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全給料を奪うドケチ妻を見限り即離婚!
前職から今の会社へ転職したことで、俺の給料もだいぶ上がった。 するとドケチの妻が、給料を全部渡してほしいと言ってきた。おまけに俺の小遣...
Chương (1)
第1章
前職から今の会社へ転職したことで、俺の給料もだいぶ上がった。
するとドケチの妻が、給料を全部渡してほしいと言ってきた。おまけに俺の小遣いまで大幅にカットするという。
「生活費に使うから」と大義名分を振りかざし、俺には一円の自由も与えないつもりらしい。
必死に電卓を叩く妻を横目に、俺は思わず尋ねた。「じゃあ、お前の給料はどうするんだ?」
彼女は当然といった様子で、「私たちの老後資金として貯金するのよ」と答えた。
俺は何も言わず、その月の給料を全額使い切ることにした。
次から次へと届く荷物を見て、ついに妻も我慢の限界を迎えた。
文句を言う彼女に、俺は満面の笑みで告げた。「お前が言ったんだろ?俺の給料は全部、家のことに使うってな」
彼女は血相を変えて叫んだ。「うちみたいな普通の家庭で、一ヶ月にこんな大金を使えるわけないでしょ!」
笑っちゃうよね。普通の家庭の生活費で、俺の給料なんて使い切れるわけがないこと、彼女だって知っているはずなのに。
第1話
中野菫(なかの すみれ)と俺は大学の同級生だった。就職活動で別れるカップルが多い中、二人三脚で支え合い、ついに結婚までたどり着いた。
彼女はいつも、「1億円貯めて、二人で世界一周旅行に行こうね」という夢を語っていた。
俺は彼女が描くその美しい夢を信じ込み、自分の給料を全額彼女に預けて管理させていた。
俺の手元に残る小遣いは、月にたったの5000円。
生活が一番苦しかった頃は、帰り道に買うような安価なおやつさえ、我慢していた。
毎日の食卓に並ぶのは、もやしや特売の野菜ばかり。
彼女自身がそれを苦とも思っていないため、俺に辛い思いをさせているという自覚は全くないようだった。
そうして数年が経ち、それなりに数百万円の貯金もできていた。
7桁に届いた預金残高を見て、俺はこの数年間の我慢も無駄じゃなかったのだと自分に言い聞かせていた。
人生、波に乗っている時は、思わぬ幸運も舞い込んでくるものだ。
今の会社への転職に成功し、給料が一気に跳ね上がった。
ここぞとばかりにお祝いの外食を提案すると、彼女は「外食なんて高くて無駄よ」と難色を示した。
「せっかくの節目なんだから、たまには外で食べよう。二人でせいぜい5000円もあれば足りるから」
菫はイライラした様子で言った。「5000円もあったら、スーパーで立派なお肉が何キロも買えるでしょ?外食の5000円なんて、ほんのちょっとしか食べられないじゃない!」
結局、俺の人生初の転職祝いは、彼女の猛反対であっけなくお流れになった。
がっかりしている俺を見て、彼女は、「スーパーで牛肉をたっぷり買ってきて、私が手料理を振る舞ってあげる」と言い出した。
妥協するしかなく、俺は渋々頷いた。
出かけようとすると、菫が口を開いた。「ちょっと、5000円送金して……」
俺は言葉に詰まった。
彼女はこう説明した。「私の給料は全部貯金に回してるから、今の手持ちはないの。
それに、お肉を買ってと頼んだのはあなたでしょう。だったらお金を出すのも当たり前じゃない?」
そんな言葉をかけられ、頭の中が真っ白になった。
なんとなく納得がいかない気持ちのまま、スマホで5000円を送金した。
入金を確認すると、彼女は上機嫌でスーパーへ駆け出し、特売の牛肉を買い込み、鍋いっぱいにすき焼き風の煮込みを作った。
ただ、味の方は正直いって期待していたほどではなかった。
そんな夜、SNSを眺めていると、同じく転職した同僚の投稿が目に飛び込んできた。
【念願の会社に転職成功!妻が豪華なステーキでお祝いしてくれた!】
そこにはステーキとワインの写真があった。
俺は思わず眉をひそめた。
菫が画面を覗き込み、俺に言った。「あんな人のこと、羨ましがっても無駄よ。うちはお互い田舎の出で、親に頼ることもできない。自分たちでコツコツ貯めていくしかないのよ。
子供ができればもっとお金がかかるわ。先々のために、今のうちに節約しなきゃ」
彼女の言葉を聞いて、確かにその通りだと納得した。
確かに俺たちの両親は田舎の農家で細々と生計を立てている。いざという時に金銭的な援助を頼めるような余裕はない。
これからの人生、何事も自分たちの力だけで乗り切るしかないのだと。
何度も考え直して、この件については気にしないことにした。
初めて今の会社の給料が入った時も、彼女は同じように小遣いを5000円と言い、残りを預けろと言った。
俺はためらった。外資系の会社で働く以上、それなりに身だしなみには気を使わなければならない。いつまでも学生時代のような安っぽい格好というわけにはいかないだろう。
「5000円は少なすぎる。これじゃ、まともな美容室で髪を切ることすらできないよ」
すると彼女は俺を諭した。「あなたはまだ若いんだから、見た目にお金をかける必要なんてないでしょ。髪なんて千円カットで十分よ。芸能人でもないんだし、誰のためにそんなにおしゃれするの?」
俺が何か言おうとすると、さらに重ねてきた。「親に援助してもらえる家とは訳が違うのよ。将来の事を考えなさい。
しょうがないわね。じゃあ、あと3000円増やしてあげる。これでたまには美味しいランチでも食べなさいよ」
彼女の正論めいた言葉に丸め込まれ、俺は反論の言葉を見つけられなかった。
結局、彼女の言う通り給料を全額渡し、月8000円のお小遣いで妥協するしかなかった。
その日、俺は増額してもらった分の3000円を使って、ちょっとしたおつまみやスナック菓子、飲み物などを買い、彼女と一緒に楽しむつもりで帰宅した。
家に帰って彼女と一緒に食べようと思った。
ところが、それを見た彼女はあろうことか激怒したのだ……
第2話
彼女は買ってきた袋の中をガサゴソとあさりながら、買いすぎだの、高いだのと文句を並べ立て、しまいには説教まで始めた。
「あなたのお小遣いは月にたったの8000円なのよ。そこで3000円もおつまみやジュースに使ったら、残りの5000円でどうやって一ヶ月やりくりするの?
計画的に使いなさいよ。今月はポテチ、来月はジュース。そうすればお金もかからないし、どっちも楽しめるでしょ?
今回は許してあげるけど、次は絶対だめよ」
彼女のその冷え切った顔を見て、聞き間違いではないと悟った時、俺は全身の力が抜けていくのを感じた。
言い返そうとした時、弟から電話が入った。
「車を買うために100万円貸してほしい。年末のボーナスで返せるから」と言われた。
二人の貯金でなんとか都合がつく金額だった。
電話を切ると、俺が言い出す前に、菫が割り込んできた。
「貸さない!年末に返すなんて言ってるけど、本当に返せるの?ボーナスで100万も入るはずないでしょ?」
弟の会社は福利厚生がしっかりしている。入社1年目でも、それくらいは十分見込めるはずだ。
それに普段の月収もそれなりにある。ただ結婚したばかりでまとまった貯金がないため、緊急で俺を頼ってきたのだ。
菫は沈黙した……
黙ったままの彼女に、俺はもう一度頼んだ。「年末には絶対に返すよ。弟に100万円送金してやってくれないか?」
俺が引き下がらずにいると、彼女はやっと口を開いた。「私たちの貯金は外貨定期預金で組んでるから、今途中解約したら、せっかくの高金利がパーになるし、手数料で大損するのよ」
「だけど弟が困ってるんだ。金利や為替なんてまた後で稼げばいいだろ。急なことなんだよ」
「何を言われても貸さないわ」
その冷徹な顔を見て、俺の失望はついに限界に達した。
「じゃあ貸さなくていい。それなら、今まで毎月渡してたお金を全部返してくれ」
そこまで言えば、少しは動揺するかと思った。
しかし、彼女の態度はさらにエスカレートした。
「私たちは夫婦でしょう?私の金もあなたの金も一緒。貸さないわけじゃなくて、外貨定期は今解約したら手数料や為替差損で大損するから無理なの。そんなことも分からないの?」
彼女は俺を世間知らずのバカだとでも思っているのか、それとも本気でそんな嘘が通じると思っているのだろうか?
弟から二度目の電話がかかってくる。俺が菫に視線を向けると、彼女は返事もせずにドアを乱暴に閉めて出て行ってしまった。
俺は平静を装って電話に出た。「まだ相談してないんだ。夜にでも話してみる」と適当に誤魔化した。
弟がおずおずと尋ねた。「やっぱり菫さんに嫌がられた?」
「そんなことない。今忙しいみたいでね。明日必ず返事するから」と慌ててフォローした。
弟はそれを聞いて安心して電話を切った。
その晩、菫と激しく言い争った。
もはや取っ組み合い寸前まで発展した。
俺が家中の物を手当たり次第に投げ飛ばして暴れると、彼女は散々罵倒しながらも、「半分だけなら貸してあげるわよ!」と、ようやく50万円を振り込んできた。
お金を手にしても、嬉しくはなかった。
自分のお金なのに、なぜこんなにも彼女のご機嫌をうかがわなきゃならないのか。
結局、同僚から50万円借りて、なんとか100万円を弟に送金した。
弟は喜んでくれて、「直接菫さんにお礼を伝えたい」とまで言った。
そんなこと言えるはずもなく、ラインだけで済ませるよう言っておくのが精いっぱいだった。
第3話
次の瞬間、菫のスマホに弟からお礼のメッセージが届いた。
彼女は鬼の形相で問い詰めてきた。「100万円借りるなら、あとの半分はどこから出したの?」
今回、俺は言い争いは避け、「他の人から借りたんだよ」とだけ淡々と返した。
「お小遣い月8000円でどうやって50万円も返す気?言っておくけど、私は一銭も出さないからね」
俺は呆れて鼻で笑い、何も言わずに背を向けてゲストルームに入った。
てっきり追いかけてくるかと思いきや、彼女はさっさと寝室に戻り、のうのうといびきをかいて眠りこけてしまったのだ。
翌朝起きても、何事もなかったかのような顔をしていたが、不機嫌なオーラを出していることだけは感じ取れた。
出勤して、仕事をして、一緒にスーパーで食材を買う。
いつものルーティンだが、何が食べたいか尋ねても「適当でいいわよ」と投げやりに返すだけ。
その素っ気ない態度に、俺もそれ以上聞く気が失せてしまった。
レジで袋詰めをしながら会計の合計額に耳を傾けていると、「2010円になります」と声がした。
だが、あいにく手持ちが2000円しかなく、10円足りない。
菫の方へ振り向くと、彼女はすでに遠くの出口に立っており、わざとらしく視線を逸らしてこちらを見ようともしなかった。
「お客様、あと10円のお支払いをお願いします」と店員に急かされ、気まずくなった俺は慌てて菫に電話をかけたのだが……
彼女はスマホを一瞥しただけで、またすぐにポケットへしまってしまった。
後ろで待つ客たちから文句が飛び交い始めた。
「たったそれだけの買い物で、なんで時間がかかってんだよ?」
「今の若者はどうなってるんだ。月給日まで金がないのか?たった10円で渋るとかさ」
「後ろに列ができてるだろ、金がないなら来るなよ!」
文句がどんどん大きくなるので、俺は自分用にカゴに入れていた品をキャンセルし、なんとか会計を済ませて逃げ出した。
店員は何も言わなかったが、俺の財布事情を見る目には明らかな蔑みがあった。
買った品を持って菫の元へ行くと、彼女もまた文句を言ってきた。「会計ごときに時間かけすぎじゃない?」
喉元まで込み上げてくる怒りを抑え、俺は声を低くして言った。「小銭が足りなくて電話したのに、無視しただろう。それで時間がかかったんだ」
「金がないなら同僚にでも借りれば?あんたって、そういうところは得意なんでしょう?」
俺は呆れて言葉を失うしかなかった。
「困った時は貸し借りするよ。でもこれは二人の夕飯の買い物だろう。なぜ会計もせず先に店を出るんだ?」
菫は鼻で笑い、両手をポケットに突っ込んだ。
「先週は私が買い物してあげたんだから、今週はあんたの番でしょ。
それにね、身の程に合った買い物をしなさいよ。なんでもかんでもカゴに入れないで。
私はあんたみたいに無計画じゃない。必要なものだけ買うから、予算なんて一円もオーバーしないの」
呆れ果てて、皮肉な笑いが出てしまった。
月に30万も生活費として渡しているのに、たった2000円オーバーすることすら許されないとは。
言い返す間もなく、彼女は買い物袋を掴んで「早く来なさいよ」と俺を急かして外へ歩き出した。
人目もあって揉めたくなかったので、俺は大人しくその後を付いていった。
家に戻ると、袋から中身を取り出しながら彼女はわめいた。「リンゴ四つで800円?バカじゃないの?このジャガイモだって安いのがいくらでもあるのに、何で高いのを買ってくるの……」
ぶつぶつ続く小言を聞いていて、ついに俺の我慢が切れた。
買い物袋ごと掴んで、中の食材をすべて外に投げ捨てた。
「充(みつる)、頭がおかしくなったの?何するのよ!」
我慢できなくなった俺は、彼女に怒鳴り返した。「ああ、そうさ!頭がいかれてるんだよ!」
菫は俺を冷たい目で一瞥し、外に投げた食材を一つ一つ拾い始めた。
床に転がった惣菜は、水で洗ってそのままテーブルに並べるつもりらしい。
「あんたって本当に金持ちね、せっかく買った食材を平気で捨てるなんて!」
彼女はまだ、嫌味を言い続けている……
第4話
その日の夕飯は、俺は食べなかった。
そして、菫が近づいてきて、説教を始めた。
「若いうちから節約しなきゃダメ。スーパーでも余計なものを買わずに、必要な分だけ使うべきだよ」という話だった。
聞いているのがうんざりして、俺は目を閉じて耳を塞ぎ、トイレへと駆け込んだ。
ちょうどその時、給料が入金された。
今回、俺は彼女に教えず、画面の数字をぼんやりと眺めていた。
これだけの額があれば、まともな服を買うことも、ちょっといいバックを持つことも、憧れていたゲーム機を買うことだってできる。
これまで全部渡していたせいで、着る服は学生時代のままで、カバンは1000円もしない帆布のバッグだった。
休みの日にすることといえば、家でぼーっとすることぐらい。
俺は一体、何のために必死に働いているんだろうか。
トイレのドアが開き、菫が入口に寄りかかって聞いてきた。
「毎月この日に給料日のはずなのに、どうして今日は送金してくれないの?」
「送らないといったら、どうする気?」
俺が顔を上げて彼女の計算高い目と合うと、言いようのない生理的な不快感がこみ上げた。
「どうするって……あんたのお金は私が計画的に管理してるの。全部使っちゃうわけじゃないし、どうして送らないの?」
ほら、やっぱり。「いつものこと」が彼女にとっての「当たり前」になっているのだ。
「もうすぐ正月だから、自分の新しい服を買う」と俺が言う。
「服を買うのに30万円も使うの?あんたにそんな高い服が似合うわけないでしょう。とりあえず送金しなさい。あとで服を買うときに渡すから」
トイレを出ると、彼女は後ろからぶつぶつと言い続けていた。
まるで俺が給料を渡さないと、明日には世界が滅びるとでも言わんばかりだ。
俺は立ち止まり、断固として言い放った。「自分の給料は自分で貯める」
すると菫は激高して、大股で俺の前に詰め寄ってきた。「あんたみたいに計画性がない人に任せたら、貯金なんてあっという間に底をつくわよ!私が管理してあげてるから生活できてるのに、勝手にさせたら路頭に迷うのがオチなんだから!」
今回ばかりは、俺も呆れて笑ってしまった。「月々8000円しか自由にならない俺が浪費家だって?よくそんなことが言えるな」
図星だったのか、彼女は一瞬言葉に詰まった。
静まり返った部屋に、けたたましくスマホの着信音が響いた。
菫の妹からで、「マンションの頭金、1000万円がどうしても足りないの。お姉ちゃん、お願い、今すぐ振り込んで!」という必死の訴えだった。
彼女が画面をタップしようとした瞬間、俺は手を振り払ってスマホを叩き落とした。
「お金を貸すなんて、いつ俺が言った?」
菫は鼻で笑って言い放った。「これは私がコツコツ貯めた私のお金よ。あんたの金には手をつけてないわ。それどころか、あんたがこれまで預けてた分は、この前あんたの弟に貸した時に使い切っちゃったじゃない」
滑稽な話だ。
妹からの借金の頼みには二つ返事で応じるくせに、俺の弟が借りる時にはあんなに渋い顔をしたのか。
「彼女に電話させろよ。俺が納得したら貸してやる」
菫は明らかに怒った。「何騒いでんのよ!そんな必要ある?余計な口出ししないで!」
言い終えるなり、彼女は落ちたスマホを拾おうとした。
俺はキッチンに飛び込んで包丁を掴み、彼女の前で怒鳴り散らした。
「俺が金貸しを認めるまでは、勝手に使うなと言ってるんだ!」
パチーンという乾いた音がして頬に痛みが走ったのと同時に、手から包丁が奪い去られた。
彼女は鬼の形相で言い放った。「妹にお金を貸すのに、あんたにとやかく言われる筋合いはないの!」
ジンジンと痺れて感覚のなくなった頬に触れ、俺はこの家を出ていく覚悟を決めた。
俺はスマホだけを掴んで、家の外へと駆け出した。
後ろから菫が大声で叫ぶ。「1分以内に給料を振り込みなさい!」
画面を見て振込作業をする菫を背中に、俺の心の中で怒りの炎が激しく燃え上がっていた。
俺の金は、もう一銭たりとも彼女の手には渡さない……
第5話
家を出て5分も経たないうちに、菫からの電話がひっきりなしに鳴った。
切っても、切っても、またかかってくる。
電池残量は残り5%。電源が落ちる前にけりをつけようと、俺はやむなく通話ボタンを押した。
「どこにいるの?」
彼女の口調には怒りが混じっていた。
何か言おうとすると、すぐにかぶせ気味に言われた。「1分以内に給料を振り込めって言ったでしょう?どうしてまだなの?」
真夜中に家を飛び出した夫に対し、開口一番に言うことがそれか。居場所を心配するどころか、結局は金のことしか頭にないのか?
昔はどうして、彼女がこれほど金の亡者だと気づかなかったのか。
余計な言葉は交わさず、通話を切った。
そして、近くのホテルを見つけて泊まることにした。
横になった途端、また菫から電話が入った。
俺はもう、画面を見る気にすらなれず、スマホを投げ出すように放っておいた。やがて電池が尽き、画面が静かに消えた。
頭の中では、これまで彼女に言われてきた言葉が渦巻いていた。
「世界一周旅行に行こうね」なんて、綺麗ごとばかりだった。
結局、一度だって計画を立ててくれたことはない。
「いつか庭付きの一戸建てを買おうね」なんて夢物語を聞かされていたが、現実には今住んでいるマンションの登記にすら、俺の名前は入っていない。俺の稼ぎで買ったはずの家なのに。
一晩中、まともに眠れなかった。
ひどい隈を作った顔でフラフラと帰宅すると、菫が玄関で仁王立ちをして待ち構えていた。
「給料を振り込まない理由は何?外泊までして、一体何のつもり?」
俺は彼女を脇に追いやって、ソファに力なく座り込んだ。
「少し、話をしないか」
ふと視界に入ったウェディングフォトを見て、急に自分が情けなくなった。
みんなはきちんとした式場で撮っているのに、俺たちは町の小さな写真館で済ませた。
俺が着ているタキシードさえ、菫が親戚から借りてきたお古だった。
当時は「彼女の実家が苦労しているから、俺が我慢して節約しなきゃ」なんて、健気に思っていた自分が、今では滑稽で情けなくて仕方ない。
彼女は俺の隣に腰かけ、険しい表情で言い放った。「もしかして、月8000円のお小遣いじゃ少ないとでも言いたいわけ?」
少ないどころの話じゃない。これじゃまるで、乞食への施しじゃないか……
「私の田舎の親は、自分用のお小遣いなんて今まで一度も持ったことないのよ。それに比べたら、毎月8000円も自由になるお金があるだけ、よっぽど贅沢でしょう。一体何が不満なの?」
だいたい、私が自分のために貯金してるって言うの?全部この家庭のためでしょう!
たかがその程度で、拗ねて外泊までする必要ある?」
俺は冷ややかな笑みを浮かべた。「俺は毎月30万円稼いでるんだぞ。それなのに中高生以下の生活水準なんて、どう考えても異常だろ。俺は一体、何のためにお前と結婚したんだ?
だいたい、なんで俺がお前の狂ったような節約につき合わなきゃならないんだよ!」
菫は呆然と俺を見て、表情を曇らせた。
「給料が上がったからって、調子に乗ってるんじゃない?」
「調子になんて乗っていない。今日から給料は渡さないからな」
菫は顔を真っ赤にして、バンッと力任せにテーブルを叩き、ガタッ!と乱暴な音を立てて椅子から立ち上がった。
それから、自分がこの家庭のためにどれだけ犠牲を払ってきたかを延々と喚き散らし始めた。節約のために、色褪せた服を何年も我慢して着ているのだと、ヒステリックに恩着せがましく主張してくる。
だが、そんな恩着せがましいアピールは知ったことではない。
俺がいつ、そんな異常な我慢をしろと強要したっていうんだ?
堂々巡りの言い争いが続き、菫はイラついた足取りでリビングを何度も行ったり来たりしている。
「分かったわよ。じゃあ、今後は特別にお小遣いをあと5000円増やしてあげる。だから残りは全額貯金しなさい」
「金はもう渡さないと言っているだろう。話が通じないのか?」
彼女は俺をじっと見つめ、冷たく言い放った。「じゃあ、家賃を払って。ここは私のマンションなんだから」
そう言い捨てると、彼女はそのまま会社へ向かった。
リビングに取り残されて、俺は呆然とするしかなかった。
あんなに急いで出て行ったせいで、菫はスマホを家に置き忘れていた。
不意に画面が明るくなり、そこに届いた通知一つで、すべてが分かった。
【〇〇銀行:給与振込1,000,000円】
なんだ、彼女はずっとそれほど稼いでいたのか……