私が死んだ後、夫は娘を解剖した

Đang tải thông tin quảng bá...

私が死んだ後、夫は娘を解剖した

GoodNovel Hoàn thành

私・白川初音(しらかわ はつね)は死んだ。 なのに夫は、私が離婚から逃げたと思っている。 夫・白川鳴(しらかわ なる)は法医だ。 私が死ん...

Chương (1)

第1章

私・白川初音(しらかわ はつね)は死んだ。 なのに夫は、私が離婚から逃げたと思っている。 夫・白川鳴(しらかわ なる)は法医だ。 私が死んだ後、彼は迷わず憧れの人・御堂雅(みどう みやび)を家に連れ帰った。そして行方不明の娘・白川真白(しらかわ ましろ)のことも、彼女の言葉を信じてそのままにした。 ある日、郊外で幼い子供の遺体が発見された。 法医として現場に赴いた鳴は、解剖台の上でメスを握った。 丁寧に、手際よく、淡々と。 その遺体が、自分の娘だとも知らずに。 第1話 私・白川初音(しらかわ はつね)は死んだ。 半透明の魂が宙に漂いながら、涙を流して叫んでいた。 だが隣にいる夫・白川鳴(しらかわ なる)には、今の私の絶望も嘆きも見えていない。マスクをつけた彼は、一体の遺体の解剖に集中していた。 鳴は法医だ。今朝、上司の指示で郊外の遺棄現場へ向かった。 血腥い場面を数えきれないほど見てきた彼も、その幼い子供の遺体を前にして、吐き気を堪えきれずにえずいた。表情に同情と不憫が過ぎった。 小さな遺体は、生前の面影をまったく留めていなかった。顔は鈍器で砕かれ、全身に無傷な部分は一箇所もない。 発見が遅れたせいで、遺体はすでに腐敗し始めており、目を背けたくなるほどだった。 初期の検死を終えた後、鳴は遺体を解剖室に運び、系統的な解剖を行った。手つきは熟練していて、迷いがなかった。 私は宙に浮いたまま見ていた。悲しみで胸が張り裂けそうで、もう一度死んでしまうような気さえした。 もし鳴が、今自分の手で解剖している遺体が娘の真白(ましろ)だと知ったら、それでもこんなに落ち着いていられるだろうか。 「死者の年齢は六、七歳前後、性別は女。 後頭部に明らかな損傷あり、死因は打撲による脳挫傷と推定。 死後、遺体は激しく損壊されており、顔面は鈍器で破壊、皮膚の腐食が著しく指紋の採取は不可能」 鳴は淀みなく記録を終えて、無残な遺体を前にため息をついた。 「いったいどんな人間が、こんなに小さな子をこんな目に……」 同情の言葉を聞きながら、私の心には憎しみが燃え盛っていた。 真白を殺したその人間こそ、鳴が自ら家に連れ帰った初恋の人――御堂雅(みどう みやび)だ。 幼児殺害・遺体遺棄という凶悪な事件に加え、最近ずっと降り続けていた雨が現場の痕跡の大半を洗い流してしまったせいで、捜査は難航していた。 捜査チームは全員残業し、一日でも早い解決を目指していた。 鳴が家に帰り着いた時間は、すでに深夜に近かった。 彼の後をついて玄関に入ると、ソファで待っていた雅の顔が見えた。思わず目を剥いた。この蛇のような女が、私の大切な真白を殺したのだ。 「鳴、今日はどうしてこんなに遅いの?」 雅が立ち上がり、鳴の上着を脱がせた。 「郊外で子供の遺体が出てね、犯人が狡猾で、捜査が難航してるんだ」 鳴はこめかみを揉んだ。そのせいで、雅の顔に一瞬走った動揺を見逃した。 「その子は……どうやって死んだの?」 雅がさりげない様子で聞いた。 「雅、そんなことは聞かなくていい、生々しすぎて気分を害する話だ」 鳴は彼女を抱き寄せ、手を腹に当てた。 「お腹の赤ちゃんのためにもな」 その温かい光景を見ながら、私はただ空虚な皮肉を感じていた。 雅は鳴の実の娘を殺した。なのに彼は、彼女の腹の中の――他の男との子供を心配して、自ら進んで父親になろうとしている。 天真爛漫だった真白のことを思うと、悲しみが押し寄せてきた。 深夜、雅が眠り込んだ後、鳴はそっとベッドを抜け出してベランダへ行き、ある番号に電話をかけた。 その番号が見えた。私に電話しているようだ。 当然、繋がらなかった。私のスマホは、あの殺人犯に取り上げられて電源を切られているのだから。 鳴は小声で悪態をついて、苛立たしげに髪を掻き回し、寝室へ戻った。 彼が私に連絡しようとしているのは分かっていた。離婚手続きを済ませて、早く雅と結婚したいのだろう。 でも彼は知らない。 離婚手続きをしに行ったあの日に、私がもう死んでいたことを。 第2話 一週間前、私は鳴と激しく言い争った。 彼が雅を家に連れてくると言い出したからだ。 「雅は離婚したばかりで帰国して、頼れる人もいないのに妊娠中なんだぞ。少しの間うちに置いてやるのも嫌だと言うのか?初音、お前は冷たすぎる!」 鳴は私の目の前に立ち、顔を真っ赤にして怒鳴った。 私は拳を握りしめ、冷たく笑い返した。 「冷たい?あなたと彼女が私の目の前でくっつくのを黙って見ていろとでも言うの?鳴、あなたの下心くらい分かってるわよ!」 鳴は一瞬詰まり、眉をひそめた。 「そんな言い方をするな、雅の名誉に関わるだろ」 言葉の端々に、彼女への庇護欲がにじんでいた。 十年近く愛してきた目の前の男を見て、胸が痛んだ。 雅は彼の幼馴染の時の初恋で、現実的な問題で引き裂かれた憧れの人だった。そして私は、彼女の身代わりに過ぎない。 二人の過去を知った時、私はすでに鳴と結婚して六ヶ月経っていた上に妊娠していた。 彼は雅とはもう終わったと言い、妊娠中は余計なことを考えるなと言った。 その言葉を信じた。時間が全てを薄れさせてくれると思っていた。なのにまさか、憧れの人が戻ってきた途端、私が脇に追いやられるとは。 「どうしても連れてくると言うなら、離婚する」 鳴は一瞬固まり、すぐに怒りと嘲りを混ぜた笑みで言い放った。 「俺を離婚で脅すつもりか?勿論いいぞ、俺はこの日をずっと待ってたんだ!」 やはり、彼は私を愛していなかった。心の中には雅だけがいる。 涙をこらえながら、声を落ち着かせた。 「離婚したら、真白は私が引き取る」 「なんの権利があってそんな事を言うんだ?お前に真白の不自由ない生活が保障できるのか?」 鳴は同意しなかった。 私たちは不快な形で別れ、彼はドアを叩きつけて出て行く去り際にこう言い残した。 「明日、書類を持って区役所に来い」 ドアがバンと閉まった瞬間、堪えていた涙がこぼれ落ちた。 鳴はその日は一晩中家に帰らず、私は暗闇の中でただ座って夜明けを待った。 翌日、家を出る時、真白はまだ眠っていた。 真白にメモを残して、額にそっとキスをした。 「待っててね、ママすぐ迎えに来るからね」 だがその後まもなく、区役所へ向かう途中でタクシーの運転手に薬を盛られた。 人気のない山奥に連れ込まれ、暴行を受けた。途中で意識を取り戻して必死に叫び助けを求めたが、ベルトで首を絞められて殺された。 遺体は穴を掘って埋められた。それでも私の魂は執念で現世に留まった。 真白のことが心配で、離れられなかった。 第3話 そのまま魂の状態で家へ戻った。 真白はすでに起きていて、私が用意しておいた朝ごはんをおとなしく食べていた。 自分がいつ消えてしまうか分からない。ただ貪るように娘を見つめた。この可愛い姿を心に刻んでおきたかった。 しばらくして、鳴が帰ってきた。 玄関に入るなり聞いた。 「真白、お母さんは?」 真白がメモを差し出した。 「ママ、用事があって出かけた、すぐ帰るって」 鳴はそれを読んで暗い顔でくしゃくしゃに丸め、私に電話をかけた。 だが今や私のスマホはあの殺人犯に取り上げられて電源を切られている。当然、誰も出ない。 「初音、こんなやり方で離婚を引き延ばすつもりか?一生帰ってこなくていいぞ!」 冷たく吐き捨てて、顔には嫌悪と軽蔑が浮かんでいた。 真白がその剣幕に縮こまった。鳴は気にもとめず、そのまま踵を返した。 間もなく、雅が家に連れてこられた。 真白は幼いながら、感覚に鋭かった。 雅は柔らかな笑顔を向けたが、真白の目には拒絶がありありと出ていた。手を伸ばされると、鳴の背中に隠れた。 だが信頼しているはずの父親は、真白の腕を掴んで雅の前に押し出した。 「真白、御堂さんだ、ご挨拶して」 真白はぬいぐるみを抱えたまま、おずおずと言った。 「御堂さん、こんにちは」 それを見ていた私は、胸が痛くて倒れそうだった。 さらに不安になったのは、鳴に隣の市へ二日間の出張が入ったことだった。 「雅、この二日間、真白のことを頼む」 雅は快く引き受けた。だが鳴が去った後、まるで別人になった。 真白にお茶を運ばせたり、水を持ってこさせたりした。食事は作らず、デリバリーも自分の分しか頼まなかった。 夜になっても真白は何も食べられず、空腹で泣きながら隅に縮こまっていた。 まだあんなに小さい子が、こんな悪意にどう対処すればいいか分かるはずもない。おずおずと小声で聞いた。 「御堂さん、ママどこにいるか知ってる?ママに会いたい」 雅は鼻で笑った。 「あなたのママはあなたを捨てたのよ。これからはおとなしくしてないと、痛い目に遭わせるから」 真白は呆然とした。恐怖と悲しみが一緒に押し寄せてきて、とうとう泣き出した。 「嘘つき、ママが真白を捨てるわけない……」 「うるさい、黙りなさい!」 雅は苛立って怒鳴り、真白が泣き止まないと見るや、口を塞ごうと飛びかかった。 掴まれた真白は、とっさに雅の腕に噛みついた。 雅が痛みに叫んで、平手打ちを食らわせた。 私が目を見開いた瞬間、真白は後ろに倒れ、頭が硬いローテーブルの角に当たった。小さな体が床に崩れ落ちて、血がゆっくりと流れ出した。 雅はその場に固まった。 私は崩れ落ちて真白の隣で絶望的に叫び、何度も体に触れようとしたが、手はただすり抜けるばかりだった。 雅は落ち着きを取り戻すと、手袋をはめて血を拭い、私の服に着替えて、真白をスーツケースに詰めて人気のない郊外の林に捨てた。 真白の目を抉り、顔を石で砕き、全身に強酸をかけて痕跡を全て消した。 妊娠中の女が、子供にここまでできるとは信じられなかった。 雅は、どこまでも冷酷な人間だった。 全てを終えると、雅は手袋と服を燃やし、鳴にメッセージを送った。 【さっき初音が来て、真白を無理やり連れていった】 鳴はその言葉をそのまま信じ、私が子供を盾に離婚を逃れようとしていると思い込んだ。 最初から最後まで、彼は雅を一度も疑わなかった。 第4話 陽の光が半透明の私の魂を透き通って、漂っていた意識を引き戻した。 隣では鳴と雅が抱き合ったまま熟睡していた。 突然、鳴の枕元のスマホが鳴った。警察署の同僚からだった。 電話を終えた鳴はすぐに起き上がって身支度を始め、その物音で雅が目を覚ました。 「鳴、もう行くの?」 「ああ、昨夜の件を追わないといけなくて」 雅の顔色がさっと変わり、鳴が振り向く前に表情を戻した。 鳴が上着を着て出ようとした瞬間、雅が痛そうな声を上げてお腹を押さえながらしゃがみ込んだ。 「どうした、雅?」 鳴が急いで戻り、支えながらソファに座らせた。 「鳴……お腹が、すごく痛くて……病院に連れていってもらえる?」 隣で見ていた私には分かった。雅は時間稼ぎをしているのだ。現場に行かせたくないのだ。 だが鳴はあっさり騙されて、ほんの数秒躊躇しただけで彼女を支えて立ち上がった。 「今すぐ行こう、気をつけて」 雅を宝物のように扱う鳴の姿を見て、麻痺していた心がまたずきりと痛んだ。 八年前、陣痛が始まって破水した時、私は震える手で鳴の番号を押した。 狼狽する私に、彼は冷たく言い放った。 「大げさにするな、俺は仕事中だ。自分で救急車を呼べ」 それだけ言って電話を切った。 鳴が病院に現れたのは出産が終わった後で、注意は全て生まれたばかりの真白に向いていた。私への言葉はひとつもなかった。 あの時から、彼にとって仕事が最優先なのだと思っていた。だが本当は、私が全く大切ではなかっただけだった。 二人の後を追って車に乗った。 病院へ向かう途中、同僚からまた電話が入った。鳴は助手席の雅をちらりと見て答えた。 「妻の具合が悪くて、先に病院へ連れていく。終わったらそっちに向かう」 その言葉に雅が固まり、私も呆然とした。 我に返った雅が、はにかむように言った。 「今、私のこと何て呼んだの?」 「初音と連絡がついたら、すぐに離婚するつもりだ」 鳴の顔がわずかに赤くなった。 「だから雅、俺と結婚してくれるか?」 「でも私は、前の夫の子を妊娠してるのに……鳴、私なんてあなたにふさわしくない……」 「そんなことは関係ない!」 彼は急いで言った。 「あの男に騙されたんだろう。俺がその子を実の子として育てる」 雅は顔を上げて、感動に満ちた目で鳴を見た。 「ありがとう、鳴」 鳴が深く見つめ返す横で、私はその目を抉り出してやりたかった。 善悪の見分けもつかないその目など、なくなってしまえばいい。 案の定、病院で診てもらっても雅は何ともなかった。 彼女は申し訳なさそうに言った。 「ごめんね、鳴。心配しすぎちゃった」 鳴は親しげに彼女の頬を指で弾いた。 「俺に謝らなくていい、お前の体が一番大事だ」 雅を家に送り届けてから、鳴はようやく現場へ向かった。 「どうだった?」 マスクと手袋をつけて立ち入り禁止エリアの中に入った。 「手がかりが少ない状態で、半分だけの靴跡が一つ見つかっただけです。犯人は慎重で、既に何度か経験がある感じがしますね」 鳴はわずかに眉をひそめて現場を調べ始めた。 だが何も見つからなかった。 署に戻る車の中で、同僚が聞いた。 「奥さん、大丈夫でしたか?しばらく会ってないですね、また飯でもご馳走になりたいですよ」