愛と恨みのくじ引き

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愛と恨みのくじ引き

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長らく家族と離れ離れになっていた竹村圭太(たけむら けいた)が家に戻ってきてから、我が家の全てはくじ引きで決まることになった。 誰の好...

Chương (1)

第1章

長らく家族と離れ離れになっていた竹村圭太(たけむら けいた)が家に戻ってきてから、我が家の全てはくじ引きで決まることになった。 誰の好きな料理を作るかも、両親のキスやハグも、くじ引きで決める。 毎回、養子である僕が先に引く。それで僕はいつもハズレくじ。だから当たりくじは、当然のように圭太のものになる。彼は何もしなくても、両親の愛情を手に入れられた。 不公平だと思い、泣きそうになるたびに、母は厳しい口調で私を叱りつけた。 「あなたが悲しまないように、公平にしたいからって、わざわざこのくじ引き箱を買ったんでしょ。 欲しいものは自分の力で決めるの。私たち親は一切口出ししない。あなたが当たりくじを引けなかったのは、ただ単に運が悪かっただけよ」 それから僕は毎日せっせとくじ引きの練習をした。そうすれば両親の愛情を得られるかもしれないと思った。 でも十年間、僕は一度も当たりくじを引いたことがなかった。 僕の誕生日の日に、本当は家族にそばにいてほしかった。なのに、圭太は母に遊園地へ連れて行ってとせがんだ。 母はまた僕たちにくじ引きで決めさせようとした。 僕はこっそり、当たりくじを一枚、ペンで書いて母に差し出した。二人を引き留めたかったのだ。 すると母は急に僕の頬を平手打ちし、「ズルをしたでしょ!」と怒鳴りつけ、怒ったまま圭太を連れて家を出て行った。 僕は倒れ、頭を床に強く打ちつけた。 ごめんなさい、お母さん。 次こそは必ず、当たりくじを引けるように頑張るから。 第1話 長らく家族と離れ離れになっていた竹村圭太(たけむら けいた)が家に戻ってきてから、我が家の全てはくじ引きで決まることになった。 誰の好きな料理を作るかも、両親のキスやハグも、くじ引きで決める。 毎回、養子である僕が先に引く。それで僕はいつもハズレくじ。だから当たりくじは、当然のように圭太のものになる。彼は何もしなくても、両親の愛情を手に入れられた。 不公平だと思い、泣きそうになるたびに、母は厳しい口調で私を叱りつけた。 「あなたが悲しまないように、公平にしたいからって、わざわざこのくじ引き箱を買ったんでしょ。 欲しいものは自分の力で決めるの。私たち親は一切口出ししない。あなたが当たりくじを引けなかったのは、ただ単に運が悪かっただけよ」 それから僕は毎日せっせとくじ引きの練習をした。そうすれば両親の愛情を得られるかもしれないと思った。 でも十年間、僕は一度も当たりくじを引いたことがなかった。 僕の誕生日の日に、本当は家族にそばにいてほしかった。なのに、圭太は母に遊園地へ連れて行ってとせがんだ。 母はまた僕たちにくじ引きで決めさせようとした。 僕はこっそり、当たりくじを一枚、ペンで書いて母に差し出した。二人を引き留めたかったのだ。 すると母は急に僕の頬を平手打ちし、「ズルをしたでしょ!」と怒鳴りつけ、怒ったまま圭太を連れて家を出て行った。 僕は倒れ、頭を床に強く打ちつけた。 ごめんなさい、お母さん。 次こそは必ず、当たりくじを引けるように頑張るから。 頭の上から何か熱いものが髪を伝って流れていった。 床を汚したら、母はもっと怒る。 拭きたいのに、体はまるで空気みたいにふわりと浮いていた。 どうやら僕は死んでしまったらしい。 死ぬってことがどういうことか、僕は知っている。七歳のとき、おばあちゃんも僕みたいに床に倒れて死んだんだ。 あの時おばあちゃんは母と大げんかをして、母のことを「思い上がったバカ」って罵った。 「愛してるのか、愛してないのか、どっちなんじゃ!くじ引きなんか盾にしやがって!あんたが優太(ゆうた)を要らんっていうなら、今すぐ私が連れて帰る! でなきゃ、そのくじ引き箱、捨ててしまいなさい。二人の子は平等に育てるんじゃ!」 母は冷笑して言い返した。 「私の子の愛し方に、あなたが口出すことじゃないわ。二人とももちろん可愛いわよ。 でもね、どうしてもえこひいきしちゃうの。それは仕方ないでしょ。だから真の公平のために、私がこのくじ引き箱を買ったの。 子供たちが何を手にするかは、自分の運次第。私と父さんは口出ししないわ。あの子が当たりを引けなかったのは、ただ運が悪かったってことよ!」 おばあちゃんは怒りのあまりその場で倒れ、二度と起き上がることはなかった。 そして母のくじ引き教育は、ますますエスカレートしていった。 ケーキが二つあるのに、母は僕と圭太にくじを引かせる。僕がハズレを引けば、当たりは当然圭太のものになる。 だからケーキは二つとも圭太のものだ。 ご飯の時もくじを引く。僕がハズレを引けば、その日のご飯は全部、圭太の好物ばかり。たとえその料理で僕がアレルギーを起こそうと関係ない。 母は仕方なさそうに言う。 「ルールはルールでしょ。あなたがハズレを引いたんだから仕方ないわ」 四十度近い熱で泣きながら「抱っこして」と頼んでも、母はくじを引けと言う。 僕がハズレを引くと、母は当たり前のように圭太を抱きしめた。 「優太、あなたは本当についてない子ね」 僕の人生はずっと、くじ引きだった。 死ぬ時だって、くじのことを考えている。 おばあちゃんが葬られた棺は、母が買ったんだ。大きくて立派だった。近所の人たちはみんな、母を親孝行だと褒めた。 僕も母に良くしてほしかった。だって五年も使っているベッドは、もう足を伸ばして寝ることもできない。 これも、僕がハズレを引いた結果だ。 母のところに行って、もう一度くじを引かせてほしいと頼もう。もし本当に運良く当たりを引けたら、母はきっといい棺を買ってくれるに違いない。 僕の魂がドアのところまで漂うと、突然外から足音が聞こえた。 僕が目を輝かせた瞬間、母がドアを押し開けた。 第2話 「お母さん!」 僕は興奮して近づいた。 しかし、母は僕の体を通り抜けて歩いて行ってしまった。 もう、母に触れることすらできないんだ。 僕は母の後ろをついて行き、恐る恐る言いたいことを口にした。けれど母には僕の声は聞こえていない。 それに母が戻ってきたのは、僕を心配したからじゃなかった。車のキーを忘れただけだ。 母の視線が僕の部屋のドアに向けられた時、僕はまるで悪いことをした子供のように、焦って言い訳をした。 「わざと死んだわけじゃないんだ。部屋も汚しちゃってごめんね、お母さん。僕、片づけ…… もう手伝えないんだ……僕、もう、死んじゃったから……」 母は寝室の入り口で立ち止まり、何事もないような口調で言った。 「帰ってきたのに出てこないなんて、偉くなったもんだね。すっかり態度も大きくなって、拗ねてるの? でも言っておくけど、拗ねたって無駄よ。あなたが運悪くハズレを引いたのだから、誰のせいでもないでしょ」 僕がまだドアを開けないので、母は少し怒ってドアノブを回した。ちょうどその時、圭太が走ってきた。 「お母さん、早く。遊園地、もうすぐ開いちゃうよ」 母は寝室に入るのを諦め、不機嫌そうに車のキーを手に取りながら外へ向かった。 「夜まで遊んでくるから、夕飯はいらないわ。テーブルの唐揚げは、あなたが食べなさいよ。不公平だなんて言わないでよね。 圭太だって食べてないんだから。それに、今回はくじを引かせたりもしなかったでしょ。これで十分、あなたを甘やかしてるわよ」 テーブルの上にあった唐揚げは、昨日、圭太が食べ残したものだった。 昨日、母がスーパーから帰ってきた時、この唐揚げを一パックだけ買ってきて、僕と圭太にくじを引かせたのだ。そしてまた僕はハズレを引いてしまった。 僕はずっと肉を食べていなかったので、その時、思わず唐揚げに触れてしまった。 すると母は僕の手を真っ赤になるまで叩き、嫌そうに大声で叱った。 「ルールをすっかり忘れたの?あなたがハズレを引いたんだから、唐揚げは圭太のものよ!あなたには関係ないの。もう一度触ったら、手を切り落とすからね。 あなたみたいに食いしん坊な子は見たことないわ。まるで私が酷い仕打ちをして、毎日ご飯を食べさせてないみたいじゃない」 それなのに、今日は僕に食べろと言ってきた。 母はやっぱり優しい。 僕は嬉しかった。でも、今はただの魂で、唐揚げに触ることさえできないのを忘れていた。 そこへ窓から野良猫が飛び込んできて、唐揚げを奪い去ってしまった。 猫はウーッと僕を威嚇し、僕には止める術もなく、ただ悲しくなって隅っこにうずくまるしかなかった。 どれくらい経っただろうか。両親と圭太が帰ってきた。みんなの顔は喜びに溢れていた。 「お母さん、パンダってすごく大きいんだね。フワフワしてて、すごく好き!お母さん、買ってよ」 母は彼のおでこにキスをし、甘やかすように言った。 「パンダって、買えるわけないでしょ」 圭太はフンと後ろに下がった。 「キスしないでよ。まだくじ引いてないんだから。兄ちゃんに見られたら、また不公平だって泣くかもよ。 でも、もしかしたらもう部屋で泣いてるかもね。今日は兄ちゃんの誕生日だし」 母はテーブルを一瞥した。 唐揚げはもう無かった。 母は淡々と鼻で笑い、断言するような口調で言った。 「もし当たりを引けたら、私だってキスしてあげたわよ。でも、あの子は運が悪かった。引けなかったのよ。 それに、唐揚げも食べてるし、わざと出て来ないだけよ。兄ちゃんは心が狭いから、放っておきなさい」 誰も僕に気づかない。そして誰も、僕がもう自分の部屋で死んでいることにも気づいていない。 母は夜食の準備をしながら、おかしな口調で僕の部屋に向かって声を張り上げた。 「くじを引く時間よ?じゃあ、圭太の好きなものばかり作っちゃうけどね。後で不公平だって泣かないでよね」 テレビを見ていた父が苛立たしげに言った。 「ほっとけ!引かなくていい。圭太の好きなものを作れ。優太なんか好きにさせておけ! ここまで育ててやったのに、感謝もせずにふて腐れるなんて、この恩知らずめ!」 僕は傍らで思った。 引いたところで、何が変わるというのだろう?この十年、食卓にはいつも圭太の好きなものばかりで、僕はただ黙って白ご飯を食べてきた。 せめて、両親は僕を飢え死にさせなかった。 そうだろう? 第3話 母は結局、圭太の好きな料理を作った。 三人は食卓を囲み、笑い合い、それは幸せで穏やかな家族の風景だった。 僕は少し寂しくて、母のそばに寄った。 ふと、隣の椅子にケーキの箱が置いてあるのに気づいた。 僕は得意げに、窓辺にうずくまる野良猫に自慢した。 「あれ、見える?お父さんとお母さんが買ってくれたケーキだよ。ちゃんと今日が僕の誕生日だって覚えてたんだ」 野良猫は僕をひとにらみすると、嘲笑うような目をした。 母はケーキを圭太に渡した。圭太が食べたがっていたから、わざわざ買ってきたのだという。僕に聞こえないように、母は声を潜めた。 「こっそり部屋で食べて。兄ちゃんに聞かれたら、また泣くから」 僕が泣いたのはたった一度きりなのに、母は十年もの間、繰り返し繰り返し、そのことを持ち出した。 実際、僕はそれほど悲しくはなかった。だって、たとえくじを引いたって、僕がハズレを引くに決まっているから。 僕は運が悪い。だから結局、ケーキは圭太のものになる。 「僕はケーキ食べたことないよ。あなたは?」 野良猫に尋ねた。 すると猫は突然部屋に飛び込むと、圭太が持っていたケーキを前足でひっくり返し、逃げ出した。 圭太の手には引っかき傷ができた。 彼は大声で泣き叫んだ。 母は八つ当たりのように、花瓶を掴むと僕の部屋のドアに力いっぱい叩きつけた。 「優太!また圭太に意地悪したんでしょ!なんで窓を閉めておかなかったの!」 僕が相変わらずドアを開けて出てこないのを見て、母は完全にキレた。だが父が彼女を引き止めた。 「もういい、ほっといてやれ。まずは圭太を病院に連れて行こう。戻ったら、あの子とちゃんと言っておくから!」 三人が戻ってきたのは、深夜だった。 父と母が一緒に僕のドアを叩いた。中の反応がないのを確かめると、ついに我慢の限界に達し、ハンマーを持ち出してドアを壊そうとした。 結局、近所から苦情が入り、外で一方的に罵声を浴びせて、その日は終わった。 母は圭太に新品のスニーカーを買い与えた。圭太は私の部屋の前までやってきて、見せびらかすようにくるくる回る。 「注射、泣いちゃったんだ。そしたらお母さんがすごく可哀想がってさ、新しい靴買ってくれたし、美味しいステーキも食べさせてくれたよ。 兄ちゃんは食べたことないだろ?兄ちゃんは運が悪いからね。もし当たりのくじを引いてたら、お母さん、兄ちゃんにもステーキとか靴とか買ってくれたのかなあ」 僕の血が、ドアの隙間から流れ出ていた。 圭太がそれを踏んで転んだ。彼は声をからして泣き叫び、その声に父と母が駆けつけた。 「な、なんだ、これは?どこからこんなに血が……」 父は慌てた様子でドアの隙間を見つめた。 「優太の部屋からみたいだ……優太……」 父の疑惑は、圭太の泣き声に遮られた。 「僕、兄ちゃんに新しい靴、見せようと思っただけなのに……兄ちゃんが出て行けって……それで僕、血が出ちゃったの。頭がすごく痛いよ……」 母の表情が一変し、怒りに任せてドアを蹴りまくった。 「優太!いい加減に出てきなさい!圭太にこんな大怪我をさせておいて、まだ隠れてるつもり!?」 母は本気でドアをこじ開けようとしていた。一蹴りごとに、その勢いは増していった。 僕の遺体は、蹴られるたびにドアにぶつかり、無残に変形していった。この姿を見たら、彼らは怖がるだろうか。 ドアはついに壊れず、母は先に圭太の手当てをしに行くことにした。去り際に「忌々しい子」とひとこと、僕を罵った。 実際、圭太が僕を陥れるのは初めてではなかった。 小さい頃から、彼が何か失敗をするたびに、まずは声をからして泣き、そして僕のせいにするのだ。 母は公平だった。彼女はいつも言う、どちらが悪いかは関係ない、くじを引け、と。ハズレを引いた方が罰を受ける。 結果はいつも、僕が罰を受けるのだった。 もし僕が生きていたら、今度は、屋根裏部屋に閉じ込められて何も食べさせてもらえなかったのだろうか。それとも、外で一晩中雨に打たれたのだろうか。 僕は階下に漂い降りた。ふと、何かに気づいた。 涙が溢れ出た。そして、十年間、一度も当たりを引けなかった理由が、ようやくわかったのだった。 第4話 くじ引き箱が、誰かにぶつかって床に落ちた。 中には、当たりくじなんて、最初から入っていなかった。 そうか、父も母も、僕のことなんて本当は愛していなかったんだ。おばあちゃんが言ってた通り、二人はただ、くじ引きを盾にして、表向きは公平を装いながら、陰では圭太のことばかり可愛がっていただけなんだ。 もう魂になったはずなのに、急に寒気がした。 僕が拗ねていると思い込んで、両親は病院から帰ってきた後、僕を完全に空気扱いし始めた。 食事の時も僕の食器は出さず、二度とくじ引きも呼びかけもしない。そして、好き勝手に圭太を甘やかした。 まるで、この家に初めから僕なんていないかのようだ。 異変に気付いた隣人の田中が、訪ねてきたのは、それからしばらく経ってからだった。 「ウチの窓、優太君の部屋の窓と隣り合わせだからさ、変な臭いしない?何か腐ったような臭いがするんだけど。 それに、ここ最近、優太君が全然外に出てるの見ないわよ。学校にも行ってないみたいじゃない」 母は、圭太の大好きな蟹の身を剥きながら、顔も上げなかった。 「あの子、拗ねてるだけよ。ご飯も食べないし、学校なんて行くわけないでしょ。腐ったような臭いって……」 母は突然、怒りで立ち上がると、僕の寝室のドアの前まで行き、激しく叩き始めた。 「優太!まさか部屋の中でうんこでもしたんじゃないな?!一体何がしたいの?!近所の人に、私がガキのしつけもろくにできない母だって思わせたいの?!」 いくら叫んでも、部屋の中は静かなままだった。田中はますます変だと感じた。 「もしかして、何かあったんじゃない?優太君、まだ小さいし、食べも飲みもしなかったら、本当にもたないわよ」 部屋の隅でうずくまっていた僕は、母の顔を見上げた。 しかし、そこに期待したような心配の色はなく、ただ冷ややかな嘲笑があるだけだった。 「あの子が圭太を二度も入院させたんだわよ。何かあったわけない。圭太の頭の方が、よっぽど大変だったんだから!」 田中は、涙をためている圭太を見て、何も言えなくなった。 彼女が帰った後、母は残りの料理を全て、ゴミ箱に捨てた。 「すねるって言うなら、いいわよ。残りの料理を全部、捨てるわよ。 出て来たくないなら、直接学校に退学届を出してやるわ。行かなくて済むなら、その分お金も浮くしね!」 腐敗は日を追うごとに進み、僕の体は見る影もなく崩れていった。その異臭は、もはや誰の鼻にもはっきりと届くほどになっていた。 父も母も、その臭いに気付いていた。 ただ、二人は僕が死んで臭いを発しているとは思わず、僕が馬鹿になって、好き勝手に部屋の中でうんこしているのだと思った。 しかし、田中は我慢の限界に達し、警察に通報した。 警察たちを目にした瞬間、母は怒って机を叩き、立ち上がった。 「どういうつもり?! 警察を連れて、我が家に押し入ろうって?」 「警察さん、この人、自分の息子を何日も部屋に閉じ込めて、何も食べさせず飲ませなかったんだよ。これ、虐待じゃない? それに、この人、頭おかしいんだよ。夫婦でくじ引きなんて方法で子供を教育して、公平だって言い張ってる。 でも実際は、実の子の方だけ可愛がって、養子の方は全然構わない。 優太君はもう虐待で殺されてるんじゃないかと思うのよ」 これを聞いて、母は怒りのあまり笑い出した。 「私の子供の教育方法は、私の勝手でしょ。あなたに関係ないわ。余計なお世話よ。 警察さん、私の息子は元気にしてるのよ。この人、嘘の通報してるの。逮捕するべきなんじゃない?」 しかし、入ってきた警察たちは、とっくに空気中の異臭に気付いていた。 彼らがドアを壊して部屋に入ろうとすると、母はドアの前に立ちはだかった。 「これは不法侵入よ!全員出て行きなさい! うちの子は死んでなんかない。ただすねて、わざと部屋の中でうんこして、私を怒らせようとしてるだけよ!」 父は苛立たしげに、母を脇に引き寄せた。 「言っても無駄だ。やらせておけ。 笑わせるなよ。俺たち夫婦が子供を虐待したことなんて一度もないんだ。ただすねてるだけだ。よくもまあ、あれこれ想像たくましくしてくれるな。 優太本人に出て来て話させりゃいいんだ。このガキが、だんだん根性悪くなりやがって」 ドアがこじ開けられた瞬間、異臭が漂ってきた。そこにあったのは、無残に腐り果てた僕の姿だった。 宙に浮かんだ僕は、無意識に両親の方を見ていた。