婚約者さん、その幼なじみとどうぞお幸せに

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婚約者さん、その幼なじみとどうぞお幸せに

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結婚式を挙げる前日の夜、私の婚約者の幼なじみは傭兵をしていて、五年間連絡を断っていたのだが、任務中に負傷したうえ毒性のある媚薬まで盛...

Chương (1)

第1章

結婚式を挙げる前日の夜、私の婚約者の幼なじみは傭兵をしていて、五年間連絡を断っていたのだが、任務中に負傷したうえ毒性のある媚薬まで盛られてしまった。 薬を盛られた彼女は部隊の仲間に私の婚約者の前へ連れて行かれた。彼女は全身血だらけで、まさに九死に一生といった様子だった。 一向に冷静沈着で理性をなくすことのなかった篠原迅(しのはら じん)は目を真っ赤にさせて、私の制止も振り切り幼なじみと一夜を共にした。 そして私のほうはというと、一晩部屋の外で一睡もできなかった。 その翌日、私のヒステリックな詰問に対して彼は幼なじみを庇い、腐った態度でこう吐き捨てた。 「俺は茉莉花(まりか)が死んでいくのを黙って見ているわけにいかなかったんだ。ただ俺の『初めて』を彼女にあげただけだろう?結婚する前にちょっと一晩羽目外したからって何だって言うんだ?」 その瞬間、私の彼に対する愛は完全に粉々になって消えていったのだった。 第1話 結婚式を挙げる前日の夜、私の婚約者の幼なじみは傭兵をしていて、五年間連絡を断っていたのだが、任務中に負傷したうえ毒性のある媚薬まで盛られてしまった。 薬を盛られた彼女は部隊の仲間に私の婚約者の前へ連れて行かれた。彼女は全身血だらけで、まさに九死に一生といった様子だった。 一向に冷静沈着で理性をなくすことのなかった篠原迅(しのはら じん)は目を真っ赤にさせて、私の制止も振り切り幼なじみと一夜を共にした。 そして私のほうはというと、一晩部屋の外で一睡もできなかった。 …… 一晩中続いていた喘ぎ声がようやく止み、迅は破れてボロボロになったバスローブを身に着けて寝室から出てきた。 彼のその足取りはおぼつかなかったが、かなり元気でいきいきとした様子だった。この時の彼は何かを思い返して味わうかのような瞳をしている。露わになった肌には青紫に変色してしまったキスの痕がはっきりと目立っていた。 彼は私の存在も無視して横を通り過ぎていき、テーブルの横に立ち水をコップ一杯ついで、鬱陶しそうな口調でこう言った。 「一華、お前な、騒ぐにも限度ってもんがあるぞ。俺は今気分が悪いんだ。お前の顔色をいちいち伺っている暇などない。 ただのセックスだろう。茉莉花すら何も気にしていないというのに、お前は古臭い考え方に囚われやがって!」 「古臭い考え方ですって?」 私はあまりの怒りに逆におかしくなってきてしまった。 「大人しく男に抱かれる女のほうが、そりゃあよっぽど開放的な考え方を持っているでしょうね!」 そう言うと迅は勢いよく持っていたコップを床に叩きつけた。 「黙れ! 茉莉花は今状態が悪いんだ、彼女の前でそんなデタラメを言うんじゃないぞ。そんなことしてみろ、この結婚は破棄させてもらう!」 そう言い終わると、すでに待機していた医者たちが寝室に入って救命措置を開始した。 迅は急いで同じく中へ入って行き、一目も私に向けることなどなかった。 宇野茉莉花(うの まりか)が私が寝る予定だった新婚用のベッドの上に横たわっていて、迅の手を握り力なく話し始めた。 「迅、私のせいね。だけど、死ぬ前にただあなたに一目でもいいから会いたくて……」 その部屋には濃厚なエロスが漂っている。ゴミ箱の中からは明らかに昨晩何戦もヤッたというその戦績が溢れ出してきていた。 「死ぬ前にあなたと一つになれたこと、私、とっても嬉しいの……結婚式の日には私の席も用意してくれる?」 「そんなバカなこと言うな!」 迅はしっかりと茉莉花の手を握りしめて、瞳から大粒の涙を流し医者に向かって怒鳴りつけた。 「さっさと助けろ! 茉莉花、君は絶対に大丈夫だ。将来君のウェディングドレス姿を見るのを楽しみにしているのに!」 二人は周りにはお構いなしにキスをし、まるでこの世が終わりを告げる前のその僅かな時間を愉しんでいるかのようだった。 私は人気俳優同士の恋愛ドラマのようなシーンが目の前で繰り広げられるのを見ながら、吐き気をもよおした。 迅という男は誰もが触れてはいけない私の逆鱗だと、誰もが知っている。 彼のために、お嬢様育ちで何もできなかった私は拙いながらも懸命に料理を学んで、彼には無償で尽くしてきたのだ。 しかも、家の前で三日三晩膝をついて許しを求め、祖父から足を叩き折られたとしても絶対に彼と結婚するといって聞かなかった。 私は迅のために心から尽くしてきたというのに、その結果がまさかこのようになってしまうとは。 「林原一華(はやしばら いちか)、お前はめくらか?そこにアホみたいに突っ立って何やってんだ」 我に返った時、迅が鬱陶しそうに私に向かって命令口調で言った。 「さっさと林原家に仕える医者も呼んで来い。人の命がかかってるってのに、お前それでも人間か?」 私が黙ったままでいるのを見て、迅の表情は暗くなった。これは私が誰かの目の前で初めて彼を無視した瞬間だった。 「明日は結婚式だぞ。それなのにそんな意地を張っている場合か!」 「あんた、明日自分が結婚するんだって分かってたんだ?」 私は彼の首筋にくっきりと残るあの赤い痕を睨みつけて嘲笑った。 「あんたがそこにいる女とベッドでいちゃついてる時に、どうして結婚式のことを思い出さなかったわけ?」 「俺はただ彼女を救うためだったんだ!」 私はそれを聞いて冷たく笑って言った。 「そうね、人助けだったのよね! 解毒剤があるってのに、それを使わず自らの体で治してあげたんだもの。あんたって本当に立派だわ!」 彼は顔色を怒りで赤くさせたり、青ざめさせたりして、口を開こうとした時、結婚式の準備に当たっている人たちがガヤガヤと部屋に入ってきた。 まず先頭で入ってきたのは、迅の友人たちだった。彼らは新婚用の部屋がこのような状況になっているのを目の当たりにし、次々と眉間にしわを寄せた。 第2話 先頭に立つ迅の友人が急いでジャケットを迅に投げつけ、私に不満を持つような目でこちらに視線を向けて言った。 「一華さん、明日は君たちの祝いの席だろう。もう少し控えめにできないのか? こんな姿になっちゃって、スーツのジャケットじゃ隠しきれない……」 「これはこの女とは関係ない!」 迅はスーツのジャケットを着ながら私をギロリと睨みつけて不愉快そうに言った。 「茉莉花は昨晩、薬を盛られたんだ。それで彼女のために俺は一肌脱いだだけだぞ。それなのにどっかの誰かさんはいちいち煩くってな」 その場は瞬時に凍り付いた。 迅の友人の私たちをからかう表情が一瞬にして強張ったが、なんとかその場の空気を和らげようとした。 「冗談はなしにしようぜ。お前ら新婚夫婦がアツアツなことに俺らもすっげぇ喜んでんだからさ。さっさと服を着替えろよ!」 「誰がお前らに冗談なんて言った!」 この時、迅の声のトーンは突然高くなり、彼は新婚用に整えられたベッドに近づくと、茉莉花の手を取り、傲慢にもこう言った。 「茉莉花はここにいる。俺が彼女を救ったんだ。俺たちは昨晩……」 「黙れよ!」 迅の友人は急いで彼をつねり、迅の言葉を遮った。 「俺は間違ってなどいない!峰雄(みねお)だって俺と茉莉花が小さい時から一緒に育ってきた仲だって知ってるだろう。それに人を救うのは神からも認められる功労だろうが!」 「もういい加減にして!」 迅がちっとも懺悔する様子がないのを見て、私の心は完全に疲れ切って、さっさとこの場から去ろうと彼に背を向けた。 「一華、いい加減にするのはお前のほうだぞ!」 迅は私のほうへ飛び出してきて、私が去るのを阻止しようとした。 「こいつらだって来たんだから、帰らせるわけにはいかない!」 新郎側の友人たちはドアの前を塞ぎ、次々と説得しにかかった。 「林原さん、もう機嫌を直してくださいよ。あなた達はもうすぐ結婚するんです。五年も長い間一緒にいて、これはすごいことですよ!」 「そうです!迅さんも人助けのためだったんだし、それにわざと他人と変な関係を持っただけじゃないし、もう怒りを鎮めてくださいよ!」 「その通り!迅さんと宇野さんは幼なじみでしょう。これからもみんなは友達なんですから。もっと心を寛大にしないと、みんなから見下されてしまいますよ!」 それを聞いた私は冷たく笑った。「このまま浮気されたことをなしにする方が、逆に周りから見下されるでしょうね」 引き続き話したいことはあったが、茉莉花の状況がこの時急激に悪化し、医者が急いで病院に連れて行く事態となった。 迅は彼女を心配した様子で茉莉花の姿が見えなくなってからようやく私のほうへ体を向けて怒鳴り散らした。 「一華、これで満足かよ! これも全部お前が適当なことを言うからだ。それで俺の昨晩の努力が無駄になってしまった。もし茉莉花に何かあってみろ、お前は人殺しになるんだぞ!} よくもまあ、彼は昨晩自分が努力したと言えるな? 私は彼の恨みのこもった瞳を見つめ、心が苦しくなってきた。 私が彼のためにしてきた五年という長い献身的な行いは、宇野茉莉花が一度現れると何もなかったかのように消えてしまうのだ。 迅は靴を履き替えることも忘れ、救急車を追いかけようとしていた。その際、私に一言吐き捨てた。 「結婚式は延期にしよう。茉莉花には世話をする人が必要だからな。 お前ら何してんだ?」 この時峰雄が迅の前を塞いだ。 「迅、お前はもうすぐ結婚する身だぞ。一時の衝動で自分の大切なものを壊してしまうなよ!」 「そうですよ、茉莉花ちゃんならヘルパーでも手配するから、あなたは安心して結婚したらいいんです!」 迅はこれらの言葉に一切聞く耳を持たず、彼はもがいてそこから出ていこうとした。 私は冷ややかな目でこの茶番を見ていて、氷のように冷たい声で言った。 「行かせてやって。結婚式は取り消しよ!」 迅はその瞬間信じられないといった様子でその場に硬直した。 「一華、お前、この俺を脅す気か!」 脅す? 違う、私はただ疲れただけだ。 五年前、迅が私に一目惚れしたと言ってきたあの瞬間から必死になって私を追い求めて来た。 彼がしつこく三か月も付き纏ってきても、私は全く心を動かされることはなかった。 それはある日台風が来て、彼が危険を顧みず私の出張先へやって来たあの時までだった。彼はただ私の無事を一目確認するためだけに来てくれたのだ。 あの頃の彼の瞳には生き生きとした輝きがあった。全身ずぶ濡れになってかなりひどい姿だったのに、それでも私に笑ってこう言ってくれた。 「君が無事ならそれでいいんだ」 その瞬間、私の心臓は狂ったように跳ね上がった。あの時から愛の渦に巻き込まれて抜け出せなくなったのだ。 付き合いはじめてから、私は篠原家のために二兆のプロジェクトをもたらした。それからというものお金を惜しまず彼らが海外市場に進出する手助けをし、目の前に立ちはだかるいかなる障害も払い除けてやったのだった。 第3話 数年の短期間で篠原家は林原家の全ての力に頼り、数人で開始した小さな会社が、やがて国際的にも有名な大企業ブランドへと成長したのだ。 私は彼に出来る限りのことをやり、尽くしてきた。時には彼に不満を言われることもあった。 それが茉莉花のたった一度の登場で私は完膚なきまでに叩きのめされる結果になるのだ。 「結婚を取り消しにするってんなら、好きにすればいい!ちょうど茉莉花が戻ってきたんだし、俺は自分の幸せを追及させてもらう! 一華、これは全てお前が招いた事態だからな! 私は迅が私を脅す様子を見ていて、ただただおかしくてたまらなかった。 彼はまさかここまでの状況になったというのに、私がまだ彼に従順に何でも言うことを聞くとでも思っているのだろうか? 彼が背を向けて去ろうとした時、電話の呼び出し音が突然鳴り響いた。 「ええ、私が宇野茉莉花の恋人です。今の状態は?」 電話の向こうは何を話しているのか知らないが、迅の顔色が瞬時に青くなり、後ろに数歩よろけてしまった。 「助けて、絶対に彼女を助けてください。この世で一番良い薬を使ってください!俺が責任を取りますから!」 その電話を切った後、彼は私を見ると目に一瞬でうしろめたさが浮かんだ。 「茉莉花の状態が悪化したらしい。細胞免疫促成剤が必要だ。お前が購入したあの薬剤がちょうど届くだろう。茉莉花にそれを譲るんだ!」 それを聞いた私は嘲笑し、はっきりと彼に聞こえるようにこう言った。 「私がそこまでしてやる価値のある女なわけ?」 その薬は特殊な薬剤であり、その価格は二千万もするうえに、払えるお金があったとしても必ず手に入れられるものではない。私は五年も前に祖父のために予約購入していて、しかもそれは人脈をかなり行使してようやく手に入れられたものだった。 そして今彼はそれを簡単に他人に譲れと言うのだから、どれだけ厚かましいことか! 迅はその言葉を聞いた後、驚いた様子で顔色を青くさせ、その後何かを思いついたのか冷たく笑って言った。 「一華、お前そんなに俺に歯向かってくるのは、俺と早く結婚したいと迫っているからなんだろう? わかった、お前の言う通りにしよう。茉莉花が良くなったらすぐにお前と結婚式を挙げてやるからそれで満足だろう?だから今すぐあの薬を茉莉花に譲れ!」 彼はもうこれ以上は耐えられないといった様子だった。まるで私に人生においての大がかりな事でも約束してやったといわんばかりだ。 私が黙ったままなのを見て、迅は恨みがましく付け加えた。 「じゃなきゃ、明日の結婚式はお前一人で執り行うんだな!新郎は現れないぞ。林原家は完全にお笑い種になるな!」 私は彼のあの狂ったような瞳を見つめ、また笑えてきた。 林原家が笑い種になるだって? こんな男のためにか! 私がこの場を去ろうと思った瞬間、秘書が突然LINEを送ってきた。 迅は私名義で宇野茉莉花にあの薬を使わせようとしている。今その薬剤は配送中で、私のサインが必要である。 この時、迅が急いで私の傍に駆けつけ、私の腕をぎゅっと掴んだ。 「さっさとサインしろ。茉莉花はこれ以上もたない!俺がこれだけ頼んでも駄目だって言うのか? どうせあの薬はもうすぐ届くんだろう。茉莉花はお前に救ってくれたことを感謝するに決まってる。お前んとこのあの死にきれない老いぼれなんか、薬を使っても使わなくても同じ……」 パンッ! 彼の話が終わるまえに、私は彼に平手打ちをお見舞いしてやった。そして彼は信じられないといった様子で私を見つめた。 「お前、この俺を殴ったな! 林原一華!」 私は彼が私を罵る言葉を無視し、車を運転して病院に急いだ。 しつこく鳴りやまない電話を電源ごと切ってしまおうと思った時、新しい電話の表示を見て私は驚いた。 それを見た瞬間私はできるだけ自分を落ち着かせた。 電話に出た後、橘悠哉(たちばな ゆうや)のからかうような声が伝わってきた。 「林原さん、明日は結婚式ですよね。本当にちゃんと考えたんですか?」 私はため息をついて、どうしようもないという調子でこう言った。 「結婚という人生の一大イベントを簡単に取り消すような必要はないでしょう」 「そうでしょうか?」 彼は軽く笑った。 「あなたは男のために、言葉と行動が伴わないことが少なくなかったのでは?」 私は信号を待つ間眉間を押さえながら、辛抱強く言った。 「大切な事に関してはそのようなことは絶対にありません。それに、私は橘家の医療技術が必要で、橘家は市場開拓をしたいと思っている。両家の婚姻は最も理にかなった相応しい結婚だと思いますけど」 暫く黙ってから、悠哉は真面目な声で話し始めた。 「俺は結婚した後、あの男が少し涙を見せただけで、あなたがすぐにへこへことまた彼の方にすり寄っていくのを見たくないんですよ。その時、二つの会社をまた分けるのはなかなか難しいですから」 第4話 私がカーナビの画面を見てみると、あと十分で病院に到着する予定だった。 「安心してください。今から私は恋人もいない人間ですから。 明日結婚式で会いましょう」 電話を切った後、私の心はかなり軽くなっていた。 そして私が道を曲がろうとした時、ある見慣れた車が突然後ろから突っ込んできた。 かなりの衝撃を受けて車はそのまま横転し、私は両足に強烈な痛みを感じた。目の前は血の赤色に染まっていた。 粉々に割れた車の窓ガラス越しに、迅がやって来る姿が見えた。 彼が私を見つめるその瞳には憎しみが溢れていた。 「一華、お前がこの俺を追いつめようとするからこうなるんだぞ。茉莉花に何かあってはならないんだ!」 そう言いながら、彼は途切れ途切れに息をする私を無視し、私の携帯を漁った。 私は彼を止めようともがいたが、車から出る力もなかった。 「やめて!」 「やめろだと?」 迅は私の携帯をいじりながら、嫌悪を露わにして私を睨んでいた。 「一華、お前が救える命を救おうとしないとはな!俺が代わって功徳を積んでやるよ」 私は激怒して怒りに燃える瞳で彼を睨みつけ、歯を食いしばりながら言った。 「あれは私のおじいさんが五年も待ち続けた薬なのよ!」 迅は私にあきれている様子だった。 「ただのつまらない薬だろうが。また予約すりゃいいだろう。林原家はプランBまで考えてるに決まってるんだ。そんなケチ臭い人間に成り下がるなよな! それにな、お前のじいさんはもう十分生きたんだから、もう死んでいたっておかしくないんだ!そんな奴にこれだけの金を使って、俺らが将来受け継ぐ遺産が減っちまうだろう? これぐらいのこともわからないというのか」 私は彼を見つめ、激痛に耐えながら笑えてきた。 私の真心。祖父の命。彼にとっては宇野茉莉花に及ぶことはない。 そんな彼は、今の自分がここまで成功できたのが全て私のおかげだということを忘れているのだ。 「結婚式は予定通りに?」 迅は私が秘書に送ったメッセージを見て、嘲笑し、携帯を私の前に突き出した。 「どうやらお前は本気で俺と結婚したいみたいだな。どのみち薬が手に入ったら、お前と結婚してやるからいいだろう?」 私が口を開くまえに彼は眉間にしわを寄せて条件を並べ始めた。 「まず、茉莉花が退院したら俺らと一緒に暮らさせる。そうしないと彼女一人でここにいるのは心配だからな。 それから、お前の全財産を茉莉花名義に書き換えてもらう。彼女に暮らしの保障をしてあげるんだ。お前は会社があれば十分だろ。 そして、茉莉花には俺の子供を産んでもらう。それからお前との間に子供をもうけるか考えることにする。どちらにせよ篠原家の子孫を絶やすわけにはいかないからな。 たったこれだけの事、お前は同意できるだろう?」 彼は疑うことない瞳で私を見つめた。その条件を私が大人しく飲むと思っているかのようだった。 「茉莉花は俺の幼なじみだ。俺は彼女とは結婚してあげられないから、物質的には満たしてあげないと」 そう言い終わると、彼はその後ろ姿だけを私に残して、急いで病院に駆けていった。 私は力を振り絞って助けを求めた後、救急車が急いで駆けつけてくる音を聞きながら意識を失った。 そして次に目を覚ました時には病院の中だった。 今回の車の事故で、私は右足の骨折と、中度の脳震盪を起こしていた。 医者はすぐに救急車を呼んでいてよかったと言った。もしあともう少し遅ければ車の爆発に巻き込まれて、想像もできない事態になるところだったと。 秘書が書類を手に、少し戸惑った様子でそこにいた。 「林原社長、あなたと橘社長との結婚式は……」 私は深く息を吸い込んだ。 「予定通り進めて」 迅はずっと茉莉花の傍について、必死に世話をしていた。 病床の傍らに置かれた携帯はずっと静かで、何もメッセージは来なかった。 迅はわざと心の中につっかえている気持ちを無視し、自分に言い聞かせていた。 全て一華が身勝手に始めた茶番だ。もしこの茶番に付き合ってしまえば、彼女に主導権を握られてしまう。 そんなことにすっかり気を取られていて、茉莉花が目を覚ましたことにさえ気づいていなかった。 彼はテレビを付けて自分の気を紛らわせようとした。 しかし、林原家の一世一代の豪華な結婚式がライブで流れているのを目にし、その場で呆然としてしまった。 その煌びやかな結婚式の様子は、彼が夢で思い描いていたものそのものだった。 ただ、画面に表示されている新郎の名前は『橘悠哉』という三文字だった。