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66回も結婚式を中止したので、私は彼のもとを去ることにした
私がは外科医の彼氏アンドリューと七年付き合って、結婚式がもう66回も挙げた。 でも毎回、彼はセレナのために式を中止した。 一回目は、セレ...
Chương (1)
第1章
私がは外科医の彼氏アンドリューと七年付き合って、結婚式がもう66回も挙げた。
でも毎回、彼はセレナのために式を中止した。
一回目は、セレナが患者に誤った薬を打った時。
彼は「戻るまで待ってて」と言って、私は一日中待ち続けた。
二回目は、セレナが風呂で転んだ時。
その時ちょうど指輪の交換をしようとしてたのに、彼は一瞬も迷わず私を置いていった。
ゲストたちに笑われても、彼は私のことなんて気にも留めなかった。
私は65回も結婚式を挙げ続けたけど、毎回セレナは理由をつけてアンドリューを呼び出し、彼はその度に私を置いていった。
65回目の式の時、セレナは「犬が死にそうで、私も死にたい。ビルから飛び降りる」と言い出した。
母は怒りで心臓発作を起こしたけど、それでもアンドリューは止まらなかった。
その後、アンドリューは家族全員の前で跪いて謝ってきた。
「セレナは孤児で可哀そうなだけだ。俺が本当に愛してるのはアイビー、君だけだ」って。
私は彼に最後のチャンスをあげた。
でも、やはり彼は私を裏切った。
私は完全にあきらめて、アンドリューと別れることを決めた。
そして国際医療援助チームに参加した。
もう、二度と彼に会う必要なんてない。
第1話
今日もまたアンドリューと結婚式を挙げた。
私を迎える誠意を見せるために、アンドリューはたくさんのゲストを招待した。
式の準備で私はずっと忙しくて、一晩中なにも食べずに動き続け、胃が痛くてまっすぐ立つのもやっとだった。
でもアンドリューはそんな私に気づきもしない。今はセレナと笑いながら楽しそうに話している。
私は何も言わず、ただ心の中で「今度こそ無事に終わってほしい」と祈った。
その時、セレナが突然顔色を失って、焦った様子でアンドリューの手を掴んだ。
「アンドリュー、ピーナッツバター食べちゃったかも……」
アンドリューはすぐに私の方を睨んできた。怒りと非難を込めた声で言った。
「どういうことだ?セレナがピーナッツアレルギーだって前に言ったよな?なんでピーナッツバターなんか用意したんだ?」
私は黙ってセレナの演技を見ていた。だって、ピーナッツバターなんか準備してないから。
アンドリューはセレナの様子を確認すると、すぐに彼女を抱き上げた。
「ダメだ、病院に連れて行く」
私は彼の腕を掴んで、かすれた声で言った。
「今度だけは行かないでくれない?」
アンドリューは私の顔を見て、それから腕の中のセレナを見下ろし、少しだけ迷ったあとで言った。
「式は中止にしよう。セレナの状態はかなり深刻だ。彼女は孤児で、家族も友達もいない。俺が面倒を見なきゃいけない」
両親は歯を食いしばって怒りを抑え、友達は罵声を吐き、ゲストたちも小声でささやいていた。
「お嫁さんはほんとに可哀そう。私、65回も式に出たけど、毎回彼女が後片付けしてる」
「そうだよ、毎回あんなに綺麗に飾り付けしてるのに。あれだけ我慢できるって、どれだけ新郎を愛してるんだろうね」
私が手を離そうとしないのを見て、アンドリューは苛立った声で言った。
「アイビー、空気読んでくれよ。アレルギーって死ぬんだぞ!次の式には絶対出るから!」
そんな約束、何度聞いたかわからない。
これが、セレナのせいで式をキャンセルする六十六回目。
昔は式を中止すると言われるたびに、私は泣いてすがった。怒って責めたりもした。
でも今はもう慣れた。どれだけ泣いても怒っても、彼は振り返らない。
私はアンドリューの手をそっと離した。
胃がねじれるように痛くても、なんとか微笑んで言った。
「セレナを早く病院に連れて行って。つらそうだから」
アンドリューは一瞬動きを止めた。
こんなに素直な私を見たのは初めてだったのか、少し焦ったような顔をした。
「アイビー、ごめん。セレナを病院に連れて行ったらすぐ戻る」
「うん」
私は彼の背中を静かに見送った。
でもわかってた。彼は戻ってこない。これまでの六十五回と同じように。
胃が痛くて立っていられず、私はそのまま人前で倒れてしまった。
私の胃が弱いこと、アンドリューはずっと知ってた。
付き合い始めた頃、彼は毎日私の食事を見守ってくれて、一食抜いただけで「胃、大丈夫か?」と心配してくれた。
ストレスで胃が痛くなることも知っていて、自分で料理を作ってくれたし、私の嫌いな食べ物もちゃんと覚えていてくれた。
「一生守るよ。あなたが一番大事だから」
そう言ってくれた。
でも全部、セレナが会社に入ってきた日で終わった。
彼はセレナのために、私を六十六回捨てた。
もう疲れた。もう彼にチャンスを与えるつもりはない。
目を覚ましたとき、そばにいたのは両親だけだった。
二人は言った。
「式は中止になったよ。アンドリューは一日中戻ってこなかった」
私が倒れたことを知らせようとしても、彼の携帯はずっと繋がらなかった。
私は苦笑した。
セレナに何かあるたびに、アンドリューは私を後回しにする。
ただ、彼女が孤児で可哀そうだからという理由だけで。
私はウェディングドレスを見つめた。
真っ白で神聖なそのドレス。私はアンドリューのために六十六回もそれを着た。
よろけながら起き上がり、そのドレスをゴミ箱に投げ捨てた。
母が涙を拭きながら言った。
「アイビー、今度こそ一緒に帰ろう。アンドリューなんて、あなたにふさわしくない」
六十五回目の式が中止になった時、両親は無理やり私を家に連れて帰った。
アンドリューは家の前で一晩中跪いて、もう一度だけチャンスをくださいと懇願した。
両親は心を動かされて、最後の結婚式を許した。
でも次は?
もし三日三晩跪いたら?
私はもう、また捨てられるあの絶望を受け止める力なんて残ってない。
「ごめん、パパ、ママ。私は帰らない。三日後、ナーニアへ飛ぶ」
ずっと国境なき医師団に入りたかった。
でも、アンドリューと一緒にいたくて、その誘いを断った。
今のわたしはただ彼のことを完全に終わらせたいだけ。
第2話
両親は私の決断を全力で応援してくれた。
話し合いが終わったあと、私は二人を空港まで見送った。
家に戻っても、アンドリューはまだ帰っていなかった。
胃の痛みがどんどん酷くなって、薬箱を開けたけど、中の痛み止めはもうとっくになくなっていた。
目を閉じて、少しの間だけじっとしてみた。
以前はいつも自分で薬を準備していたけど、アンドリューと付き合い始めてからは、彼がいろんな薬を買って家に置いてくれていた。
彼はいつもお湯を用意して、「さあ、飲んで」と優しく言ってくれた。
薬を飲んでぼんやりしていた私の横で、彼はお腹をゆっくりとさすってくれていた。
でも今はどうしても我慢できない痛みだった。
アンドリューに電話をかけようとして、スマホを手に取ったけど、やはりやめた。
セレナのために、何度も私を置いていった彼の姿を思い出したから。
私は静かに笑って、自分で病院に行くことにした。
病院に行って救急外来にかかると、当直中だった同僚のルーシーが眉をひそめて言った。
「今日、結婚式じゃなかったっけ?なんで真夜中に救急に来てんの?アンドリューは?なんで一緒に来ないの?」
私は笑って答えた。
「忙しいんだよ」
ルーシーは思わず口調を荒げた。
「どれだけ忙しくても、奥さんには付き添えよ!あなたは痛くて腰も伸ばせないってのに、アイツほんとにひどいな!」
薬を受け取りに行くとき、偶然、セレナの病室の前を通りかかった。
アンドリューが彼女のそばに付き添っていて、その姿と一人きりの私があまりにも対照的だった。
セレナは悪い夢でも見ていたのか、突然アンドリューの手を掴んでつぶやいた。
「置いてかないで……お願い、私を一人にしないで……」
アンドリューは彼女の頭を優しく撫でながら、落ち着いた声で言った。
「大丈夫だよ、俺がいる」
その光景を見ているうちに、目がじんわり熱くなった。
寂しさと悔しさが込み上げてきたけど、それでも私は背を向けて病室を離れた。
家に帰って、一日休んでから、自分の荷物を全部まとめた。
七年間暮らしてきた家なのに、最後に持って出られたのはスーツケースひとつだけだった。
あまりにも静かに過ごしすぎたせいか、アンドリューに二日間メッセージを送らなかっただけで、彼はようやく異変に気づいたのか電話をかけてきた。
その声は探るような不安に満ちていた。
「今日、どうして仕事に来なかったの?」
「胃が痛くて」
「そうか……無理するなよ。セレナがアレルギー起こしてから、何も食べられてないから、何か作ってやってからそっち行く」
彼が通話を切る前、セレナの声が聞こえた。
「アンドリュー、マッシュルームスープが飲みたい。冷蔵庫に材料あるよね?作ってくれる?」
その一言で、私はすべてを悟った。
セレナはもう退院していて、アンドリューは彼女の家で面倒を見ている。
セレナには家族がいないからって、彼が彼女のそばにいるのは当然だと、彼はそう思ってる。
じゃあ、私は?私にだって、誰もいないのに。
その夜、私はなかなか眠れなかった。
胃の痛みは鎮めたのに、心の痛みはひどくなるばかりだった。
翌日、私は病院の上司に辞表を出した。
上司は残念そうに言った。
「どうして辞めるんだ?アンドリューとは相談したのか?あなたは彼のために外科医の仕事まで手放したのに、今度は辞めるのか?」
私はアンドリューと同時期に病院に入り、医師としての腕も彼に引けを取らなかった。
でも外科はあまりにも忙しかったから、彼と結婚することを決めたとき、家庭を優先しようと思って、私は自ら希望して事務職に異動した。
でも、もう彼と結婚したくない。
私は微笑んで首を振った。
「辞めるのに、アンドリューと相談する必要はないよ」
その時、突然オフィスのドアが開いて、アンドリューが現れた。
私のことをじっと見つめて、今にも消えてしまいそうな私を掴むような目で叫んだ。
「アイビー、なんで辞めるんだ?なんで相談してくれなかったんだよ?」
第3話
アンドリューは私を上司のオフィスから引っ張り出して、責めるような顔で言った。
「アイビー、また拗ねてるのか?もうちょっと大人になれないのか?二日前に結婚式を中止したのは俺の本意じゃないんだよ。セレナはゲストとして祝福しに来てくれたのに、式の最中にアレルギーで窒息して倒れたんだ。そんな彼女を放っておけると思うか?」
私は無表情で答えた。
「怒ってないよ。彼女を看病するのは当然でしょ」
アンドリューは一瞬黙り込んで、ぼそっと呟いた。
「なんでそんなに急に大人しくなったの?怒ってないなら、なんで辞めるんだ?」
「新しい仕事が決まったから」
私は何年も医学を学んできた。一心で困っている人を助けたい。
だから、国境なき医師団に加われることが嬉しかった。
けれど、アンドリューの顔色が突然曇った。
「今はまだ辞めないでくれ。セレナは私たちの結婚式でアレルギーを起こして、式が中止になったばかりなのに、あなたが今すぐ退職願を出したら、彼女が自分のせいだって思い込むに決まってる。彼女は孤児で繊細だから……」
私の胸にあった期待は彼の言葉で冷たく打ち砕かれた。
ただセレナを気遣うために、私の夢をまた先延ばしにしろと言うのか。
たぶん私の顔に出た失望があまりにもはっきりしていたのだろう。
アンドリューの声は少しだけ優しくなった。
「もうちょっとだけ我慢して。式が終わったら、やりたいこと何でも応援するから」
この期に及んで、彼はまだ結婚式を挙げようとしてる。
でも、私はもう限界だった。これ以上はもう、耐えられない。
私が黙っていると、アンドリューはそれを同意だと受け取った。
今までもずっと、彼が何かを望めば、私は断らなかったから。
「ほら、そんな顔すんなよ。今夜はデートしようか?」
アンドリューは手を差し出してきた。
私たちはいつも決めていた。喧嘩しても、デートのときは仲良くするって。
「うん」
私は微笑んで応えた。
この関係に、せめて綺麗な終止符を打ちたかった。
だが、またしてもセレナが現れた。
「アンドリュー、助けて……8番ベッドのおじいさん、また私をいやらしい目で見てきたの。検査、代わりにやってくれない?」
私は冷たい目でセレナを見た。
彼女は看護師で、こういう問題があれば看護師長に相談すべきなのに、わざわざアンドリューに頼るのは、同情を引くために決まってる。
以前の私なら、そう言って彼女を非難したかもしれない。
でももう、どうでもよかった。
アンドリューは私の顔をうかがうようにして、迷っているようだった。
彼が私の意見を伺うなんて、今まで一度もなかったことだった。
私は優しく言った。
「セレナは孤児で、弱い立場だしね。あなたは先輩として、助けてあげるべきだと思うよ」
アンドリューは信じられないような顔で何度も私を見た。
そんな私の変化に、戸惑っているようだった。
セレナは私の手を握ってきた。
「アイビーって、本当に優しいんだね。大事な婚約者を貸してくれるなんて」
私は何も言わなかった。
それでもセレナはしつこく話しかけてきた。
「ねえ、私たちのネックレス、おそろいっぽくない?」
私は彼女の首にかかるネックレスを見た瞬間、雷に打たれたような衝撃を受けた。
そのネックレスのチャームは「鍵」そして私のネックレスは「鎖」だった。
昔、私はすべてを捨ててアンドリューについてこの町に来た。
そのとき彼は特別にデザイナーに頼んでこのペアのネックレスを作ってくれた。
「あなたの心の扉は俺だけが開けられるように」
彼はそう言って、私にネックレスをかけてくれた。
「このネックレス、一生外さない。あなたへの愛と同じで」
でも今、そのネックレスは、他の女の首元にかかっている。
あまりにも皮肉だ。
私は自分のネックレスを外し、セレナに差し出した。
「じゃあ、私のもあげるよ。ちょうどペアになるでしょ」
仕事が終わったあと、アンドリューが迎えに来てくれた。
私がネックレスをしていないことに気づくと、すぐに私の手を掴んで聞いてきた。
「ネックレスは?一生外さないって約束したじゃん!」
私は彼の首元を見た。彼はもう着けていなかった。
なのに、私にだけ着けてろって言うの?
彼は少し気まずそうに目を逸らして言った。
「ごめん、俺の……なくしちゃった」
私は笑った。
「奇遇だね、私のもなくしちゃった」
アンドリューはほっとしたような顔をして、「じゃあ、また新しいのを買ってあげるよ」と言った。
第4話
アンドリューが言っていたデート、まさか観覧車だった。
私は観覧車が大好きで、彼と一緒にこの街を見下ろしながら、頂上でキスすることを何度も夢見てきた。
でも彼は高所恐怖症で、一度話したきり、それ以上は望まなかった。
まさか、私が去ろうと決めた今になって、その夢を叶えてくれるなんて思わなかった。
「アンドリュー、ありがとう」
この言葉は本当に心からの感謝だった。
けれど次の瞬間、ポップコーンを抱えたセレナが駆け寄ってきた。
「わあ、偶然だね!デート中?いいなあ、二人で楽しそう。私なんて一人で来たのに」
わざとらしく落ち込んだ声でアンドリューを見上げた。
アンドリューは気まずそうに笑いながら言った。
「じゃあ、俺たちと一緒に回ろうか」
私の笑顔はその場で凍りついた。
セレナは私を見て、挑発するように笑った。
「ごめんね、デート邪魔しちゃって」
アンドリューは私を見て、不安そうに聞いてきた。
「アイビー、嫌だったらはっきり言っていいよ」
なんだか不思議な気分だった。
最近、アンドリューはやたらと私の意見を聞こうとするようになった。
でも私の心はもうとっくに死んでいた。
私は優しく答えた。
「大丈夫だよ、気にしてない。人数が多い方が楽しいし」
私は嫌だなんて、絶対に言えない。
そんなことを言えば、また「孤児をいじめてる」なんて言われるに決まってる。
観覧車の中。
アンドリューとセレナは楽しそうに話していた。
病院の患者の話、有名人のゴシップ、マッシュルームスープのレシピまで。
私は思わず口元を歪めた。
どう見ても、私より二人の方が恋人らしかった。
「そういえばアンドリュー、前に私の家で作ってくれたマッシュルームスープ、人生で一番美味しかったな。アイビーが一生飲めるなんてうらやましい」
その言葉に、アンドリューは慌てて私の方を見た。
何か言いかけていたけど、私は一度も彼らの方を見なかった。
私はただ、観覧車の窓から、七年間暮らしてきた町を見下ろしていた。
そのとき、セレナが隣に来て言った。
「綺麗だよね、この景色。私は観覧車って一番好きなの。前に飼ってた犬が死んだ時、もう死にたくなっちゃって……でもアンドリューが慰めるために一緒に観覧車に乗ってくれたの」
聞かないように、見ないように、考えないように努力していたのに、セレナはわざと私の心をえぐってくる。
私の心だって肉でできてる。痛みを感じないわけがない。
私はずっと、アンドリューが私のために高所恐怖症を克服して、観覧車に乗ってくれたと思ってた。
でも、本当はもうとっくに、他の女のためにやっていたなんて。
セレナはケラケラ笑いながら言った。
「知らないでしょ?アンドリュー、観覧車の中で足ガクガクさせて、私にしがみついてたんだよ。そんな彼、初めて見た」
私は目を伏せた。
私もそんな姿、見たことなかったよ。
ずっと黙っていた私に、アンドリューが不安そうに聞いてきた。
「どうしたの?胃が痛い?それとも怖くなった?」
「ううん、ただ景色を楽しんでただけ」
私がそう言うと、彼はあっさり信じて、またセレナと話し始めた。
観覧車を降りた直後、それまで元気だったセレナが急にアンドリューにもたれかかって言った。
「アンドリュー、ちょっと……頭がクラクラする……」
アンドリューは私を見て、苦しそうに説明した。
「セレナ、ほんとは高所恐怖症でさ……この前観覧車に乗ったのも、お互いの恐怖を克服するためだったんだ」
「いいよ、もう。彼女を家まで送ってあげて」
「じゃあ、ここで待ってて。送ったらすぐ戻るから」
私は彼が車に乗って走り去るのを見送って、そのまま背を向けて立ち去った。
私は、今まで何度も彼を待ち続けてきた。
でも、もうこれ以上は待たない。
空港へ向かうタクシーの中、アンドリューからメッセージが次々と届いた。
【アイビー、次の結婚式、観覧車の下で挙げよう。あなたが言ってたじゃん、頂上でキスして、神様に見守られながら指輪を交換したいって】
音声メッセージも何件も届いた。
彼は必死で、閉ざした私の心をこじ開けようとしていた。
【俺のために、66回の結婚式を計画してくれたよね。今度は、俺にやらせてくれないか?
あなたを、世界一幸せな花嫁にしたいんだ】
でも、私は何も返さなかった。
何度も失望させられて、もう彼に対する信頼はどこにも残っていなかった。
離陸直前、彼から最後のメッセージが届いた。
【セレナの高所恐怖症がちょっとひどくて、もう少し付き添ってあげなきゃならないんだ。
悪いけど、あなた一人で帰れる?】
またか。
いつもそう。
彼は決して、私を選ばない。
でも、私はもう何度も彼に傷つけられてきたから、今ならちゃんと、冷静に、きっぱりと決断できる。
私は最後に、一通のメッセージを彼に送った。
【わかった。セレナのこと、ちゃんと看てあげて。必要なら、彼女を家に住まわせてもいいよ。私たち、別れよう。第67回の結婚式は中止ね】
やっと一度だけ、私のほうから、結婚式をキャンセルする番がきた。
これでもう、アンドリューとは二度と会わなくていい。