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愛の賞味期限
藤堂景介(とうどう けいすけ)と結婚して五年。彼は私に至れり尽くせりで、誰もが羨む愛妻家だった。 彼が外に別の家を持ち、そこで若い女を...
Chương (1)
第1章
藤堂景介(とうどう けいすけ)と結婚して五年。彼は私に至れり尽くせりで、誰もが羨む愛妻家だった。
彼が外に別の家を持ち、そこで若い女を囲っていると知るまでは。
狂乱して彼を問い詰めた時、景介は悪びれもせずこう答えた。
「あいつとはただの遊びだ。ちょっとした刺激が欲しかっただけ。妻の座は変わらずお前のものなんだから、何が不満なんだ?」
だけど景介、私は汚らわしいのはごめんだ。
結局、私はお腹にいた子どもを中絶し、彼に背を向けて去った。
第1話
藤堂景介(とうどう けいすけ)と結婚して五年。彼は私に至れり尽くせりで、誰もが羨む愛妻家だった。
彼が外に別の家を持ち、そこで若い女を囲っていると知るまでは。
狂乱して彼を問い詰めた時、景介は悪びれもせずこう答えた。
「あいつとはただの遊びだ。ちょっとした刺激が欲しかっただけ。妻の座は変わらずお前のものなんだから、何が不満なんだ?」
だけど景介、私は汚らわしいのはごめんだ。
……
家に帰りドアを開けると、テーブルの上に綺麗な小箱が置かれており、景介がソファに座って雑誌を読んでいた。
彼が愛人を囲っていることに気づき、激しく言い争ってからというもの、景介は一週間も家に帰ってきていなかった。
私ももはや、恨みがましい妻のように彼がどこで何をしているのかを探ろうとはしなかった。
もし今日彼が帰ってこなかったら、私、この神崎澪(かんざき みお)の生活の中からこの男の存在は完全に忘れ去られていたかもしれない。
私の帰宅に気づくと、景介は立ち上がり、私の腰を抱き寄せようとした。
私は条件反射のように一歩後ずさりし、彼の手を避けた。
かつてはあれほど恋しかったその腕の中が、今では吐き気すら催す。
景介は一瞬表情を硬くしたが、結局何も言わず、テーブルの小箱を手に取って私に差し出した。
「この前、時計が壊れたって言ってただろ。新しいのを買ってきたんだ。気に入るか見てみてよ」
これが景介なりの歩み寄りであることは分かっていた。
過去五年間、私たちが喧嘩をするたびに、彼がちょっとしたプレゼントを買ってくれば、私はそれを機に機嫌を直していた。
幾つもの夜を涙で崩れ落ちそうになりながら過ごしても、彼が仲直りのサインを出せば、私はすべてを無かったことにして元通りになれたのだ。
しかし、今はもう疲れてしまった。
私はその箱に一瞥もくれず、彼を通り越して二階へ上がろうとした。
景介はため息をつき、どうしようもないといった様子で私の腕を掴み、強く抱きしめた。
「まだ怒ってるのか?」
私は彼の手を振りほどき、何も答えなかった。
私の無言の態度がとうとう彼の神経を逆撫でたのか、景介は眉をひそめ、その顔に次第に怒りの色を浮かべた。
「もう一週間も経ったのに、まだ頭を冷やせないのか?子どもみたいな我儘を言うのはやめてくれないか」
彼の言葉は非難に満ちており、まるで私の方が本当に理不尽なことをしているかのようだった。
私は五年間愛し続けたこの男を見つめ、口元に苦い笑みを浮かべた。
「じゃあ、あなたがこの一週間家に帰ってこなかったのは、私が自分で頭を冷やすのを待っていたからなのね。私が大袈裟に騒いでいると思ってるんでしょ?」
景介は答えなかったが、その沈黙がすべてを物語っていた。
彼は私の言葉を肯定したのだ。
私は目を閉じ、胸の奥をよぎる痛みを必死に無視しようとした。
「それなら、離婚しましょう」
景介は私の手首を強く掴み、その目には隠しきれない怒りが宿っていた。
「澪、言っただろう。あいつとはただの遊びだ。新鮮味が薄れたら手切れ金を渡して別れる。お前の立場を脅かすようなことにはならない。
この数年間、金も愛情も、お前に不足させたことなんてないじゃないか。俺はただ女を一人囲って、仕事で疲れた時の気晴らしにしているだけだ。お前も少しは俺のことを理解してくれないか?」
五年間愛した男の口から、こんなにも恥知らずな言葉が出てくるとは信じられなかった。
彼は一体、私たち女を何だと思っているのだろう。
用が済めば捨てる道具とでも言うのか。
私は必死に彼の拘束から逃れようとしながら、信じられない思いで彼を見つめた。
「景介、あなたはいつからこんな風になってしまったの?気持ち悪い」
景介は苛立ちを露わにし、その顔から最後の優しさすらも消え失せた。
「俺くらいの立場の人間には、こんなことよくある話だ。お前と結婚して五年で、たった一人囲っただけだぞ。十分一途な方じゃないか。この五年間、お前への愛情を値引いたことなんて一度もないのに、これ以上何が不満なんだ。
松本社長を見てみろ。結婚した時から外の愛人が途切れたことなんてないのに、奥さんは一度も騒ぎ立てたことなんてない。みんな見て見ぬふりをしてるんだ。他の人間は我慢できるのに、なぜお前にはできない?」
その強引な理屈に、私は思わず呆れ笑いをしてしまった。
「あなたの言う通りなら、結婚して五年間、私が誰一人囲っていないのはすごく損してるってことね。じゃあ私もあなたを見習って、年下のイケメンを何人か探してこようかしら?」
この言葉は景介を完全に激怒させ、私の手首を握る力はさらに強くなった。
「絶対に許さん!」
見なさい、男とはいつもこうしてダブルスタンダードなのだ。
自分は外で愛人を作り、派手に遊び回るくせに。
自分の妻には大人しく従順な良き妻であることを求める。
一体、どういう理屈だというのか。
私は軽く鼻で笑った。
「自分すら受け入れられないことを、よくもまあ私に受け入れろなんて言えるわね。
離婚して。今のあなたは、見るだけで吐き気がする」
第2話
景介は同意せず、私を深く見つめた。
「お前のお父さんが不倫した時は、堂々と愛人を家に連れ込んでお前の母親に離婚を迫ったじゃないか。俺はあの女をお前の目の前に連れてきて不愉快にさせるようなことはしない。何が受け入れられないんだ?
藤堂夫人の肩書きはお前だけのものだ。自分でもう一度よく考えてみろ」
そう言うと、彼は自分のジャケットを手に取り、ドアを乱暴に閉めて出て行った。
手首にくっきりと残った赤々とした腫れを見て、私はもう胸の奥の酸鼻な痛みに耐えきれず、涙をこぼした。
私が十八歳の年、周囲からは完璧な夫だと思われていた父が不倫をした。
愛人は大きなお腹を抱えて家に乗り込んできて、私の母に離婚して場所を空けるよう迫ったのだ。
普段は母を心から大切にしていた父も愛人の味方をし、母を見る目はかつての愛に満ちたものではなく、ただ嫌悪だけが残っていた。
そのショックからか、母は何があっても絶対に離婚しないと言い張り、自分が離婚しない限りあの女はいつまでもただの愛人で、生まれてくる子どもも私生児のままだと宣言した。
父と愛人はそれに腹を立て、頻繁に家へ押しかけてきては騒動を起こしたが、母は決して首を縦に振らなかった。
近所の人々の目には、私たち家族はすっかり笑い者に映っていた。
この茶番劇は、裁判所の判決が下るまで終わることはなかった。
それ以来、私は愛情というものに期待しなくなった。
私にしてみれば、かつてどれほど愛し合っていた二人でさえ、最後にはお互いの顔も見たくないほどになり、果ては仇敵同士にすらなるのだ。
しかし、景介の存在が私のその考えを変えた。
私たちはお互いにとっての初恋だった。彼が言うには、入学式の日に私が彼のそばを通り過ぎた時、その笑顔が彼の心に焼き付いて離れなくなったのだそうだ。
大学の四年間、彼は私にアプローチし続けた。
周りにどれほど彼に好意を寄せる女子がいようとも、彼の目には私しか映っていなかった。
私が冷たい態度をとり、少しも応えなくても、彼は決して諦めなかった。
ある夜のことだ。私がアルバイト先から上がって寮に帰ろうとしていた時、路地裏で不良グループに囲まれてしまった。
もう逃げられないと覚悟したその時、景介が現れたのだ。
彼は命知らずにもその集団に殴りかかったが、一人では当然のように袋叩きにされるだけだった。
パトカーのサイレンの音が響き渡り、不良たちが慌てて逃げ出すまでそれは続いた。
その後、顔中を青痣で腫れ上がらせた彼を見て、私の心はついに揺れ動いたのだ。
世界には、きっと例外もあるはずだと思った。
そして、景介がその例外なのだと信じたくなったのだ。
今思えば、そんな宝くじに当たるような確率の例外に自分が出会えるなどと、身の程知らずな望みを抱くべきではなかった。
両親の過去を景介に打ち明けた時、彼が私をきつく抱きしめ、ひどく心を痛めた様子で約束してくれたことを覚えている。
「澪、俺は絶対にお前の親父さんみたいな真似はしない。俺の妻はお前だけだ」
結婚してからの数年間、確かに彼はその約束を守っていた。
外での付き合いには必ず私を同伴し、行く先々で私を自分の妻だと紹介した。
出張の時も、必ずビデオ通話で連絡を入れてくれた。
周りの奥様方は皆、私が良い夫を持ったと羨ましがった。
だが、他人の目には理想の愛妻家と映るその男が、外に別の家庭を持ち、二十歳の若い女を囲っていたのだ。
残業だと言っていた彼が、車であるマンションへ向かうのを私が偶然見かけなければ、今でも騙され続けていたことだろう。
それどころか景介の言葉の端々には、私が彼に感謝すべきだとでも言うようなニュアンスすら滲み出ていた。
当時の約束を守り、藤堂夫人としての私の立場を保ち、私を他人の笑い者にしなかったことを感謝しろとでも言うのだろうか?
しかし、私が欲しかったのは藤堂夫人という肩書きなどではない。
そんなもの、ちっともありがたくなかった。
「神崎さん、お腹の赤ちゃんはとても順調に育っています。ずっと体調を整えて妊活をされていましたよね。本当に中絶されるんですか?」
医師の言葉には、隠しきれない無念さが滲んでいた。
モニターに映るその小さな命を見つめると、喉に綿が詰まったように言葉が出なかった。
私は涙が溢れそうになるのを必死に堪え、しっかりと頷いた。
かつて私が心から待ち望んだ小さな命が、ようやく私の元へやって来てくれた。けれど、私はもうこの子に完全な家庭を与えてやることができない。
それに、もうこれ以上、景介と何の関わりも持ちたくなかった。
医師はため息をつき、手術の手配をしてくれた。
想像していたような痛みはなく、ただ長い夢から覚めたような感覚だけがあった。
看護師から注意事項を聞き、薬を受け取って帰ろうとした矢先、思いがけず病院で景介と彼の愛人である橘莉乃(たちばな りの)に鉢合わせた。
景介は私の手にある薬を見ると顔色を曇らせ、一歩前に出て私の手を掴んだ。
「病気になったなら、どうして俺に言わなかったんだ?」
彼の後ろで、景介と指を絡ませて繋ぎ、不満げな顔をしている莉乃を見て、私はただただ皮肉に感じた。
男という生き物は、本当に強欲だ。
新しい刺激を追い求めることを諦められないくせに、長年連れ添った妻を見捨てるという悪名も被りたくないのだ。
外では好き勝手に遊び歩き、家では良き夫を演じ続けようと企んでいる。
今こうして景介の正体に気づけたことだけが幸いだった。でなければ、私の残りの人生は完全に台無しにされていただろう。
景介の手を振りほどこうとしたが、手術を終えたばかりの体はどうしても弱っていた。
景介はこの時、良き夫の役を演じきっており、少しも手を放そうとしなかった。
揉み合っているうちに、私のカルテが床一面に散らばってしまった。
野次馬の中から誰かが私のカルテを拾い上げ、こう言った。
「あら、この人中絶手術を受けたばかりですよ。ゆっくり休ませなきゃダメなんですよ」
景介は全身を硬直させ、信じられない様子で声の主を睨みつけて問い詰めた。
「今、何て言った?」
その女性はわけがわからない様子で、私のカルテを彼に渡した。
「見たところお二人はお知り合いみたいだし、早く旦那さんを呼んであげてください。奥さんに一人で手術を受けさせるなんて、最低ですね」
第3話
私は思わず心の中で嘲笑った。
通りすがりの人の目には、景介はただの知り合いに見えるらしい。まさか彼こそがその最低な旦那だとは、誰も想像がつかないだろう。
景介はカルテを受け取り、そこに書かれている文字をしっかりと確認すると、汚い言葉を吐き捨てた。全身から怒りのオーラを放ち、歯を食いしばって問い詰めてきた。
「妊娠してたなら、どうして俺に言わなかった?どうして俺たちの子どもを堕ろしたんだ!」
実は、彼に打ち明けようと思ったことはある。彼が愛人を囲っていると気づいた、まさにその日のことだ。
元々、その夜は残業だと聞いていた。会社へ夜食を届けに行き、ついでにこの吉報を伝えて彼を喜ばせようと思っていたのだ。
ところが会社のビルの下に着いた途端、彼が車で走り去るのを見てしまった。
女の直感というのは恐ろしいほどに当たる。
瞬時に悪い予感が胸をよぎったが、私は必死に、取引先との接待に出かけたのだろうと自分を慰めた。
しかし、もし接待なら、なぜ景介は私に一言も教えてくれなかったのだろうか?
結局、私は彼の後を追うことを選んだ。
そして、彼があるマンションの前に車を停めるまで。
マンションから若い女が駆け下りてきて、彼に向かって一直線に飛びついていくのを、私はこの目で確かめたのだ。
景介も慣れた様子で彼女を抱き寄せ、二人は車の傍で熱い口づけを交わした。
その瞬間、私の心が砕け散る音がはっきりと聞こえた。
景介のプロポーズを承諾した時、私がどれほど喜びに満ちていたかを思えば、彼が愛人を囲っていると知った時の絶望がどれほどのものか分かるだろう。
心からの喜びから絶望のどん底へ落ちるまで、たったの五年しかかからなかった。私たちは七年目の倦怠期すら乗り越えられなかったのだ。
もしそれまで私が景介に対して、一縷の幻想を抱いていたのだとしても。
昨日の彼の一連の言葉は、私を完全に絶望させるのに十分だった。
彼の問い詰めに対し、私は至極冷静に、ただ淡々と「必要ないからよ」とだけ答えた。
景介は怒れる獅子のように、私をじっと睨みつけた。
「俺はお前の夫で、子どもの父親だぞ。どうして教えなかったんだ!
四年前にお前が流産してから、俺がどれだけ子どもを待ち望んでいたか、お前も知っているだろう!」
彼の言葉を聞きながら、私は少しぼんやりとしていた。
四年前、景介は起業したばかりで、毎日地に足がつかないほど忙しく飛び回っていた。
私は彼の力になろうと、会社の色々な役割を引き受け、自分にできることはすべて一人で抱え込み、昼夜逆転の生活を送っていた。
当時の私たちは全財産を起業につぎ込んでおり、時には二人で一杯のカップ麺を分ける時期もあった。
ある日私が倒れて病院へ運ばれ、そこで初めて自分が妊娠していることを知った。そして、子どもは栄養失調で助からなかった。
子どもの存在を知った時にはすでに失われていたせいか、私はただ胸が酷く塞がれるような思いしかしなかった。
しかし景介は無情にも自分を責め立て、目を真っ赤にして私に誓ったのだ。これからは絶対に大きな家に住まわせ、良い暮らしをさせ、俺たちの子どもに最高の環境を作ってやると。
今はもうすべてを手に入れた。子どもだって、もう少しで生まれてくるところだったのに。
しかし、私たち二人の感情は変質してしまった。
「何か言えよ、澪!」
景介の咆哮が、私の意識を現在へと引き戻した。
私は苦労して彼の拘束から逃れ、静かに彼を見つめた。
「私の子どもに、あなたみたいな父親を持ってほしくなかったからよ。私と同じような子ども時代を経験させたくなかったの」
景介は一瞬ハッとし、私がそう答えるとは思っていなかったらしく、顔色を険しくした。
「いいだろう、澪。お前ってやつは本当に大したもんだよ」
そう言い残すと、彼は振り返りもせずに立ち去った。
莉乃も慌てて彼の後を追っていった。
私も彼とこれ以上関わる気はなく、しゃがみ込んでカルテを拾い集め、その場を離れようとした。
周囲の人々は事態がこんな風に展開するとは思っておらず、口々に私を慰め、景介がろくでなしだと非難した。
最初に声を上げた女性が、カルテを拾って私に渡し、心底可哀想だという目で見つめてきた。
「ごめんなさい、彼があなたの旦那さんだとは知らなくて、あんな男、捨てればいいんですよ。あまり落ち込まないで、帰ってしっかり体を休めてください」
私は彼女に感謝の笑みを向けた。
見ず知らずの他人でさえ、私に温もりを与えてくれるというのに。
私にとって一番身近な存在であるはずの景介は、何度も何度も私を傷つけ、心身共にボロボロにするだけだった。
家に帰った後、私は引っ越すことにした。離婚すると決めたからには、一日も早く離れるべきだ。
私は荷造りを始め、この数年間に彼から贈られたものをすべて探し出した。
彼の言う通り、この数年間、私への愛情表現に一切の出し惜しみはなかった。
シーズンごとのジュエリー、新作のバッグ。私に不足していたものは何一つない。
だが、彼が囲っているあの愛人にも同じようにプレゼントしていたのかと思うと、やはり吐き気がした。
これらの品々をこれからも使い続けることなど絶対に不可能だと思い、すべて売り払うことにした。
すぐに出張買取業者を呼び、彼らが一つ一つ丁寧に梱包していくのを見守った。
その時、一人の作業員が不意に一冊のアルバムを持ち上げて尋ねた。
「神崎さん、このアルバムはまだ必要ですか?」
そのアルバムを見て、私は呆然とした。分厚いその一冊は、私と景介のツーショット写真で埋め尽くされている。
景介が私を好きになった時から、彼はカメラを手に、私のすべてを記録し始めていたのだ。
最初は私一人の写真ばかりだった。本を読んでいる写真、走っている写真、授業を受けている写真……
やがて私たちが交際を始めてから、それは二人の写真へと変わっていった。
私は思わず、写真の中の二人の晴れやかな笑顔を撫でた。
否定はできない。私と景介は、心から愛し合っていた。
彼がかつて私に向けた真実の愛を疑ったことなど一度もない。この分厚いアルバムが、すべてを物語っている。
だが、その愛はあまりにも短すぎた。
私はそのアルバムを作業員の手に戻した。
「もういりません。処分してください」
物も、人も、すべて同じことだ。
私はこの無類に温かかった家が次第に空っぽになり、私のものが一つ一つ減っていくのを見つめていた。
かつてはここが一生私の身を守ってくれる場所だと思っていたが、今となってはただの幻に過ぎなかったのだ。