君がいない季節を超えて

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君がいない季節を超えて

GoodNovel Hoàn thành
偏執男女性パワー恋愛三角関係

冷戦が始まってから半月、5歳年下の彼から卒業アルバムの写真が送られてきた。 「姉ちゃん、この中でどの女の子が一番可愛いと思う?」 私は一...

Chương (1)

第1章

冷戦が始まってから半月、5歳年下の彼から卒業アルバムの写真が送られてきた。 「姉ちゃん、この中でどの女の子が一番可愛いと思う?」 私は一瞬で目についた子を指して送り返した。 「ハハ、同じこと考えてたな!」 少し後、彼とその子が正式に付き合い始めたという報告写真が、私のSNSのタイムラインに流れてきた。 第1話 一日の疲れを終え、腰をトントンと叩きながら手を洗い、着替えて家に帰る準備をする。 幸いなことに、病院から母が借りてくれた家まではほんの数分の距離だ。疲れ切った体をすぐに休められるのはありがたい。 何度目になるかわからない喧嘩のせいで、橘悠真(たちばな ゆうま)にまたブロックされてしまった。スマホの「送信できませんでした」の横にある赤い感嘆符を見つめ、ため息をつく。 付き合い始めて4年。 最初の1年は、お互いに密接で争いなんてなかった。 2年目になると、小さな意見の食い違いが顔を出し始めた。 そして3年目、4年目では、取るに足らないことで関係がギクシャクし、私たちの絆を蝕んでいった。 無数の喧嘩をしては仲直りし、また喧嘩しては元に戻る……その繰り返し。 喧嘩といっても、実際にはほとんど彼が一方的に怒っているだけだった。 私は年上だからと、彼を気遣い、できるだけ譲るようにしていた。 どうしても我慢できないときは病院に逃げ込んで、目の前の問題から距離を取ることで冷静になろうとした。 今回の喧嘩のきっかけは、彼のパジャマを乾かしてアイロンがけするのを忘れたことだった。 「最近、本当に忙しいの。新しいのを買えばいいじゃない」と、私は穏やかに説明した。 「新しいのだって、結局洗わないと着られないでしょ? 何回も頼んだのに、約束してくれたのに、なんで守らないんだよ?」 悠真の怒りが立て続けに爆発し、私は言葉を失う。彼がその件について繰り返し言っていたのは覚えているが、それを真剣に受け止めていなかった自分が悔やまれる。 「透子、君は僕のことを本気で考えたことがあるのか? どうせ僕なんて、ずっと普通の弟みたいな存在なんだろう? それに、毎回喧嘩した後、僕が君をなだめるなんて、惨めすぎるよな」 悠真は自嘲気味に笑みを浮かべると、私は無性に不安になった。手のひらを強く握りしめ、心が折れないように必死で堪える。 元々、問題に向き合うのが苦手な性格の私は、彼の言葉に対して説明するよりも、ただ逃げたくなる。 「そんなことない!」と震える手で彼を引き留めようとするも、悠真は私の手を冷たくかわし、ドアを乱暴に閉めて出て行った。 「夏休みのせいで......入退院する患者がめっちゃ増えて......本当にただ忙しかっただけ......」 伸ばした手が虚しく宙に浮き、私はその場に立ち尽くす。 そして、しばらくしてから病院に戻り、無心で仕事に没頭することにした。 仕事に戻り、カルテを書き、処方箋を記入し、ただひたすら手を動かす。 「ん?深川(ふかがわ)さん、今日当直じゃなかったよね?」 同僚がオフィスに入ってきて驚いた声をあげる。 「家でゴロゴロしてるより、仕事を片付けてしまおうと思って」 機械的に笑顔を作る私を見て、彼女は気遣わしげな視線を向ける。 「また家の『弟くん』と喧嘩したの?」 疲れたように首を横に振る私に、彼女は冗談めかして続けた。 「じゃあ、前倒しで仕事を終わらせて、弟くんとの旅行の準備ってわけ? 卒業控えてるんでしょ?」 私は苦笑いを浮かべ、何も言わなかった。沈黙の中で作業を続ける私を見て、彼女は肩をすくめて部屋を出て行く。 仕事に集中している間、悠真からのメッセージに気づかなかった。 「君ってさ、絶対自分から連絡しないよね。機嫌が良ければ僕をなだめてくれるけど、悪ければ放置する」 その言葉を見て返事をしようとしたが、もう遅かった。彼のアカウントは私を再びブロックしていた。 第2話 悠真と初めて出会ったのは、彼が高校三年生の時だった。その年、彼は18歳、私は23歳。 3年間の受験のプレッシャーから解放された途端、羽目を外しすぎて暴走。結果、自分の腕を骨折して病院送りになるという大惨事だった。 その時、私が彼の主治医を務めることになったのだ。 病院での毎日は、遊びたい盛りの男の子にとって退屈そのもの。 周囲には彼と同じ年頃の人間はおらず、話が合う人なんて誰もいない。そんな中で唯一、私という「年の近い女医」が、時々暇つぶしに相手をしていた。 そして、まるでどこかのラブコメのように、悠真はすぐに私に興味を持った。 「お姉ちゃん、おはようございます!今日も早いんですね!」 「お姉ちゃん、昨日の夜、ゲームやるって約束したじゃないですか!」 「お姉ちゃん、今日ちょっと腕がまた痛くなってきたんですけど……」 「お姉ちゃん……」 「お姉ちゃん……」 彼の話し方は、なぜか語尾が少し上がる。年齢のせいなのか、それとも私の気のせいか、そのトーンがどこか甘えたように聞こえてくる。 正直、私は彼の話を聞くのが好きだった。 骨折が治るまでには3カ月かかるという。 小さな腕の骨折とはいえ、接骨、ギプス、薬の処置など、悠真は結局その間ずっと入院生活を送ることになった。 その3カ月の間に、私たちの関係はどんどん近づいていった。それだけではない。ナースステーションの看護師たちもこの少年を気に入り、彼を話題にするようになった。 私は研修医として1年目を迎えたばかりで、彼が担当する中で最も年下の患者だった。 だから、自然と「弟みたいな存在」として接するようになったのだ。 でも、彼は頻繁に理由をつけて医局にやってくる。これがまた看護師たちの格好のネタになった。 「ねえ、あの子、深川のこと好きなんじゃない?」 「めっちゃ懐いてるよね!」 そんな噂話が聞こえてくるたびに、私は軽く流して答えた。 「いやいや、だって私、彼よりかなり年上だよ? ただ信頼できる、普通のお姉さんって思われてるだけでしょ」 何度も同じ説明を繰り返した。 当時の私は本当に、悠真が私に恋心を抱いているなんて思ってもいなかった。 だって普通、患者って医者に対してどこか怖れを持つものじゃない? 少なくとも、私が子供の頃は、医者なんて好きになるどころか、むしろお尻に注射でも刺してやりたいくらい嫌いだったから。 第3話 昼夜を問わず忙しさに追われ、何日も休む暇がなかった私。ついには朦朧とした状態になり、主任から強制的に休暇を取らされることになった。 「しっかり休んで体調を整えてから来なさい」との命令。失恋の痛みを仕事で紛らわせるという計画は、あっさりと潰えてしまった。 ベッドに横たわり、ぼんやりと天井を見つめる。そんなとき、スマホが振動して通知が届いた。画面に映る送り主の名前を見て、一瞬、自分が幻覚を見ているのかと思った。 送り主は……悠真。 両手で目を何度もこすり、再び画面を見ても、確かに「悠真」と書かれている。驚きで体を起こし、急いでメッセージを確認すると、そこには一枚の集合写真が添付されていた。 それは彼の卒業写真だった。 ブロックされてから再び連絡が来るまで、半月以上が経っていた。 「怒りが収まったのかな?」と思いながら、私は少し期待してメッセージを開いた。きっとこれがきっかけで、また彼と話せるようになるのではないかと。 ところが、続けて送られてきたメッセージには、こう書かれていた。 「ねえ、お姉ちゃん。この中でどの子が一番可愛いと思う?」 私は写真を拡大し、彼の立ち位置を探す。中央に立ち、少し口元を上げた微笑みを浮かべる悠真。しばらく彼を見つめた後、ふと思い出した彼の質問に目を向けた。 悠真が男子の中で目立つのと同じように、女子の中で一際目を引く子がいた。その子は女子列の中央に立っている。私はその子の顔をマークして、悠真に送り返した。 返事はすぐに来た。 「ハハハ、同じこと考えてたな!」 『同じこと』、それは心の通じ合いでもなく、私の目が良いという称賛でもない。 私はその言葉に含まれる意味を敏感に捉えた。 「新しいターゲットってこと?」 「お姉ちゃんはどう思う?僕、彼女を狙ってもいいかな。それとも、狙ってほしくない?」 「ダメだし、そんなの望んでない」と答えたい気持ちをぐっと飲み込む。 少しの間ためらった末、こう返した。 「もし彼女が悠真にとってぴったりだと思うなら、そして彼女を手に入れられるなら……私も嬉しいよ」 「それなら、お姉ちゃんの望み通りにしてあげるさ」 その後、私たちは意地を張るかのように連絡を絶った。 さらに後日、彼のSNSでカップル写真が投稿されたのを目にした。 悠真はターゲットを見つけてから落とすまでが早い。 彼はイケメンだし、アプローチの際には犬のように従順で、甘え上手。相手を夢中にさせるのが得意なのだ。 その投稿に私はこっそり「いいね」を押して、そっとアプリを閉じた。 正直、その女の子が羨ましかった。 私にはもうない「若さ」と「輝き」を彼女は持っている。卒業写真で見せた無邪気な笑顔を見ていると、心が少し萎んでいくような気がした。 私は認めざるを得なかった。彼女のその明るさの前では、自分が無力に感じる、と。