愛人優先で愛娘を死なせた爆弾専門家の夫

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愛人優先で愛娘を死なせた爆弾専門家の夫

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トップ爆発物処理専門家である夫の氷室凛斗(ひむろ りんと)が、娘の結衣(ゆい)が拉致された際、爆弾の赤いコードを切り間違えた。 さらに...

Chương (1)

第1章

トップ爆発物処理専門家である夫の氷室凛斗(ひむろ りんと)が、娘の結衣(ゆい)が拉致された際、爆弾の赤いコードを切り間違えた。 さらに呆れたことに、彼は全くの未経験である幼馴染の星野陽菜(ほしの ひな)を支援に呼び寄せる。 陽菜がわざとハサミをずらしたことで、爆弾のカウントダウンが短縮された。 私、桜井琴音(さくらい ことね)は顔を青ざめさせ、爆発する前に結衣を助けてほしいと凛斗に土下座して懇願した。 しかし、彼は道具を片付けて立ち上がる。 「琴音、くだらないことで騒ぐな。 陽菜が得意なのは爆発時間を延ばすことさ。 爆発ギリギリで結衣の救出に成功すれば、陽菜は最優秀新人賞を取れるんだよ」 私は絶望で崩れ落ちそうになりながら、他の爆発物処理班を探し回ったが、誰一人として凛斗の任務を奪おうとはしなかった。 一分一秒と時間が過ぎていく中、仕方なく陽菜が無資格で作業していることを告発しようとすると、凛斗は私に爆弾を縛り付けたのだ。 「告発するか、それとも俺が起爆装置を押すか、どっちか選べ。 25時間後に俺が直接結衣を迎えに行く。それで万事解決。 悪くはないだろう?」 凛斗、爆弾が爆発するまで、本当はもう24時間しか残っていないのに! 第1話 トップ爆発物処理専門家である夫の氷室凛斗(ひむろ りんと)が、娘の結衣(ゆい)が拉致された際、爆弾の赤いコードを切り間違えた。 さらに呆れたことに、彼は全くの未経験である幼馴染の星野陽菜(ほしの ひな)を支援に呼び寄せる。 陽菜がわざとハサミをずらしたことで、爆弾のカウントダウンが短縮された。 私、桜井琴音(さくらい ことね)は顔を青ざめさせ、爆発する前に結衣を助けてほしいと凛斗に土下座して懇願した。 しかし、彼は道具を片付けて立ち上がる。 「琴音、くだらないことで騒ぐな。 陽菜が得意なのは爆発時間を延ばすことさ。 爆発ギリギリで結衣の救出に成功すれば、陽菜は最優秀新人賞を取れるんだよ」 私は絶望で崩れ落ちそうになりながら、他の爆発物処理班を探し回ったが、誰一人として凛斗の任務を奪おうとはしなかった。 一分一秒と時間が過ぎていく中、仕方なく陽菜が無資格で作業していることを告発しようとすると、凛斗は私に爆弾を縛り付けたのだ。 「告発するか、それとも俺が起爆装置を押すか、どっちか選べ。 25時間後に俺が直接結衣を迎えに行く。それで万事解決。 悪くはないだろう?」 凛斗、爆弾が爆発するまで、本当はもう24時間しか残っていないのに! …… 23:56:03 23:56:02 …… 唇が震える。 数字が変わるたびに、自分の肉が削ぎ落とされるような辛い感覚に陥る。 モニターの中では、結衣が恐怖で体を丸め、その目はすでに虚ろになっている。 凛斗はカウントダウンの数字をまともに見ようともせず、その瞳に誇らしげな光を浮かべる。 「陽菜、これは絶好の練習チャンスだ。 将来、きっと優秀な爆発物処理の専門家になれるぞ」 私の頭の中で激しい耳鳴りがする。 凛斗はわざと赤いコードを切り間違えたのだ! トップクラスの爆発物処理専門家として、彼はこれまで一度も失敗したことがない。 それなのに、結衣が拉致されて二日間も経ったというこの危機的状況で、最も初歩的なミスを犯したなんて。 「凛斗、一時間遅れることが何を意味するか分かってるの?」 彼が振り向くと、目元にあった笑みは消え失せ、代わりに苛立ちが浮かんでくる。 「琴音、俺がうっかり赤いコードを切り間違えたんだ。 陽菜さえ支援に来てくれなかったら、結衣はとっくに吹き飛ばされたぞ。 感謝するどころか彼女の力を疑うのか。 お前は大人しくここで待ってろ。 陽菜が最優秀新人賞を取ったら、琴音と結衣を連れて海外旅行に行ってやるからな」 私は思わず涙混じりの笑い声を漏らす。 陽菜は資格書すら持っていないのに、特例で彼の弟子になった。 ただ彼女が「爆発物処理ってかっこいい、私も大賞を取りたいなぁ」と言っただけで、凛斗は結衣の命を彼女の練習のきっかけにしてあげたのだ。 こんな男など、父親を名乗る資格があるものか! 血が頭に上り、私はほとんど声を枯らして叫ぶ。 「結衣を助けに行かないと、絶対に後悔するわよ!」 凛斗は手に持った起爆装置を揺らし、その瞳に脅しの色を濃くする。 「琴音、俺の我慢にも限界がある。 結衣にはあと一日待ってもらうだけだ。 食料も水も用意してあるぞ。俺が何を後悔するって言うんだ? 結衣はお前に甘やかされすぎて、少しの苦労も耐えられないのか? わがままに育ったお嬢様なんか、我が氷室家の子どもにはふさわしくない!」 凛斗の言葉は一文字一文字が鋭いキリのように私の心を抉り、氷の底へ突き落とされるような感じがする。 かつて私の前で一生守り抜くと誓ってくれた男が、今や別人のように冷酷になっている。 五年前、妊娠八ヶ月だった私が拉致された時、彼は真っ先に現場へ駆けつけてくれた。 爆弾が改造されていたため、彼は汗だくになってまで苦労して、二時間かけても解決策を見出せなかったんだ。 私が涙ながらに逃げてと促しても、彼は逆に私の手を強く握りしめ、目を真っ赤にして言った。 「琴音、俺は逃げない。 もし本当に解除できなかったら、俺も琴音とお腹の子と一緒に死ぬから、怖くないさ!」 第2話 しかし、目の前にいる彼は、もうあの日の彼と重なることはできない。 私が深い悲しみに暮れるのを見て、陽菜は凛斗の後ろに隠れ、こちらへと挑発的な表情を浮かべた。 彼女は明らかにわざとやっているのだ! 我に返った時、私の両手はすでに彼女の首を絞め上げていた。 だが次の瞬間、凛斗は慌てて起爆装置を押してしまう。 閃光が走る最中、心にはただ一つの望みだけ。 私と結衣には、もうこの男が必要ない! ――ドカン! 体に縛り付けられていた爆弾の威力は小さかったが、破片は容赦なく皮膚を突き破る。 無数の矢で射抜かれたような痛みが、全身にびっしりとやってくる。 それなのに、凛斗は真っ先に飛び出して庇ったのは陽菜なのだ。 「琴音、陽菜の首を絞めてどうする気?頭がおかしくなったのか」 破片が陽菜の手をかすめた。その傷口はほとんど見えないほど小さいのに、彼はひどく焦って眉をひそめる。 その心配そうな表情は、少し前に私が指を切った時と同じだった。 あの時も彼は同じように緊張し、私に絆創膏を貼ってくれたのだ。 「自分の妻に怪我をさせたなんて、もう生きてる価値がないな。 これからは俺に任せてくれ」 しかし今、彼は陽菜に対しても同じように優しく接している。 血まみれの顔で立ち尽くす私は心が、無数の刃でえぐられるように痛む。 目の前の光景が突然ぼやけ、闇へと深く沈んでいった。 再び目を覚ますと、すでに病院のベッドに横たわっている。 「琴音、お前のわがままのせいで、陽菜が手に怪我をしたのが分るか? 専門家となるのに差し支えるだろうが」 私は凛斗の怒号を無視し、必死にスマホを探し回る。 爆発までのカウントダウンは、もうあと三時間しか残っていないんだ! 私は半ば取り乱し、凛斗の両腕を揺さぶる。 「本当にあと三時間しかないのよ。結衣を見殺しにする気なの?」 凛斗は嫌悪感を露わにして私を振り払う。 あと三時間まであるから、爆弾処理には十分すぎる時間だと彼は依然として考えているのだ。 「どうしても早く結衣に会いたいんだな? ならいいだろう。その手の皮膚を陽菜に移植しろ。罪滅ぼしだと思え」 その言葉を聞いた瞬間、私は迷うことなく両手を差し出した。 「私の皮膚ならいくらでもあげる。だから、一時間早く結衣を助けに行って」 狂ったような私の様子を見て、凛斗は思わず眉をひそめた。 しかし、彼は何も言わなかった。 皮膚の生理活性を保つため、凛斗は医師に麻酔を使わせなかった。 生理的な涙がせきを切ったようにとめどなく溢れ出るが、私はただ時計を見つめ続ける。 一分一秒ごとが、まるで一年のように長く感じられた。 移植が終わると、医師に包帯を巻いてもらう暇すら惜しみ、私は凛斗の服の裾を強く掴む。 「これで結衣を助けに行けるわよね? もう行かないと本当に間に合わなくなる」 血が彼の腕に落ちると、彼は汚いものでも見るように身をかわす。 そしてゆっくりと血の跡を拭き取った。 「俺たちが早く現場に到着したら、陽菜の判断が間違っていたと証明することになるだろ。 彼女のこれからの立場はどうなる? 賞を取るどころじゃなくなるんだぞ。 少しでも待ってはくれないとは。お前みたいな甘やかした母親じゃ、結衣はとっくに息が詰まってるかもな」 その後、凛斗が目配せをすると、医師が麻酔薬を手に私へと歩み寄ってくる。 「少し頭を冷やせばいい」 「やめて……」 わずか1秒ほどもがいただけで、瞼が重く落ちていく。 どれくらいの時間が経ったのだろうか。 スマホから響く耳をつんざくような爆発音で、瞬時に目が覚める。 巨大な恐怖が、私を完全に呑み込む。 結衣の色白の肌は血に染まり、体は爆発で無惨な様子となった。 彼女は残された最後の息を振り絞ってカメラを見つめ、苦痛に歪みながらも気丈な笑顔を私に向けた。 第3話 私は絶望でスマホを見つめ、何度も何度もごめんなさいと繰り返す。 「結衣、お母さんが役立たずばかりで……」 それも私が人を見る目がなく、愛する相手を間違えたせいで、結衣に責任感のある父親を見つけてあげられなかったからだ。 私の心の中の張り詰めていた糸が、完全にぷつりと切れる。 …… 結衣の骨壷を抱いた時、声が枯れるほど泣き叫ぶものだと思っていた。 しかし、そうはならなかった。 私はただ、呆然と大通りを歩いている。 家の前に着いた途端、カメラやマイクを持った大勢の記者たちにぐるりと取り囲まれる。 私は訳が分からないまま凛斗を見る。 「被害者の家族として、星野さんに直々礼を言うべきなのでは?」 「もし星野さんが時間を稼いでくれっていなければ、娘さんはとっくに爆発で亡くなったんじゃないですか」 絶え間ないフラッシュの中で、私は正気を失ったように凄惨に笑い続ける。 凛斗に引きずられるようにしてカメラの前に立たされ、私はようやく自分の声を取り戻す。 「結衣はもう死んだわ。誰に助けてもらう必要もなくて」 それを聞いて、凛斗の顔に不機嫌な色が広がる。 「琴音、お前は一体何のでたらめを言ってるんだ? 陽菜の顔に泥を塗るのに、娘が死んだなんて嘘をつくのか? それでも母親か」 言い終わるや否や、凛斗は怒りに任せて腕を大きく振り払い、骨壺を地面に叩き落とす。 耳の奥で、再び激しい耳鳴りがする。 私はどさりと地面に跪き、泥混じりの遺灰を両手でかき集める。 結衣は生前、あんなにきれい好きだったのに。 頭上からは、凛斗が感謝を述べる声と、有頂天になった陽菜の甲高い笑い声が聞こえてくる。 「今回の任務に星野さんがいなければ、結衣が助かることはありませんでした。 彼女がこの業界でさらに飛躍することを願っています。 俺も根気よく指導し、後継者として立派な専門家に育て上げるつもりです」 結衣はもう死んだというのに。 そして父親である彼は、満面の笑みで人殺しに感謝しているのだ。 あまりにも狂っている! 鳴り止まない熱烈な拍手の中、独占インタビューが終わった。 凛斗がこちらを見下ろし、あざけるように冷笑を漏らす。 「そこでずっと狂ったふりでもしてろ。 結衣には陽菜みたいな、素直で勇敢な母親の方がお似合いだ!」 あっという間に、私が地面に這いつくばって遺灰を集める姿は「土下座して感謝している」ように編集されてしまった。 資格すら取っていない陽菜は、一晩にして特例で「天才専門家」「ヒロイン」として祭り上げられる。 ネット上では凛斗と陽菜のコンビが「赤と青のバディ」までと持て囃されている。 【氷室さんは一生女の弟子は取らないって言ってたのに、星野さんだけは特別なんだね。このコンビ尊すぎる!】 【氷室の奥さん、全然感謝してないじゃん。星野さんが娘を助けてくれたのに、なんであんなに恨めしそうな顔してんの】 【星野さんが爆発時間を縮めたとかデマ流してるし。こういう嫉妬丸出しのヤツ、早く氷室先生から離れてくれないかな】 …… 凛斗はその状況を大いに楽しみ、反論の一つも発しない。 私はネット記事のコメント欄でこう投稿した。 【末長くお幸せに】と。 すると彼は私のスマホを叩き落とし、氷のように冷たい視線を向けてくる。 「こんな時までふざけてるのか? やっぱり結衣のことなんかこれっぽっちも心配してないな。 ただ娘を利用して俺の気を引きたいだけだろう! あと一時間ちょっと残ってるが、結衣を助けたくないなら好きに騒いでろ!」 言葉を吐き捨てると、凛斗は陽菜の手を引いて背を向けた。 ちょうどその時、彼の助手が慌てて部屋に駆け込んでくる。 「氷室様、たった今本部から連絡が入りました。 被害者が一名爆死したため、公の場での謝罪を求められています」 凛斗はハッと動きを止める。 「いつの話? 新しい任務なんて聞いてないぞ。 被害者ってどこから出てるんだ?」 第4話 助手が被害者の情報を確認しようとすると、陽菜が横から不意に口を挟む。 「分かったわ。琴音さんってば、いくらなんでもひどすぎない? 私が賞を取るのが嫌だからって、嘘の通報をして、結衣ちゃんの命まで賭けにするなんて……怖すぎるよ!」 陽菜は心から結衣を心配しているかのような表情で、恨みがましく私を見つめる。 それを聞いた凛斗は、心にわずかに生じていた躊躇いも完全に消え失せ、私を鋭く睨みつける。 「琴音、本当に嘘の通報をしたのか? 本当に結衣を愛していると思っていたが、お前にとって俺の気を引くことが何よりも、娘の命よりも大事だったんだな!」 言い放つなり、凛斗はまたしても骨壺を乱暴に払いのけた。 今度は遺灰が水槽の中に落ち、もう二度と拾い上げることはできない。 私の心臓がドクリと重く沈む。 遺灰が魚に一口、また一口と食べられていくのを見て、涙がこぼれ落ちてしまった。 「白々しい演技をするな! そこで精々反省してろ。帰ってきたらただじゃおかないからな!」 凛斗は腕時計に目をやり、ふと息を呑む。 「これ以上遅れるわけにはいかん。陽菜、行くぞ」 急ぎ足で去っていくその後ろ姿を見つめながら、私は叫びを上げたいが、その言葉がどうしても声にならない。 すでに爆死した人間は、あなたの実の娘なのよ! けれど、凛斗にもうその声は届かない。 たとえ届いたとしても、彼はもう私をこれっぽっちも信じないだろう。 空っぽになった骨壺を抱き寄せる。そして心の中で何かが砕け散る音がした。 結衣の遺品を整理していると、彼女のスマートウォッチが転がり落ちてきた。 中には、途切れ途切れに録画された映像が残っていた。 「このクソガキ、あんたの母親と同じで目障りなのよ。 凛斗との愛を奪い合う気なんて、死ねばいい! でも、ただで死なせるわけにはいかないわね。 凛斗に私の才能を認めさせるための生贄になってもらうわ。 あんたも吹き飛ばせるんだから、一石二鳥でしょ? 次は母親の番だね。地獄で仲良く親子再会させてあげるから!」 結衣を拉致した真犯人は、陽菜だったのだ! すべては彼女の自作自演であり、寵愛を奪うための手段に過ぎなかった。 そして凛斗は、完全に彼女の共犯者に成り下がっていたのだ。 テレビではニュースが流れており、派手に着飾った凛斗と陽菜が、もっともらしいスピーチをぶっている。 眩いフラッシュを浴びながら、二人は見つめ合いながら微笑んでいる。 だが、私の娘を殺した奴らが、あんなに幸せそうに笑っていていいわけがない……。 私は震える手でテレビを消し、ある番号に久しく電話をかける。 「私のために、もう一度法廷に立ってはくれないかしら」 …… 同じ頃、凛斗は笑顔で陽菜に工具箱を渡していた。 「前回の爆弾は陽菜が自力でカウントダウンを延ばしたんだ。 今回の処理も任せるよ」 彼は愛情たっぷりの眼差しで彼女を見つめ、声を潜める。 「思い切りやってこい。 俺がついている限り、今回の最優秀新人賞は間違いなくお前のものだ」 記者の取材に応じながらも、凛斗は腕時計に目を落とすと、なぜか胸の奥からじわじわと不安が広がる。 「急ごう。結衣が怖がっているはずだ」 工場の階段を上るわずかな間にも、凛斗は何度も腕時計を確認した。 カウントダウン、残り十五分。 時間は十分にあるはずなのに、どうしても嫌な予感が拭えない。 凛斗は歩みを速めるが、視界に飛び込んできた光景が、彼の両目を無残に突き刺した。