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結婚式を越えて
婚約者はラーメン屋で私と結婚式を挙げようとしていたのに、豪華なクルーザーで愛する人に永遠の愛を誓っていた。結婚式まであと四十八時間、...
Chương (1)
第1章
婚約者はラーメン屋で私と結婚式を挙げようとしていたのに、豪華なクルーザーで愛する人に永遠の愛を誓っていた。結婚式まであと四十八時間、私はもう彼はいらない。
第1話
私が一人で結婚式の準備に追われ、胃を壊していた頃、深沢蒼真(ふかさわ そうま)は白石美雪(しらいし みゆき)と独身最後の夜を楽しんでいた。
床に座り込んだまま、意識が遠のく寸前まで、彼の携帯は、何度かけても出なかった。
目が覚めたのは病院のベッドの上。そこで初めて、SNSを通じて彼の行動を知ることになった。
蒼真は独身最後の夜を、彼と美雪だけの特別なウェディングナイトにしてしまった。
動画には、もうすぐ私の夫になるはずの彼が美雪に愛を誓っている姿が映っていた。
「最高のものは全部、君のもの。あいつはただの形式的な嫁だよ」
豪華なクルーザーの上で、二人は情熱的にキスを交わしていた。
そして四十八時間後、私はあの安いラーメン屋でその男と結婚することになっている。
私はそっとスマホを閉じた。
もう、結婚式なんて何の意味もない。
……
結婚式まで、あと三十六時間。
家に戻ってドアを開けると、蒼真はすでに帰宅していた。
ソファに座っていた彼は、私に気づくと慌てて立ち上がり、勢いよく近づいてきて私が部屋に入るのを遮った。
「もうすぐ結婚だってのに、こんな時間まで何してたんだよ。みっともないと思わないのか」
文句を言いながら、私をドアの外へと押し戻す。
しかし、ドアが閉まりかけたその瞬間、奥の寝室から美雪が姿を現した。濡れた髪に、だぶだぶのメンズシャツを着ている。
私は玄関先に立ち尽くしていたが、気持ちは意外なほど落ち着いていた。
独身最後の夜まで美雪といたのなら、新婚初夜だって彼女と過ごすのだろう。
夜が更ける中、彼はきっと、入院して戻らなかった婚約者のことなど忘れてしまっているに違いない。
私が立ち去ろうとした時、再びドアが開いた。
蒼真が手招きする。
「入れよ。腹減った。飯作ってくれ」
私も何も食べていないし、やっと治った胃をまた悪くしたくはなかったので、黙ってキッチンに向かった。
美雪はワンピースに着替えていたが、薄い生地で体のラインが先より透けて見えていた。
彼女は蒼真の腕に抱きつき、可愛らしく微笑む。
「美緒さん、昨日は遊びすぎて帰るのが遅くなって、蒼真が心配して泊めてくれたの。怒ってないよね?蒼真が心配してくれただけだから」
私は淡々と答えた。「別に」
そう言ってキッチンへ入った。
私が怒らないのを見て、さっきからちらちらとこちらを窺っていた蒼真がほっとした顔になる。
「あいつが気にするわけないだろ。俺と結婚するんだから、これからは彼女も君の面倒を見るべきだ。美雪、遠慮すんな。困ったら美緒に頼めばいい」
私は包丁を持つ手を止めた。
まるで私は、都合のいいお手伝いさんだ。
沸騰する鍋の音が、「早く働け」とせかしてくるように聞こえた。
最後の味付けをしようとした時、美雪が急に声を上げた。
「あ、だめ!そのお醤油は塩分が強くて体に悪いの。私、食べられない」
だが、私はすでに醤油を入れてしまっていた。
彼女は唇を尖らせて、蒼真の服を引っ張りながら甘えた声を出す。
「もう、美緒さんったら」
蒼真が大股でこちらへ歩み寄ってきた。
「おい、美緒。今わざと入れただろ?美雪の言う通りに作り直せ」
そう言って、茹で上がった麺の鍋を持ちあげ、ゴミ箱に捨てようとした。
私はその瞬間、なぜかぼんやりと突っ立ったまま動けなかった。彼が鍋を傾けると、熱湯の一部が私の腕にかかった。
蒼真は慌てて私の腕を掴み、流しへと引っ張っていく。
「何やってんだよ……軟膏、まだあったよな?俺が取ってくる。水、かけとけ」
彼が薬を探しに行こうとしたとき、美雪が甘ったるい声で呼んだ。
「蒼真、お腹空いちゃった……もう胃が痛いくらい……」
「じゃあ、外に食べに行こう」
蒼真は一瞬の迷いもなく、軟膏を私に投げ渡して、美雪と一緒に家を出て行った。
ドアの前で、美雪が突然言った。
「美緒さんも、一緒に連れて行く?」
蒼真は振り返らず、吐き捨てるように言った。
「ぼーっと突っ立ってるから火傷するんだ。ラーメン一つ満足に作れない。ほっとけ、構う必要ない」
そして、ドアは閉まった。
私はその場に立ち尽くし、やっと治った胃がまたずきずきと痛み出すのを感じていた。
腕の火傷は、流れる水のおかげで少しずつ和らいでいく。
静かな部屋には、水の音だけが響いていた。
そういえば、まだ結婚式をキャンセルしていなかった。
第2話
結婚式まで、あと三十時間。
ラーメン屋の店主は、もうとっくに私に合わせて店内の飾りつけをしてくれていた。
電話をかけたと、彼は嬉しそうに「お花をもう少し買って飾ろうか?」と聞いてきた。
私は思わず苦笑した。
「おじさん、結婚式はキャンセルしたよ」
受話口から、ほっとしたような声が返ってきた。
「そりゃ正解だ。やっと目が覚めたか。いい男なら自分の嫁をうちみたいなラーメン屋で結婚式なんてさせやしないよ。人をばかにしてる。君みたいないい子には、もったいない男だったな」
「あいつはここで式を挙げるのが記念になるって言ってたんだけど、何の記念なんだか」
私はうつむいて、昨夜見た動画のことを思い出す。
確かにラーメン屋は記念の場所だった。
ただし、それは私と蒼真のためじゃない。彼と美雪のためのものだった。
大学で初めて出会ったのもこの店。美雪が留学する前、最後の別れを交わしたのもここ。
ここは二人の思い出の場所だったのだ。
蒼真はこうやって美雪に、「君のことを今も想っている」と伝えたかったのだろう。
そして私は、その演出の道具にされた。
「おじさん、明日の料理はそのままで、お別れ会にしよう。近所の人たちと一緒に食べたいの」
「ああ、分かったよ」
電話を切り、私はもう一度病院へ向かった。
看護師さんまで私の顔を覚えてくれていた。
「火傷されてるのに、お一人で?一人暮らしですか?付き添いの方は?」
私は何と答えればいいのか分からなかった。
顔を上げると、向こうから蒼真と美雪が、手をつないで診察室から出てくるのが見えた。彼は美雪の手の甲にある擦り傷を見つめ、優しく息を吹きかけていた。
「俺が見てなかったら、君はどうするつもりだったんだ。一人じゃちゃんと自分の身も守れないだろ」
「じゃあ、ずっとそばにいてよ」
美雪は彼の腕にぎゅっとしがみつく。
蒼真は愛おしそうに彼女の鼻先を指でつついた。
甘い雰囲気に、周りの人たちも羨ましそうに見ている。
看護師さんも感心したように呟く。
「あの男性、とても優しそうですね」
私はそっと視線を逸らした。
「そうですね」
病院を出る時、蒼真は美雪と一緒に病院前の公園でブランコに乗っていた。
美雪はチェーンを握りながら、楽しそうに笑っている。
「蒼真、ちょっと怖いよ」
「大丈夫、俺がそばにいるから」
蒼真は、優しく背中を押しながらも、すぐ手が届く距離に立ち、いつでも彼女を受け止められるように構えていた。
私はしばらくそれを眺めてから、声をかけた。
「蒼真、さっき宝石店から電話があったわ。あなたが注文したネックレスができたって」
「ああ、そうか。後で取りに行く……」
蒼真の表情に一瞬後ろめたさが浮かんだが、すぐに付け加えた。
「それはお前に買ったものだ」
私は微笑んで、何も言わなかった。
店員さんは電話で、そのネックレスは雪の結晶の形で、特別に「雪」の文字が刻まれていると教えてくれた。
踵を返そうとした時、美雪の声が背後から届く。
「美緒さん、蒼真って美緒さんにすごく優しいんだね。ネックレスまでプレゼントしてくれるなんて。私なんて、ブランコだけ」
蒼真がすぐに、美雪の額を指で軽くつついた。
「ばかだな。君が欲しいって言えば、俺が買わないわけないだろ」
美雪の尖っていた唇がすぐに笑顔になり、こちらに向き直って言った。
「美緒さん、ネックレス、私がもらっちゃった。ブランコで遊ばない?蒼真、すっごく上手に押してくれるのよ」
勝ち誇ったような表情の美雪を見ても、不思議と冷静だった。
「私、ブランコは好きじゃない」
「美緒さん、怒ってる?私、さっき怪我しちゃって気分が悪かったから、蒼真が元気づけてくれようとしただけなんだ」
蒼真は眉をひそめて私を見る。
「美緒、美雪は俺にとっては妹みたいな存在なんだ。俺が面倒を見るのは当然だろ?」
私はどうでもよさそうにうなずく。
「そうね。美雪のこと、よく面倒見てあげて。楽しくやって」
蒼真は私の反応にとても満足したようだった。
「もうすぐ結婚するんだからさ、こういう大人の対応ができないと困るよな」
私はその言葉を無視して、踵を返して歩き出した。
他に、片付けなければならないことがある。
第3話
午後、私は会社に戻った。
本来なら結婚式のために一週間の休暇を取っていた。
まだ三日しか経っていないのに、私は戻ってきた。
同僚たちは驚いた顔で私を迎える。
「美緒、どうしたの?まさか今夜のパーティーに誘いに来てくれたの?招待状、ちゃんと届いたよ。わざわざありがとうね」
今夜のパーティー?
思い当たるのは、蒼真と美雪のパーティーのことだった。
私は何も言わず、ただ笑って返した。
「うん、今夜は忘れずに来て。私、まだ用事があるから」
軽く手を振り、デスクに向かい、荷物を全部カバンに入れた。
最後に退職届を手にして、上司のオフィスに入った。
退職届を見た上司は、一瞬目を見開いたものの、驚いた様子は長く続かなかった。
彼女はため息をついて、少し苦言を呈した。
「前から思ってたの。あなた、毎日深沢の話ばかりしてたし、結婚を機に辞めるのかもって。専業主婦になるの?女性は自分の仕事を持つべきよ」
私は呆然とした。
まさか上司に、そんなふうに見られていたなんて。かつての私は、それほどまでに恋愛脳だったのだろうか。
私は苦笑いして首を振る。
「いえ、彼とは別れるつもりです。場所を変えて、新しい生活を始めようと思って」
上司の顔に、今度は別の驚きが浮かぶ。
でも彼女は詳しく聞かず、うなずいて応援してくれた。
「そう。過去を捨てて、新しいスタートを切るのね」
そして別の書類を取り出して見せてくれた。
「もし転職先を探しているなら、本社がC市に支社を出す予定があるの。人手が足りないみたいだから、よかったら考えてみて」
私は上司の好意に感謝して、帰って考えることにした。
会社を出たところで、蒼真から電話がかかってきた。
「結婚式まであと二十四時間、俺の最後の独身夜だ。今夜は友達と祝うから、お前は待たなくていい」
珍しく彼からの連絡。
かつての私なら、そんな言葉にも喜んだだろう。だが、今ではすべてが白々しく思える。
最後の独身夜、彼はみんなを招待して、私があまり親しくない同僚まで呼んだ。そしてそこに、私の席はなかった。
でも今回だけは私に連絡する必要なんてない。
だって、今夜はまだ彼の最後じゃないから。
電話の向こうの蒼真は、私がなかなか返事をしないので、少し困惑した。
「美緒?聞こえる?携帯の調子が悪いのか……」
私は黙ったまま、通信障害のふりをした。
蒼真はもうイライラしていた。
「だから電話なんかしなくていいって言ったんだ。どうせあいつは俺を束縛なんかしないし」
蒼真は携帯が切れたと思って、誰かと話している。予想通り、次の瞬間には聞き慣れた女性の甘ったるい声だった。
「蒼真、そんなこと言っちゃダメよ。もうすぐ結婚するんだから、美緒さんにどこにいるか言わないと、心配させちゃうわ」
「やっぱり美雪は優しいな。あいつがお前の半分でも優しけりゃ、俺も感謝するのに」
「私、そんなにいい子じゃないよ……」
そのあとの声は、もう耳を塞ぎたくなるほど甘かった。
私は無言で通話を切った。
一人で家に帰り、十年間暮らしたアパートを見渡す。
情けないと思わないか。
十年間で、元気いっぱいで何も恐れなかった少女が、いつしかびくびくと怯える女になっていた。
部屋の中は、蒼真との思い出で溢れていた。
蒼真に何度もお願いしてやっと飾らせてもらった二人の写真を外した。
サプライズで用意したのに蒼真が一度も使わなかったペアマグカップをゴミ箱に捨てた。
毎日花を贈ると言っていた彼の花瓶は、埃まみれのまま空っぽで、
一緒に笑いながら遊んだボードゲームも、棚の隅で忘れ去られていた。
私はそれらを一つ一つ袋に詰めていった。
最後に、重たいゴミ袋を抱え、十年分の思い出をすべて捨てた。
今、部屋は私の心と同じ。空っぽで清潔だった。
私はインスタを開いた。
みんな蒼真と美雪がパーティーでワルツを踊っている動画を投稿していた。
ダンスフロアで優雅に踊る二人。
蒼真の手は美雪の腰にそっと添えられ、世界で一番大切な宝物でも扱うかのように。
息の合った動きで回転し、ステップを踏む。
見つめ合う二人は、まるで世界に自分たちしかいないかのようだ。
みんなが感動している。理想のカップルだと。
私は黙っていいねを押して、コメントした。【本当にお似合い】
しばらくして、蒼真から電話がかかってきた。
その声は怒りに満ちていた。
「結婚間近なのに、まだ嫌がらせをするのか!美雪まで泣かせて、やっと落ち着いたと思ったのに、また元に戻ってる」
「俺と結婚したいなら、これからは美雪を実の妹のように大事にしろ。そうすれば、安心してお前を嫁に迎えられる。分かってるのか?」
「美雪は俺にとって、永遠に一番大事な存在なんだ」
ようやく、彼が本音を口にした。
でも悲しくはなかった。むしろ笑えてきた。
「分かったわ」
私がそう答えるのを聞いて、彼は電話を切った。
スマホの画面に表示された時間。
残り、十六時間。
第4話
今日は予定していた結婚式の日だった。
私と蒼真は、朝六時から結婚式の準備を始める約束をしていた。
九時になって、空がすっかり明るくなった。
そして、ようやく蒼真が帰ってきた。
リビングのソファに座っていた私を見て、彼は苛立ったように言った。
「びっくりするだろ、音も立てずにそこに座ってるなんて」
私は黙ったまま、彼を見上げた。
一晩中外で遊んでいたのだろう。濃いアルコール臭がして、髪は乱れ、服はしわだらけ、襟元には見過ごせない口紅の跡までついていた。
本人は、それにまったく気づいていないようだった。
以前なら絶対に怒っていただろうが、今は静かに視線を逸らすだけだった。
蒼真は服を脱ぎながら、私に文句を言う。
「結婚式なんてたかが知れてるだろ?そんなに興奮することか?」
「その目の下のクマを見ろよ、もともとそんなに美人でもないのに、ウェディングドレス着たら見られたもんじゃないな。俺のせいにするなよ。やり直そうなんて言われても、付き合ってられないからな」
そう吐き捨てるように言いながら、脱いだ服を私に向かって投げつけた。
「ほら、これ洗っておけよ」
そのままバスルームへ入っていった。
服からは濃いアルコール臭と香水と煙草の匂いが混じって、まるで毒のような臭いが立ち込めていた。
私はその場を離れた。
しばらくして、バスルームから楽しげな笑い声が聞こえてくる。
「本当?信じられないよ、写真送ってくれなきゃ」
こんなふうに蒼真を笑顔にできるのは、美雪しかいない。
やがて彼は、私に聞かれるのを恐れてか、水道を勢いよく開いた。
だが、蒼真は自分の声の大きさを見誤っていた。水音にかき消されると思っていたのだろうが、興奮すると彼はいつも声が大きくなる。
そのまま二時間近くもバスルームにこもり、ようやく出てきた。
「礼服、用意してあるんだろ?」
「まだ店に取りに行ってない」
私の言葉に、彼は露骨に不満を見せた。
「お前さ、毎日あれこれ忙しそうにしてるくせに、礼服一つまともに用意できないのかよ。誰のための結婚式だよ?やる気ないなら、やめたら?」
そのとき、彼のスマホが鳴った。
蒼真が応答すると、すぐに美雪の泣き声が聞こえてきた。
「蒼真、うちに虫が出たの、すごく大きな虫よ。とても怖いの」
「すぐに行く、怖がらないで!」
着替えもせず、彼の足はすでに玄関へ向かっていた。
ドアのところまで来て、リビングに座っている私を見て、初めてまずいと思ったのか。
彼は少しだけ言い訳を口にする。
「結婚式まであと六時間、十分時間がある。美雪のとこ寄ったついでに礼服も取ってくるから」
私は淡々と、「いいよ」とだけ答えた。
蒼真はやっと笑い出して、近づいて私の頭を撫でた。
「お前へのネックレス、ズボンのポケットに入れてあるから。ちゃんと取っておけよ。心配すんな、ちゃんと間に合うから」
出かける前に、彼はなぜか一言付け加えた。
「待ってろ」
私はただ、うなずいた。
そしてドアが閉まった瞬間。
私は部屋からスーツケースを引き出した。
本当は、ちゃんと向き合って別れるつもりだった。でも、もうその必要もない。
彼がクローゼットを開ければ、私が彼のために仕立てた礼服がちゃんと掛かっているのが分かるはずだ。
私のウェディングドレスはレンタルだった。すでにキャンセルしてある。
私はスーツケースを引いて、十年間過ごしたこの牢獄から出た。
そして電話に出ると、
ラーメン屋のおじさんの笑い声が聞こえた。
「お嬢ちゃん、送別会の準備はできたよ、早くおいで」
……
私は搭乗待合室に座って、一時間後の便を待っていた。
スマホには、何度も蒼真からの着信履歴が残っている。
きっと、結婚式がキャンセルされたことに気づいたのだろう。
でも、私はもう出なかった。
ひとりで気持ちを整理しながら、C市での新しい生活に想いを馳せる。
蒼真については、私がいなくなれば、彼は堂々と美雪と一緒にいられる。それが、彼にとっては一番うれしいことだろう。
そう考えていると、搭乗時間になった。
ゲートを通ろうとしたとき、外から突然聞き覚えのある声が響いた。
「佐伯美緒(さいき みお)!どこへ行くつもりだ?」