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夫と秘書がアプリで浮気?即離婚!
真夜中に破水した私は、慌てて夫に救急車を呼んでほしいとお願いした。 それなのに夫の松井慶(まつい けい)は、あるアプリを開き、ログイン...
Chương (1)
第1章
真夜中に破水した私は、慌てて夫に救急車を呼んでほしいとお願いした。
それなのに夫の松井慶(まつい けい)は、あるアプリを開き、ログインの足跡をつけていた。
そして、画面には「連続ログイン399日目」と表示され、アニメーションの花火が打ち上げられる。それを確認した慶は安心したようにほっと息をつくと、ようやく119番に連絡し始めた。
その時の私にもう迷いはなかった。お腹の痛みに耐えながら、弁護士である一人の友人に離婚準備をお願いするメッセージを送る。
離婚届を突きつけられた慶は、何かのつまらない冗談とでも思ったのか、鼻で笑った。
「秘書とアプリ内のログイン連続記録チャレンジをしてたってだけで?」
私は頷く。
「うん。ただそれだけ」
第1話
真夜中に破水した私は、慌てて夫に救急車を呼んでほしいとお願いした。
それなのに夫の松井慶(まつい けい)は、あるアプリを開きログインの足跡をつけていた。そして、画面には「連続ログイン399日目」と表示され、アニメーションの花火が打ち上げられる。それを確認した慶は安心したようにほっと息をつくと、ようやく119番に連絡し始めた。
その時の私にもう迷いはなかった。お腹の痛みに耐えながら、弁護士である一人の友人に離婚準備をお願いするメッセージを送る。
……
救急車に乗っていた時、救急隊員が「深呼吸して下さい。リラックスしましょうね」と、私を落ち着かせようとしてくれていた。
その時、隣に座っていた慶が、うっかりボイスメッセージを再生してしまったようで、彼の携帯からは甘ったるい女性の声が聞こえてきた。「またこんなギリギリに連続記録更新のこと思い出すんだったら、もう知りませんからね!」
すると、慶はすぐさま携帯の画面を消し、焦ったように私の様子を伺ってきた。
私が陣痛の波に襲われ、冷や汗でびっしょりになりながら苦しんでいるのを見て、私が気づいていないとでも思ったのか、慶はどこかほっとした様子だった。彼は、続けて携帯を触り、返信をする。【菜々子、ごめん。今日は忙しくて、つい忘れてた。でも、12時前に間に合っただろ?次は絶対ちゃんとするからさ。そんな怒るなって】
そのとき、時計の針はちょうど12時を指していた。
私は慶に背を向けて、ストレッチャーの取っ手を爪が食い込むほど強く握った。そして、残りの力で携帯を手に取る。
弁護士の友人からの返信が届いていた。【とりあえず今は赤ちゃんを産むことに集中してね。赤ちゃんの親権は、絶対に取ってみせるから!】
そのメッセージのおかげで、少しだけ不安が和らぐ。
すると、電話の相手をなだめ終わったのか、慶が私の傍にぴたりと寄り添ってきた。
私の手を自分の手のひらで包み込み、額へとキスを落とす。
「凛(りん)。お前が痛がってるのを見てると、俺もつらいよ」
それから、私のお腹に顔を寄せて、痛みを和らげようとしてくれているのか、やさしく撫でてきた。
「いい子だから、ママを困らせるんじゃないぞ。早く出ておいで。パパが遊んであげるからな」
そして、温かいタオルで私の冷や汗を拭いてくれるなど、気遣いまで見せる。
まるで、いい夫であり、いい父親のようだ。
しかし、私にはそれがたまらなく白々しく思えた。
病院に着くと、医師が慶に私の状況を慌ただしく尋ねる。
「奥さんの母子手帳はありますか?もしあれば、急いで出してください!
体の状態を把握したいので」
しかし、慶は何のことかさっぱり分からないというような顔をする。
私があれほど何度も伝えておいたのに、慶は全く覚えていないようだった。
秘書である池田菜々子(いけだ ななこ)との399日も続くアプリのログイン連続記録チャレンジは、一日も欠かしたことが無かったのに。
医者は眉を顰め、ため息をついたが、それ以上は何も言わずに、私を分娩室へと運んでくれた。
数時間にわたる出産は、まるで身を裂かれるような苦しみだった。
幸い、私は無事に女の子を産むことができた。
腕の中にあるこの柔らかくて小さな命を見ていると、胸が温かくなる。
私と赤ちゃんは医師によって分娩室から出された。
すると、家族への注意事項もあるようで、看護師が慶の名前を何度も呼んでいたのだが、返事が一向にない。
「こんな大事なときだっていうのに、どこに行っちゃってるの?無責任にも程があるでしょ。
奥さんの出産中に、旦那さんの居場所が分からないなんて……こんなの今までなかったよ」
小声で話している看護師の愚痴も、全て聞こえてしまった。
胸がレモンを詰め込まれたみたいに、きゅーっと締めつけられ、苦しくてたまらない。
医者が電話してくれたのか、慶が慌てて走ってきた。
しかし、その後ろには女がいる。
それは、慶の秘書である菜々子だった。
菜々子は私を見るなり、申し訳なさそうに謝ってきた。
「凛さん、本当にすみません。会社にいる時に、急に熱が出てしまったんですけど、誰にも連絡がつかなくて。それで社長に……
だから、大事な瞬間に立ち会えなかったのは私のせいなんです。社長のことは責めないであげてください」
まっすぐ私を見ていた菜々子だったが、その表情からは申し訳なさなんて微塵も感じられない。
なぜ救急車を呼ばなかったのだろうか?どうして友人に電話という選択肢が無かったのだ?
よりにもよって、妊婦の妻がいる旦那に電話してくるなんて……
菜々子が話し終えると、慶はまず菜々子の額に触れ、熱が下がっているのを確認すると、どこかホッとしたような表情を浮かべる。
少し責めるような声で言った。「走れるくらい元気でも、さっきは39度も熱があったんだぞ。俺が間に合わないで、点滴に連れて行けなかったらどうするつもりだったんだ?」
慶の瞳の奥には、本人さえ気づいていない焦りと不安が滲んでいた。
私が出産で苦しんでいた数時間、慶は菜々子の点滴に付き添っていたなんて。
ぼんやりとする頭で、ふと気づく。慶は昔から、面倒ごとを何より嫌う人だった。
第2話
前に私が慶のために選んだ秘書は、有名大学卒で仕事もすごくできる人だった。しかしある時、本当に些細なミスをいくつかしてしまった。
すると、慶はその秘書をすぐクビにしてしまったのだった。
「こんなこともできないやつに、大きな仕事を任せられるかよ」と、私に愚痴までこぼしていた。
しかし今の慶は、なんだかすごく寛大で、忍耐強くなったみたいで、ミスを繰り返す菜々子を許している。
菜々子とはアプリのログイン連続記録チャレンジを行い、菜々子が熱を出した際には点滴に付き添うために、出産真っ最中の妻を放っておくことだってできるのだから。
慶に咎められた菜々子がぺろっと舌を出す。
すると、慶はようやく私のことを思い出したようで、顔に父親になった喜びを浮かべながら、私の目の前に駆け寄ってきた。
「凛、お疲れ様。よく頑張ったな」
慶が私と娘の頬にキスを落とす。
そして、私に言い訳を始めた。
「実は昨日、夜中まで菜々子に残業をさせちゃってさ。それで、熱が出たみたいなんだよ。まあ、労災みたいなもんだろ?だから、ほっといて、もし部下たちから俺が冷たい人間だって思われても嫌だったんだ。
それに、赤ちゃんはまだ生まれなさそうだったから、先に菜々子を病院に連れて行ったんだよ」
一見すれば、ただ自分の行動に「仕事」というもっともらしい理由をかぶせただけのように見える。
だが、その選択の端々に、彼が何を最優先にしているのかがはっきりと滲んでいた。
「池田さんも大人なんだから、自分で救急車を呼ぶことも、友達に助けを求めることもできたはず。なのに、どうしてあなたが病院に連れて行かなきゃいけなかったの?自分の妻が出産中だって知らなかったわけじゃないでしょ?」
すると、突然慶が声を荒げた。「菜々子は会社で倒れるところだったんだぞ?それに、仕事で夕飯もろくに食べてないどころか、水さえ飲んでなかったんだ!
お前はいつからそんなに冷たい人間になったんだよ?」
突然、私は全てがなんだか馬鹿らしく思えてきたので、その場を後にし病室へと向かった。
ようやく落ち着いてきた頃、お腹をすかせたのか、娘が大きな声で泣き始めた。
私が服を捲りあげ、娘を抱き上げると、娘は夢中で吸いついてきた。
しかし、そのとき突然、病室のドアが勢いよく開けられ、大勢の人がなだれ込んできた。
私は慌てて服で胸を隠す。
病室にやってきたのは、会社の同僚たちで、男性も女性もいた。
すると、菜々子が私の前にやって来て、嬉しそうに言った。
「凛さん!出産をお祝いするために、わざわざ同僚のみなさんを呼んできたんです!」
私が一番ボロボロになっていて、一番休みたいときに、菜々子はわざと同僚を呼んだのだろう。
必死で怒りをこらえた私だったが、顔はひきつっていたと思う。
すると、菜々子は慶の前に歩み寄り、目をうるませ、いかにも自分が被害者だという様子で話し始めた。
「私、また何かやっちゃいましたか?でも、わざとじゃないんです。ただ、みなさんに赤ちゃんを見てもらって、この幸せな気持ちを分け合いたかっただけで……」
慶はそんな菜々子の頭をぽんぽんと叩いて慰めると、私の前にやって来て、責めるような口調で言った。
「菜々子も善意でやってくれたんだ。なのに、どうしてそんな態度をとるんだ?」
私はあまりの怒りで笑ってしまった。
「自分の妻が授乳してるところを、大勢の人に見せるのって、そんなに楽しい?」
慶の顔色が少し変わる。
少し声のトーンを落とした慶は、私を宥め始めた。
「分かったよ。今回は俺の配慮が足りなかった。
でも、せっかくみんなが来てくれたんだからさ」
すると、菜々子がその場を取りなすように口を挟む。
「社長。娘さん、本当に可愛いですね。目元なんて、社長にそっくりですよ。
私も抱っこさせてもらってもいいですか?」
私が返事をする前に、慶はひょいと赤ちゃんを抱き上げ、菜々子の腕の中に寝かせた。
菜々子も赤ちゃんの小さな頬にキスをする。
「可愛いですね!私も自分の赤ちゃんが欲しくなっちゃいますよ!」
菜々子を見ながら笑う慶は、甘やかすような口調で言った。
「君自身がまだ子供みたいなもんだろ?自分の面倒だって見れないくせに、子供が欲しいなんてさ」
そう言い終わった瞬間、慶はまずいと気づいたのか、小さく咳払いをする。
その瞬間、赤ちゃんを抱いていた菜々子の体がぐらっと揺れ、菜々子の手から力が抜けた。
私は頭が真っ白になった。とっさに赤ちゃんを受け止めようと体を投げ出したが間に合わず、ゴンッと音を立てて赤ちゃんは保育器の中に落ちてしまった。
第3話
赤ちゃんが大声で泣き出す。
私もとっさに大きく動いたせいで、出産のときの傷口が開いてしまい、激痛が走った。
引き裂かれるような痛みをぐっとこらえて、赤ちゃんを抱き上げる。
赤ちゃんの頭にはかすり傷ができていて、声が枯れてしまうほど泣いていた。
そんな赤ちゃんを見て、菜々子もかなり怯えているようだ。
「わざとじゃないんです」
慶がすぐに菜々子を慰める。
「そんなに心配しなくたって大丈夫だ。君は母親になったことがないんだから、赤ちゃんの扱いがわからなくて当たり前だ。
それに君自身もまだ熱があるんじゃないか?」
もう我慢の限界だった私は、菜々子の顔を思いっきり叩いた。
「出ていって!
あなたが何を考えてるか、私が気づいてないとでも思ったの?」
しかし次の瞬間には、慶がすごい勢いで私の頬を叩いたのだった。
私を叩いた後、慶は自分の手を見て呆然として、少し後悔しているようだったが、顔にはまだ怒りが浮かんでいる。
「菜々子は子供を産んだことがないんだから、うまく抱っこできないのは仕方ないだろ?そんなにきつく当たる必要はないんじゃないか?」
そう言い終えると、慶は泣きながら部屋を飛び出していった菜々子を追いかけていった。
その様子を見ていた同僚たちもそそくさと帰っていく。
私は慶の遠ざかっていく背中を見つめていた。
以前の私たちは、なんでも話せる親友であり、かけがえのない恋人同士だったのに。
私に会いたい一心で、慶は朝一緒に学校に行くためだけでも、マンションの下で一晩中待っていてくれたこともあった。
18歳のころは、お金も全然無かったのに、なけなしのお小遣いを使って、一輪の花を買ってくれた。
私が「大きい家に住みたい」と言うと、必死に会社を立ち上げ、接待で飲み過ぎて入院するまで頑張ってくれたこともある。
私たちはいつから、こんなふうに変わってしまったのだろう?
それはたぶん……慶が何百通もの履歴書の中から、菜々子を見つけ出したあのときから。
慶は言っていた。「華やかな経歴の持ち主より、素朴で誠実そうな子のほうがいい。それにうちの会社には若い力が必要だから」と。
だから、慶は周りの反対を押し切って、菜々子を採用した。
私も履歴書を見たが、大学もあまり有名ではなく、職務経験もまったくなかった。
しかし、慶の心を本当に惹きつけたのが、履歴書に書かれていた一文だと私は知っていた。
【この仕事がどうしても必要なんです。重い病気の父と、寝たきりの母が……】
慶も苦労してきた人だから、自分と同じように大変な人の力になってあげたかったのだろう。
私はそのことが分かっていたから、それ以上は何も言わなかった。
しかし、菜々子は仕事でミスばかりした。
慶の高級スーツにお茶をこぼしたり、大事な契約書の数字を間違えたり……
慶もかなり顔に出ていたので、私は言ったことがある。「どうしても無理なら、もう辞めてもらったら?少し多めにお金を渡してあげれば……」
だが、慶は少し迷ってから、「わざとじゃないんだから、今はいいよ」と言うだけだった。
そのとき私は気づいた。自分は慶のことが、少し分からなくなっていると。
その後、菜々子はSNSのアカウントを開設し、「秘書と社長の日常」のような投稿を始めた。
そして、いつも真面目でクールな慶が、なんとその動画に一緒に出るようになったのだった。
慶は写真を撮られるのが大嫌いで、家に飾ってある結婚式の写真でさえ、横顔しか写っていないのに。
理由を聞くと、慶はこう説明した。「少しでも収入を増やしたいから、こうやって動画を投稿しているらしいんだ。だって、彼女の家は大変だろ……」
周りの人たちも、慶は変わった、親しみやすくなったと慶の変化を口にした。
でも、この変化の原因がなんなのか、分かっているのは私だけだった。
慶の気持ちは、菜々子のせいで、いつも揺れ動くようになっていたのだ。
しまいには、SNSなんてまったくやらなかった慶が、菜々子と399日もアプリのログイン連続記録チャレンジなんかを続けて……
私が入院している間、慶から【出張に行く】とだけメッセージが来た。
そして、私のために高価な産後ケアヘルパーを雇ってくれた。
そのおかげで私は、毎日赤ちゃんの世話に集中できた。
ある日、携帯を見ていたとき、ふと魔が差して、菜々子のアカウントを開いてしまった。
すると、ちょうど更新されたばかりの動画が一本あった。
それは菜々子の投稿で、高級ホテルの部屋が映っていた。ベッドが二つあり、ソファでは慶が真剣な顔で契約書を読んでいる。
添えられた文章はこうだった。【社長と出張中。でもホテルが満室で、ツインルームしか空いてなかった。気まずい】
第4話
コメント欄は大盛り上がり。【まじか。同じ部屋なのにツインベッド?使う場所をきっちり分けるつもり?】
【菜々子のことはずっと見てきたから、本当に大変だったこと知ってる。早く社長と結ばれてほしい!】
【上手くいったら、私たちにも幸せのお裾分けして!】
私は冷たく笑った。この人たちは自分たちの言ってる社長に、妻と生まれたばかりの子供がいるって知ってるのだろうか?
そんなコメントに、菜々子は恥ずかしそうなスタンプを一つ返信しただけで、はっきりとは答えていなかった。
私は携帯の電源を切った。
そして、弁護士の友人が離婚に関する書類と共に送ってくれた離婚届を手に取り少し見つめる。
数日後、退職の手続きを済ませてから、慶に離婚の話を切り出すつもりだった私は、子供を家に預けてから、会社に向かった。
会社に着くと、休憩室には体を温めるという生薬ドリンクとチョコレートケーキが社員分置かれていた。
すると、同僚たちの歓声が聞こえてきた。「社長が差し入れしてくれたんだって!太っ腹だよね!」
「社長って本当気がきくよね!凛さんの産休明けに合わせて、体が温まる生薬ドリンクを頼んでくれるなんてさ」
すると、隣にいた人が肘でその同僚をつついて、小声で言った。「分かってないなあ。あれは凛さんじゃんなくて、池田さんのために社長が特別に頼んだんだよ。池田さん、最近生理で、お腹がすごく痛いらしくて……」
しかし私に気づいたらしく、その同僚が申し訳なさそうに口を開いた。「すみません、凛さん……いたなんて知らなくて」
私は首を横に振った。
なぜなら、これが私のではないことに、とっくに気づいていたから。だって、私はチョコレートアレルギーなのだ。
慶が私にアプローチしてくれていた時も、こんな感じだった。病気なのに仕事をしていると、こっそり薬をケーキに隠して無理やり食べさせては、私が苦くて顔をしかめるのを見て楽しんでいた。
そんな私たちを見て、退屈でしかなかった仕事場も和やかな雰囲気になっていたのに。
しかし今では、その時のときめきも、優しさも全て別の人に向けられている。
私は自分のデスクに戻り、荷物を片付けようとした。
すると、デスクの上には女性ものの生活用品がたくさん置かれていた。
菜々子が小走りでやってきて、私に謝った。「社長が、ここに置いていいと……」
でも、その目には明らかな挑発が浮かんでいる。
私は頷いて言った。「大丈夫。これからはずっとここに置いていていいから」
そして、私は社長室のドアを開けた。
慶は観覧車の模型を組み立てていた。その中には、キスをしている二つの小さな人形が乗っている。
それは菜々子の動画で見たことがあった。
菜々子は、「社長に特別な誕生日プレゼントをおねだりした」と言っていた。
手作りの観覧車。
私を見た慶は、一瞬動きを止めた後、手元のものを奥へと押しやった。
「離婚しよう」
私は単刀直入に切り出す。
しかし慶は、まるで寝言でも聞いたかのように、信じられないという顔をした。「なんて言った?」
私は繰り返した。「離婚しようって言ったの」
手にした離婚届を、慶の前に突きつける。
慶はようやく私の言葉を信じたようだった。「俺と離婚する?
なんでだ?」
私は慶の携帯を手に取って、あのアプリを開いた。
そこに表示されたのは、「連続ログイン409日目」の文字。
慶の顔がさっと青ざめる。しかし、すぐに落ち着きを取り戻したようで、こう尋ねてきた。
「俺が菜々子とアプリのログイン連続記録チャレンジを続けてる、ただそれだけのことで?」
私は頷く。「うん。ただそれだけ」
慶は怒りのあまり逆に笑い出した。「気でも狂ったのか?それが何だって言うんだ?
最近の若い子は色々とやるんだよ。それに、たかが炎マークの連続記録を続けただけだろ?ちょっと束縛が強すぎるんじゃないか?」
慶が話をすり替えようとしているのが分かったので、私はそれ以上言い争うのはやめた。
「ここにサインして。私、急いでるから」
慶は離婚届をひったくると、私の目の前に叩きつけた。
「サインなんかしない!子供だって生まれたばかりだぞ。父親がいないなんて、そんなのかわいそうだろ?」
その言葉を聞いて、私は思わず笑い出してしまった。
「じゃあ、私たちの赤ちゃんの名前、知ってる?」