三十三度の裏切り、愛を捨てた決断

Đang tải thông tin quảng bá...

三十三度の裏切り、愛を捨てた決断

GoodNovel Hoàn thành

周囲に内緒で籍を入れた後、弁護士の妻、神崎美月(かんざき みつき)は幼馴染の男、森下蓮音(もりした れおん)とベッドで新しいプレイを開拓...

Chương (1)

第1章

周囲に内緒で籍を入れた後、弁護士の妻、神崎美月(かんざき みつき)は幼馴染の男、森下蓮音(もりした れおん)とベッドで新しいプレイを開拓するたび、俺に結婚式をやり直そうと持ちかけてきた。 この三年で、美月は俺、如月悠冬(きさらぎ ゆうと)に三十三回提案し、そして三十三回式をすっぽかした。 一度目は蓮音の飼い犬が死んだから。 供養のために、三ヶ月間は祝い事ができないと言い出した。 俺は一人タキシード姿で、集まってくれた親族や友人に頭を下げて回った。 二度目は蓮音が胃痛を起こしたからだという。 彼女は車をUターンさせ、彼に胃薬を買いに行き、温かい栄養食を作って看病にかかりきりになった。 その後も、約束した結婚式のたびに、蓮音には必ず何らかのトラブルが起きた。 俺は何度も怒り、揉めたりもした。 だが、美月はいつもこう言い放った。 「私と蓮音はただのセフレよ。私の夫はあなたなんだから、そんなに器の小さいこと言わないで」 そして三十三回目、俺はついに疲れ果てた。 離婚協議書を彼女の前に突き出した。 「離婚しよう」 第1話 神崎美月(かんざき みつき)が俺、如月悠冬(きさらぎ ゆうと)との三十二回目の結婚式をすっぽかしたのは、彼女の九百九十九件目となる勝訴の祝賀会でのことだった。 この祝賀会は森下蓮音(もりした れおん)が彼女のために張り切って企画したものだ。 会場にいる全員が蓮音こそが彼女の恋人だと思い込んでいた。 「神崎さんと森下さんは幼馴染でお似合いのカップルだ。この最高にハッピーな雰囲気なんだし、ここは熱いキスの一つでも見せてもらわないと!」 「賛成!見たい見たい!キス!キス!」 そんなキスを促すはやし立てる声が俺の耳に突き刺さる。 籍を入れて三年、一度もその存在を公にされなかった「本物の夫」である俺は、会場の隅に身を潜めるしかなかった。 美月が甘くとろけるような熱い視線を蓮音に向け、ためらうことなく彼と身を寄せ合い……大勢の目の前で、唇を重ねる光景をただ黙って見せつけられていた。 宴が終わった後、美月との関係が周囲にバレるのを恐れた俺は、一足先にホテル近くの交差点へ向かい、美月を待った。 やがて黒い車がゆっくりと近づき、窓が下りた。助手席には、ぐっすりと眠る蓮音の顔があった。 美月は俺に視線を向けると、いつものように悪びれもせず、当然といった口調で告げた。 「あなたは自力で帰って。私は蓮音を送っていかなきゃいけないから」 俺は目を伏せ、押し黙った。 美月は極度の潔癖症で、自分の車に他人の匂いが残ることを絶対に許さなかった。 以前、彼女のその強情な性格のせいで、重要なクライアントを怒らせてしまったことがあった。 あの時、俺は胃に穴が空くほど酒を飲み、彼女の代わりに頭を下げて回ったのだ。 しかし、すべてが終わった後、彼女は眉をひそめ、露骨に嫌な顔をして俺にこう言い放った。 「あなた、お酒臭くてたまらないわ。自分でどうにかして帰ってちょうだい」 あの日、彼女は雪の降る郊外に俺を一人置き去りにした。 俺は四時間も歩き続けて、ようやく家に辿り着いた。 それなのに今、泥酔した蓮音は彼女の助手席で安らかに眠っている。 そうか。彼女の潔癖なルールは、俺に対してだけ適用されるものだったのだ。 俺は自嘲気味に口角を上げ、努めて平穏な声を絞り出した。 「明日の結婚式には、来てくれるのか?」 美月は一瞬ためらってから答えた。 「今夜は蓮音の看病をしなきゃいけないし、明日の式には間に合わないわ。とりあえず、今回はやめにしましょう」 俺の心はすっと冷え切ったが、それでも静かに頷いた。「わかった」 一呼吸置いて、俺は鞄から一枚の書類を取り出し、美月へ差し出した。 「この書類にサインしてくれ」 わずかに後ろめたさがあったのか、美月は中身を確認しようともせず、ペンを受け取ってさらさらと署名した。 そして俺を見て、優しげな口調で約束した。 「明日帰る時、あなたが一番好きな駅前の有名なたい焼きを買ってあげるわ」 そう言い残すと、彼女は車を走らせて去っていった。 美月が帰宅したのはすでに翌日のお昼時だった。 彼女は鏡の前に立ち、その白くしなやかな首筋には、蓮音が残した生々しいキスマークが刻まれていた。 不意に彼女は手を止め、わずかに首を傾げると、鏡越しにベッドの端に座る俺へと視線を向けた。 第2話 「昨日、私にサインさせた書類、あれ何だったの?」 俺は顔を上げ、瞳の奥に一瞬だけ複雑な感情をよぎらせたが、すぐに元の淡々とした表情に戻った。 「サインする時は何も聞かなかったのに、今さら気になったのか?」 「ふと思い出しただけ。それに、あなたは私の夫でしょ?私を陥れるようなこと、するわけないじゃない」 美月はあっけらかんと笑って見せた。 俺は目を伏せ、瞳の奥に浮かんだ嘲りの色を隠した。 「もしあれが俺たちの離婚協議、あるいは君の財産譲渡同意書だったらどうするつもりだったんだ?」 その言葉を聞いた瞬間、美月は胸を突かれたようにハッと眉をひそめ、あからさまな焦りと不快感を顔に滲ませた。 「冗談でしょう?」 彼女は俺の前に歩み寄ると、俺の膝の上に横向きで腰を下ろし、優しく、しかし有無を言わせぬ口調で告げた。 「わかってるでしょ?もしあなたが私から離れていったら、私、絶対に狂っちゃうわ。 どうしてもその二択から選ばなきゃいけないなら、財産譲渡同意書の方がマシよ」 美月は俺を見つめる。その瞳には、隠しきれないほどの深い情愛が満ちていた。 俺にはわかっていた。俺から離れられないという言葉も、この情愛も、彼女にとっては紛れもない「本心」なのだと。 だからこそ――俺の言った「冗談」もまた、真実なのだ。 俺が彼女にサインさせたもの。それは正真正銘、俺と彼女の夫婦関係に終止符を打つための離婚協議書だった。 五年にわたるアプローチと、三年間の結婚生活。 俺と美月の関係はついに終わりを迎えようとしていた。 午後、出社した俺は真っ先に人事部のオフィスへ向かい、退職届を提出した。 人事部の佐藤課長は顔を上げ、それが俺だと気づくと、驚きに目を見開いた。 「如月さん……本当にこれでよろしいのですか? あなたは神崎先生の傍に誰よりも長くいましたから。うちの事務所が万が一潰れたとしても、あなただけは絶対に辞めないだろうと、みんな陰で話していたくらいなんです。 それなのに、どうして急に……」 佐藤課長の言葉が途切れる。俺は静かに伏し目がちになった。 昨日までは、俺自身もそう思っていた。 この法律事務所は俺が美月と共にゼロから立ち上げたものだ。 二人三脚で苦楽を共にし、力を合わせて頑張ってきた。 初めての依頼が舞い込んだ時、美月はその報酬で俺に豪華なディナーをご馳走してくれた。 あの日、五十四階にある展望レストランから、俺たちは窓の下を行き交う車の群れを見下ろしていた。 美月は俺の胸に寄り添い、「あなたが私の傍にいてくれて本当によかった」と囁いた。 俺は微かに自嘲めいた笑みを浮かべた。 「人にはそれぞれの道がありますから。熟考した上での決断です」 佐藤課長はひどく名残惜しそうな目で俺を見つめた。 「そこまで意志が固いのなら、これ以上は引き止めません。今後のご活躍を祈っていますよ」 俺は静かに礼を述べ、人事部のオフィスを後にした。 自分のデスクに戻った途端、スマホがピコンと通知音を鳴らした。 画面を見ると、蓮音が隠し持っていた裏垢を更新していた。 添付された画像には、ベッドに横たわる美月の無防備で穏やかな寝顔が写っている。 キャプションにはこう添えられていた。【昨夜は飲みすぎちゃったけど、彼女がつきっきりで看病してくれた。ご褒美にキスマークをプレゼント】 俺が見逃さないようにご丁寧に、彼は俺のアカウントをメンションしてきている。 蓮音がこんな真似をするのは今に始まったことじゃない。彼は頻繁に裏垢を使い、美月との親密な写真を投稿していた。 以前の俺なら、こんな見え透いた小細工にあっさりと激怒していた。 美月と何度も衝突し、激しく言い争った。 だが、その度に彼女は事もなげにこう言い放つ。 「私と蓮音はただのセフレよ。私の夫はあなたなんだから、そんなに心の狭いこと言わないで」 美月は、俺が彼女を愛していて絶対に離れていかないと高を括っている。だからこそ、これほどまでに容赦なく、躊躇いもなく俺を傷つけることができるのだ。 俺は自嘲気味に笑った。それでも心の奥には、まだ言い表せない複雑な感情が渦巻いていた。 突然、傍らの同僚が声を上げた。 「見て、神崎先生の彼氏が来たよ」 釣られて視線を向けると、そこには高級なオーダースーツに身を包んだ蓮音の姿があった。彼は周囲の目など一切気にする様子もなく、我が物顔で堂々と美月の執務室へと入っていく。 ほどなくして執務室のブラインドが下ろされ、視線は完全に遮断された。 第3話 俺は目を伏せ、無意識のうちに過去の記憶へと引き戻されていた。 あれは美月が俺を執務室のデスクに押し倒した時のことだ。 彼女の瞳は妖しい光を帯びており、面白がるように笑って囁いた。 「ねえ、私たち……これじゃまるで不倫してるみたい。すごくスリルがあっていいと思わない?」 彼女の汗が俺の胸に滴り落ちる。絶頂の余韻の中、彼女は俺をきつく抱きしめ、甘い声で約束してくれた。 「結婚式を挙げる時には、絶対に私たちの関係を公にしましょうね」 過去の自分の馬鹿らしさに、思わず自嘲の笑みが漏れる。本当に救いようのない馬鹿だった。あんな甘い言葉を、俺は何度も馬鹿正直に信じ込んでいた。 おまけに、三十二回もまんまと騙され続けてきた。 手元にある離婚協議書と退職届を指先でそっと撫でる。 もう、次はない。 二時間後。同僚たちと業務の引き継ぎに追われている最中、美月からメッセージが届いた。 【コーヒーを淹れて持ってきて】 彼女のコーヒーへのこだわりは異常なほどで、甘さや苦味のバランスには厳格なルールがある。 社内で彼女の好みを完璧に再現できるのは俺だけだった。 俺は小さくため息をつき、コーヒーを準備するために給湯室へと向かった。 だが、そこで蓮音と鉢合わせるとは思ってもみなかった。 俺の姿を認めるなり、蓮音の口角が嘲るように吊り上がった。 「悠冬。お前、随分と気が長くなったねえ。てっきりさっきの執務室へ、浮気現場でも押さえに乗り込んでくるかと思ったよ」 彼はそう言いながら、わざとらしく顎を上げ、首筋についた生々しい引っ掻き傷を見せつけてきた。 「そうか?」俺は視線を落としたまま、コーヒー豆を手に取った。「一杯どうだ?最高級のコーヒー豆だ。なかなかいけるぞ」 まさかの冷静な切り返しに、蓮音は一瞬たじろいだ。気味が悪いものでも見るように、上から下まで俺をジロジロと見る。 「何を余裕ぶってんだ?まさか、美月が本当にお前と離婚しないとでも思ってるわけ? 本当のことを教えてあげようか。数年前、僕が冗談で言った一言のために、美月はお前と籍を入れたんだよ。 そうでなきゃ、籍だけ入れておきながら、いつまで経ってもお前と結婚式を挙げない理由なんてないだろ?」 「蓮音、何をデタラメ言ってるのよ!」 突然、給湯室に美月の姿が飛び込んできた。 彼女の顔には明らかな狼狽の色が浮かんでおり、きつい視線で蓮音を睨みつけている。 しかし蓮音は怯むどころか、逆に甘えるような仕草で彼女の腰に腕を回した。 「僕、何か間違ったこと言った?美月、あの時お前は僕の機嫌を取るために、悠冬と結婚するって決めたんじゃないか」 美月の顔色はひどく複雑なものへと変わった。何かを言い繕おうとするかのように唇を震わせるが、結局、まともな言葉は一つも出てこない。 彼女の視線は泳ぎ、どうしても俺と目を合わせようとしない。その顔には、隠しきれない後ろめたさと動揺がありありと浮かんでいた。 俺は呆然とその場に立ち尽くしていた。耳の奥で、蓮音の言葉が何度もこだまする。 思えば、俺と彼女の間には、常に俺が追いかける側という構図があった。 五年間、青臭い告白から始まり、ついには勇気を振り絞ってプロポーズまでした。 だが彼女は決まって、拒絶するでもなく受け入れるでもない、ひどく曖昧な態度を取り続けていた。 そんな美月の口から「籍を入れよう」と言われたあの日。俺は嬉しさのあまり一睡もできなかった。 俺の想いがついに彼女の心を動かしたのだと、彼女の心の中に俺がいるのだと、馬鹿みたいに信じ切っていた。 だが今、目の前にある残酷な真実は鋭い刃となって、俺が抱いていた滑稽な幻想を無情にも切り裂いた。 俺は自嘲めいた笑みを浮かべると、淹れたてのコーヒーを静かに美月の前へと押し出した。 「神崎先生、コーヒーが入りました。……失礼します」 そう言い残すと、俺は美月の狼狽する様子など一瞥もくれず、沈黙したまま背を向けてその場を去った。 夜になり、ベッドに入ろうとした矢先、突然スマホの着信音が部屋に鳴り響いた。 美月からだった。 「悠冬、今日の昼間、蓮音が言ったことだけど……あんなの全部彼のでたらめよ。お願いだから、真に受けないで」 第4話 美月の声には明らかな焦りが滲んでいた。俺が蓮音の言葉を真に受けるのではないかと、恐れているようだ。 俺はスマホを耳に当てたまま、淡々とした声で答えた。「ああ、わかってる」 俺のあまりにも冷淡な反応が意外だったのか、電話の向こうで美月は少しの間沈黙し、やがて口を開いた。 「来月の十八日は大安なの。 私たちの結婚式、その日に挙げましょう」 俺はスマホを握る指に、無意識にぐっと力を込めた。 少し躊躇ったものの、やはり離婚の件を今伝えようと決意した。 「明日、時間は取れるか?離婚届協議書の……」 だが、言い終わらないうちに、電話越しに蓮音の苛立った声が割り込んできた。 「美月!荷造りするんじゃなかったのか?早く来てよ!」 美月の声が一段低くなり、どこか焦ったような口調になった。 「悠冬、ごめんなさい、今なんて言ったの?よく聞こえなかったわ。 明日から蓮音の付き添いで海外の展示会に行かなくちゃいけないの。用件は帰国してから聞くわね」 プツンと通話が切れ、スマホからは無機質な電子音だけが響き続けた。 俺は力なく笑った。直接顔を見て話そうと思っていたが、彼女は結局、最後まで俺にその機会を与えてはくれなかった。 その後の日々で、俺は無事に退職手続きを済ませ、私物をすべてまとめて新しいマンションへと引っ越した。 時折、美月から結婚式の会場レイアウトの画像が送られてきた。 【結婚式ってこんなに色々なスタイルがあるのね。あなたはどれが好き? 海辺でのウェディングなんて素敵だと思うんだけど、どうかしら?】 送られてくる美しいデザイン案を眺めながら、俺の胸には冷ややかな嘲りが湧き上がった。 籍を入れて三年間、繰り返してきたのは数えきれないほどの期待と落胆だけだ。 俺がいよいよ去ろうという時になって、彼女はやっと結婚式に熱を入れ始めた。 それと同時に、蓮音のSNSは毎日欠かさず更新されていた。 二人の甘いツーショット写真や美月が彼のために用意したサプライズの動画ばかりだ。 美月が約束した結婚式の前日、蓮音のSNSに、あろうことか一本のプロポーズ動画が投稿された。 動画の中で、蓮音は仕立ての良いスーツを着こなし、色とりどりの花畑の中に立っている。 そしてなんと、美月の方が片膝をつき、眩い光を放つダイヤの指輪を彼に差し出していた。 周囲からは「キス!キス!」と囃し立てる声が響いた。 動画の最後は、美月が満面の笑みで蓮音の胸に飛び込んでいくシーンで締めくくられていた。 俺は極めて冷静に最後まで見届け、【おめでとう】と一言だけコメントを残し、そのまま蓮音のアカウントをブロックした。 その後、美月から電話がかかってきた。 彼女の弾んだ声が聞こえる。 「悠冬、明日には帰国できるわ。 ウェディングプランナーとの打ち合わせも終わってるから、帰ったらすぐに結婚式を挙げられるわよ」 翌日の午前、俺は海辺の結婚式場には行かなかった。 昼になっても、なぜ式に来ないのかと俺を問い詰める電話は、美月からは一切かかってこなかった。 夜更けになってようやく、美月は疲れ切った様子で帰宅した。 彼女はソファに座っている俺を見ると、その瞳に一瞬だけ後ろめたさをよぎらせた。 「蓮音が少し体調を崩しちゃって、帰国が遅れちゃったの。 でも大丈夫よ。約束する。次の結婚式は絶対に成功させるから」 その言葉を聞いても、俺の心にはさざ波一つ立たなかった。 案の定だ。第三十三回目の結婚式も、彼女は約束を破った。 俺は静かに彼女を見つめ、あらかじめ用意しておいた離婚協議書をテーブルの上で彼女の方へと滑らせた。 「いや、もういい。離婚しよう」