Đang tải thông tin quảng bá...
過去は序章に過ぎない
俺、時田瞬(ときた しゅん)は、親友の従姉で企業の社長を務める江崎結月(えざき ゆづき)と三年間、秘密交際をしている。 ある日、親友が俺...
Chương (1)
第1章
俺、時田瞬(ときた しゅん)は、親友の従姉で企業の社長を務める江崎結月(えざき ゆづき)と三年間、秘密交際をしている。
ある日、親友が俺にこう言った。
「後でさ、従姉が三年付き合ってる彼氏を連れて、うちに挨拶しに来るらしいんだ。
そうだ、お前はいつになったら、付き合ってる子を俺に紹介してくれるんだよ!」
親友の問いかけにどう説明していいか分からず、俺はベランダに逃げ込み、結月に電話をかけた。
だが、電話はすぐに切られてしまった。振り返ると、俺の彼女が一人の男と腕を組んで玄関に立っている。
俺と目が合った瞬間、結月の笑顔がスッと消え去った。
「どうしてあなたがここにいるの?」
第1話
俺、時田瞬(ときた しゅん)は、親友の従姉で企業の社長を務める江崎結月(えざき ゆづき)と三年間、秘密交際をしている。
ある日、親友が俺にこう言った。
「後でさ、従姉が三年付き合ってる彼氏を連れて、うちに挨拶しに来るらしいんだ。
そうだ、お前はいつになったら、付き合ってる子を俺に紹介してくれるんだよ!」
親友の問いかけにどう説明していいか分からず、俺はベランダに逃げ込み、結月に電話をかけた。
だが、電話はすぐに切られてしまった。振り返ると、俺の彼女が一人の男と腕を組んで玄関に立っている。
俺と目が合った瞬間、結月の笑顔がスッと消え去った。
「どうしてあなたがここにいるの?」
彼女が眉をひそめ、思わず口にした問い詰めるような言葉で、その場にいる全員の視線が俺に集まった。
まずいと気づいたのか、結月は目を細めて、口調を少し和らげた。
「時田部長はどうしてここに?出張に行っていたのでは?」
江崎家全員の視線を浴びる中、俺は一瞬呆然とした後、苦笑いを浮かべ、彼女の芝居に合わせることにした。
心の奥でチクッとした痛みが走る。時田部長、ね。どうやら、俺は日の目を見られない存在らしい。
頭の中には数えきれないほどの言葉や、結月に答えてほしい疑問が山ほどあるというのに。
しかし今の俺には、それを口にする気力すら残っていなかった。
突然、すべてがどうでもよく思えてきた。
「今戻ったばかりで、まだ江崎社長にご報告できておりませんでした」
俺の空気を読んだ態度に、結月の顔色はついに元通りになった。
食卓は和気あいあいとしていて、まるで出来のいい芝居のようだ。
俺は結月の「恋人」である鶴見翔(つるみ しょう)と意気投合したふりをして、杯を交わし、連絡先まで交換した。
その日、俺は結月と一言も言葉を交わすことなく、食後一人で家に帰った。
ソファに座っていても、脳裏に浮かんでくるのは、結月が翔と腕を組んで俺の前に現れ、両親や親戚たちに挨拶している光景だった。
そしてこれらはすべて、かつて俺が待ち望んでいたものだった。
俺たちの関係を公にして、ご両親に紹介してほしいとずっと願っていた。
結月を一生大切にし、決して少しも辛い思いはさせないと、ご両親に伝えるつもりだった。
こんな、遊び相手のような扱いではなく。
夜中までソファに座り込んでいると、ようやく結月が帰宅した。
本来なら、蓄積された感情が今ここで爆発するはずだった。
これまでと同じように、冷静な状態から口論、怒鳴り合い、言い訳、罵倒、責任転嫁、そして最後には冷戦状態に陥るというパターンに入るはずだった。
だが今の俺は突然気力を失ってしまい、そんなことはもう何の意味もないと感じた。
結月は靴を脱ぐと、俺があまりにも黙り込んでいるのを見て、珍しく彼女の方から口を開いた。
「翔を会わせたのは、お父さんたちが結婚しろとうるさいからよ。だから彼に一日残業してもらって、彼氏のふりをして相手をさせただけ」
俺は「ああ」とだけ相槌を打った。それ以外は何も言わなかった。
客観的に見て、この時の俺の態度は何一つ間違っていなかったと思う。
しかし次の瞬間、結月は逆に怒り出した。
口調に滲む苛立ちに、俺は思わず顔を上げて彼女を見た。
「瞬、ちゃんと説明したのに、その態度は何なの?」
その言葉は俺の脳内に波紋を広げ、瞬く間に巨大な渦となった。
考えるより先に、言葉が口をついて出た。
「自分の秘書に残業させて彼氏のふりをさせるだと?だったら、なぜ直接俺を連れて行かなかった?お前の彼氏は俺だろうが!」
「だって、あなたじゃお父さんたちの前で恥をかくだけじゃない!」
彼女はそう言い捨てると、持っていたバッグを俺に投げつけ、そのまま寝室へと入っていった。激しく閉められたドアのせいで、ドア枠がガタガタと異音を立てた。
そのバッグは、翔が結月に買ってやったものだ。
アウトレットのセールで買ったバケツバッグ。それなのに彼女は毎日それを持ち歩き、自分が雨に濡れてでもこのバッグを守ろうとするほど大切にしていた。
第2話
俺が贈ったシャネルのチェーンバッグは、翔の「一目で偽物ってわかるね」の一言で、切り裂かれてゴミ箱に捨てられた。
愛されているかどうかの違いが、これほどまでにあからさまだとは。
滑稽なことに、俺は今までずっとその事実を認めようとしなかった。
激怒した時の咄嗟の反応こそが、最も偽りない本音なのだ。
先ほど口にした言葉の通り、彼女は、俺が釣り合わない男だと思っている。
そうだ。大学の時偶然知り合った彼女のために、卒業後実家には戻らず、彼女のいる会社に就職した。
社長である彼女のそばで、周囲の目に映る俺は、コネ入社してヒモ同然の生活をしている男にすぎなかった。
そう思えば、確かに俺は彼女に恥をかかせる存在だ。それに対して翔は、家柄も釣り合い、彼女が自慢できる完璧な彼氏なのだ。
この三年間、どれほど献身的に尽くし、彼女の言いなりになってきたとしても、翔には到底及ばなかった。
そろそろ、この馬鹿げた恋に終止符を打つ時だ。
俺はクローゼットから予備の布団を取り出し、書斎で適当に一晩を明かした。
意外にも、ぐっすりと眠れた。
翌日、身支度を整えてそのまま会社へ向かう途中、マンションを出たところでディーラーから電話が入った。
「時田様、お車のメンテナンスが完了いたしました。いつ頃引き取りにいらっしゃいますか?」
先月、結月は承諾も得ずに、勝手に俺の車を翔に貸したのだ。
先週翔が車を返しに来た時、数箇所傷がつけられていることを知らされた。本来なら文句の一つでも言ってやりたいところだったが、結月が彼を庇ったため、穏便に済ませてメンテナンスに出すしかなかった。
それから間もなくして、俺は店に到着した。
店長は意味深な笑みを浮かべて車のキーを渡し、ディーラーのロゴが入った紙袋を指差す。
「お客さん、中の物はちゃんと袋にまとめときましたよ。お若い方々の気持ちは分かりますが、ほどほどにね。メンテナンスに出す前は、こういう『貴重品』は片付けておいてくれないと。うちの整備士たちも目のやり場に困っちゃうんでね」
俺は訝しげに歩み寄り、その紙袋を開けた。中に入っているのは、過激なセクシーランジェリーと、乳首に着ける鈴の付いたリングだ。
車の中にこんな物があったとなれば、何が起きたかは言わずもがなだ。
だが俺は、結月と車の中でそんなことをした覚えは一度もない。
考えられる理由はただ一つ、彼女と翔がこの車で使ったということだ。
問い詰める気も起きず、怒りも湧かず、俺は疑問さえ抱かなかった。
ドライブレコーダーを取り外し、振り返って店長に尋ねた。
「中古車の買取もやってますか?」
「やってますよ、お客さん!」
値切り交渉など一切せず、店長と即座に車の買取を成立させると、タクシーで会社へと向かった。
自分のデスクに座った途端、隣の席の女子社員たちがひそひそと噂話をしているのが耳に入ってくる。
「江崎社長って、鶴見秘書と付き合ってるんじゃない?」
「やっぱりそう思う?聞いた話だと、社長が自ら高給で彼を引き抜いてきたらしいよ!」
「絶対そうだよ。社長と鶴見さんって大学の同級生だったらしいし、昨日の夜も二人でバーにいるのを見ちゃった!」
そこまで聞いて、やはり抑えきれない胸の痛みが走った。
そういうことだったのか……
俺は機械的にパソコンを開いて仕事に向かったが、真っ白な画面を前に、文字を一つも打ち込むことができなかった。
「時田!」
背後から結月の声が聞こえた。
「時田、一時間の遅刻よ!今日は無断欠勤扱いにするから!」
俺の反論を聞きたくなかったのか、彼女はさらにこう付け加えた。
「タイムカードを見たわ。きっちり一時間の遅刻、会社の規定によれば……」
「わかりました」
俺は頷き、パソコンの画面に視線を戻したまま、企画書の書き出しをどうするか考え続ける。
第3話
俺の淡々とした態度に、結月は少し驚いたのか、いつまでも俺のデスクから離れようとしなかった。
彼女の影がデスクを覆い、照明の光を遮っている。
訝しげに首をひねて彼女を見上げ、尋ねた。
「江崎社長、まだ何かご用でしょうか?」
彼女は腕を組み、探るような目で俺を見下ろす。
「時田、何か説明することはないの?」
俺はきょとんとした顔で、少し考えてから答えた。
「遅刻したのは事実ですし、社長が会社の規定通りに対処するのも当然のことです。特に説明することはないと思いますし、言い訳や理由もございません」
あまりにもあっさりと認めたからか、結月はそれ以上何も言わず、不機嫌そうな顔をして立ち去った。
ほどなくして無事に仕事モードに入り、あっという間に時間が過ぎていった。
仕事を終え、顔を上げると、いつの間にかオフィスには誰もいなくなっていることに気づいた。
時間を確認すると、すでに夜の11時半になった。
退勤する時に声もかけてくれない仕事仲間に、心の中で悪態をつく。
その時、背後から突然ハイヒールの足音が聞こえてきた。
結月はデリバリー容器をゴミ箱に捨てると、こちらへ歩み寄り、ごく自然に俺の隣の椅子に腰を下ろした。
「どうしてメッセージ返さないの?」
横にあるノートパソコンを開き、バックグラウンドのアプリに切り替えると、確かに彼女からメッセージが来ていた。
【ちょっと見てくれない?このCPU、マザーボード、グラボの中でどれがいいかな?AAAタイトルをプレイするのに向いてるやつ】
【あと、LEDライティングはどう組み合わせたらカッコいいかな?水冷と空冷、どっちがいいと思う?】
彼女は俺がその手の分野に詳しいことを知っている。ある意味、仕事の一部でもあり、何しろそれで飯を食っているのだから。
しかし一年前、あるメーカーのi9のK付きが欲しいと彼女に話したことがあった。
別にプレゼントをねだりたかったわけではない。ただその頃、彼女は俺に対して冷たかったり優しかったりと態度が不安定だった。
こういう方法で、彼女の中での自分の存在価値を確かめたかっただけだ。
あの時、彼女はただ苛立ったようにこう言ったのだ。
「もう卒業して2年も経つのよ、あなたはもう大学生じゃないんだから。一日中ゲームのことばかり考えてないで、自分がちゃんと仕事に取り組んでいるか考えなさいよ」
俺はさらに、これはCPUであってグラボではないと丁寧に説明した。
確かにゲームをする上で一番重要なのはグラボだが、仕事にとっては、グラボよりもCPUの方が優先度が高いのだ。
だが、彼女は説明など全く聞く耳を持たなかった。
送ってきたパーツの写真に軽く目を通し、スペックリストを作成して彼女に送った。
彼女はとても機嫌が良くなり、注文を済ませると、俺の腕を引いて会社を後にした。
帰りの車内、後部座席に座ってノートパソコンを広げ、プログラムのテストを続ける。
途中、何気なくインスタのタイムラインを開くと、一番上に翔の投稿が表示された。
上限の20枚まで写真が投稿されており、そこにはこんな一文が添えられていた。
【何気なく言っただけなのに。愛される幸せってこういうことなのだと実感した】
画像をタップして拡大すると、なんと結月がたった今注文したゲーミングPC一式だった。
「いいね」を押し、ついでにこうコメントを残した。
【末永くお幸せに】
ほどなくして、結月のスマホに翔からメッセージが届き、次の瞬間、車は急ブレーキをかけて道端に停まった。
結月は振り返り、こちらをきつく睨みつける。
「たかがゲーミングPCを買ってあげただけじゃない!なんでそんな当てつけがましいコメントをするのよ。
帰ったらあなたにも買ってあげるわよ、全部買ってあげる、欲しいものは何でも買ってあげるから!それで文句ないでしょ?」
少し不愉快になり、顔を上げる気すら起きなかった。今の急ブレーキのせいで、うっかりキーボードに触れてしまい、もう少しで終わりそうだったプログラムのテストが中断されてしまったのだ。
また最初からやり直しだし、また待たなければならない……
しかし口論する気にもなれず、一つため息をつくと、テストを再開しながら真剣な口調で言った。
第4話
「本当に当てつけなんかじゃない、事実を言っただけだ。そんなに過敏にならないでくれないか?」
その時の結月の顔は見る者が凍りつくほど険しく、どす黒い怒りに満ちている。彼女は手を伸ばして俺のノートパソコンを乱暴に閉じ、こちらをきつく睨みつけた。
「翔にちょっと芝居をしてもらっただけじゃない!それだけで昨日からずっとごねてるわけ!?
そんなことして楽しいの?翔に感謝するどころか、彼のインスタにあんなコメントを残すなんて。
年下だからって、私が甘やかして機嫌を取ると思わないで。子供じみた癇癪を起こすなら実家に帰って、自分の両親にでもぶつけなさいよ。これ以上あなたのわがままに付き合うつもりはないわ。自分の立場をわきまえなさい。
これ以上ごねるなら、もう別れるわよ」
その言葉には、明らかな脅しと怒りが込められていた。
以前の俺なら、とっくに下手に出て許しを乞うていただろう。
だが今の俺は、ただひたすらに鬱陶しいとしか思えなかった。
一刻も早くこのプログラムのテストを終わらせたいだけだ。そうしなければ、この大量のコードを書き直す羽目になりかねない。
軽く頷き、適当に相槌を打った。
「ああ、分かった。運転を続けてくれ」
一体どの言葉が結月の神経を逆撫でしたのか分からないが、彼女は再びこちらに向かって怒鳴りつけた。
「さっさと車から降りて!」
しばし無言で彼女の顔を見つめた後、迷わずパソコンを抱えて車を降りた。
彼女と口論する気は全くない。万が一、運転中にキレられて事故でも起こされたら、それこそ取り返しがつかない。
車を降りた途端、結月はアクセルを踏み込んで走り去っていった。遠ざかる車を見つめながら、かつてのことを思い出した。
彼女の感情の起伏は、いつも俺を不安にさせた。自分がまた何か過ちを犯して、彼女の機嫌を損ねてしまったのではないかと、何度も反省させられたものだ。
彼女にはいつも笑っていてほしかった。だがそばにいる時の彼女は常に情緒不安定で、そのたびに俺はすべて自分のせいだと思い込み、毎回自分から謝って機嫌を取っていた。
しかし今回は、そうしなかった。
ただパソコンを抱えたまま道端にしゃがみ込み、一分一秒を惜しむようにテストプログラムを立ち上げ直した。
それからスマホを取り出し、タクシーを呼んで近くの五つ星ホテルへ向かい、デラックスシングルルームにチェックインした。
……
またしても、ぐっすりと眠ることができた。
朝起きて最初に確認したのは、パソコンのプログラムテストの結果だった。
幸いなことに、エラーもなく完璧に動作していた。
身支度を整え、ホテルの朝食を済ませてからスマホを開くと、結月からのメッセージが目に入った。
【今日中にパーツが全部届くから、仕事が終わったら翔の家に行ってPCを組み立ててあげて】
メッセージをよく見ると、ショップから送られてきた組み立てマニュアルが添付されている。
そこにはPCの完成イメージ図と、特注のLEDパネルの画像がある。
そのイメージ図は、おそらく結月がわざわざイラストレーターに依頼して描かせたものだろう。
「呆れて言葉も出ない」とはまさにこのことで、思わず乾いた笑いが漏れた。
俺はただキーボードを叩くしがないプログラマーであって、プロのPCビルダーではないというのに。
退職願を用意してから会社へ向かい、それを人事部に提出した。
その瞬間、心身ともに驚くほど軽くなった気がした。
オフィスの空気でさえ、清々しく感じられるほどだ。
定時になり、パソコンを片付けて退勤しようとした。
そこに、予期せぬ人物が視界に入ってきた。
目を向けると、結月が不機嫌極まりない顔でこちらを睨みつけている。
彼女を避けて通り過ぎようとしたが、腕をガシッと掴まれた。
「時田、どこへ行くつもり?」
結月の声に、周囲の社員たちが一斉に視線を向けてきた。
俺は壁の時計を指差し、不思議そうな口調で答えた。
「退勤時間ですので、帰りますが?」
結月の氷のような声が響く。
「退勤?プロジェクトチームの誰一人としてまだ帰っていないのに、時田、どうしてあなただけ勝手に帰れると思ってるの?」
「自分の仕事は終わりましたから。どうして残業する必要があるんですか?」
周囲の社員たちが唖然とする中、それだけ言い残してきびすを返した。背後からは結月の怒鳴り声が響き渡る。
「時田!今帰るなら、明日からもう来なくていいわよ!」
第5話
俺は彼女の怒鳴り声を無視し、そのままタクシーを拾って家へ帰った。
家に着くと、スーツケースを引っ張り出して荷造りを始めた。
すぐに荷造りは終わった。俺の私物は、スーツケース一つに収まる程度のものだ。
一番かさばったのは、PC本体と32インチ、24インチの2枚のモニターだ。これらをすべて梱包して宅配便で送った後、深夜にT市へ向かう航空券を予約した。
鍵を靴箱の上に置いた直後、結月から電話がかかってきた。
「服が汚れちゃったから、着替えを一着持って来て」
そう言って一方的に電話を切られ、立て続けに位置情報が送られてきた。
俺は例のディーラーの紙袋を手に取り、20分後には個室の前に到着した。
ドアは少し開いており、中に入ろうとしたその時、自分の名前が聞こえてくる。
「結月、時田とはただの遊びだって言ってなかった?まだあいつを振らないの?」
「もう3年も経つし、まさか本気で好きになっちゃったとか?翔だって、あんたのためにわざわざ帰ってきたのにね!」
結月の返答には、皮肉と軽蔑が混じっていた。
「私が時田みたいな年下を好きになるわけないでしょ?鬱陶しくてたまらないけど、一つだけ気づいたことがあるの」
「何、何?」
周りの友人たちが途端に興味を示すと、結月は得意げに語り出した。
「ここ数年、あいつはベタベタしてきて鬱陶しいけど、何でも言うことを聞いて私に尽くしてくれるし、すごく素直なの。たまに機嫌を損ねても、普段いい子にしてるから大目に見れるしね。
そうそう、仕事もすごく頑張るのよ。決して手を抜かないし、嫌な仕事も進んでやる。一人分の給料で二、三人分の働きをしてくれるから、こんなに都合のいい馬車馬、他にはいないでしょ?」
部屋の中からドッと笑い声が起こった。
「結月がそこまで時田をべた褒めするなら、結局誰と結婚するつもりなの?」
「そうだよ、私たちは結月と翔さんのカップルを推してるんだから、本人がぶち壊しちゃダメだよ!」
結月は笑いながら答えた。
「結婚したってどうってことないでしょ?結婚は結婚、恋愛は恋愛よ。もし本当に結婚するなら、時田の方が少しは向いてるわ。人前に出しても恥ずかしくないし、家事もこなすし、仕事も一生懸命だしね」
俺がドアを押し開けて入ったのは、まさにその時だった。さっきまで盛り上がっていた雰囲気が、一瞬にして凍りつく。
結月は俺だと気づくと、顔に一瞬焦りの色を浮かべたが、すぐに露骨に嫌そうな顔つきに変わった。
そして、悪びれる様子もなくあっさりと言い放った。
「ほらね、来るのが早いって言ったでしょ」
その瞬間、無数の視線が俺に突き刺さった。彼らの表情は皆一様に、俺を笑い者にしようと楽しみにしているものだ。
俺は紙袋を結月の目の前に放り投げた。彼女はそれをちらりと見た。
「着替えを持ってきてって言ったのに、こんな小さな袋で何が入るの?しかもディーラーの袋?」
俺は淡々と笑って答えた。
「車を売ったから、店が袋をくれたんだよ」
するとすかさず、誰かが結月の代わりに噛み付いてきた。
「時田、頭おかしくなったんじゃないの?なんで急に車なんて売るのよ?結月は了承してるわけ?」
俺は思わず吹き出した。
「俺の車が誰かに汚されたから売ったんだ。結月に何の関係がある?彼女が買ってくれたわけでもないんだから。
中に入っているのは間違いなく結月、お前の『服』だなぁ。しかも、翔が直々に脱がせてくれたやつだろ。
お前らもたいがいだな。いい大人がホテルも取らずに、わざわざ俺の車の中でそういうことするなんて。なんならドライブレコーダーの映像を流して、思い出させてやろうか?」