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婚約者に逃げられた私は、彼を捨てて国に身を捧げた
婚約の日、木村笙子(きむらしょうこ)が私の婚約者の作ったおにぎりを食べたいと言っただけで、彼は迷わず立ち去ろうとした。 私は思わず引き...
Chương (1)
第1章
婚約の日、木村笙子(きむらしょうこ)が私の婚約者の作ったおにぎりを食べたいと言っただけで、彼は迷わず立ち去ろうとした。
私は思わず引き止めた。けれど、彼は私に平手打ちを食らわせた。
「婚約なんてまた今度でいいだろ。笙子がお腹空かせたらどうするんだ?」
お兄さんまでが、私をわがままだと叱った。
「お前は笙子より年上なんだから、譲ってやれないのか?」
私は何も言わず、ただその場を離れた。
彼らは、私がただの気まぐれで怒っただけだと思い、気にしなかった。
そして、笙子と一緒に遊びに行くために、すべての仕事をキャンセルした。
半月後になって、彼らはようやく私に連絡を取ろうとした時に、私はすでに国家の十年計画の極秘兵器研究プロジェクトに参加していた。
そして、もう二度と家に戻らないつもりだった。
彼らは完全に慌てふためいた。
第1話
婚約の日、木村笙子(きむらしょうこ)が私の婚約者の作ったおにぎりを食べたいと言っただけで、彼は迷わず立ち去ろうとした。
私は思わず引き止めた。けれど、彼は私に平手打ちを食らわせた。
「婚約なんてまた今度でいいだろ。笙子がお腹空かせたらどうするんだ?」
お兄さんまでが、私をわがままだと叱った。
「お前は笙子より年上なんだから、譲ってやれないのか?」
私は何も言わず、ただその場を離れた。
彼らは、私がただの気まぐれで怒っただけだと思い、気にしなかった。
そして、笙子と一緒に遊びに行くために、すべての仕事をキャンセルした。
半月後になって、彼らはようやく私に連絡を取ろうとした時に、私はすでに国家の十年計画の極秘兵器研究プロジェクトに参加していた。
そして、もう二度と家に戻らないつもりだった。
彼らは完全に慌てふためいた……
*
「凛音、本当にこの研究計画に参加するつもりか?」
指導教官の瞳には期待の光が宿り、また断られるのを恐れているようだった。
「ずっと結婚して子供を産むって言ってたのに、どうして気が変わったの?」
私は彼女の手から機密保持契約を受け取り、署名した。
「昨日、嫌なことがあって。自分の未来の方が、あの人と一緒にいることより大切だって気づきました」
「まだ彼のことが好きだからこそ、結婚なんてできません。結婚したら毎日、彼が振り向いてくれるのを待つだけになりますから」
指導教官はため息をついて、私の署名入りの契約書を満足そうに受け取った。
「それでいいのよ。凛音は私が一番気に入っている学生なの。早く目を覚ましてくれてよかった」
彼女は私を玄関まで見送りながら、優しく言った。
「未練があるなら、きちんとお別れをしておいで」
南市の冬の寒さが骨まで染み込んだ。私は肩をすぼめて笑顔でうなずいた。
「うん」
気分が落ち込んでいた今日は、自分への慰めとして、私はかつてよく通っていたケーキ屋に行き、抹茶ケーキをひとつ買った。
会計を済ませて振り返ると、そこには婚約者の佐藤延幸(さとうのぶゆき)が眉をひそめ、不機嫌そうに立っていた。
「笙子は今日誕生日で、抹茶ケーキが大好きって知ってるくせに。最後のひとつ、お前がわざと買ったんじゃないのか?」
「凛音、そんなに笙子のことが嫌いなの?」
彼のその視線は、私の心を鋭く刺した。私は目を逸らし、淡々と答えた。
「あなたたちが言わなければ、今日が彼女の誕生日だなんて知らなかった」
「店主がまだ店にいるうちに、もう一つオーダーすれば?そのほうが笙子への気持ちも伝わるでしょ」
延幸の目はさらに冷たくなった。
「お前、抹茶が嫌いだろ。笙子に譲れないのか?」
私は深く息を吸い込み、できるだけ穏やかに答えようとした。
「誰がそんなことを……」
「もういい!」
延幸は突然、私の言葉を遮り、苛立った様子で叫んだ。
「笙子がお前の命を救わなかったら、お前なんて今ここに立って笙子とケーキを奪い合うことすらできなかったんだぞ」
「恩知らずのお前なんか、あの時車に轢かれたまま放っておけばよかったんだ!」
そう言って、彼は私の手からケーキを無理やり奪い取り、冷たい声で言い放った。
「このケーキはもう俺たちのものだ。お前には渡さない。くだらない駄々をこねるな」
私は拳を握りしめ、深く息を吐いて心を落ち着けた。
「……わかった」
「笙子が欲しいなら、あげればいいわ」
延幸は店を出たとき、一瞬立ち止まり、私を振り返った。
「皮肉ばっかり言ってんじゃねぇ。さっさと乗れ。笙子がお前に会いたがってる」
私は頷き、何も考えず助手席のドアを開けた瞬間、彼がすぐ言った。
「後部座席にしろ。助手席は笙子専用だ」
私は黙って後ろの席に座った。
車内はすべて笙子の好きな桃の香りで満ちていた。
その匂いに吐き気がして、車を降りた瞬間、私は思わず道端に吐いてしまった。
それを見た延幸は、嫌悪の目で私を睨んだ。
「大げさだな。車に乗っただけだろ」
「吐いたならさっさと入れ。みんな待ってるんだからな」
第2話
十分後、私はようやく気持ちを整えて個室に入った。
暖房が効いた室内で、笙子は淡いブルーのミニドレスを着ていて、私のお兄さんである温井嘉樹(ぬくいよしき)が彼女のためにぶどうの皮をむいていた。
私を見るなり、笙子は目を輝かせて満面の笑みを浮かべた。
「お姉さん、やっと来たんだね!」
そしてすぐに立ち上がり、左右を見渡してから、わざと困ったような顔をした。
「えーっと、さっき友達も来たから、もう席がないの。ごめんね」
嘉樹は顔を上げることもなく、冷たく言い放った。
「入り口にスツールあるだろ。そこに座れよ」
彼の視線を追って俯いたまま足元を見ると、たしかにそこにスツールがあった。
間違いない。それは本来、個室の店員が控えている場所のはずだ。
「ちょっと、さすがに……」
笙子は申し訳なさそうな表情を作りながらも、目の奥にはずる賢い光が見えた。
それは彼女の仕業だった。
私が動かないのを見て、延幸が眉をひそめて口を開いた。
「何だよ、座れるだけありがたいと思えないのか?」
「みんなずっと待ってたんだ。今さら駄々こねるつもりか?」
周りの視線が冷ややかにこちらに向けられた。
私は黙って個室の中央にあるテーブルを見つめた。料理はもうほとんど食べ尽くされていた。後は最後のセレモニーだけだった。
期待なんて、最初からしていなかった。
「わかった。座るよ」
私は淡々と言い、みんなの視線を受けながらそのスツールに腰を下ろした。
延幸は意外そうな顔をしたが、すぐに平常を装った。
室内は再び賑やかになり、嘉樹が大きなバースデーケーキを押して入ってきた。
延幸はあらかじめ準備していたクラッカーを鳴らした。
「誕生日おめでとう!」
みんなが輪になって拍手をし、盛り上がっていた。
私はその光景を静かに見つめていた。なんだか少しだけ、心が痛んだ。
三日前、私の誕生日だった。みんな忙しいと言い、私は予約しておいたレストランで一人で食事をした。
日付が変わった頃、私は小さな声で自分に「お誕生日おめでとう」と言った。
その後SNSを開いて知った。彼らは笙子と一緒に花火を見ていたのだ。
彼らは一人ひとりケーキを分け合って、私のことをすっかり忘れていた。
どれだけ時間が過ぎたかわからない頃、延幸が小さなケーキの一切れを差し出してきた。私は驚いて、微笑んで「ありがとう」と言った。
彼は淡々と口を開いた。
「数日後、笙子を連れて秘密で旅行に行く予定だ」
「お前、学校で暇してるだろ。俺たちの代わりに旅行のプランを作ってくれ」
「今回は予算が足りないから、また今度連れて行くね」
その言葉の途中で、私は微笑みを引っ込め、静かに答えた。
「大丈夫だよ」
延幸は信じられないという顔で私を見た。
「本気で言ってるのか?」
構わない。また見捨てられるだけだ。
私と延幸二人で起業し、会社も順調なのに、「資金が足りない」とは。
結局、私を連れて行きたくないだけだった。
いいよ、私だっていつか自分で行けるから。もう、あなたたちなんていらない。
嘉樹も近づいてきて、私をじっと見つめ、まるで私の言葉を信じていないかのようだった。
「そんな簡単に承諾するなんて、どうせ裏で何か企んでるんだろ?」
私は真剣に彼らを見つめて答えた。
「本当に違うの」
「彼女と旅行したいなら、行けばいいよ。私はちゃんと待てるよ」
「何日くらい行く予定なの?その間の……」
「黙れ!」
延幸は苛立ちを隠さず、声を荒げた。
「そんなふりをするなよ。警告しておくけど、余計な考えは捨てろ」
私はため息をつき、穏やかな口調で返した。
「本当に何もない。それにもうすぐ、私は秘密研究プロジェクトに参加する予定だから」
延幸は疑うように私を見つめた。
「そんなこと言って、俺たちを旅行に行かせないようにしてるだけだろ?」
「これから帰って来られないんだ」という後半の言葉を、私は飲み込んでしまった。
ちょうどその時、笙子が小走りでやって来て、延幸の腕にしがみついた。
「何の話してたの?」
延幸は途端に優しい顔になって、彼女の頭を撫でながら笑った。
「彼女が、俺たちのために旅行プランを立ててくれるって」
「本当?嬉しい!」
笙子は笑顔で私に抱きついた。
「お姉さん、私の願いを叶えてくれてありがとう!」
その後、彼女は延幸と嘉樹の手を取って人混みへと向かっていった。
「もう大丈夫だから、早く行こう。ゲームしよう!」
三人は笑いながら手をつなぎ、振り返ることもなかった。
私は個室を出たとき、最後に笙子の弾むような声が耳に残った。「ずっと一緒にいようね!」
ふと、三年前のことを思い出した。両親が公務で亡くなり、遺体も見つからず、嘉樹と私は結局、彼らの服だけを受け取った。
私が泣き崩れた時、延幸は私を抱きしめて言った。
「大丈夫。俺とお兄さんがいるから、もう寂しくないよ」
嘉樹は私たちの手を取って言った。「そうだよ。これからは、ずっと一緒だ」
嘘つき。
鼻の奥がツンとした。私は歩く速度を速めて、ホテルを出た。
人目のない隅っこで、私はしゃがみ込んで、声を殺して泣いた。
大丈夫。
泣いたら、きっと楽になる。
泣きながら全ての感情を吐き出してしまったから、もう誰も私を傷つけることはできない。
第3話
しゃがみ込んで疲れた私は、タクシーで帰宅した。
ドアを開けようとしたが、いつの間にか暗証番号が変更されていた。
延幸の誕生日を入力してもダメ、笙子の誕生日でもダメだった。
私は少し苛立ち、眠気をこらえながら延幸に電話をかけた。彼はしばらくしてようやく電話に出た。
「家の暗証番号は?」
延幸は淡々と答えた。
「今は入っちゃダメだ。これは俺とお前のお兄さんが笙子のために用意したプレゼントなんだ。家中をリフォームしたから」
その一言で、私は思わず目を見開いた。
じゃあ、お母さんの日記帳は?捨てられていないだろうか?
私は焦りが込み上げ、声を強めた。
「リフォームするのはいいけど、私の物くらい取りに入らせてよ!」
延幸は苛立ち気味に聞いた。
「物を取るって……お前の居場所はちゃんとあるだろ?」
「いいから、そこで大人しく待ってろ。俺たちが帰ったら開けてやる」
私は何か言いかけたが、彼はさっさと電話を切った。
眠気が一気に吹き飛び、私はただ入口にしゃがみこんで、じりじりしながら待つしかなかった。
私のお母さんは研究者で、家にいる時間は少なかった。だから私たちは一緒に撮った写真すらなかった。
それでも、彼女が出張に行く前に日記帳を残してくれた。その中には、彼女の若い頃の思い出や夢、そして私と嘉樹への願いが綴られていた。
私は好奇心からそれを読み物のように何度も読んで、大事に元の場所に戻して、お母さんが続きを書いてくれるのを待ってた。
しかし、お母さんが続きを書くことはなかった。
彼女は拉致され、警察だったお父さんが助けに行った。しかし、犯人は最初から罠を仕掛けていた。両親とも爆発に巻き込まれて命を落とした。
警察が私とお兄さんが狙われることを恐れ、私たちはその夜のうちに引っ越した。そのとき持ち出せたのは、その日記帳だけだった。
それが、両親と暮らした証として残された唯一のものだった。
午前三時半になってようやく、嘉樹の車が姿を現した。私は立ち上がった。
延幸は車から降りると、助手席で眠っていた笙子をお姫様抱っこでそっと抱き上げた。
私はふらつきながらドアのそばに立ち、嘉樹の動きをじっと見つめた。
彼がドアを開けた瞬間、私はすぐさま駆け込もうとしたが、彼に遮られた。
「先に笙子を入らせて」
延幸は優しくしゃがみ、笙子を揺り起こした。
「笙子、着いたよ、起きて」
そんな優しい延幸、私は見たことがなかった。笙子は長く揺すられてようやく目を開けた。
「着いたの?」
嘉樹がすかさず近づき、彼女を支えた。
室内の明かりがついに灯り、彼女好みのプリンセス風にリフォームされているのが見えた。
一瞬の沈黙のあと、私はもう我慢できず、二階へと駆け上がった。
だが、主寝室は鍵がかけられていた。
私は階下へ向かって叫んだ。
「主寝室の鍵はどこよ!」
彼らはまだ笙子を案内して歩き回っていた。延幸は一瞥をくれただけで、無視した。
私はすぐに下へ駆け寄って、三人の前に立ちはだかって、冷たい声で言った。
「主寝室の鍵をよこして」
延幸は舌打ちし、不機嫌に言った。
「今俺たちは忙しいんだ。見えないのか?どうしてそんなに主寝室にこだわるんだ?」
嘉樹も加勢してきた。
「これから主寝室は笙子の部屋なんだ。お前の荷物は客間に移してあるよ」
二人が口々に言った言葉に、私は怒りで頭に血が上った。
もう何も耳に入らなかった。
頭がズキズキした。私は冷たく警告した。
「嘉樹、もし日記帳がなくなってたら、絶対に許さない」
彼らを無視して、私は客間へ走った。
客間とは名ばかりで、窓もないただの物置だった。私の服が無造作に置かれ、普段使いの物が床に散らばって、小さな山のようになっていた。
私は跪いて、慌ててその中をかき分け、お母さんの日記帳を探した。
しかし、どれだけ探しても見つからなかった。
三人も駆け上がってきた。
笙子がわざとらしく近づいてきた。
「お姉さん、私も手伝うよ」
私は彼女の手を振り払った。彼女はその勢いで転がり、床に倒れた。
「きゃっ!」
延幸はすぐに彼女を支え、私を非難した。
「笙子は手伝おうとしただけじゃないか、そこまでやることないだろ?」
嘉樹は私の手首をつかみ、部屋から引きずり出そうとした。
「謝れ。でないとこの家には入れさせない」
もし以前なら、私はおとなしく謝っただろう。あるいは、どうか追い出さないでと懇願していたかもしれない。
しかし、今の私は、日記帳のことで頭がいっぱいだった。私は嘉樹の手を振り払った。
「いいよ、日記帳を返してくれたら、すぐに出ていく」
嘉樹は苛立ち、眉をひそめた。
「たかがノート一冊で……」
私は彼の言葉を遮るように、強く問いただした。
「それは、お母さんが残した唯一のものなのよ!本当に見なかったの?」
「ベッドの横の引き出しに置いてたはずなのに……」
嘉樹は一瞬言葉を詰まらせた。延幸の腕の中で泣いていた笙子も、涙を止めていた。
延幸は沈黙を破って、淡々とした口調で言った。
「覚えてるよ。あの日、いろいろまとめた後、俺がまとめて燃やしたんだ」
その一言で、私は手を止め、ゆっくりと彼を見た。
「どうして勝手に私のものを処分したの?」
そして、私はためらわず彼の頬を平手打ちした。目の奥が熱くなった。
「最低」
延幸は頬を押さえ、信じられないような顔をした。
「お前、頭おかしいのか?」
私はゆっくりと立ち上がり、冷たい声で言った。
「別れよう」