忘却の糸:愛と裏切りの光と影

Đang tải thông tin quảng bá...

忘却の糸:愛と裏切りの光と影

GoodNovel Hoàn thành

須藤明智は私をとても愛していると言い、私に、この世で最も盛大な結婚式を挙げてくれると約束した。 しかし、結婚式を三日後に控えたある日、...

Chương (1)

第1章

須藤明智は私をとても愛していると言い、私に、この世で最も盛大な結婚式を挙げてくれると約束した。 しかし、結婚式を三日後に控えたある日、彼は私のためにオーダーメイドで作らせたウェディングドレスを、彼の義理の妹の直美に渡し、私には、記憶を失う薬を手渡した。 「友莉、君を悲しませたくはない。でも、直美は癌と診断され、もうすぐ死ぬ。彼女の唯一の願いは、一度だけ僕と結婚することだ。その願いを、叶えないわけにはいかない」 「この薬を飲めば、君は僕たちの間の全てを、一時的に忘れることになる。でも心配しないで。三日後、結婚式が終われば、君は解薬を飲んで、全てを思い出す。その時、僕はもう一度、君に立派な結婚式を捧げるから」 彼の、拒否を許さないような強い眼差しに、私は迷わず、その薬を受け取り、飲み込んだ。 須藤明智は知らない。この薬は、私が開発したものだということを。 そして、この薬には、解薬など存在しない——ということを。 三日後、私は、私の最爱の人、つまり彼自身を、完全に忘れてしまう。 私たちの間に、再び始まることなど、もう、決してない。 第1話 完成したばかりのウェディングドレスは、須藤明智(すどう あきとし)の手配で、直美(なおみ)のもとへと届けられた。 彼の手が、私の頬を包み込む。その温度は、いつもと変わらない。優しく、穏やかで、まるで私を世界で一番大切に思っているかのように。 「友莉(ゆうり)、怖がらないで」 彼の声は、いつも私を落ち着かせてくれる、あの低く響くトーン。 「この薬は、君が僕を愛していた記憶を、一時的に消すだけ。解薬を飲めば、すべて元通りになる。悲しい思い出も、苦しい気持ちも、何も残らない。僕たちは、以前と同じように幸せになれる」 彼は微笑んだ。 その笑顔に、嘘は見えなかった。 いや、見せかけの「誠実さ」が、あまりにも完璧だった。 「もちろん。心配しないで。僕が愛しているのは、君だけだ。だから、直美の願いを叶えたら、僕たちはもっと素敵な結婚式を挙げる。君を世界で一番幸せな花嫁にしたいから」 私は知っていた。 もう、私たちには、二度と結婚式を挙げる機会などは、来ない。 なぜなら、私はこの「忘却の薬」の開発者だから。 この薬の効果を、誰よりもよく理解している。 一瞬で記憶を消すわけではない。むしろ、徐々に、使用者の心の中で最も大切にしている記憶を削り取っていく。 そして最終的には、愛する人のことすら、完全に忘れてしまうのだ。 そして何よりも残酷なのは、解薬など最初から存在しないことだ。 視線を上げると、すべてを完璧に見せようとする明智を、見つめた。「もし、私がずっと思い出せなくなったら?」 「それなら、もう一度、君に僕を愛させてあげる」 彼は自信に満ちた笑みを浮かべ、指先が、私の鼻先に触れている。 「さあ、ハニー。拗ねないで。直美はただの病人なんだ。僕がこんなことをしているのは、彼女の最後の願いを叶えるためだけだ。君なら、きっと理解してくれるよね?」 もう一度、愛させる? 私は目を伏せ、自嘲的に唇の端を吊り上げた。 彼はきっと忘れている。 かつて、私が彼のプロポーズを受け入れるまで、どれだけ時間がかかったかを。 私が「イエス」と言ったあの夜、どれだけ真剣に、そして悲しげに彼に忠告したかを。 「須藤明智、私は二度目のチャンスなんて与えない。もしあなたの愛に不純物が混ざったり、他の誰かに少しでも心が向いたりしたら、たとえほんの少しでも、私はあなたを、私の世界から完全に消し去る」 その時、彼は目を真っ赤に充血させ、まるで尾を踏まれた獣のように、激しく私を抱きしめ、唇を奪うようにキスをして、呪うように囁いた。 「絶対に、そんなことはしない。友莉、僕は永遠に君を忘れない」 だが、皮肉なことに、今の彼は義妹の夢を叶えるために、私が待ち望んでいた結婚式を台無しにし、進んで私に薬を飲ませ、私に、彼との全てを忘れさせようとしている。 胸の奥が締め付けられるような酸っぱい痛みが広がり、心臓が突然、ひきつるように疼いた。 顔から血の気が引き、真っ青になる。 明智は、私の異変に一番に気づいた。すぐに私を抱きしめ、心配そうに尋ねてきた。 「ハニー、どうしたの?びっくりさせないで。本当に、僕は君を見捨てたりしない。もし不安なら、まず入籍しようか?」 必死に体を支えながら、立ち上がり、少し混乱した表情で彼を見上げた。 「入籍?誰と?」 私のそんな茫然とした表情を見て、明智は一瞬きょとんとした後、目の奥に、かすかな喜びの色を浮かべた。 その微かな動揺を見逃さず、ちらりと、ゴミ箱の中に、彼が慌てて投げ捨てた薬の箱を見つけ、私は微笑んだ。 そして悟った。 彼は、薬の効果が出始めたと思った。 「いや、何でもない。聞き間違いだよ。 友莉、僕はお兄さんだよ。 君は病気で、少し記憶を失ったんだ」 まず最初に消されたのは、私が何よりも待ち望んでいたあの結婚式。 しかし明智は、私が「全ての過去を忘れた」と思い込み、その隙を突いて、私と直美の立場を入れ替えようとしていた。 でも、私はそれを指摘しなかった。 これは、ただの「別れの芝居」。 私にとっての、最後の「プレゼント」と思えばいい。 その時、ドアが開いた。 純白のウェディングドレスをまとった女性が、ふわりと入ってくる。 「ダーリン、私は綺麗?」 水嶋直美(みずしま なおみ)、いや、須藤直美(すどう なおみ)だった。 そのドレスは、明らかに私のサイズに合わせて作られたもの。直美は少し大きすぎるスカートに足を取られ、よろけそうになる。 明智は、反射的に私を突き放し、彼女を抱きしめた。 私の体は、その衝撃で壁にぶつかった。 もともとズキズキと痛んでいた胸のあたりが、さらに激しく痙攣するように痛んだ。 「友莉、大丈夫?」 私の痛みに耐えかねた声を聞き、明智はようやく反応し、私の方を見て、いつものように言い訳を口にした。 「直美は病気なんだ。だから、先に彼女を支えたんだ……」 「あなたは私の旦那さんでしょ?当然、私を優先して守るべきよ。 友莉は気にしないわね?」 彼の言葉が終わらないうちに、直美はまるで主権を主張するかのように、明智の腕を抱きしめ、私を見下ろしながら、勝ち誇ったように笑った。 私は痛みに耐えながら、背筋を伸ばし、微笑んだ。 「もちろん」 直美は満足そうに笑った。 「じゃあ、三日後の結婚式、絶対に来てね。 私たちの幸せな瞬間を、きっと見届けてほしいの」 その言葉を聞いた瞬間、明智が不機嫌そうに口を挟んだ。 「君は体調が悪いんだ。結婚式には来なくていい」 明智は私の穏やかな様子を見て、眉をひそめた。 彼の視線が再び私に向けられるのを見て、直美の顔に一瞬、翳りが走った。 しかし、すぐにうまく涙を浮かべた。 「明智兄さん、私はただ、結婚式で友莉から祝福をもらいたいだけなの。それが、そんなに無理なお願い? もしそれさえも嫌なら、私は、死んでしまった方がいいかも……」 その可憐な態度は、一瞬で明智の保護欲をかき立てた。彼は心配そうに直美を抱きしめた。 「泣かないで。お前の言う通りにするよ」 私がじっと二人を見つめているのを見て、明智は少し不自然に咳払いをし、少し心虚そうな表情を浮かべた。 しかし、私が今「記憶を失っている」状態だと思い出したのか、表情の険しさはすぐに和らいだ。 「友莉、僕はまず直美を病院に連れて行って検査を受けさせる。君は家でゆっくりしていて、結婚式の日には迎えに来させるから」 そう言うと、彼は直美を抱きかかえてその場を離れた。 二人が重なり合う背中は、まるで鋭い刃のように、私の心を深々と貫き、体中が震えるほどの痛みを与えた。 そして、あの愛し合っていた記憶も、この痛みの中で、少しずつ、ぼやけていくように感じた。 スマホが、その時、鳴った。 「黛友莉(まゆずみ ゆうり)様、H国研究機関へのご復帰、ありがとうございます。三日後、研究室にてお待ちしております」 第2話 電話を切ると、私は無意識に、明智との部屋へ戻った。 だが、かつて二人で使っていたその部屋に、彼のものは、どこにもなかった。 その時、私はようやく気づいた。 この「役割を交換する芝居」は、気まぐれな思いつきではなく、最初から計画されていたのだ。 さっきこすれて擦りむいた肩を押さえながら、胸の奥が苦しくなるのを感じた。 昔、私が彼のためにスープを煮て、指先を少し火傷しただけで、彼は半日も心配して、どうしても医者を呼ぼうとしたものだ。 私は彼を大袈裟だと笑ったが、彼はうつむき、私の手にキスをして、優しく囁いたものだ。 「友莉、君は僕の宝物だ。僕が君を娶ったのは、君のために尽くすためだ。辛い思いをさせるためじゃない。君が痛むなら、僕はその何倍も痛む!」 でも今、彼は私を傷つけ、それを平然と見過ごしている。 まるで、私が人生で一番大切にしていたウェディングドレスが、最終的に別の女に着られるように。 薬を塗りながら、親友のダニーから電話がかかってきた。「友莉!何が起きたの?三日後はあんたの結婚式でしょ? どうしてH国行きの航空券なんて予約してるのよ?」 一瞬の沈黙の後、私は、ポツリと呟いた。 「結婚式は、もうない……」 自嘲気味に唇を吊り上げ、「忘却の薬」のことを話した。 次の瞬間、電話の向こうから、怒声が炸裂した。 「友莉!待ってなさい、今すぐ行くから!あのクソ野郎と浮気女、ぶっ飛ばしてやる! あの時、あんたが自分の研究成果で須藤明智のクソ会社に投資してくれなかったら、あいつは事業に失敗し、もう家族に見放され、路頭に迷ってたのよ! それを今や成功して、女に惚れやがって、あんたを差し置いて、薬なんて飲ませるなんて、ふざけるな!本当に腹が立つ!あの畜生が!」 過ぎ去った日々が、次々と脳裏に浮かび上がり、私は目頭が熱くなるのを感じた。 あの時、彼が事業に失敗し、家族に見捨てられた時、彼を信じて、全てを賭けた。ためらわずに、自分の研究成果と、資金、人脈すべてを注ぎ込み、彼を再起させ、須藤グループの後継者にしたのだ。 そして、最も辛かった三年間、私は彼と共に、深夜から黎明までを過ごし、必死に支え続けた。 彼は何度も、何度も私に誓った。 「君は僕の唯一のお宝だ。僕が生涯をかけて愛する妻だ」 でも、なぜか、彼は次第に他の女のことを気にし始めた。 彼の優しさと情けは、どうして私の愛で支払われなければならなかったの? ダニーは明智を罵倒し続けて30分、ようやく疲れたのか、少し沈黙した後、ふっと笑った。 「でもさ、友莉、あのクズ野郎は、解薬がないこと、知らないんでしょ? ふふっ、想像してみて。あの男が、後で気づいて、泣き叫んで、必死にあんたの名前を叫んで、でもあんたが、平然と『お前は誰?』って聞き返す姿…… きっと、超カッコ悪いと思う」 彼女の言葉で、私の胸がぎゅっと締め付けられたような痛みの中に、どこかほっとする温もりも混ざっていた。 その瞬間、私は、思わず笑ってしまった。 眠れない夜になると思っていたのに、気づけば、ゆっくりと眠りに落ちていた。 そして、目が覚めたのは、夜明け前。目を開けると、誰かの手が、私の手首を優しく掴んでいた。 視界がぼやける中、ゆっくりと顔を上げると、明智が、私の指から、何かを外そうとしていた。 「何してるの?」 私の声に、彼の動きが止まる。 一瞬、言い訳を探すように視線を泳がせ、それから私に半分ほど飲まれたコップの水を差し出した。 「起きたの?喉が渇いたのでしょ?」 私は彼の言葉を無視して、聞き返した。 「何してるの、って聞いたの!」 彼は、少し困ったように鼻を掻き、言い訳を探すように言った。 「ああ、これは、直美の婚約指輪だ。結婚式で使うものだから、返さなきゃいけない」 嘘をつく彼を見て、私は、言葉を失い、ある種の皮肉を感じた。 彼は直美のために、私を馬鹿にして弄んでいる。 はっきりと覚えている。 あの時、私がふと「指輪のデザインはどれも似たようなもので、新鮮味がない」と呟いただけで、彼はすぐに私のために、自ら手がけてこの指輪を作ってくれたのだ。 独特な桔梗の花をモチーフにしたデザインで、インナーには私と彼の名前のイニシャルが刻まれていた。 「これは、君だけに向けた、僕の唯一無二の愛の証だ」と、彼は言った。 でも今、彼はこの指輪を騙し取り、別の女の願いを叶えるために渡そうとしている。 可笑しくなって、わざと聞いた。 「あなたたちの婚約指輪が、どうして私の指にあるの?」 彼は、一瞬言葉に詰まり、それからわざとらしく眉をひそめた。 「友莉、冗談はやめて。君が気に入ってるなら、結婚式の後で、新しいのを作ってあげる。 でも、僕は直美に完璧な結婚式を約束した。 だから、この指輪は彼女に返さなきゃいけない」 偽りに満ちたその言葉が、私の心をまた抉った。 私は指輪ができたあの日を思い出した。 明智は完成するなり、私の指にそれをはめようと急いだのだ。 私は笑って、「結婚式でしか付けない指輪なのに、どうしてそんなに急ぐの?」と言った。 「君が逃げないように、早く縛り付けておきたい。 奥さん、永遠に外しちゃダメだよ。約束してね」 彼は真剣な表情で私にキスをして誓った。 でも今、他の女のために、彼はためらうことなく、自ら私の指輪を外した。 私は空っぽの指をなでながら、大きな失望と悲しみに包まれていた。 激しく痛む心を押さえながら、私は呟くように自分に言い聞かせた。 「大丈夫。ただ、捨てられただけよ。この二日が過ぎれば、きっともう痛くないから」 夜が明け、新しい一日が訪れようとしている。 かつて私が大切にしていた記憶、愛、約束は、もう、ほんのかすかな塵となって、風に舞い散っていた。 第3話 指輪を奪われた後も、明智は相変わらず、【時間通りに食事を取るように】とメッセージを送ってくる。 【体調は大丈夫?】と気遣う言葉もある。 でも、彼は一度も戻ってこなかった。 その時間を利用して、数人の友人と別れの食事をし、これまでの数年間、彼から贈られたプレゼントをすべて捨てた。 スマホやパソコンに保存されていた、彼と関係のあるファイルも、すべて削除した。 そして三日目の朝、私は迷うことなくスーツケースを押して家を出た。 空港へ向かう途中、スマホに直美から送られてきた。 結婚式の様子を捉えた動画が届いた。 それは、私がかつて想像していた通りの光景だった。 彼女は私のために作らせたウェディングドレスを着て、私の名前が刻まれた指輪をはめ、明智の腕を親しげに絡め、周囲の祝福を受けていた。 ある友人が疑問を口にした。 「花嫁は友莉じゃないの?どうして直美さんになってるの?」 すると、明智はすぐに彼女を後ろにかばい、疑いを許さないような声で会場中に響き渡るように言った。 「今日は僕と直美の結婚式だ。関係のない人の話はしないでくれ」 五年間の恋。 その結末が、たったの「関係のない」の文字で切り捨てられた。 その言葉を聞いた時、心のどこかで小さなガラスの欠片が、音もなく砕け散るのを感じた。 けれど、痛みは、なかった。 スマホの画面に映し出された、その結婚式の様子を、撮影した59秒の動画を、最後まで、静かに、じっと見つめていた。 まるで、他人事のように。 そして、その瞬間、私の中で最後に残っていた「須藤明智」という名前の記憶が、風に舞う塵のように、ふわりと消え去った。 かつて、私の心の中で激しく燃え上がり、そして深く刻み込まれたあの名前は、今や、ただの見知らぬ他人のように感じられた。 あの記憶に浸り、苦しんでいた深情も、まるで最初から存在しなかったかのようだった。 私はふと、唇をわずかに動かした。 それは嘲笑でもなく、ただ、すべてが消え去った後の、解放感と確信だった。 そう、完全に消し去ることが、こんな感覚なのだ。 何もかもが、空白で、軽やかで、何の重荷もない。 私は知らない、その時、会場ではダニーが大暴れしていたということを。 明智と直美が、ついに指輪を交換しようとしたその瞬間、ダニーはグラスのワインを、明智の顔にぶちまけた。 「何しに来たの?友莉は?」 明智は、スーツに広がる赤い染みを見て顔を歪めたが、相手がダニーだと気づくと、怒りを押し殺した。 ダニーは手を拭きながら、冷笑を浮かべた。 「このクズ男とその女を、ぶちのめしに来たの。 友莉の目なんて、穢したくないから自分で来たのよ」 「何を言ってるの?」 明智は、すでに涙声になりかけている直美を後ろに庇いながら、顔を曇らせた。 「誤解だよ。友莉にはちゃんと説明した。僕たちは話し合った。彼女は僕と直美の結婚を受け入れたんだ」 「だからって、彼女の記憶を無理やり消したの?」 ダニーの声が、冷たく尖った。 「須藤明智、あんたは、本当に思い込みの激しい大馬鹿さんね。 あの薬、一瞬で記憶が消えるとでも思ったの? 違うよ、あれはただ、心の中で最も大切にしている記憶を、少しずつ薄れさせていくだけ。 あんたがこの三日間やったこと、友莉は全部、はっきりと覚えているのよ」 「バカな!そんなはずない!」 明智の顔色が、一気に紙のように白くなった。 「あの報告書には、『一時的に最愛の人の記憶を忘れさせる』って、書いてあったはずだ!」 でも、彼は言葉を続けられなかった。 そこには、「即座に」という言葉は、どこにも存在しなかったのだから。 彼は直美の手にはめられた、本来私のものだった指輪を見つめ、目尻が赤くなっている。 そして、自分の頬を打ち据え、震える手でスマホを取り出し、研究所に電話をかけようとした。 「大丈夫、解薬がある。友莉が解薬を飲めば、全部元通りになる!僕に、許してくれる。僕を愛してくれる彼女なら、きっと許してくれるはずだ!」 「無駄よ。あの薬は、友莉が開発したもの。解薬なんて、存在しないの」 ダニーは容赦なく、彼の希望を打ち砕い、そして顎を上げ、冷ややかに彼を見下ろした。 「つまり、あんたは自分の手で、二人の愛の記憶を消し去り、友莉にあんたを永遠に忘れさせたってわけね」 その言葉が、明智の最後の希望も粉々に打ち砕いた。 彼の顔には血の気がなく、声は震えていた。 「違う!僕は、そんなつもりじゃ……! 僕は、友莉を傷つけたくなかった! 僕は、友莉を愛してる!僕は、友莉だけを……!」 彼は、必死にスマホの一番上の連絡先を呼び出し、指が震えるほど何度もダイヤルを押す。 だが、応答はない。 その瞬間、彼の心はまるで大きな手に掴まれたかのように、激痛で腰を折るほどに締め付けられた。 ダニーは、苦しんでうずくまる明智と、地面にうずくまる直美の情けない様子を見て、満足げに微笑んだ。 「探したかったら、無理よ。 あんたが他の女と指輪を交換しているその時、友莉はもう、あんたの世界から、完全に消えていたの。 須藤明智、あんたは、永遠に彼女を失ったんだよ!」