ひと花散りても、風雪はなお

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ひと花散りても、風雪はなお

GoodNovel Hoàn thành

大晦日、私は最後に一度、裁判所へ行った。 今回は、裁判官が私に息子の親権を取り戻すためにまだ訴えるつもりがあるかどうか尋ねた。 私は首...

Chương (1)

第1章

大晦日、私は最後に一度、裁判所へ行った。 今回は、裁判官が私に息子の親権を取り戻すためにまだ訴えるつもりがあるかどうか尋ねた。 私は首を横に振った。 「訴えを取り下げに来ました。親権はもういいです。離婚に同意します」 夫の江口渡(えぐち わたる)との結婚生活の9年間に、私は6回も裁判に立ち会った。 そして、6回にわたる大晦日を、私は裁判所で過ごすことになったのだ。 喜びは全くなく、ヒステリックな非難だけだった。 私は疲れた。 息子も疲れた。 だから、ついに手放す決心がついた。 今年帰省するための飛行機のチケットも予約した。 第1話 大晦日、私は最後に一度、裁判所へ行った。 今回は、裁判官が私に息子の親権を取り戻すためにまだ訴えるつもりがあるかどうか尋ねた。 私は首を横に振った。 「訴えを取り下げに来ました。親権はもういいです。離婚に同意します」 夫の江口渡(えぐち わたる)との結婚生活の9年間に、私は6回も裁判に立ち会った。 そして、6回にわたる大晦日を、私は裁判所で過ごすことになったのだ。 喜びは全くなく、ヒステリックな非難だけだった。 私は疲れた。 息子も疲れた。 だから、ついに手放す決心がついた。 今年帰省するための飛行機のチケットも予約した。 裁判官はこれ以上何も尋ねず、離婚協議書を手渡した。 私は署名を終えたばかりだったが、扉が開かれた。 渡と息子だ。 彼らは多分、私がこれまでの6回のように、まだ訴訟を起こすつもりだと思ったのだろう。 渡の口調は氷のように冷たかった。 「7回も訴えたのか?紬希(つむぎ)、本当に根性あるな」 彼は続けて嘲笑した。 「でも今回、お前が負ける。悠斗はもう8歳、誰と一緒にいるか自分で決められるんだ」 息子の江口悠斗(えぐち はると)は渡の後ろに隠れていた。私を見つめるその目には、冷たくよそよそしい光が満ちていた。 彼は迷わず口を開いた。 「僕はパパと詩織さんと一緒にいたい」 私は突然、昨夜神原詩織(かんばら しおり)が送ってきた動画を思い出した。 彼らは大晦日を前倒しで祝い、年越しそばを食べていた。 楽しそうで、まるで三人家族のようだった。 食卓で悠斗は眉をひそめて言った。 「ママのせいで、毎回早めに年越しそばを食べなきゃいけないんだ」 私は違うと悠斗に説明したかった。 毎年の裁判は、渡が仕事で手が離せないと言って大晦日まで延期していただけで、私のせいじゃない。 しかし、次の瞬間、悠斗は続けた。 「こんなに長い間、ママはまるで狂ったように僕たちにまとわりついてる。 こんなママ、本当に嫌い。詩織さんがママだったらよかったのに」 その瞬間、私は説明する気を失った。 6年間の裁判はまるで笑い話のようだ。 私が親権を勝ち取りたいのに、悠斗は最初から私についてくるつもりはなかった。 ましてや、私を母親として認めるつもりもなかった。 だから今、悠斗が私の目の前で、父親と一緒にいたいと言ったとき、私の心はただ麻痺するように痛んだ。 「ちょうどいい、私は訴えを取り下げに来たの。もうあんたはいらない」 悠斗は私がそんなことを言うとは思っていなかったらしく、瞬時に目に怒りが滲んだ。 「うそ!本当に僕が欲しくないなら、ずっとパパを訴えたりしないはずよ!」 私は署名済みの離婚協議書を取り出し、悠斗の親権を自発的に放棄する箇所を指さしながら、冷たく言った。 「さっき署名したばかり。今日は来る必要がなかったこと、言い忘れてたわ」 渡は、私がすでに署名を終えていたとは思わなかった。 しばらくして、彼は口を開いた。 「本当に決めたのか?離婚したら、簡単に悠斗に会えないぞ」 私はうなずいた。 渡と結婚して9年になるが、結婚3年目に私たちは詩織をめぐって離婚騒動を起こした。 あの時、まだ2歳の悠斗が泣きじゃくり、つたない言葉で「ママ、行かないで……」と私にすがってきた。 だから、悠斗のために、私は丸6年も親権を争ってきた。 しかし6年間で、変わったものは多すぎた。 悠斗だけが嫌気をさしていたわけではない。 私も、もう疲れ果てていた。 だから今、私は離婚協議書を渡に差し出した。 「署名しなさい」 私は、あなたたちに自由を返す。 第2話 渡は離婚協議書と、私の青ざめた顔を見つめ、突然口調を和らげた。 「俺が本気で離婚したいわけじゃないこと、お前もわかってるだろ。 詩織がどんなに良くても、悠斗の実の母親にはなれない。 俺が望んでいたのは、お前に自分の立場を弁えることだけだ」 私に立場なんてある? 江口家に嫁いで以来、私は使い走りの無料家政婦にすぎなかった。 渡の母である江口直美(えぐち なおみ)は心の底から私を嫌い、外では私を辱めることも日常茶飯事だった。 さらには、私が彼女を「お義母さん」と呼ぶことすら許さなかった。 渡のために私は我慢した。 だが、彼は私にどうしたか? 6年前の大晦日、私は目を閉じて、10秒だけ願い事をしていた。 妊娠中の私が希望に胸を膨らませていたその時、渡は突然口を開き、不倫を認めた。 「詩織が一人でお正月を過ごすのは、心苦しかったから、隠さずに話すよ。 これから詩織のところに行くつもりだ」 私はそれを受け入れられなかった。 一人は私の最も愛する夫。 もう一人は私の最も信頼する親友。 二人がどうして私を裏切って一緒になれるの? その時、私は二人目を妊娠して6か月だったが、渡の刺激で大量出血し、流産した。 その後、悠斗を連れて離婚したいと泣き騒いだ。 だが、誰も気にしなかった。 直美はただ嘲笑った。 「たかが専業主婦一人、悠斗の親権を勝ち取れるとでも思ってるの? 分を弁えなさい!さっさと金を持って江口家を出ろ」 その時、私は初めて気づいた。 私はずっと、江口家で全く立場がなかったのだ。 だから渡の言葉は、ただ笑えるだけだった。 これでまた、我慢の日々に戻れというの? 私は嫌よ。 これ以上、彼らと絡むつもりはない。 私は協議書の署名欄を指差し、声を上げた。 「余計なことは言わず、署名しなさい」 渡の顔色は明らかに険しくなり、素早く署名した。 「後悔するなよ」 後悔する? 私は悠斗を見た。 彼の顔には無関心がにじみ出ていた。そのうえ、渡と同じ冷たくよそよそしい態度を取り、私への嫌悪の色まで目に映った。 答えは明白だ。後悔することなど何もない。 私は離婚協議書をしまい、悠斗に向き直った。 「これから、あんたたちのお正月を邪魔しない。 あんたにも関わらない」 この6年間の大晦日、私がどれだけ頑張ってきたかは、誰も知らない。 皆が家族と共にお正月を祝う中、私だけは冷たい訴状を手に、一ページずつめくりながら過ごした。 敗訴の恐怖で、夜も眠れなかった。 悠斗の写真を胸に抱きしめることで、ようやく短い眠りに落ちることができた。 普段、直美の強権的な干渉で、悠斗には全く会えなかった。 年に一度、会えるのは大晦日の法廷だけだった。 私は悠斗の前で少しでも格好悪く見えないよう、必死だった。 悠斗の心の奥で、私が「良い母」であるというイメージを保ちたかった。 だが今、悠斗は別の女性を母として選んだ。 私は「演じる」必要もなくなった。 悠斗は眉をひそめ、私に返事せず、渡に向き直った。 「もうママが僕たちに絡まないなら、詩織さんのところに行こうよ。詩織さんはまだ家で待ってるから。今日はまた年越しそばを一緒に作りましょう」 私は思わず笑いそうになった。 以前、江口家と一緒に正月を過ごした時、年越しそばを作るのは全部私一人の仕事だった。 誰も手伝わず、直美も手伝わせなかった。 その時、私は渡に手伝ってほしかったが、彼はいつも忙しいとか、今日も疲れているとか、言い訳ばかりを並べてごまかしていた。 私はいつも、泣き止まない悠斗を背負って、何度も痛む腰を揉みながら、彼らのために年越しそばを作った。 作り終わると、直美はいつもあれこれ文句を言ったが、渡は私を庇うことすらなかった。 今振り返ると、渡は決して私を愛したことも、大事に思ったこともなかった。 私が十月十日、お腹の中で育て、命がけで産んだ悠斗さえも、渡と同じようになっていた。 悠斗は渡の手を引いて慌てて立ち去ろうとし、まるで私のことをひどく嫌っているかのようだ。 だが以前は違った。 彼が3歳になるまでは、私にとても依存していた。私が視界からわずか3秒でもいなくなると、泣きながら私を探した。 皆は、この離婚はできないと言った。 しかし今、できないことはないとわかった。 離婚も、依存から脱することもできる。 第3話 渡たちが去った後、私は母に電話をかけた。 「お正月に帰る」と伝えると、母は興奮して聞いた。 「悠斗の親権は取れたの?」 私は一瞬言葉を失い、ようやく声を出した。 「訴えを取り下げたの。親権もいらない」 電話の向こうの母は理由を尋ねず、ただため息をついた。 「帰っておいで。今年はあなたの好きな料理、たくさん作ったのよ」 突然、私は涙がこみ上げてきた。 この何年も、悠斗の親権を争うため、正月に帰省する暇さえなかった。 母が電話をかけてきて、「帰ってくるの?」と聞かれても、私は裁判があると理由に断ってきた。 母は何も言わなかったが、私は分かっていた。 年の瀬にわざわざ法廷で騒ぎ、母をひとり実家に残して年を越させるなんて、多くの親戚が陰で「落ち着きがない」と私を非難していた。 だから今回、私は悠斗の親権を諦めた。 私は家に帰りたい。 翌日、私は借りているアパートの荷物を整理し始めた。 この何年も、生活の中心はずっと渡と悠斗にあった。 そのため、私の荷物は一つのスーツケースで十分だ。 しかし車に乗った直後、病院から電話がかかってきた。 「江口悠斗さんのお母さんですか?彼がピーナッツを誤って食べてしまい、アナフィラキシーショックを起こしています。すぐ病院に来てください」 私は航空券の時間を見て、渡に電話をかけた。 しかし彼は出なかった。 おそらく、心の奥にまだ最後の母性が残っていたのだろう。私はすぐに運転手に方向転換させて、病院へ向かった。 病室の前に着き、ドアノブに手をかけた瞬間、内側から笑い声が聞こえてきた。 詩織の声だ。 「悠斗、紬希が来るかどうか賭けようよ」 悠斗の声も聞こえてきた。弱々しい様子はなく、ましてやアナフィラキシーショックも起こしていない。 「来ないと思うよ。もう僕のこと気にしてないって言ったし」 「じゃあ私は来ると賭けるわ。紬希は6年も親権のために裁判をしてきたんだから、簡単に諦めないよ」 私はドアの外でその会話を聞いた。 心臓が、まるで大きな手にぎゅっと握られたかのように痛み、指先まで震えが走った。 抑えきれない怒りが湧き上がり、私は勢いよく病室のドアを開けた。 悠斗は驚き、口を押さえると、嘘がバレたことに顔を赤らめた。 「アレルギーでショックになったんじゃないの?なんで嘘をつくの!」 私の声には怒りが混じっていた。まさか悠斗が私をからかう日が来るとは思わなかった。 悠斗は顔を真っ赤にし、手の甲に赤い発疹を見せながら小さな声で言った。 「僕、嘘なんかついてないよ」 詩織は悠斗の前に立った。 「紬希、子どもに怒らないで」 私は詩織を睨みつけた。ここ数年、渡が彼女を守って隠していたため、私は彼女に文句を言えなかった。 当初、彼女と渡が不倫していた映像が私の頭の中で繰り返し再生されている。 かつての親友が夫を奪ったなんて、考えられなかった。 今度は息子まで奪われた。 二つの恨みが重なり、私は思わず平手打ちをした。 「よくも彼に嘘を教えたのね!」 悠斗は私が詩織を叩くのを見ると、突然ベッドから飛び降り、口で私の腕を噛みながら、拳を何度も振り回した。 「悪いママ、詩織さんを傷つけちゃダメ!」 殴られた詩織は顔を押さえ、涙を浮かべた。その声には深い罪悪感がにじんでいた。 「ごめんなさい、全部私のせいよ。悠斗があなたともっと触れ合えるようにしたかっただけなの。 来てほしいのに、口実が思いつかなかった。仕方なく、悠斗に嘘をついてもらったわ。 余計なことをしてしまってごめん」 言い終わるか終わらないかで、病室のドアが押し開けられた。 渡だ。 その言葉を聞くと、彼は詩織を見る目には心配が溢れていた。 だが、私を見ると、その目には怒りが宿っていた。 「紬希、正気なのか?」 第4話 渡の問いかけを聞いて、私はぼんやりと結婚式の光景を思い出した。 渡は涙を浮かべながら、私に一生尽くすと誓った。 そして、私の唯一の花嫁介添人である詩織は、「もし紬希を傷つけたら、絶対に許さないから」と、渡に真剣な表情で警告した。 しかし今、かつて私の人生で最も大切だった二人が、私を裏切ることを選んだ。 では、私は一体何なのか? その思いに胸を突かれ、私はつい声を張り上げた。 「そうよ。正気じゃない!6年前、私の夫は私の親友に不倫した。そして今、私の息子まで私の親友を母として認め、彼女と一緒に私を騙した! 冷静でいられるはずがないわ!」 渡は一瞬沈黙した。 詩織はすぐに可哀想に説明した。 「紬希、ごめんなさい。 この何年もずっとあなたに申し訳なく思ってた。 あなたが気が済むなら、叩こうが怒鳴ろうが、全部私にぶつけて」 しかし言い終える前に、悠斗が詩織の前に立ち、彼女を守った。 「詩織さんを傷つけちゃダメ!」 渡も冷たく口を開いた。 「当時のことは俺の責任だ。詩織のせいじゃない。 文句があるなら俺に言え。でも今、詩織に謝れ」 私は目の前にある、瓜二つの二人の顔を見つめた。 胸の奥に押し込めていた悔しさが、一気に溢れ出した。 「なんで私が謝らなきゃいけないの! 私を裏切った時、私の気持ちを考えたの!」 私は決して忘れない。渡が不倫を認めた夜、私は病院で目を覚ましたが、もう胎動は感じられなかった。 しかし渡の最初の言葉は、詩織に手を出すなというものだった。 私が救急で運ばれ、弱り切っているのを見ても無関心で、死んだ子どもに対しても無反応だった。 そして6年経った今でも、彼は詩織を守っている。 私が必死に産んだ悠斗も一緒に彼女を守っている。 私はもう涙をこらえられなかった。 しかし渡は、少しも罪悪感を抱かず、ただ冷たく眉をひそめているだけだった。 「じゃあ、一体どうしたいんだ?」 私が反応する間もなく、横にいた詩織が突然、果物籠からナイフを取り、手首に当てた。 「私のせいで、あなたを苦しませたくないわ。 私が死ねば、あなたは気が済むの?」 場面は一気に混乱した。 私は詩織をじっと見つめ、冷たく言った。 「じゃあ、死ねばいい」 渡と悠斗は反応する暇もなく、詩織の血が噴き出し、床に散った。 詩織は倒れ、顔を青ざめさせながら謝った。 渡は完全に怒り、私の顔を平手打ちした。 「俺たちは6年間もお前に付き合ってきたんだぞ。それでもまだ俺たちを許さないのか!」 詩織への平手打ちは、結局私に返ってきた。 私は呆然と地面に座り、渡が詩織の出血部位を必死に押さえながら医者を呼ぶのを見た。 渡は詩織を抱えて去る前、私に冷酷な言葉を残した。 「詩織に何かあったら、絶対に許さない。 裁判所で正月を過ごすのが好きだろ?なら続けてやる! 正月に実家に帰れると思うな!」 そして悠斗は激しく私に物を投げつけた。 「悪いママ!わざと詩織さんを刺激したのね。ママは殺人犯だ!」 怒りの発散が終わると、彼は裸足で急いで渡たちを追った。 私は彼らの遠ざかる背中を見つめ、スマホに表示された航空券の払い戻し案内を見つめた。 心臓が締め付けられるように痛み、溺れたように息ができない。 そして地面に丸くなり、全身が震え止まらなかった。 意識が途切れる直前、私は考えた。 こうやって死んでしまっても、いいのかもしれないね。