Đang tải thông tin quảng bá...
婚約した後、私は中絶を決めた
結婚式の前夜、細井一矢(ほそい いちや)は突然、暴行事件に巻き込まれた。 その知らせを聞いて病院に駆けつけたとき、彼はもう私のことを覚...
Chương (1)
第1章
結婚式の前夜、細井一矢(ほそい いちや)は突然、暴行事件に巻き込まれた。
その知らせを聞いて病院に駆けつけたとき、彼はもう私のことを覚えていなかった。
医者によれば、頭部に強い衝撃を受けたことで一時的な記憶喪失を引き起こしたという。
私は必死に策を練って、彼との思い出が詰まった場所を一緒に巡り、記憶を取り戻させようとした。
けれど、ある日病院での再検査の際、偶然、彼が友人と話しているのを耳にした。
「押川(おしかわ)はあんなに尽くしてるんだ。もっと感動すべきなんじゃ......?」
「何が感動だよ、吐きそうだわ。同じ場所をグルグル回って、全然新鮮味がねえ。やっぱり若い子の方が変化があって面白い」
「じゃあなんで彼女と結婚するのだ?俺から言わせてもらえば、婚約解消して自由になった方がマシだろ」
それを聞いた彼は激怒していた。
「ふざけんな!俺がどれだけ怜奈(れいな)を愛してると思ってるんだ!婚約解消なんてしない!絶対に結婚する!ちょっとだけ時期をずらすだけだ」
手元の「すべて正常」と書かれた診断結果を見つめながら、私はようやく夢から覚めた気がした。
彼は、わからないふりをしていただけだった。
第1話
結婚式の前夜、細井一矢(ほそい いちや)は突然、暴行事件に巻き込まれた。
その知らせを聞いて病院に駆けつけたとき、彼はもう私のことを覚えていなかった。
医者によれば、頭部に強い衝撃を受けたことで一時的な記憶喪失を引き起こしたという。
私は必死に策を練って、彼との思い出が詰まった場所を一緒に巡り、記憶を取り戻させようとした。
けれど、ある日病院での再検査の際、偶然、彼が友人と話しているのを耳にした。
「押川怜奈(おしかわ れいな)はあんなに尽くしてるんだ。もっと感動すべきなんじゃ......?」
「何が感動だよ、吐きそうだわ。同じ場所をグルグル回って、全然新鮮味がねえ。やっぱり若い子の方が変化があって面白い」
「じゃあなんで彼女と結婚するのだ?俺から言わせてもらえば、婚約解消して自由になった方がマシだろ」
それを聞いた彼は激怒していた。
「ふざけんな!俺がどれだけ怜奈を愛してると思ってるんだ!婚約解消なんてしない!絶対に結婚する!ちょっとだけ時期をずらすだけだ」
手元の「すべて正常」と書かれた診断結果を見つめながら、私はようやく夢から覚めた気がした。
彼は、記憶喪失のふりをしていただけだった。
病室では、一矢とその友人の会話がまだ続いていた。
ただ、声はかなり小さくなっていて、何を話しているのかはっきりとは分からないが、二人は気味の悪い低い笑い声を揃えてあげていた。
彼の声は明らかに興奮していた。
「早く準備しろよ、今夜は思いっきり楽しむんだから!」
「任せてください、一矢さん。今夜は開放的で元気な子たちを何人か連れてくるから、一緒に楽しもう!」
「でも、そんなことばっかしてたら、押川とは本当に取り返しがつかなくなるんじゃ?」
そのときの彼の気の抜けた声が、鋭い刃のように胸に突き刺さった。
「心配するなよ。あいつは俺のこと、死ぬほど好きなんだ。十年待たされたって、何も迷わず俺を選ぶさ」
ほどなくして、病室から足音が聞こえてきた。
私は慌てて目元の涙を拭い、今来たばかりのような顔をして病室の前に立った。
彼の友人が出てきて私に気づき、にやにやと笑って声をかけてきた。
「お、押川さん。残念っすけど、一矢さんの病状があんまりよくなくて、俺らのこともけっこう忘れちゃってるんですよ。でも安心してください、今夜ちょっとした集まりを開くんで、記憶が戻るように頑張りますよ」
私は無理に笑顔を作った。
やっぱり、私って本当にバカだ。
彼の言う集まりが何を意味するか、今ならだいたい分かる。
以前は何も知らずに感謝さえしていた。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「押川さん、そんな他人行儀な。じゃあ俺は先に準備に戻りますんで、一矢さんのこと頼みますよ」
病室に入ると、一矢は眉をひそめて私を見て、うんざりしたような軽い口調で言った。
「また来たのかよ。だから言ったろ、俺はお前のこと知らねえって!」
「俺、顔がいいから惚れやすいのは分かってるけど、お前みたいなのが俺と結婚したいとか無理あるから!」
「この数日、お前に付き合っていろんな場所に行ってやったけど、何も思い出せない。まだ付きまとうつもりか?」
私は唇をかみしめた。
さっき病室の外で真実を知ったはずなのに、いざ面と向かうと、胸がねじれるように痛んだ。
あの頃、私のために家族とまで喧嘩してくれた彼が。
ここまでやっと辿り着いたというのに。
どうして、こんな風に変わってしまったの?
私は手にしていた検査結果の報告書を彼に差し出した。
「大したことじゃないよ。検査の結果を取りに来ただけ。体に異常はなかった、もう退院できるって」
一矢は驚いたように私を見て、嬉しそうに声を上げた。
「本当か!?」
実はこれまで退院できなかったのは、私が強く引き止めていたからだった。
一つには、彼の記憶喪失を治療するため。
もう一つには、万が一何か後遺症が出た場合に備えて、すぐ治療できるようにしておくため。
でも、今やっと分かった。
彼はそもそも記憶を失ってなんかいなかった。
治療なんて、最初から必要なかったのだ。
もしかしたら、あの「暴行事件」さえも、彼自身が仕組んだ茶番だったのかもしれない。
目的は、私との結婚を先延ばしにすること。
だったら、彼の望み通りにしてあげよう。
「もちろん本当よ。病気でもないのに、これ以上入院してたら医療資源の無駄遣いでしょ」
一矢はすぐにベッドを降り、クローゼットからきれいな服を探し始めた。
そして、眉をひそめて私に訊いてきた。
「あれ?俺のネイビーのカジュアルジャケット見てない?」
私は俯いた。
心の中にナイフを突き立てられたようだった。
そのジャケットは、私が彼にプレゼントしたものだ。
つまり、退院できると知って浮かれたあまり、自分の嘘にあったはずの設定を忘れてしまったのだ。
「さっきまで、私のこと知らないって言ってたくせに。なんで私が買った服のこと覚えてるの?」
そう言い終わると、私はじっと彼を見つめた。
ほんの少しでも良心が残っていることを信じて。
一矢の手が、一瞬空中で止まった。
次の瞬間、彼は頭を抱えて叫び声を上げ、床に崩れ落ちた。
「痛いっ!頭が!」
すぐに医者が駆けつけ、ようやく彼をなだめた。
一矢は私を睨みつけ、憎々しげに叫んだ。
「この女を追い出してくれ!こいつのせいで頭が痛くなる!」
「治療に来てるんじゃなくて、俺を苦しめに来てるだろ、こいつ!」
私はかすかに笑みを浮かべ、そっと目を閉じた。
何も言わずに、病室を出た。
医者があとを追ってきて、私に言った。
「押川さん、今は患者の状態がまだ不安定なので、あまり刺激しない方が……」
その一言で、私はすべてを悟った。
静かにうなずいて、こう答えた。
「わかりました先生。これからは、彼のことをもう刺激しません」
第2話
あの日、病院を出てから数日間、私は一矢と一切連絡を取らなかった。
ただ、SNSでは彼の動向をよく見かけた。
彼は友人たちと毎晩のように深夜のバーやカラオケに出入りし、隣にいる女の子たちはみな若くて美人で、活発そうだった。
きっと、これが彼の望んでいた生活なんだろう。
家の荷物を整理し始め、いよいよ出ていこうとしたとき、彼が若い女の子を抱いて玄関先に現れた。
一矢は一瞬呆然とし、反射的にその子から手を離した。
けれども「記憶喪失」という設定を思い出したのか、今度は堂々とその子の腰に手をまわした。
「ここはたしか、俺の家だよな。俺の許可なしに勝手に入るなんて、不法侵入ってやつ?」
私はスーツケースの取っ手を強く握りしめた。
この部屋は確かに一矢名義の家。
でも、私たちが一緒に準備してきた結婚のための新居でもあった。
つまり彼はこの新居で、別の女とあんなことをするつもりなんだ。
私がまだ口を開かないうちに、彼はさらに言葉を重ねた。
「まあ、お前が元・婚約者って話もあるし、今回だけは大目に見てやるよ。次からは無断で入るなよ」
私は彼をじっと見つめ、小さく答えた。
「はい、もう来ません。さようなら」
もう二度と、この部屋に戻ることはない。
これで全ての縁を断ち切れる。
スーツケースを引いて立ち去ろうとしたそのとき、彼に抱かれていた女の子が唐突に口を開いた。
「一矢さん、そのスーツケースに何が入ってるかわかんないよ。中身をちゃんと確認しないと!」
さっきまで私を追い出そうとしていた一矢は、すぐに態度を変えた。
くるりと向き直り、私のスーツケースを掴んだ。
「おお、そうだったそうだった!よく気づいてくれたな。この貧乏人、俺の大事な物を盗んだら大変だ」
彼は力任せにスーツケースを引っ張り、床に叩きつけようとした。
これは、私にとって最後のプライドだった。
私は必死に抵抗した。
「これは私個人の持ち物よ、何をするの!?」
一矢の目が怒りに染まる。
「お前、俺の家から出て行こうとしてるんだぞ?手癖が悪くて何か盗んだんじゃないかって疑うのは当然だろうが!」
その瞬間、全身が凍りついた。
この人にとって、私はそんなふうに見えていたんだ。
彼はついにスーツケースを奪い取り、私の力ではもう止められなかった。
中の衣類が床に散らばる。
それを見て、私はふっと力を抜いた。
「あんたのものなんて一つもないって、これで分かった?」
隣にいた福地康花(ふくち やすか)が口を押えて笑った。
「こんなダサくてボロい服着てるとか、田舎者丸出しね」
一矢も笑い出す。
「当たり前だろ、こいつは田舎から出てきた野良娘だ。お前みたいにおしゃれで可愛い子とは大違いだよ」
二人の言葉は、私をまるで汚物のように貶めた。
そして、散らばった衣類。
それは、私の最後の想い出の象徴でもあった。
「片付けるよ」
私は静かに、その中から一番古びた服を何着か拾い上げ、残りはすべてゴミ箱へ捨てた。
一矢が少し慌てた表情を浮かべる。
あの服たちは、彼がかつて私に買ってくれたものだった。
中には、一着の純白のウェディングドレスもあった。
私が、結婚式のために早々と選んだ大切な一着。
「こんなにたくさんの服、全部捨てるつもりか?ウェディングドレスまで――」
私は淡々と彼を見やり、手に持ったライターをゴミ箱に放り込んだ。
数秒後、炎が勢いよく燃え上がった。
「もう要らない。全部、無駄になったから」
私は炎が落ち着くまでじっと見届けてから、ようやくその場を後にした。
薄暗い街灯の下、一矢の表情は読めなかった。
私の背中が通りの角に消えかけたその時、彼が私の手首を掴んできた。
「たとえ俺が記憶喪失でお前のことを思い出せなくても、自暴自棄になっちゃダメだろ?もしかしたら、いつか記憶が戻るかもしれないんだぞ?」
私は冷たい笑みを浮かべた。何も言わず、その手を強く振り払った。
この時初めて、彼が婚前に「記憶喪失ごっこ」をしてくれてよかったと、少しだけ思った。
もし結婚後にこれほどの仕打ちを受けていたとしたら……私はきっと、本当に立ち直れなかっただろうから。
第3話
出ていったあの日、私はホテルに一泊した。
翌日、不動産仲介を通じて、小さな部屋を借りた。
もう一矢と関わることはないと思っていた。
まさか、自分が妊娠しているとは思いもしなかった。
朝から少し何かを口にしただけで、吐き気が止まらなかった。
病院で検査を受けた時、運悪く一矢と彼の兄弟姉妹たちに出くわした。
その場から離れようとしたけれど、思わず足が止まってしまった。
彼らは次々に私を取り囲み、軽蔑の色を浮かべて見下してきた。
「田舎から出てきた小娘が、本気で細井家に嫁げるとでも思った?」
「あんたが何をしたのか知らないけど、一矢はあんたにメロメロで、細井家と縁を切ってまであんたを選んだ。でもようやく目が覚めたわけだ!」
「見ろよ、手に持ってるの妊娠のエコー写真じゃない?」
当時、一矢が私のために家族と決裂したこともあり、細井家の人間は誰一人として私のことを好いていなかった。
あっという間に、さっき病院で受け取ったばかりの診断書を奪われ、嘲笑の嵐が降りかかった。
「ほんとに下品な女。一矢に捨てられたばっかりなのに、偽のエコー写真まで作って、妊娠したふり?」
「細井家にしがみつこうったって、無駄だぞ」
「言っとくけど、俺たちがいる限り、お前が細井家に嫁ぐなんてありえないぜ?一矢は今、福地家の娘とラブラブなんだから、諦めな!」
私は力づくで彼らの束縛を振りほどき、細井悦子(ほそい えつこ)の手からエコー写真を奪い返した。
ちょうど検査を終えた一矢がその場に現れ、私を見ると一瞬驚いたが、すぐに嘲るように笑った。
「まさか病院まで俺を追って来たのか?どれだけ俺のこと好きなんだよ」
「まぁいいや、今日は機嫌がいいから、お前にチャンスをやる。俺の気持ちを動かせたら、彼氏になってやってもいいぜ?」
私は黙っていた。
すぐに悦子が事情を話すと、彼は私の手にあるエコー写真を見て、ようやく状況を理解した。
「へえ、大した度胸だな。医者を買収して、偽の妊娠診断書を手に入れたのか?子供をダシに地位を手に入れようってか?」
「でも残念、俺は父親になる覚悟なんてないから。まずは彼女からってことでどう?」
私は目を閉じて、思わず笑ってしまった。
もう何を期待していたのか、分からなくなっていた。
「そこまでしなくていい。私は一度も、子供を使って地位を手に入れようなんて思ったことないし、あんたの彼女になるつもりもないわ」
五年前、先に口説きしたのは一矢の方だった。
彼が金持ちなのは知っていたから、五年間、彼がくれたプレゼントに対しては、いつも同等のものを返すようにしていた。
一円も借りを作らず、一切の得も取らなかった。
私は彼を愛していたから、自分の気持ちが汚れないようにしたかった。
だからこそ、この関係がより安定し、長続きすると思っていた。
少なくとも、彼が記憶喪失を装うまでは——私は本気でそう信じていた。
けれど今になってようやく分かった。
一矢の心の中では、私は最初から「金持ちにすり寄る女」でしかなかった。
田舎出身の女が身の程知らずに夢を見ている。
そんな風に思っていたから、
あんなふざけた記憶喪失劇を始めたのだ。
すべてを理解し、私は彼に淡々と視線を送った。
彼は気まずそうに目をそらし、私と目を合わせようとしなかった。
「はいはい、わかったよ。お前が俺をどれだけ好きかも十分わかった。だから仕方なく彼氏になってやるよ。ただし、記憶が戻るまでは結婚しないけどな」
彼の中では、私は少し優しくされるだけで舞い上がる、そんな女だったのだろう。
だが、それは私が彼を心から愛していたから。
彼のちょっとした仕草一つで幸せになれた、それだけだった。
でも、もう違う。
私は丁寧に断った。
「ありがとう。でも大丈夫。もう彼女がいるでしょ?部外者は退散するわ」
背を向けて立ち去る。
彼の視線が、ずっと私に注がれているのを感じながら。
「怜奈……」
一矢が何かを言おうとしたが、後ろから悦子が彼の服の裾を掴んで引き止めた。
「早く帰ろ?康花が待ってるよ」
第4話
病院を出たあと、私はネットで翌日の中絶手術の予約を入れた。
夜の10時、アパートに戻って横になったばかりの頃、一矢から連絡が来た。
彼は電話をかけてきた。
「この部屋にまだお前の荷物が残ってるんだけど、彼女が見て不快に感じてる。悪いけど取りに来てくれ」
私は淡々と返した。
「そのまま捨てて大丈夫よ。残ってるものは全部、いらないものだから」
私の物で大事なものは、前回ですべて持ち帰った。
残ってるのは、持ち帰れなかったものか、一矢に関係するものだけ。
だが彼は鼻で笑いながら続けた。
「どれもお前のもんだろ?なんで俺が処分しなきゃいけないんだよ。さっさと来て持っていけよ。じゃなきゃ不法侵入と窃盗で訴えるからな!」
私はこめかみを押さえながら、初めて彼を少し厄介だと感じた。
彼の家に戻ってみると、テーブルの上には結婚写真がずらりと並び、この五年間のすべてのアルバムが置かれていた。
彼の声には、少し挑発的な響きがあった。
「こうして見ると、昔は結構ラブラブだったんだな。もしかしたら、俺またお前のことを好きになるかもしれないよ?」
私は口元を引きつらせたが、笑えなかった。
次の瞬間、私はハサミを取り出し、写真に切りかかった。
一矢は急に顔色を変え、手を伸ばしてハサミの前に割り込んできた。
だが私は止まらず、そのまま切り込んだ。
彼の手に、ぱっくりと血のにじむ傷が走った。
彼は悲鳴を上げ、信じられないといった目で私を見た。
「怜奈、お前!?」
彼の目を見返しながら、私は笑ってうなずいた。
「そっちが自分から突っ込んできたんでしょ?」
「この女!一矢さんはただ記憶をなくしただけなのに、殺すつもり!?」
康花が近づいてきて、私を睨みつけながら言った。
「もし誰かがあんたと結婚でもしたら、それこそ不幸よ!」
その言葉はさすがに、私の心の奥に波紋を落とした。
でも手の動きは止まらなかった。
残りの写真をすべて真っ二つに切り裂いたあと、私は自分の顔が写っている半分だけを持ち帰った。
部屋を見回し、もう私に関するものが一つも残っていないことを確認してから立ち上がり、出ていこうとした。
「この部屋には私のものは何も残っていない。今後はもう私に関わらないで」
翌朝、私は病院に向かい、中絶手術のために受付に並んだ。
手術室へ運ばれるストレッチャーの上で、ふと横を見ると、隣のベッドに二人の影が重なっていた。
毛布の下の様子から、二人とも服を着ていないのは明らかだった。
康花の泣き声が聞こえてきた。
「一矢さんのせいよ。どうしても試してみたいって言ったから、こんなことに……二人して病院送りだなんて、恥ずかしすぎる……」
一矢は泣く女が一番嫌いなはずだった。
だが今回は、すぐさま彼女を抱きしめ、人目もはばからずキスをしながらなだめていた。康花は息を切らしていた。
「安心しろ、毛布かけてるから誰にも見えないよ。な?こういうの、逆に興奮するだろ……?」
目を背けたその時、手術を担当する医師が私に確認を取った。
「押川さん、本当に子どもを諦めるのですね?」
私は目を閉じた。
「はい、要りません。堕ろしてください」
だが、私が手術室へと運ばれようとしたその瞬間、
遠くから一矢が顔を青ざめさせ、慌てて起き上がろうとした。
「怜奈……?お前なのか?中絶手術を!?本当に妊娠してたのか!?その子は……俺の子なのか?そんなの許さないぞ!絶対に堕ろさせないぞ!!」