白いバラが散ったあと

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白いバラが散ったあと

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同窓会で、私・長瀬恵茉(ながせ えま)は彼氏に頼まれた用事を済ませて席へ戻った。 だけど、さっきまで私が座っていた場所には、もう親友の...

Chương (1)

第1章

同窓会で、私・長瀬恵茉(ながせ えま)は彼氏に頼まれた用事を済ませて席へ戻った。 だけど、さっきまで私が座っていた場所には、もう親友の清水優奈(しみず ゆうな)が座っていた。 私のグラスも取り皿も片づけられ、新しい食器が並べられている。 まるで、最初から私なんてそこにいなかったかのように。 私に気づいた優奈が立ち上がろうとした、その瞬間―― 竹内英二(たけうち えいじ)は彼女の肩を軽く押さえた。 「どうせ俺たちが事件の話をしても、彼女にはわからないし。ここにいても愛想笑いするだけだから」 その場にいた誰一人として口を挟まなかった。 みんな知っている。 あの頃、家の事情で私は大学を中退せざるを得なかったことを。 大学時代、彼と優奈は法学部きっての名コンビだった。 数々の難事件を力を合わせて解決し、「最強のバディ」と呼ばれていた。 卒業後も二人はそろって一流法律事務所へ。 法曹界のエリートとして華々しい道を歩んでいる。 一方の私は―― 彼氏のコネでようやく事務所に入れてもらった、ただの雑務係。 私はその場に立ち尽くしたまま、何も言えなかった。 英二は私が買ってきたタバコを何気なく受け取ると、当然のように言った。 「優奈がジュース飲みたいって。悪いけど、買ってきてくれる?」 そう言いながら、一度も私を見ることはなかった。 すぐに彼はまた優奈との会話へ戻り、楽しそうに事件について語り合う。 二人の笑い声で満ちたその空間の中で―― 私は、ふいに疲れてしまった。 どれだけ必死に手を伸ばしても届かなかった人。 もう、その背中を追いかけるのはやめようと思った。 第1話 同窓会で、私・長瀬恵茉(ながせ えま)は彼氏に頼まれた用事を済ませて席へ戻った。 だけど、さっきまで私が座っていた場所には、もう親友の清水優奈(しみず ゆうな)が座っていた。 私のグラスも取り皿も片づけられ、新しい食器が並べられている。 まるで、最初から私なんてそこにいなかったかのように。 私に気づいた優奈が立ち上がろうとした、その瞬間―― 竹内英二(たけうち えいじ)は彼女の肩を軽く押さえた。 「どうせ俺たちが事件の話をしても、彼女にはわからないし。ここにいても愛想笑いするだけだから」 その場にいた誰一人として口を挟まなかった。 みんな知っている。 あの頃、家の事情で私は大学を中退せざるを得なかったことを。 大学時代、彼と優奈は法学部きっての名コンビだった。 数々の難事件を力を合わせて解決し、「最強のバディ」と呼ばれていた。 卒業後も二人はそろって一流法律事務所へ。 法曹界のエリートとして華々しい道を歩んでいる。 一方の私は―― 彼氏のコネでようやく事務所に入れてもらった、ただの雑務係。 私はその場に立ち尽くしたまま、何も言えなかった。 英二は私が買ってきたタバコを何気なく受け取ると、当然のように言った。 「優奈がジュース飲みたいって。悪いけど、買ってきてくれる?」 そう言いながら、一度も私を見ることはなかった。 すぐに彼はまた優奈との会話へ戻り、楽しそうに事件について語り合う。 二人の笑い声で満ちたその空間の中で―― 私は、ふいに疲れてしまった。 どれだけ必死に手を伸ばしても届かなかった人。 もう、その背中を追いかけるのはやめようと思った。 ―― タバコを買って戻ってきてから、もう三十分が過ぎていた。 「ジュースもお願い」 その一言を言い残してから、英二は一度も私に視線を向けなかった。 彼は優奈と、先週勝ち取ったばかりの裁判の話をし、そのまま事務所の将来について語り合っている。 二人の間で、私はただの背景になっている。 そんな時間が、これで何度目なのか、もう覚えていない。 やがて優奈がメッセージを確認すると、英二はようやく不思議そうに私を振り返った。 「まだ行ってなかったのか?」 パーティーが始まってから今まで、私はもう三度もお使いに出されていた。 外では土砂降りの雨。 何度も雨に打たれ、全身びしょ濡れになっている。 頬を伝う水滴を見た英二は、一瞬だけ言葉を失った。 すると優奈が慌てて場を取り繕う。 「私、何となく言っただけだから。この雨だし、もう行かなくていいよ」 そう言いながら、彼女は慣れた手つきでバッグからハンカチを取り出した。 英二とお揃いのものだった。 私が大学を中退し、半年ぶりに戻ってきてから―― 英二が買ってくる朝食は、二人分から三人分になった。 卒業してからも、それは朝食だけじゃない。 映画のチケットも、いつも三枚だった。 けれど、そのバランスは少しずつ崩れていった。 いつからだろう。 英二は、優奈の分だけを用意するのが当たり前になっていた。 「もうタバコはやめて。恵茉、煙の匂いが一番苦手なんだから」 優奈は英二の手からタバコを取り上げ、そのまま火を揉み消した。 彼はただ小さく笑い、困ったように肩をすくめるだけだった。 七年間、彼と一緒にいた私は知っている。 誰かを無条件に甘やかす彼の表情を。 昔、私は何度もタバコをやめてほしいと頼んだ。 その匂いが嫌いだから。 けれど彼は…… 「俺の事情も知らないくせに。このくらいの自由まで奪うのか?」 そう言って、取り合ってはくれなかった。 人に口出しされるのを何より嫌う彼が―― 今では優奈に注意されることを、当たり前のように受け入れている。 場の空気が再び盛り上がった。 私はそのまま静かに個室を後にする。 私は深く息を吐き、人事部長へ電話をかけた。 退職したい、と伝えるためだ。 彼女は驚きを隠せなかった。 「事務所の日常業務は、ほとんどあなたが支えてるのよ。あなたが辞めたら、本当に回らなくなるわ。 それなら……竹内所長と相談して、部署を変えてもらう?」 私は入所一年目から、何度も異動を願い出てきた。 同僚の裁判を支えて勝訴しても、彼は「運が良かっただけだ」と切り捨てた。 正社員登用を願い出れば、「まだ経験不足だ」と言われるだけ。 年末賞与では、私の評価を小数点以下六桁まで細かく査定した。 理由はいつも同じ。 「お前は俺の恋人だから、えこひいきはできない」 その一方で、優奈は一年で二階級も昇進。 彼は「実力があるからだ」と言った。 忘年会の表彰も、彼女だけが総なめ。 それも「昔からの同級生への配慮」だと言った。 七年間、誰よりも真面目に働き続けても、私は最後まで、誰の目にも留まらない存在だった。 二人は今も、私が部屋を出たことにさえ気づいていない。 その背中を見つめながら、私は静かに笑った。 そして答えた。 「伊藤さん、退職手続きをお願いします。 ……彼には、知らせないでください」 第2話 伊藤部長はそれ以上引き止めることはなく、退職手続きを進めてくれると約束してくれた。 帰ろうとしたそのとき、不意に英二が追いかけてきた。 「『彼には言わないで』って、どういうことだ?」 「……別に、何でもないよ」 英二はそれ以上問い詰めることなく、紙袋を差し出した。 「このワンピース、どう思う?」 それは、先週雑誌で私が印をつけていた一着だった。 あのとき「似合うかな?」と聞いたのに、彼はメッセージを返すのに夢中で、まともに答えてくれなかった。 それでも、覚えていてくれたんだ―― そう思って胸が少し熱くなった、その瞬間。 「優奈は気に入ってくれるかな?」 その一言に、私は息をのんだ。 そして静かにうなずいた。 「うん、きっと似合うよ。彼女らしいデザインだね」 私があまりにも落ち着いていたからだろうか、英二は珍しく言い訳を口にした。 「先週の裁判が勝てたのは、全部優奈のおかげなんだ。 ただ働きさせるわけにはいかない。所長として、何かお礼くらいはしないとな」 そう言うと、彼は私の頬を軽くつまみ、笑いながら続けた。 「お前も欲しいなら、優奈が飽きたあと借りればいいだろ。 あいつ、人と服が被るの嫌いだからさ。どうせお前たちは仲がいいんだし、そのほうが無駄にならない」 ……私は、彼の恋人なのに。 新品を贈られるのではなく、誰かのお下がりを待つ立場なんだ。 パーティーが終わると、みんなそれぞれ車で帰っていった。 優奈は何の迷いもなく助手席に乗り込んだ。 その車は、英二が事務所で初めて得た報酬で買ったものだった。 「あとは俺が毎日送り迎えするよ」 そう笑ってくれた日のことを、私は今でも覚えている。 けれど、その初日。 優奈が終電に乗り遅れたと言って、「ついでに送ってもらってもいい?」そう頼んできた。 英二は私を見て言った。 「今日だけは譲ってくれないか?」 その「今日だけ」は――五年間も終わらなかった。 私がドアノブに手をかけるより早く、車は走り出した。 排気ガスだけが、私の顔に吹きつける。 車が視界から完全に消えるまで、二人は仕事の話に夢中で、私がまだ乗っていないことにさえ気づかなかった。 そのころには雨脚もさらに強くなっていた。 配車アプリを開いても、三十分待っても誰一人として注文を受けてくれない。 酔っぱらった男たちが次々と声をかけてくる。 怖くなった私は逃げるように雨の中へ走った。 その中、足を滑らせ、泥水の中へ倒れ込んだ。 濡れた路面はひどく滑りやすく、何度立ち上がろうとしても体に力が入らなかった。 その瞬間、積もり積もっていた悔しさが、一気に胸の奥から溢れ出した。 ずぶ濡れのまま家へたどり着き、玄関の扉を開ける。 すると、リビングから女性の笑い声が聞こえてきた。 優奈は足を英二の膝の上に乗せ、彼はその膝に薬を塗っていた。 私に気づいた英二は眉をひそめた。 「さっき、なんで車に乗らなかった? 俺たち、優奈と二人で必死に探したんだぞ。おかげで優奈は膝までぶつけたんだから。 頼むから、もう少ししっかりしてくれ。役に立てないなら、せめて足は引っ張るな」 彼の目には、雨で全身びしょ濡れの私も、血の気を失った私の顔色も映っていなかった。 見えていたのは、優奈が膝を擦りむいたことだけ。 私は黙ってスマホを見下ろす。 着信も、メッセージも、一件もなかった。 本当に…… 私を探していたのだろうか? 優奈は慌てて足を引っ込め、必死に弁解する。 「恵茉、違うの。本当にケガをしただけなの。英二も薬局を何軒も回ってくれて……それで迎えに行くのが遅くなって……」 私の顔色に気づいた彼女は、足を引きずりながら家を飛び出した。 英二も追いかけようとして、ふと立ち止まった。 「明日、俺と優奈は出張だから。二人分の荷物、まとめておいてくれ」 それだけ言い残すと、彼は傘を一本手に取り、一度も振り返ることなく出て行った。 説明もなく、謝罪もなく、ただ当たり前のように私へ指示を出すだけ。 まるで私は、二人の専属の家政婦であり、雑用係であり、何でも言うことを聞く召使いだった。 夢だけは誰にも負けなかったあの頃の私は、いつの間にか、呼べば来るだけの存在になっていた。 それでも二人は、私が彼らのおかげで事務所に居場所をもらえていると、本気で信じている。 だけど―― もう、彼の言葉に従うことはしなかった。 かわりに、荷物をまとめて、この家を去った。 第3話 英二は「予算が足りない」の一言で、私を家に残し、自分たちだけで出張へ向かった。 出張のはずなのに、優奈のSNSは驚くほど賑やかだった。 古い町並みで写真を撮ったり、雨上がりの甘味処で抹茶を楽しんだりしている。 面倒なことが大嫌いなはずの英二が、手作り工房で三時間も付き合って、一緒に陶芸までしていた。 そんな中、同行していた同僚が誤って仕事用グループチャットにメッセージを送ってしまった。 【大ニュース! ホテルから急に部屋が足りないって言われて、所長と優奈さんは同じ部屋に泊まることになったらしい!】 そのメッセージは数秒で送信取り消しになった。 ほぼ同時に、英二から電話がかかってきた。 「ホテルに本当に空きがなかったんだ。 また『親友をちゃんと気遣ってない』ってお前に責められるのも嫌だから、仕方なく同じ部屋にしただけだ」 その横から、優奈の声が絶え間なく聞こえてくる。 「英二、私の洗顔フォームどこに置いた? ちょっと、髪踏まないでよ!」 次の瞬間、彼女は電話を奪い取った。 「恵茉、あなたも来ればよかったのに。 この堅物と一緒だと、ゴシップ話もできないんだから。 安心してね。今夜は私がちゃんと見張ってるから、英二がほかの女の子を口説いたりしないようにしてあげる!」 ――全部、私のためだと言いながら、二人はこれまで何度も、一線を越えてきた。 英二は「優奈をろくでもない男から守るため」と言って、接待の席では一日限定の恋人役まで演じた。 優奈は英二がほかの女性と話すのが嫌で、八時間も電話をつなぎっぱなしにしたことがある。 そのせいで、私が助けを求めてかけた電話には、一度も気づかなかった。 そして今もまた。 私を安心させるという理由で、二人は同じ部屋―― いや、同じベッドで過ごそうとしている。 私は強く拳を握り、爪が掌に食い込むほど力を込めながら、何度も心の中で繰り返してきた言葉を、ついに口にした。 「英二……別れよう」 電話の向こうが静まり返る。 数秒後。 英二は、笑った。 「あのな、お前ももう子どもじゃないんだからさ。 いつまでそんな子どもじみたこと言ってるんだ? 俺も優奈も、ずっとお前のわがままを受け入れてきたんだぞ。 もういい加減にしろ。こんなくだらない冗談はやめろ!」 すると優奈が慌ててスマホを取り返す。 「恵茉、お願い、私たちのこと怒らないで?私が謝るから」 「謝る必要なんかない!」 英二が怒鳴るように遮った。 「これ以上甘やかしたら、ますます図に乗るだけだ。 お嬢様でもないくせに」 その言葉を最後に、電話は一方的に切れた。 大学時代、私たちが喧嘩したとき、彼は三か月もの間、欠かさずプレゼントを贈って仲直りしようとしてくれた。 なのに今では、「ごめん」の一言さえ、口にしてくれない。 電話を切った私は、すぐに不動産会社へ連絡し、新居を相場より安く売却したいと伝えた。 だが、担当者は歯切れ悪く答えた。 「長瀬様……実は、この物件には長瀬様のお名前だけでなく、清水優奈様のお名前も登記されています。 申し訳ありませんが、お一人の判断では売却できません」 その瞬間、全身の血の気が一気に引いていった。 一年前。 私と英二は結婚の準備を始め、新居の頭金を二人で貯めようと決めた。 私は法律事務所で働きながら、ネットでも法律顧問の副業を掛け持ちし、ようやく必要なお金を貯めた。 「名義はお前だけでいい」 そう言った英二は、自ら不動産登記の手続きまで引き受けてくれた。 それなのに今では、優奈は何一つ苦労することなく、当たり前のように登記名義人になっている。 私が何年も流してきた汗も…… 涙も…… 積み重ねてきた努力も…… そのすべてが、一夜にして踏みにじられたのだった。 第4話 その家から出る前日。 私は退職届を手に、英二の事務所へ向かった。 所長室の前には、すでに大勢の職員が集まっていた。 私の姿を見つけると、誰もが軽蔑するような視線を向けてくる。 人垣をかき分けて中へ入ると、優奈がソファに座り、涙を流していた。 英二は真っすぐ私の前まで歩み寄ってきた。 その顔には、隠しようのない失望が浮かんでいた。 「そこまでして優奈を陥れるなんて、どれだけ嫌ってるんだ?」 「……何のこと?」 戸惑う私の前で、優奈は一冊のファイルを掲げ、皆に見えるように広げた。 涙をこぼしながら、震える声で言う。 「私が必死に集めた証拠が……一晩で全部偽造されていたの。 そのせいで裁判は敗訴……最悪の場合、弁護士資格まで取り消されるかもしれない……」 その言葉を疑う者は誰一人いなかった。 普段から証拠書類を管理していたのは私だ。 細工をするなら、一番簡単なのは私だったから。 「私じゃない!」 私はまっすぐ英二を見つめた。 「あなたもそう思ってるの?」 彼は嫌悪と失望の入り混じった目で私を見下ろした。 「昨日、お前が妙に静かだった理由がようやく分かった。 泣きも騒ぎもしないで、一晩かけてこんなことを企んでいたんだな。 優奈がどれだけ苦労して弁護士になったか、お前だって知ってるはずだ。 それなのに、彼女の人生を台無しにする気だったのか?」 その瞬間、すべてを理解した。 優奈の弁護士資格を守るために、私を犠牲にする道を選んだ。 私が何もしていなくても…… 胸に大きな穴が開いたようだった。 冷たい風だけが、その穴を吹き抜けていく。 英二は自ら訴訟資料をまとめ上げた。 私が証拠を偽造し、依頼人に多大な損害を与え、さらに優奈の名誉を故意に傷つけた―― 並べられた証拠は、どれも私を追い詰めるには十分すぎた。 判決の結果、三年間必死に勉強して手に入れた弁護士資格は取り消された。 もう二度と、どこの法律事務所も私を雇うことはない。 私は魂が抜けたように法廷を後にした。 その頃、優奈のSNSは今日も賑わっていた。 英二は落ち込む彼女を励ますため、一週間の海外旅行へ連れ出していた。 投稿される写真の一枚一枚。 タグ付けされた景色のすべてが、かつて私と英二が一緒に訪れた場所だった。 私は事務所へ荷物をまとめに戻った。 誰もが蔑むような目で私を見ていた。 その中でただ一人、優奈だけが勝者のような笑みを浮かべている。 やがて英二が、解雇通知書を手に私のもとへやって来た。 その瞳には、わずかな後ろめたさが宿っていた。 「もう法律事務所で働かなくてもいい。 この仕事は、お前には負担が大きすぎたんだ。 それでも働きたいなら、知り合いの会社で受付を募集してる。 お前なら見た目もいいし、紹介してやるよ」 そう言って、私の荷物を持とうと手を伸ばしてきた。 私はその手を静かに払いのけた。 そして私は、段ボール箱を胸に抱え、一度も振り返ることなく事務所を後にした。 空港へ向かうタクシーの中。 鳴り続ける彼からの着信を、私は一件残らず拒否した。 飛行機が離陸する直前、私は最後に、一通だけメッセージを送った。 【英二。私たち、終わりにしよう】 送信を確認すると、彼の連絡先をすべてブロックした。 …… その日の夕方。 英二は、予約していたレストランの二人席へ向かおうとしていた。 恵茉に電話をかけようとスマートフォンを手にした、そのとき―― 一通のメッセージが画面に表示された。 その内容を目にした瞬間、彼の身体が大きく揺れた。 スマートフォンは手から滑り落ち、乾いた音を立てて床へ転がった。