死んだあと、法医学者である兄は私の遺体を繋ぎ合わせた

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死んだあと、法医学者である兄は私の遺体を繋ぎ合わせた

GoodNovel Hoàn thành

母の命日の日、私は墓地に押し入ってきた密売人たちに連れ去られた。 法医学者である兄への報復のため、彼らは私の身体を血まみれになるまで痛...

Chương (1)

第1章

母の命日の日、私は墓地に押し入ってきた密売人たちに連れ去られた。 法医学者である兄への報復のため、彼らは私の身体を血まみれになるまで痛めつけた。 私は必死に一週間耐え続け、ようやくの思いで兄に電話をかけた。 だが兄がこう言った。「どうしてお前を殺し損ねたんだ?母さんを死なせた人に、生きる資格なんてあるものか」 すぐさま密売人に見つかり、私は骨の一本残らず叩き折られた。 翌日、清掃員がゴミ箱の中からいくつもの袋を見つけた。中に詰め込まれていたのは私の身体だった。 兄は無残な遺体を自らの手で繋ぎ合わせた。だがこれが彼が憎んでやまない妹の身体だとは気づきもしなかった。 やがて密売人たちが逮捕されたとき、兄は狂った。 第1話 拷問の末に命を落としたあと、私、橋本美知(はしもと みち)の魂は兄の家へと戻ってきた。 三年が過ぎても、ここは記憶の中と何ひとつ変わらない。 私は一つひとつの部屋を歩き回り、兄の痕跡を探そうとした。 そのとき、兄と橋本奈々(はしもと なな)が帰ってきた。 「奈々、少し休んでいて。大好物の唐揚げを作ってあげる」 兄は甘やかすように奈々を寝室へ送り届けると、台所へと向かった。 その光景を目にした私は、胸の奥がひりつくように痛んだ。 昔は、兄も私にこんなふうに優しかった。 けれど母が亡くなってから、すべてが変わってしまった。 兄は「母さんを殺したのはお前だ。こんな不吉な妹はいらない」と言った。 私は必死に訴えた。母は奈々のためにケーキを買いに行ったのだと。 だが兄は聞き入れなかった。 薬物密売人の車にはねられたとき、母の腕に抱えられていたのはマンゴーケーキ。 そして奈々はマンゴーアレルギー。 そのせいで、兄は私を憎み、家から追い出した。 そればかりか、母の命日には毎年一週間、七日七晩土下座して罪を償えと命じた。 あの密売人たちが墓地に現れたのは、ちょうど母の命日の初日だった。 そして今、不意に兄のスマホが鳴った。 「栄太(えいた)、至急警察署へ!」 兄が警察署に着いたのは、すでに夜だった。 「また事件か?」 兄は横に立つ刑事課の山下(やました)警部を見やった。 「自分で確かめろ」 山下警部の顔は険しい。 兄は解剖台の上に置かれた黒いビニール袋を開いた。 血と腐敗臭が混じった匂いが一気に広がり、思わず眉をひそめる。 中にあったのは、暗赤色の肉片と砕けた骨のかけら。兄の顔色が一瞬で蒼白になり、袋に触れる手が震え出した。 「これは……まるで獣の仕業だ」 彼の声は低く、哀しみに満ちていた。 兄は手袋をはめ、袋から一つひとつの肉片と骨片を取り出した。 「なんて残酷な……」 兄の目は赤く充血し、怒りに震えていた。 その姿に、私はふと三年前を思い出した。あの時、兄も同じように目を真っ赤にして怒っていた。 家の玄関先で、私が必死に泣きながら追い出さないでと懇願したからだ。 思わず口元に苦い笑みが浮かんだ。 兄は肉片と骨を慎重に並べ、繋ぎ合わせていく。 二十時間ものあいだ、一瞬たりとも休まずに。 そしてようやく、私の身体を形に戻すことに成功した。 ただ頭部だけはなかった。 密売人たちが憂さ晴らしに、私の首を犬に食わせたのだ。 「うっ……」 その場にいたのは経験豊富な刑事や法医学者ばかりだったが、誰もが吐き気をこらえきれなかった。 私でさえ、解剖台に横たわる無残な身体を見て、胸が詰まる思いだった。 山下警部の顔は青ざめ、吐き捨てるように言った。「人間の所業じゃない!」 「人間以下だ」兄は全身を震わせながら怒りの声をあげた。「遺体の状態からすると、生きたまま骨を砕かれ、肉を削ぎ取られたとしか思えない。 歯も、眼も、爪まで全部抜かれている!」 その言葉に、全員の顔が一瞬で青ざめ、場の空気は一気に凍りついた。 だが私の胸には、わずかな誇らしさが灯った。 兄はさすが国内で最も名を知られた法医学者だ。この無惨な身体から、私の最期を言い当てたのだから。 「だが……」 兄の視線が暗く沈み、遺体の右腕へと移った。 私の心臓は一気に締めつけられるように強張った。 第2話 12歳のとき、私は兄と山登りに出かけた。 山肌はあまりに急で、さらに突然の豪雨に見舞われ、兄は足を滑らせて柵の外へ落ちてしまった。 私は咄嗟に右腕を伸ばし、兄の手を必死に掴んだ。 そのまま三時間、救助隊が駆けつけるまで支え続け、ようやく手を離したのだ。 その後、私たちは病院へ運ばれた。 兄はほとんど無傷だったが、私の右腕は二度と力を入れられないほどに損傷し、一生涯元には戻らなかった。 まさか兄が気づくのでは? たとえ魂であっても、思わず息を殺し、胸が張り裂けそうなほど緊張した。 「被害者の右腕には古い骨折痕がある。痕跡から判断すると、子どもの頃に負った怪我。 この点を基準にすれば、被害者の範囲を絞り込めるはずだ」 兄の言葉に、胸の奥が締めつけられるように痛んだ。 気づいてほしくはないのに、いざそうなりそうになると、どうしようもなく悲しい。 あの怪我のあと、兄はひどく自分を責めた。 私のために身の回りの世話を焼き、細やかに気を配ってくれた。 「これからは俺が右腕になる」兄がそう言ってくれた。 だが今となっては、その記憶さえ消え去ってしまったかのようだった。 私は唇の端に苦い笑みを浮かべる。 一方で、山下警部は険しい顔で言った。「確かに重要な手がかりだ。 部下に伝えて注意させよう」 「頼む」兄はうなずき、再び組み上げられた遺体を調べ始めた。「現時点の状況から見て、被害者は女性。年齢は18から22歳の間だ」 兄の目には怒りと深い悲しみが滲んでいた。 「こんな若さで、こんな非道な目に遭うなんて!」 「必ず犯人を捕まえてみせる!」 山下警部は拳を振り下ろし、壁を強く叩いた。 周囲の刑事たちも皆、重苦しい面持ちでうつむいた。 「他に死者の身元を特定する方法は?」山下警部が問う。 兄は二秒ほど沈黙し、答えた。「今できるのはDNA鑑定か、頭蓋骨から生前の顔を復元することくらいだ。 ただ、頭蓋骨にも欠損がある。時間はかかるだろう」 「わかった」山下警部はため息を漏らす。「残りの組織がどこかに残っていないか、引き続き人員を探させる」 「必ず犯人を捕まえろ!」 兄の声は震え、拳を握りしめる手に力がこもった。 「被害者の下半身は激しく損壊している。少なくとも50回以上、レイプを受けている」 その言葉に、私は思わず身体を震わせた。 兄は細部まで見逃さない。 五十二回。 あの密売人たちは交代で私を押さえ込み、延々と繰り返した。 息が詰まるような悪臭と吐き気を催す行為で、私は全身を覆われていった。 必死にもがいても、どうにもならない。 逆にやつらは狂ったように叫んだ。「さすが法医学者の妹だ、他の女とは比べものにならねえ!」 「橋本栄太も妹で練習したんじゃねえのか?あの筋肉の記憶は、妹を触って覚えたんじゃないのか」 「とんでもない女だな、俺たち全員相手にしても平気とは!」 絶え間ない罵り言葉。 ついには、私はもう感覚が麻痺していた。 ただ目を閉じ、回数だけを数えていた。 「ああ」山下警部は重い吐息をついた。 そして何かを思い出したように顔色を変え、兄を見つめた。「栄太、これ、お前の母親の事件と同じじゃないか。復讐の可能性は?」 第3話 母の事件? 兄は、私のためにケーキを買いに行って、酔っ払い運転の車に轢かれたと説明していたはず。 どうして麻薬組織なんかと関わっているの。 私が信じられない気持ちで兄を見つめる。 「あり得る!こんな非道な真似ができるのは、あの連中のような人でなしだけだ」 兄の顔色が急に変わった。 「しまった!奈々がまだ一人で家にいる!」 兄は慌ててスマホを取り出した。 山下警部は周囲を見回し、言った。「お前たちもだ、家族に連絡を取れ!」 兄は何度も電話をかけたが、応答はない。 その手は震え、声も掠れていた。 「大丈夫だ、奈々に何か起きるはずがない!」 呟いたかと思うと、兄は出口へ駆け出した。 山下警部が兄の様子を見て叫ぶ。「止めろ」 「放せ!」 兄は必死に抵抗し、なんと三人の大柄な警官を押し倒してしまった。 「俺は妹を探しに行く。邪魔するな!」 目尻を赤く染め、兄は怒りに任せて全員を振り払った。 その必死な姿に、私は呆然と立ち尽くした。 母の事故のときでさえ、彼はここまで取り乱さなかったのに。 兄は、それほどまでに奈々を大切に思っているのだ。 胸が張り裂けそうに痛み、息が詰まる。 その時、兄のスマホが鳴り響いた。 「もしもし、お兄ちゃん?」 どこか眠たげな奈々の声が聞こえ、兄は大きく息を吐いて安堵した。 電話を切ると、周囲に向かって深々と頭を下げた。「ごめん、取り乱した」 冷静さを取り戻した兄の姿を見つめ、私は悲しみに打ちひしがれる。 私だって、彼の妹なのに。 どうして私の行方には目も向けてくれないの。 唇を噛みしめても、涙は止まらず頬を伝った。 そのとき、一人の刑事が入ってきた。「山下警部、また新たに人体組織が見つかりました」 その刑事が黒いビニール袋を解剖台に置く。 開けた瞬間、強烈な血の匂いと腐敗臭が広がり、誰もが顔をしかめた。 ただ一人、兄だけは平然としたまま、中の骨片や肉片を一つひとつ取り出していく。 6時間かけ、ようやく兄は手を止めて山下警部を見た。「これで被害者の遺体はほぼ揃ったはずだ」 「新しい発見は?」 山下警部が焦りを滲ませて問う。 兄の表情が険しくなる。「被害者は腎臓を一つ欠いている」 その言葉に、私は息を呑んだ。 腎臓? 私は失ってなどいない。その腎臓は、兄の体内にある。 あの時、兄が家系の遺伝で若くして腎不全になった。 兄を救うため、母に協力して、私はひそかに腎臓を差し出した。 真相を知った兄は狂ったように取り乱し、包丁を自分の首に突きつけて医者に「この腎臓を美知に返せ」と叫んだ。 私は膝をつき、頼み込んだ。「自分を傷つけないで。もしそんなことをするなら、私も一緒に死ぬ」 その言葉で兄はようやく刃物を落とし、私を抱きしめて声を上げて泣いた。「ごめん、美知、全部俺のせいだ。お前にこんな痛みを背負わせて。 麻酔の注射だって痛かったろう。腎臓を一つ失って、この先どうすればいいんだ」 それ以来、兄は私を過剰なほど大切に扱った。 あの頃が、私にとって一番幸せな日々だった。 兄……まだ覚えていてくれている? だが次の瞬間、兄は何かを思い出したように顔色を失い、慌てふためいた。「そうだ、思い出した」 その声に、心臓は喉元まで跳ね上がる。 兄は気づいたのだろうか?解剖台の上に横たわるのが、この私だということに。 第4話 「思い出した。これは、以前追い詰めきれなかった臓器売買の組織と関係があるんじゃないか?」 兄は深刻な顔でそう言った。 私は心の底から失望した。 兄はあの出来事すら忘れてしまったのだ。 やはり、彼の心には私への憎しみしか残っていないのだろう。 その時、兄のスマホが突然鳴り響いた。表示された番号は私のものだった。 心臓が震え上がる。 「母さんの墓の前で悔い改めてろって言っただろう。何の用だ」 兄は苛立ちを隠さず、通話ボタンを押した。 スピーカーから流れてきたのは、傲慢な男の声だった。 「橋本先生、やっと思い出したか?妹がいるってことを」 全身が震えた。 この声の主を、私は忘れない。 奴は麻薬組織の頭目。 私を拉致させ、徹底的に痛めつけさせた張本人。 そしてあの人たちに辱められる姿を録画させ、「兄貴に見せてやる」と笑っていたのも奴だった。 私は全身が抑えきれずに震えていた。 奴は私のスマホをまだ持っている。 兄を見つめ、緊張のあまり全てを忘れていた。 電話の相手が男だと知った山下警部は、表情を引き締めた。「お前は誰だ?美知はどうした」 「彼女?今はぐっすり寝てるよ」男は気だるげに言い放った。 兄の顔がみるみる険しくなる。「お前は誰だ?美知とどういう関係だ」 「俺?」男は下卑た笑いを漏らした。「俺はもちろん、義弟だよ。正直、妹さんは大したことなかったな。お前が法医学者じゃなきゃ、わざわざ抱きもしなかった」 その言葉に、兄の呼吸が荒くなる。 彼は山下警部の手からスマホを奪い取り、怒鳴りつけた。「俺には、あんな恥知らずな妹はいない!ましてやお前なんか義弟でも何でもない! 伝えておけ。今後二度と母の墓に近づくな。母の眠りを穢すな! 吐き気がする!」 その言葉を聞いて、私は呆然とし、目には信じがたい色があふれていた。 吐き気? 穢す? 兄は密売人の言葉を鵜呑みにして、私を罵った。 事情を聞こうとすらせず、顔も見ぬ相手の話だけで、私を切り捨てた。 私は彼の実の妹なのに。 脳裏に、過去の記憶が走馬灯のように浮かぶ。 2歳のころ、兄が毎晩抱いて寝かしつけてくれた。 7歳で初めて学校へ行ったとき、兄が泣き崩れてしまった。 13歳、私が男子からラブレターをもらったから、兄が相手を殴り飛ばした。 …… 子ども時代は、毎日を兄と共に過ごしてきた。 母よりも長く兄と共にあった。 それなのに、母が亡くなったあの日から、すべてが変わってしまった。 私は憎まれる存在となり、養女の奈々こそが彼にとって最愛の妹になった。 思えば、母が奈々を初めて連れてきた日、兄は私に気を遣って彼女を追い出したほどだったのに。 今や…… 私は乾いた笑みを浮かべる。 愛なんて、簡単に消えてしまうのかもしれない。 私は兄を見た。 彼はためらいもなく電話を切った。 密売人が再度電話をかけると、兄は出ることなく、電源を落とした。 「栄太、そこまでしなくても……」 「美知を信じる。あの子はそんな子じゃない。きっと何かの誤解だ」 山下警部が重々しく言う。 「そうだ、橋本先生。美知ちゃんは素直な子だ。そんなこと、信じられない」 「その通り!橋本先生、ちょっと偏った見方じゃないか」 「美知ちゃんは素敵な子だ。二人の妹さんを平等に見てあげないと」 その場にいた警察や法医学者たちも口々に私を庇った。 胸に温かなものが流れ込む。 まだ、私を信じてくれる人がいるんだ。 「もうやめろ!」 だが兄は低く怒鳴った。 「お前らが欲しいなら勝手に妹にすればいい。だが、俺は死んでも認めない!」 室内に重苦しい沈黙が広がった。誰もが複雑な表情で兄を見ていた。 胸が押し潰されそうに痛む。 そのとき、一人の若い刑事が駆け込んできた。「山下警部、被害者の遺体のそばでこれを見つけました」 差し出されたのは、泥と血にまみれた「海の心」というネックレス。 兄は、その場で硬直した。