記憶をなくした私に、彼は後悔した

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記憶をなくした私に、彼は後悔した

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夫は脳科学分野のエリートだ。 彼は、愛人である助手と結ばれるために、不眠不休で三ヶ月かけて、研究に没頭した。 そしてついに完成させたの...

Chương (1)

第1章

夫は脳科学分野のエリートだ。 彼は、愛人である助手と結ばれるために、不眠不休で三ヶ月かけて、研究に没頭した。 そしてついに完成させたのは、人の記憶を消す禁断の薬だった。 あの日、夫のタブレットを触っていたら、なぜかLINEにログインしたままで、スクロールしたら、許しがたいメッセージのやりとりが目に入ってしまった。 【ねえ楓貴さん、私たちはいつになったら堂々と一緒にいられるの?】 【あと少しで、ずっと一緒にいられるから。まず彼女のビタミン剤を例の薬にすり替える。記憶を失えば、あちらから離婚を切り出すはずだ。そうすれば、僕が悪者にならずに済む】 目の前が真っ暗になった。真冬の湖に突き落とされたような錯覚に陥った。 私たちの思い出をすべて消してまで、彼は私と別れたいのか。 分かったわ。そこまで言うなら、望み通りにしてあげる。 けれど、実際に一つ、また一つと彼との記念日を忘れていく私を見て、楓貴は顔を真っ青にして、私を問い詰めた。 「美桜(みお)……どうして僕のことをすべて忘れられるの?」 第1話 夫は脳科学分野のエリートだ。 彼は愛人である助手と結ばれるために、不眠不休で三ヶ月かけて、研究に没頭した。 そしてついに完成させたのは、人の記憶を消す禁断の薬だった。 あの日、夫のタブレットを触っていたら、なぜかLINEにログインしたままで、スクロールしたら、許しがたいメッセージのやりとりが目に入ってしまった。 【ねえ楓貴さん、私たちはいつになったら堂々と一緒にいられるの?】 【あと少しで、ずっと一緒にいられるから。まず彼女のビタミン剤を例の薬にすり替える。記憶を失えば、あちらから離婚を切り出すはずだ。そうすれば、僕が悪者にならずに済む】 目の前が真っ暗になった。真冬の湖に突き落とされたような錯覚に陥った。 私は呆然とタブレットのチャット履歴を見つめ、頭が真っ白になった。 体の震えが止まらなかった。 何度も内容を読み返した。これが現実だなんて信じたくなかった。 【楓貴さん、もう限界。隠れて付き合うのは嫌。早く堂々と隣にいたいの】 【あと少しだよ。あの薬を数ヶ月飲ませれば、彼女の記憶からこの七年間が消える。そうしたら上手く言いくるめて別れるさ】 その先には、見るに吐き気がするほど生々しい愛の言葉が続いていた。 この一年、私には注がなかった情熱を、彼は同僚の佐藤亜美(さとう あみ)に向けていたのだ。 胸が締め付けられるような痛みをこらえながら、チャット履歴をさかのぼった。 研究室にいた数ヶ月間、この二人はほぼ昼夜を問わず一緒にいたことがわかった。 昼間は薬の開発に没頭し、夜は抱き合って眠っていた。 これまでの思い出が走馬灯のように蘇った。 かつて感じた小さな違和感、見て見ぬふりをした疑惑。そのすべてが「真実」として確定していく。 どうりで、研究が忙しいと言って帰りが遅くなるわけだ。 帰宅してもスマホを握りしめたままトイレにこもり、なかなか出てこなかった。 時折漏れ聞こえる話し声の相手も、同僚だと偽っていた。 共に過ごした七年という歳月。 それが、赤の他人よりも冷え切った仮面夫婦に成り果てていたのだ。 実のところ、もし私から離れたいのなら、正直にそう言ってくれればよかった。 縋り付いてまで引き止めるつもりなんて、これっぽっちもなかったのに。 でも彼は、私という「邪魔者」を切り捨てたいくせに、自分だけは「悪者」になりたくなかったのだ。 私に記憶喪失を引き起こさせてまで、終わらせようとした。 胸がズキズキと痛み、無意識にタブレットを強く握りしめると、冷たいタブレットの角が手に食い込み、痛みを走らせた。 背後で足音が響いた。 「おや、何か気になることでもあった?」 シャワーを浴びて出てきた林楓貴(はやし ふうき)が、タブレットを握る私を見て明らかに動揺した。 そう、LINEにログインしたままのことに気づいたのだ。 私は素早く気持ちを立て直し、振り返って何事もなかったかのような表情で彼に向き直った。 「何でもないわ。スマホのバッテリーが切れたから、あなたのタブレットで天気予報を見てただけ」 楓貴はひったくるように私からタブレットを奪い取った。 顔色が少し悪かった。 けれど、私がすでにログアウトさせたログイン画面を確認すると、ようやく安堵の表情を見せた。 そして、いつもの「優しい夫」の顔を作って私を見つめた。 「君は体が弱いんだから、用がないなら外に出ちゃダメだよ。家でゆっくり休んでて」 出がけに、彼はさらに付け加えた。 「あ、そうだ。ラボで新しいビタミン剤が開発されたのだ。免疫力を高めるのに非常に良い。明日持ってくるから、しっかり飲むんだよ」 珍しくバツが悪そうに目を逸らす彼の表情を見て、胸が締め付けられるような、切ない気持ちになった。 そして、表面上は冷静を装った私は揺るぎない声で答えた。 「ええ。わかったわ、ありがとう」 その夜も、楓貴が帰ってくることはなかった。 しんと静まり返った家の中、私は目的もなく部屋の中を彷徨った。 家具のひとつひとつ、壁の感触をなぞる。 ここには、私たちの最高の七年間が詰まっている。 楓貴に出会ったとき、彼はまだ貧乏な学生だった。 三歳年上の私は、彼がインターンをしていた病院で働いていた。 他の男子学生たちのようなチャラさがなく、落ち着いた彼に惹かれたのだ。 第2話 それとなく楓貴に近づき、彼がとても貧乏だと知ると、あれこれ理由をつけては差し入れをした。 熱愛から結婚へ。 思い返せば、いつだって私が楓貴に合わせてきた。 結婚後、楓貴の母の介護が必要になり、彼自身も博士課程の研究と試験で余裕がなかったので、私は仕事を辞めて、義母の看病に専念した。 家事なんてしたこともなかった私が、義母を看取るまで必死に尽くした。 楓貴が仕事に集中できるように、私は家事をすべて引き受けた。 さらには、彼が「今はそのタイミングじゃない」と言ったから、私は子供を二人も流産した。 私はひたすら楓貴の良き妻でありたいと願っていた。 しかし、彼がいつから私を嫌っていたのか、気づかなかった。 かつての幸せを思い出すと、胸がひどく締め付けられた。 私が大切に宝物のようにしまっていた思い出は、今の彼にとっては「真の愛」を邪魔する障害物でしかない。 夜が明ける頃、私はある辛い決断を下して、温かい布団に潜り込み、深く眠りについた。 次に目を覚ましたのは、キッチンから漂う香ばしい匂いのせいだった。 ぼんやりした意識でリビングへ向かうと、そこには驚くべき光景があった。 楓貴が慣れない手つきで、出来立てのスープをスープジャーに入れようとしていたのだ。 私に気づくと、彼は気まずそうに言い訳をした。 「あ、起きたんだ。同僚が僕の手料理が食べたいなんて騒ぐからさ、ちょっと戻って作ってみたのだ。変に勘違いするなよ」 私はうつむいて、男の手とは思えないほど柔らかな彼の手を見つめた。 胸に切なさが込み上げてきた。 医者の手は、ピアニストに劣らないほど美しい。 この数年間、楓貴に家事を一切させなかった。 なのに今は亜美のために料理を振舞った。 黙り込んだ私を見て、楓貴はためらいがちにスープを一杯、私の前に置いた。 そして、ポケットから薬を取り出し、私の手元に押しやった。 「さっき持ってきたビタミン剤だ。スープと一緒に飲めば、吸収も良くなるよ」 ボトルのラベルに印字された「ビタミン剤」の文字を見つめ、背筋が凍るような感覚がした。 ボトルを握りしめながら、衝動が突き上げてきた。「どうしてこんな嘘をつくの?」「どうして私を傷つけるの?」と、大声で問い詰めたかった。 結局のところ、私は黙って、楓貴をじっと見つめるだけだった。 迷うことなくボトルを開け、一粒を口に放り込み、スープで飲んだ。 この間に、もし楓貴が少しでも躊躇してくれたら、もう一度チャンスをあげようと思っていた。 けれど、薬を飲み込んだ私が見えたのは、彼の期待に満ちた瞳だった。 絶望の果てに、心は凍りついたように静まり返った。 それから一ヶ月、私は彼の言われるまま、薬を飲み続けた。 一日として欠かさなかった。 楓貴は相変わらず朝早くに出かけ、夜遅くに帰ってくる。その顔には熱愛中の幸せが溢れていた。 私の記憶は徐々に蝕まれ、消え始めた。 それは一気に忘れるわけではない。 まずは、結婚記念日がいつだったか、思い出せなくなった。 そんな記念日の当日、珍しく、楓貴から花束とドレスを一式、宅配便で届けてきた。 「レストランを予約したよ。これ、君のために買った服なんだ。ちゃんと着飾ってね。ラボの連中も大勢来るんだ」 「今日、何かのお祝いだったかしら?新しい成果でも出たの?」 私が不思議そうに尋ねると、電話の向こうで楓貴は明らかに絶句した。 再び口を開いた時、落胆しているようだ。 「もう忘れ始めたのか?別に何でもないよ。時間通りに来てね」 記憶が薄れるにつれ、周囲への感覚も鈍くなっていった。 いっそ何も考えたくなかった。 私は言われた通りにメイクをし、時間通りに会場へと向かった。 来場者は私を見て、それから盛装した亜美を交互に見た。 会場に微妙な空気が流れた。 「皆さん、こんばんは。お楽しみのところ、お騒がせしてすみません。私のことは気にせず、続けてくださいね」 私は優しく微笑みながら挨拶して、独り静かに空いている席についた。 楓貴が私の前に歩み寄って、探るように尋ねた。 「美桜、最近、ビタミン剤を飲んで何か気分が悪いことはない?」 第3話 私は楓貴が例の薬の効き目を心配しているのは理解できた。 しばらく呆然とした後、平静に首を横に振った。 楓貴の目に、一瞬だけ躊躇いのような色が浮かんだ。 それを見た亜美が、親しげに近づいてきた。 「奥さん!楓貴さんからいつもお話を伺っていましたが、お会いするのは初めてですね」 亜美の挑発に気づかないほど、私は鈍くない。 けれど、もうどうでもよかった。 むしろ、なぜ楓貴が亜美を好きになったのか、その理由がようやく分かったようだ。 亜美は、昔の私にあまりにも似ていた。 明るくて、自由奔放で、機転が利き……全身から生命力が溢れ出している。 一体何が、私の中からそれらを消し去ってしまったのだろう? おそらく、ありふれた家庭生活、自分の価値を見失うような退屈な日々。そして、愛する人からの軽蔑の視線。 私はテーブルのグラスを手に取り、乾杯を求めた。 「楓貴を支えてくださってありがとうございます。二人が……良いパートナーでいられますように」 楓貴がなぜか、一瞬だけ狼狽した。私たちの会話を強引に遮り、亜美を他の同僚たちに引き寄せた。 一緒にゲームをしようという誘いを断り、私はゆっくりと散歩しながら、この会場を眺めた。 初夏の夜、芝生の間で、なんとホタルが舞っていた。 私は嬉しくなり、一匹のホタルをそっと両手で包み込み、暗闇に浮かぶその微かな光を見つめた。 その時、後ろから亜美の甘えた声が聞こえた。 「楓貴さん見て!奥さんがホタルを捕まえたわ。私も見たい」 それを聞いて、楓貴は少し気まずそうに私を見た。 私はふと、なんだか虚しさが込み上げ、ホタルを空へ逃がした。 「楓貴に捕まえてもらえば?彼は昔、すごく上手だったのよ」 楓貴は呆然と立ち尽くした。 私が話したのは、私たちが付き合い始めたばかりの頃の話だったからだ。 私の記憶は、断片的に消えていった。 その夜、酒に酔った楓貴が耳元で何かを囁いた。 その時になってようやく、今日が私たちの結婚記念日だったことを、私はおぼろげに思い出した。 記念日が過ぎると、楓貴は薬の効き目を疑っているのか、私に薬を飲ませるのを見張るようになった。 私が素直に飲み込むたび、彼は安心したような、それでいてどこか寂しげな表情を浮かべる。 呆れたものね。 私に忘れてほしいのか、それとも忘れてほしくないのか、どっちなの? けれど、私の記憶力は確実に落ちていた。 「これ、君がくれた誕生日プレゼントだよ。覚えてないのか?」 「これは大学時代に話し合ったあの映画じゃない?」 「美桜、僕がネギ嫌いなの忘れたの?」 「同僚の葉山さんが食事に誘ってくれてるのだ。えっ、知らない?僕たちの結婚式で友人代表を務めてくれたじゃないか」 会話のほとんどが、私の「忘れたこと」についての確認作業になっていった。 楓貴はわずかに眉をひそめた。 私はふと、出会ったばかりの頃の彼を思い出した。 私のことを寮まで送ってきた男同僚を見て、彼はあんなに不機嫌そうな顔をしていた。 まあいい。もう、遠い昔の話だ。 私の従順さが、かえって楓貴を苛立たせているようだ。 その気晴らしに亜美とチャットすると、すぐ笑顔になる。 「ラボにいる」と嘘をついては、亜美と過ごす毎日。 亜美の匂わせ投稿を見て、私は思わず失笑した。 焦らなくてもいい。もうすぐ、二人は一緒にいられるんだから。 亜美は、楓貴と私が以前行った場所にチェックインするたびに、私にメッセージを送りつけてきた。 【奥さん、彼と春山温泉に来たんです。最高ですよ。楓貴さんと行ったことあります?】 【奥さん、楓貴さんに回転展望レストランに連れて行ってもらったことあります?】 【奥さん、みどり通りの桜って綺麗ですね。見たことあります?】 楓貴の薬は、どうやら記憶の消え方が不安定らしい。 実は、それらの出来事はまだ断片的に覚えている。 でも、すべて「行ったことがない」と答えた。 この不毛な化かし合いには、もううんざりだ。 ただ、彼らの望む通りに、一刻も早くここを去りたいだけだ。 楓貴の今年の誕生日、私はすっかり忘れていた。 けれど、スマホのカレンダー通知が私にそれを思い出させた。 これまでは、何ヶ月も前から準備をしていた。 心を込めて、手作りのプレゼントを贈っていた。 第4話 この数年、楓貴のマフラー、蝶ネクタイ、靴下、防寒着はすべて私の手作りだった。 楓貴の誕生日の日の朝。 亜美がSNSで楓貴の誕生日を祝っているのを見た。 添付されていたホテルのウェルカムカードは、あの有名な高層ホテルのものであった。 私はスマホの通知を切って、心理カウンセラーの資格取得に向けて勉強に没頭した。 離婚したら、生きていくためのスキルは持っておかなければならない。 幸い、記憶力は衰えても、知性までは奪えなかったようだ。 むしろ、楓貴に心を砕かなくて済むようになったから、学習効率は意外なほど上がっていた。 夜の10時。シャワーを浴びて寝ようとした時、楓貴から電話がかかってきた。 こんな時間に何の用だろうと不思議に思いながら出ると、彼の声はどこかおかしかった。 「……美桜。君、本当に今日が何の日か、覚えてないのか?」 その五分前、亜美がシェアしたホテルの夜景の写真を見て、楓貴の考えていることが全然理解できないと思った。 「楓貴、今日は疲れてるの。もう寝るわ。明日また話そう」 電話を切られた楓貴は、呆然としていた。 これまで毎年、私が彼の誕生日を祝ってきた光景が、突然一気に脳裏をよぎった。 胸の奥が、言いようのない切ない気持ちが湧き上がった。 まるで人生から何か大切なものが失われていくかのようだった。 その喪失感と悔しさに、彼は不意を突かれた。 誘惑的な赤いネグリジェに身を包んだ亜美を見ても、何の興奮も湧いてこないほどに。 楓貴は激しく鼓動する心臓を無視するように、雑念を振り払い、快楽に溺れていった。 二人は一晩中、心ゆくまで愛し合った。 楓貴が眠りにつくと、亜美はわざとらしいポーズで自撮りをして、またSNSを更新した。 亜美の隣に置かれたブランドバッグも、赤いドレスと同様に嫌味に見えた。 【彼氏の誕生日なのにプレゼントをくれた。どっちが主役か分かんないね。もうー大好き!】 コメント欄は祝福の声で溢れていた。 翌朝、それを見た私は一瞬呆然として、ようやく思い出した。 ……そういえば、彼女の「彼氏」って、私の夫だったっけ。 例の薬、本当に奇妙だ。 時系列で記憶を奪うわけじゃなくて、楓貴という存在に関連する記憶だけが消えていくようだ。 気づけば、脳内にある楓貴のデータは消えかかった蝋燭の火のよう。 「私の夫であること」「不倫していること」という事実は知っているけれど、その過程で何があったのか、具体的なエピソードはごっそり抜け落ちている。 それに、彼に対する愛も、もう霧みたいに消えてなくなっていた。 つい、世間の噂に乗っかって、亜美の投稿に「いいね」を押してしまった。 嫌味じゃない。マジの「いいね」だ。 楓貴だって、あんな若い子と付き合えるなんて、相当なお得だよ。 私まで申し訳ないというか、恥ずかしく思った。 馬鹿馬鹿しい。 思わず自分でおかしくなって笑ってしまった。 だから、部屋に入ってきた楓貴は、満面の笑みを浮かべる私を見て、気まずそうな顔をさらに歪ませた。 しばらく沈黙した後、ようやく口を開いた。 「何でそんなに嬉しそうなの?昨晩、僕は……」 私はきょとんとして彼を見た。 「昨日?何かあったかしら?」 楓貴は、出かかった言葉を飲み込んだ。結局それ以上紡がれることはなかった。 その様子を見て、私はそのままキッチンへ行き、朝食の準備を始めた。 目玉焼きを焼いてトーストを出し、フルーツサラダと牛乳を用意した。 「まだ食べてないなら、一緒にどう?」 軽い気持ちで誘うと、彼は嬉しそうに近寄ってきた――けれど、瞬時に顔色を変えた。 「美桜、僕は牛乳がダメなんだ。忘れたの?」 私は手を止めた。 「え……あ、そうなの?ごめん、忘れちゃった。 なんだか最近、あなたのこと、いろいろ思い出せないみたい。どうしちゃったのかしら。 そういえば私たち、あの時どうして付き合うことになったんだっけ?おかしいわね。なぜか、あなたのことだけが思い出せないの」 私の言葉に、楓貴の顔色はますます険しくなり、今にも爆発しそうな気配を漂わせた。