「違うよ。私もウェディングドレスを試着しに来たの」
湊が眉を顰める。
「ウェディングドレスの試着?お前がまだ俺のことを忘れられないのは分かる。でも、今はお前と結婚できないんだ。俺には、もっと大事な責任があるから……」
しかし彼の言葉は、けたたましく鳴り響いた電話の音に遮られた。
「どういうことだよ?話が違うじゃないか!うまく進んでたはずなのに、なんで今さら提携しないなんて言い出すんだ?
会社の資金繰りが急にショートするなんてありえない。分かった、今すぐそっちへ行くから」
第3話
湊は携帯をぎゅっと握ると、申し訳なさそうに俯く。
「葵、戻ったらちゃんと説明するから。待ってて……」
そう言い残すと、梨花には目もくれず、湊はそのまま行ってしまった。
梨花が憎しみのこもった目で私を睨みつけてくる。
「これ全部あなたの仕業でしょ?わざわざ勝ち誇りに来たの?これで満足した?」
急に私に近づいてきた梨花は、意地の悪い笑みを浮かべた。
「私が妊娠したのが羨ましいんでしょ?いいこと教えてあげる。あなたが流産して病室で悲しんでたとき、私と湊さんは隣の病室で愛し合ってたんだよ。それに、私たちの子どもはその時にできたんだから」
私は怒りで全身が震え、ありったけの力で梨花の頬をひっぱたいた。
「よくも叩いたわね!あなたなんか、死んじゃえ!」
梨花が私を突き飛ばした。私の背後には窓があった。
はっとした私は梨花の手を掴む。死ぬなら一緒だ。
この階からだと5メートルぐらいの高さがあるから、落ちたら死なないまでも、大怪我はするだろう。
しかし、幸いなことに下は人工池だった。
そこへ、車のキーを梨花に預けたままだったことを思い出した湊が、ちょうど引き返してきて、私が池に落ちる瞬間を目撃した。
「葵、大丈夫だ!今すぐ助けに行くから!」
そのとき、誰かが叫んだ。
「女の子がもう一人、池に落ちたみたいだぞ!」
その声を聞いて、はっとした湊は躊躇うことなく向きを変え、梨花のほうへ泳いでいった。
「湊さん……」
助けられた梨花は、湊の腕の中で声を上げて泣き出した。
しかし、湊は私がまだ水の中にいることを思い出したのか、急に梨花を突き放す。
「葵は?葵がまだ水の中にいる!」
湊がまた水に飛び込もうとしたとき、私がもう岸に上がっていることに気づいた。
「お前……いつのまに泳げるようになったんだ?」
湊の言う通り、私は確かに泳げなかった。
昔、何度もスイミングスクールに申し込んだけど、いつも湊に止められてた。
「俺がいるんだから、お前が水に落ちるようなことは絶対にさせないって!」
でもその後、私はあの男に出会った。男は私に水泳も、クライミングも、アーチェリーも、全部自分で教えてくれた。
彼が傍にいられないときでも、私が自分の身を守れるようにって。
私は静かに答えた。
「婚約者が教えてくれたの」
その場を去ろうとしたけど、ふと思い立って釘を刺しておいた。
「それと、平野さんのこと、ちゃんと見ておいてね。じゃないと、私が彼女に何するか分からないよ?」
「婚約者?」
湊は不思議そうな顔をしていたが、梨花の叫び声が聞こえるとそちらに向かって行った。
「湊さん、痛い。お腹が、急に……」
湊はかがみこんで、すぐに梨花の様子を見る。
二人の茶番をこれ以上見る気にはなれなかった私は、躊躇うことなく背を向けて立ち去った。
……
私が池に落ちたことを知った男は、守ってあげられなかったと自分を責め、湊の会社を潰す計画を加速させた。
きっともうすぐ、湊は全てを失って無一文になるだろう。
2週間後、結婚式は予定通り開かれ、会場には大勢のゲストが詰めかけていた。
ちょうど男が少し席を外していたので、私が一人でゲストを迎えている時、湊と梨花が来た。まさか彼らも招待されていたなんて。
私を見た湊は一瞬固まったが、すぐに私の腕を掴んで隅に連れていく。
「ここは俺の叔父の結婚式だぞ?なんでお前がここにいるんだよ?」
「私は……」
私が答える前に、湊が一方的に話し続けた。
「まだ俺に未練があるのは分かる。でもここは俺の親戚ばっかりなんだぞ。誰かの機嫌を損ねて、将来困ることになっても知らないからな」
私はなんとか湊の手を振りほどく。
「今日は私の結……」
しかし次の瞬間には、側にいた梨花が悲鳴を上げた。
「湊さん、お腹がまた痛いの。赤ちゃんが蹴ってるのかな?」
湊は慌てて私から離れ、梨花のところに駆け寄る。
しばらくすると、司会者がステージで挨拶を始め、結婚式が始まった。
ドレスに着替えてメイクも終え、私が出番を待っていると、湊と梨花の声が聞こえてきた。
「今日の結婚式、絶対見に来た方がよかったよ。本物の一流ってものが、見れるんだからさ」
梨花が声高に話している。
湊の仲間たちも口々に賛同していた。すると、その中の一人が、ふと思い出したように湊に尋ねる。
「そういや、葵さんがお前を追いかけて結婚式場まで乗り込んできたって聞いたぞ。なあ、どうなってるんだよ?」
湊は少し沈黙した後、口を開いた。
「正直、葵には悪いことしたって思ってる。でも、梨花はうつ病を患っているし、彼女の両親にも面倒を見るって約束したから、仕方ないだろ?」
「そういえばさ、俺たちが前にした賭け、覚えてるか?葵さんがいつ結婚できるかってやつ。でも、こんなしつこい性格のようじゃ、一生結婚なんて無理だろうな」
その言葉が終わるや否や、司会者の新婦入場のアナウンスが流れた。
音楽が流れ始め、重厚な扉がゆっくりと開かれる。
私は最高級のウェディングドレスに身を包み、ゆっくりと会場へと足を踏み入れた。
湊と目が合う。
彼は完全に固まっていた。