夫が本気の愛を捧げた相手は、初恋の女

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夫が本気の愛を捧げた相手は、初恋の女

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木村大輔(きむら だいすけ)と結婚して2年、彼は元カノを家に連れてきて、一緒に暮らすと言い出した。 周りの友達は、あの遊び人も昔の縁を大...

Chương (1)

第1章

木村大輔(きむら だいすけ)と結婚して2年、彼は元カノを家に連れてきて、一緒に暮らすと言い出した。 周りの友達は、あの遊び人も昔の縁を大事にできるんだね、なんて言ってるけど。 「大輔、ちゃんと説明してくれるよね」 二人の仲睦まじい写真を突きつけながら問い詰めたけど、私の声は情けないくらい小さかった。 大輔は、鼻で笑った。 「美穗(みほ)。人の男を奪う手口なんて、君がいちばん詳しいだろ?」 第1話 木村大輔(きむら だいすけ)と結婚して2年、彼は元カノを家に連れてきて、一緒に暮らすと言い出した。 周りの友達は、あの遊び人も昔の縁を大事にできるんだね、なんて言ってるけど。 「大輔、ちゃんと説明してくれるよね」 二人の仲睦まじい写真を突きつけながら問い詰めたけど、私の声は情けないくらい小さかった。 大輔は、鼻で笑った。 「美穗(みほ)。人の男を奪う手口なんて、君がいちばん詳しいだろ?」 他人の男を奪う女、ね。 私が大輔と付き合うようになってから、彼の元カノは私のことを周りの人にそう言って回っていた。 しかし、大輔はそんな噂が立つたびに、何度も繰り返して周りの人に、それは違うと説明してくれていた。 そして、私の前では、まるで暗黙の了解のように、その言葉を口にすることは絶対に無かった。 私と大輔の出会いは、オンラインゲームだった。 驚いたことに、お互いは同じ大学の、同じ学部だと分かった。 まあ、大輔の方が二つ先輩だったけどね。 どの授業が楽だとか、あの先生は面白いとか、キャンパスにいる猫のこととか、いろんな話をした。 【ふふっ、葛城先生って相変わらず面白いんだな】 【そうそう!昔、教室にハトが飛び込んできたことがあって、その時の葛城先生、なんと素手で捕まえようとしたんだから!】 そんな他愛もないやりとりを毎日続けるうちに、私たちの距離感はどんどん縮まっていった。 ある日のこと。図書館を出たら、近くの広場に猫が何匹、気持ちよさそうに寝そべっていた。 私は急いでそれをカメラに収めて、何気なく写真を大輔に送っていた。 【ねえ、猫が全部で何匹いるか当ててみて!】 その時、私はふと気づいたんだ。 私たちは、他愛のない日常の瞬間を、もう数えきれないくらい共有してるんだって。 大輔が写真の猫の数を数えているとき、柔らかな風が通り過ぎて、さわやかな草の香りがした。 少しだけ間が空いて、私たちはほとんど同時にメッセージを送信した。 【一回、会ってみない?】 この1か月のうちに、ゲーム仲間だった私たちは、いつの間にか恋人になった。 ある日、いい雰囲気になって、私はある冗談をふざけて大輔に聞かせた。 「大人は回りくどいことはしないで、積極的にアピールしなきゃ。 時には猫みたいに賢く、時には雨に濡れた子犬みたいにかわいらしく、ってね」 すると大輔は私をソファに押し倒して、低く掠れた声でささやいた。 「じゃあ、君はいつ雨に濡れた子犬になってくれるの?」 私は笑いながら大輔を押し返した。 結局、先に雨で全身を濡らしたのは彼のほうだった。 ある日の深夜、彼は私が大学の近くに借りていた部屋のインターホンを鳴らした。 扉を開けた私は彼に強く抱きしめられ、冷たいはずの雨が、なぜか熱を帯びているように感じられた。 そして、翌日の朝。けたたましく鳴り続けるスマホの着信音で、私は夢から引きずり出された。 寝ぼけながら、考えるより先に電話に出た。 「はい、もしもし」 「大輔、お願い、別れるなんて嫌」 私が電話に出たのとほとんど同時に、電話の向こうから、泣きじゃくる女性の声が聞こえた。 その声で、私は一気に目が覚めた。 スマホを握りしめて、どうすればいいのか分からないまま、ベッドの上で固まってしまった時、隣で眠っていた大輔がスマホをひょいと取り上げた。 大輔が電話の相手と慣れた様子で話しているのを、私はただ見つめることしかできなかった。 そして最後に彼はこう言ったの。「そいつは俺のいとこ。何日か泊まりに来てるだけだから、心配しないで」って。 その「そいつ」が指しているのは、考えるまでもなく私のことだった。 全身から血の気が引いていって、私の声は震えていた。 「今の電話、誰なの? あなたは最初から彼女がいたの?」 私は必死で問い詰めた。言葉を発するたびに、心がどんどん冷えていくのが分かった。 大輔は、何も言わなかった。その姿が、全てを物語っていた。 第2話 私が別れを切り出した時、大輔はようやく、すべての真相を打ち明けた。 「1か月前、俺たちは喧嘩の真っ最中だった。 あの晩は気分が落ち込んでてさ。たまたまゲームを開いたら、君とマッチングしたんだ。 君は面白かったから、いい暇つぶしになるって、そう思ってた」 そう言うと大輔は、私をいきなり抱きしめた。 「美穗、昨日の夜、元カノとはきっぱり別れたんだ。 これで、俺は正真正銘、君だけのものだ」 昨日の夜のことを思い出して、思わずシーツを握りしめ、吐き気をこらえた。 「彼女と別れたその日の夜に、すぐ私のところに来たってこと?」 それから、私は大輔と別れるために、一方的に彼との距離を取り始めた。 別れを告げても、大輔は毎日のように、飽きもせず連絡してきた。 最初のうちは着信を拒否し続けたけれど、だんだん無視できなくなっていった。 短い挨拶から始まり、それが数分間になって、私たちは再び話すようになった。 そんな関係が、しばらく続いた。 また、雨の降る夜だった。大輔が私の部屋のドアをノックした。 かつてと同じ光景の中で、大輔の目は、充血していた。 「美穗、君と別れたくない」 大輔を受け入れると決めた日、私は近くの公園で一晩、ただ座っていた。 夜空の星が、だんだんと姿を消していって、雲の隙間から朝日が差し込んできくるのを静かに眺めた。 私は、大輔を許したのだ。 私はズルい人間だ。私は、大輔と一緒になることだけ考えた。 大輔との未来を、どうしても手に入れたかったんだ。 …… そんな昔のことを思い出しながら、私は震える声で言った。 「あの時、あなたは言ったわよね。仮に私と出会わなくても、元カノとは別れるつもりだったって」 大輔はタバコに火をつけ、指の間に挟んだ。 白い煙が、ゆらゆらと立ち上る。 「美穗、他人を騙すのは勝手だけどさ」 大輔は低く笑った。「まさか、自分まで騙そうとしてるわけじゃないよな?」 大輔は、私をじっと見つめた。 「なんだよ。俺に近づこうとしてた時のこと、もう忘れちまったのか? 思い出させてやろうか?」 大輔は立ち上がり、静かに私を見下ろした。 「日常の出来事を語り合ったり?親が亡くなった辛い過去とか、昔の酷い恋愛経験を打ち明けたりとか? 美穗、そんな手口、見抜けないとでも思ったか」 大輔は身をかがめ、その両腕で、私を強く抱きしめた。 「ただ、あの時は、そんなふうに男を惑わそうとする君が、可愛いって思っちまったんだよ」 同じ文句を、彼といちゃつく時にも、喧嘩の最中にも、聞いたことがあった。 そして私が大輔を怒らせた時は、甘えながら許しを請うと、彼はいつも仕方なさそうに折れるのだ。 「もう、君にはかなわないな」 私は目の前の男を見つめた。 喉を締め付けられているみたいに、息が苦しかった。 奥歯を噛みしめて、唇が震えていた。 そしてやっと、私は自分の声を取り戻した。 「大輔、でも、私たちはもう結婚してるのよ」 大輔は目を伏せ、感情の読めない声で言った。 「美穗、これは俺たちが、凛にしたことへの償いなんだ。 返さなくちゃいけないんだよ」 …… 陣内凛(じんない りん)が家に来た時、ひどく顔色が悪かった。 大輔と別れてから、凛は食欲はなく、眠れない日々が続き、うつ病だと診断されたらしい。 大輔は、自分を責め続けた。 彼が凛のそばに屈み込み、辛そうな顔で彼女を見つめる姿を、私は何度も目にした。 凛はいつも、彼の髪を優しく撫でながら、穏やかな声で言った。 「大丈夫よ。 もう、ずいぶん元気になったから」 「こんなことになるって分かってたら、あの時、俺は……」大輔は言葉を濁した。 私は背を向けて、キッチンへ向かった。 なにも、私に隠す必要なんてないのに。 この2年間、大輔が深夜にこっそり電話をしていたことなんて、とっくに気づいている。 私たちが付き合い始めた最初の年。 毎晩、夜中になると、決まって彼の電話が鳴っていた。 大輔は、最初のうちは電話を切っていた。 しかしある時から、彼に長文のメッセージが届くようになった。 差出人は、凛という女性の名前だった。 凛は大輔を許せなかった。 お互いに距離を置いてみると決めた途中、大輔が心変わりしたこと、そして、私が大輔と一線を超えたことを恨んだ。 私たちを、浮気と裏切りだと非難した。 「大輔、本気で愛しているのは私だけだって言ったじゃない! 今は一体、なにをしてるの?どうして、そんなことができるのよ!」 大輔は、彼女の話に耳を貸さなかった。 しかし、凛が泣きじゃくりながら何度も彼を問い詰めるようになってからは、大輔の態度が変わった。 大輔は私をちらりと見ると、慣れた手つきで私を抱き寄せた。 「美穗、余計なこと考えるなよ。 凛も辛いんだ。 これで最後にするから」 そして私の目の前で、スマホを取り出して、凛を慰め、彼女のメッセージに応えるのだ。 大輔は凛の喜怒哀楽に、丁寧に優しく対応した。 しかしすぐそばにいる私の心は、どんなに苦しくなっても、気づいてもらえなかった。 やがて、二人のやり取りは当たり前の日常の一部となった。 夜中から明け方まで、大輔はまるで、私と結婚していることを忘れたようだった。 どんな日も、凛との連絡を欠かすことはなかった。 残業で遅くなった日ですら、決まった時間に同じ番号に電話をかける。 凛と一緒に映画を見て、楽しそうにゲームをやる。 毎日のできごとを語り合い、他愛もない話をする。 そんな二人を見て、既視感を覚えないわけにはいかなかった。 第3話 鍋の中では、大輔が好きだと言っていた料理がぐつぐつと煮えていた。 私は、熱湯に浮かんだ野菜をただぼんやりと見つめていた。 突然、背後から大輔に抱きしめられた。 「美穗、昨日は俺が悪かった」 大輔は私の肩に顎をのせ、説明し始めた。 「凛は、この一年、ずっと辛かったんだ。 凛がこうならなかったは、きっと俺のせいなんだ」 私と大輔が結婚した日、凛は彼に一つの荷物を送ってきた。 中には、二人が付き合っていた頃に大輔が凛へ宛てて書いたラブレターが、段ボールを埋め尽くした。 中には、二人の生活を記録したらしい写真も大量に挟まれていた。誰が見ても、永遠を誓い合った恋人同士だった。 そして、凛の遺書もあった。 まるで自分の命で私たちを脅したいように見えた。 大輔は眉をひそめてその荷物を捨てたが、すぐに凛の家へ駆けつけた。 遺書はただの脅しではなく、凛は本当に睡眠薬を飲んで自殺を図ったらしかった。 しかし幸い、すぐに病院に運ばれて一命をとりとめた。 その後、凛は精神的に不安定になって、うつ病を患ったと聞いた。 大輔は暗い表情で言った。「凛は今でも、君のせいで俺と別れることになったって思ってる。 もし俺と別れた次の朝、彼女が俺にかけた電話に出たのが君じゃなければ、あそこまで根に持つこともなかったはずだ」 凛の執着は、それだけじゃなかった。 大輔にはまだ教えていないことがある。私たちが付き合い始めた、その翌日に、私宛てに凛から電話があったのだ。 「どなたですか?」 電話の向こうから、何も返ってこなかった。 私は電話を切ろうとした瞬間、あの時に聞いた女性の声が聞こえてきた。 「あんたの写真、見たことあるわ」 相手は私の名前も、連絡先も、大学の名前まで、正確に口にした。 私は慌てて電話を切った。 しかし、それで終わりじゃなかった。最初のうちは一日に10件、ある日から一日に50件以上の不在着信が残されるようになった。 毎日、嫌がらせのように凛からの電話が届いた。 電話番号をブロックしても、すぐに別の番号からかかってきた。 私の神経は、常に張り詰めていた。 知らない番号からの着信があるたび、出るまでに時間がかかるようになった。 特に、凛のあの一言が忘れられない。「知ってるわよ、大輔の大学の後輩なんでしょ。大学の近所に住んでるのも、よく知ってるわ」 逃げ場のない緊張を毎日抱え続けた。 そして卒業論文の審査があった日、想像より何倍もひどい出来事が起きた。 凛が講義室に乗り込んできたのだ。 そして、バケツ一杯の冷たい水を、私の頭から浴びせかけた。 「人の彼氏を横取りして!いい気になってるでしょ?」 全身が、針で刺されるように凍えた。 凛の充血した目と、講義室にいる全員の視線を一身に受けた。 体中の血の気が引いて、頭のてっぺんから足の先まで、固まって動けなかった。 自信があった私の論文は、最終的に、平凡な評価しかもらえなかった。 あの日を境に、噂はあっという間に広まって、学校全体の話題になってしまった。 「相手に彼女がいると知っててやってるらしいよ」 「もう彼女と関わらないほうがいいわよ」 「恥知らずってこういうことだよね」 私の名前を聞いて、ほとんどの人は、マイナスな印象しか抱かなかった。 ゼミで仲良くしていた友達でさえ、私を避けるようになった。 しかし、私は一言も言い返せなかった。 大輔との関係が、まだ彼と凛がお互いに未練がある時に始まったという事実を思い出すと、抑え切れない嫌悪感が込み上げてくるからだ。 そして、一番恥を知るべき人間は、まさに大輔と凛の関係を知った後でも、大輔と一緒にいることを選んだ私自身だった。 大輔は、まだソファーで私を抱きしめたままだった。 出会った時から夫婦になった今まで、彼はいつも私の腰を抱き、唇で首筋をそっとなぞるのが好きだった。 「美穗、凛を傷つけてしまったのは、俺たちのほうなんだ。 だから今回だけは、大目に見てくれないか?」 私は大輔の懐の中で頷いてみせた。 そうよ。私は、凛に借りがあるんだから。 第4話 大輔は言った。凛には精神疾患があるって。 普段からすごく繊細で、日々緊張しながら過ごしているから、彼女を刺激しないようにって、注意されたこともあった。 私はできるだけ、彼女の気に障らないように暮らした。 しかしある朝、念のために複数かけたアラームのことを忘れて、けたたましく鳴り響く音を即座に止めることができなかった。 すると、凛は近くにあった花瓶を掴むと、まっすぐに私の方へ投げつけてきた。 「きゃあっ!」 凛は頭を抱え、両耳を塞いで、甲高い悲鳴をあげた。 「早く消して! もう耐えられない!」 私はその場で呆然と立ち尽くした。やがて、生ぬるくて、ねっとりした液体が、視界を遮った。 とっさに凛を抱きしめて慰めていた大輔は、その時ようやく、床に倒れている私に気づいた。 意識が遠のく中、救急車のサイレンが聞こえた。 その音を、なんだか昔も聞いたことがあるような気がした。 両親が亡くなったあの夜。血だらけで倒れていた私を見つけたのは、親戚の人だった。 何度も手首を切った痕は、ブレスレットがうまく隠してくれている。 「うつ、また発作したのですか?確か2年前の検診の時には、もうだいぶ良くなってたはずなのに」 「そうですね。その時、すごく素敵な彼氏さんができたって笑ってたんですけど」 医師や看護師たちの声も、なんだか聞き覚えがあった。 目が覚めると、大輔がベッドのそばにいてくれた。 私は手を伸ばし、大輔の髪を優しく撫でた。 付き合い始めてから、幸せな時間はたくさんあった。 私が高熱を出した時は、一晩中そばにいてくれて、熱が下がったのを見届けてから、やっと安心して眠るような人だった。 私が感情的になって、わがままなことを言っても、大輔は決して突き放したりしなかった。それどころか、優しく何度も私をなだめてくれた。 私の本当の気持ち、その全部を、大輔はいつもわかってくれた。 近所のキンモクセイが咲き誇っていた日のことも、よく覚えている。大輔は早朝に、その花を両手いっぱいに抱えて部屋に戻ってきた。まだ瞼が重い私を、秋の香りが包んでくれたのだ。 そして、大輔がプロポーズしてくれたあの日。 私は彼を連れて、両親のお墓参りに行った。 墓石を拭いてくれている大輔を見つめながら、私は心の中で両親に語りかけた。安心してね、やっと、私をちゃんと愛してくれる人を見つけたよって。 でも、本当に伝えたかった言葉は―― 「私も、この人をちゃんと愛そう」ということだった。 …… 大輔はハッと目を覚まし、慌てて私の額に手を当てた。 その瞳には、隠しきれない心配の色が浮かんでいた。 「まだ痛むか? ごめん。君が怪我してたなんて、気づかなくて」 私は小さく首を横に振った。 大輔は私の手を握り、自分の頬にそっと寄せた。 「美穗、凛のこと、責めないでやってくれ。 俺と別れてから、凛ずっと不安定なんだ。 アラームみたいな大きい音を聞くと、調子が悪くなるみたいで」 私は黙って、何も言わなかった。 大輔と出会う前、私だって心身の休養が必要な状態だった。 薬を飲んでも吐き気はするし、体もだるい。まるで抜け殻みたいに生気がなくて、何に対しても無関心だった。 誰もが感動するような出来事があっても、私には何も感じられなかった。 週に一度の血液検査を繰り返して、薬の量も、週ごとに調整された。 健康保険のおかげで、学生の私でも、なんとか長期間の治療を続けることができた。 大輔と付き合い始めてからは、自分の病気のことは隠していた。 暗い気持ちを抑え切れなくなるたび、私は大輔からの連絡を意図的に避けていた。 大輔に知られるのが怖かった。 彼の目には、私は太陽みたいに明るい人として映っていたから。その裏に、こんなにも恐ろしい事実が隠されているなんて、知られたくなかった。 「美穗。 これは、俺たちが、凛への償いだと言ったじゃないか?」 また、償いだって。 大輔を見つめていると、涙がぽろりとこぼれ落ちた。 大輔は私を抱きしめて、いつものように優しくなだめてくれた。 「大丈夫、そばにいるから。 怖くないよ。ずっとここにいる」 最初はただのすすり泣きだった。しかし、それはやがて、堰を切ったような涙に変わった。 声が枯れるまで泣いて、やっと、何日も喉の奥につっかえていた言葉を口にした。 「大輔、離婚しよ」