遠回りの先で、やっと会えた

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遠回りの先で、やっと会えた

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親友の兄と、こっそり付き合って半年―― もちろん、彼女には絶対ヒミツ。ところが、クリスマスに「一緒にシングル限定イベント行こうよ!」と...

Chương (1)

第1章

親友の兄と、こっそり付き合って半年―― もちろん、彼女には絶対ヒミツ。ところが、クリスマスに「一緒にシングル限定イベント行こうよ!」と誘われ、断りきれず参加した私。 その夜、偶然目にしたのは……彼女の兄・宮路和也(みやじ かずや)が、花火の下で見知らぬ女の子と指を絡め、甘くキスを交わしている場面だった。 「やった!うちの兄貴、ついに憧れの人を落としたんだ!」 無邪気にはしゃぐ彼女に手を引かれ、私はどうしようもない気持ちを抱えたまま、彼の元へ向かう。 彼は気まずそうに鼻をかきながら、こう紹介した。 「えっと……こっちは妹で、隣はその友達……まあ、ほぼ妹みたいなもんだ」 私はただ、静かに笑った。 ――手も繋いだし、キスもした。でも、私はまだ「妹」らしい。 第1話 親友の宮路甘寧(みやじ あまね)が失恋した後、「クリスマスは女の子同士で過ごそう!」と私を誘った。 彼女曰く「シングル女子の特別デート」で、花火大会を一緒に見に行こうと。 でも実は、私は彼女に半年間付き合っていることを内緒にしていた。 彼女への罪悪感を抱えながら、私はその約束に向かった。 人混みの中で、甘寧が前方を指さして驚いた声を上げた。 「ちょ、あれ……うちの兄貴じゃない?」 私はその視線の先を追うと、あまりにも見覚えのある高身長の後ろ姿。 間違いない。彼は宮路和也(みやじ かずや)。 あの黒いダウンコートも、私がプレゼントしたものだ。彼が「忙しくてクリスマスは会えない」と言うから、先に渡しておいた。 そう、私がこっそり付き合っている彼氏は、実は親友の実の兄。 でも、どうして彼がここに? 疑問に思っていると、花火が夜空にぱっと咲いた。 空いっぱいに広がるきらめき。 周囲のカップルたちは自然に抱き合い、キスを交わして、この一瞬を永遠に刻もうとしている。 彼も例外ではなかった。 和也はゆっくりと顔を横に向け、隣にいる女の子の頬を大切そうに両手で包み、優しくキスをした。 雷に打たれたような衝撃が全身を貫いた。 彼は……一人じゃなかった。 「仕事が忙しい」と断ったクリスマスは、この女の子と過ごすためだったんだ。 世界が止まった気がした。 花火の音も、人々のざわめきも聞こえなくなった。目に映るのは、ただあの甘く見つめ合う二人だけ。 冷たい風が目を刺し、涙がこぼれそうになる。でも私は必死で耐えた。 隣で甘寧が興奮して私をバンバン叩いてきた。 「うわー!あの子、久保緋桐(くぼ ひぎり)だよ!うちの兄貴、ついに憧れの人を落としたんだ!すごいすごい!」 私は頭上に広がる眩いばかりの光景を見上げ、こぼれ落ちそうな涙をこらえた。 早く、早くここから逃げたい。 でも、甘寧は私の手を引き、人混みに向かって進んでいった。 「こんな偶然、逃す手はないでしょ!今夜は兄貴に夜食をごちそうしてもらわなきゃ!」 和也のすぐそばまで来た時、ちょうど花火が終わり、夜空は静けさを取り戻した。 二人はゆっくりと唇を離すけれど、繋いだ手はまだ離さない。 甘寧は彼の肩をバシンと叩いた。 「見つけたぞー!さっさと彼女を紹介しなさいよ!」 和也が振り返って、私を見た瞬間、一瞬だけ表情が固まった。 彼は鼻をかきながら、思わずこう言った。 「……なんでここに?」 甘寧はニヤニヤしながら答えた。 「は?独身はクリスマスに花火見に来ちゃダメなの?いいから早く白状しなよ!」 和也は私から視線を外し、隣で真っ赤になっている女の子を優しく見つめた。 「俺の……彼女だ」 そう言って、彼女の肩をそっと抱き寄せた。 「こっちは、俺の妹。で、隣にいるのは……」 二人の視線が私に集まった。私は目頭が熱くなり、慌てて俯いた。 耳に届いたのは、和也が私を紹介する声。 「妹の友達……いわば、俺の半分妹みたいなもんだ」 彼女は少し照れながら挨拶してくれた。 「はじめまして、久保緋桐です」 甘寧はにこにこしながら言った。 「知ってるよー。お兄ちゃん、ずっと好きだったもんね。あんたの写真、何回見せられたか!」 私はこれまで、兄妹二人が一緒にいる場を極力避けてきた。 和也の話題も、親友との会話ではいつも逸らしていた。 でも彼は、ずっと……久保緋桐を好きだったんだ。 じゃあ、この半年……私たちの関係は、一体何だったの? 私は深く息を吸い込んで、無理やり笑顔を作った。 「和也お兄さんと……お義姉さん、メリークリスマス」 口にした瞬間、自分の声が震えていることに気づいた。 十分前、彼から届いたメッセージ。 【ごめんな、言織ちゃん。今年は本当に忙しくて、一緒に過ごせない。今も資料作りで手一杯だ。言織ちゃんが楽しくて、素敵なクリスマスを過ごせますように】 ……彼は確かに、私に忘れられないクリスマスをくれた。 こんな、最悪の形で――妹の「友達」として。 第2話 緋桐は、私の声が震えているのに気づいたのだろう。心配そうに尋ねた。 「大丈夫?寒くて震えてるんじゃない? 今日は本当に冷えるよね。どこか暖かいところで座って話そうよ」 気づけば、私は彼女たちに手を引かれ、焼肉屋に連れて来られていた。 柔らかな照明の下で、私はようやく向かいに座る彼女の顔をしっかり見た。 緋桐は、本当に綺麗だった。 大きな瞳がぱちぱちと輝き、笑うと頬に小さなくぼみができる。 彼女は和也の腕にそっと寄り添い、小声で尋ねた。 「ねえ、ちょっと焼肉が食べたくなっちゃった。でも、これからまた事務所に戻って残業しなきゃいけないんだよね?間に合う?」 和也は以前、最近事務所で大きな案件を抱えていて、同僚みんなが毎日深夜まで働いていると話していた。 彼は彼女の耳元の髪を優しく耳にかけながら、静かに答えた。 「大丈夫、少しでも一緒にいたいから」 そう言いながら、ふと私に一瞬だけ視線をよこした。 けれど、それもほんの刹那で、すぐに目を逸らした。 こんな和也は、初めて見た。 付き合ってきた半年間、彼はいつも仕事を最優先にしていた。 資料作りに没頭し、私の誕生日をすっかり忘れたこともある。 デート中に仕事の電話がかかってきたら、何も言わずその場で去ってしまうこともある。 私は何度も腹を立てた。でも、彼はいつも冷静にこう言った。 「一生懸命働くのは、俺たちの未来のためだ。将来がしっかりしてこそ、二人の関係も安定する」 私はその言葉を信じた。それからは、彼に文句を言うことをやめた。怒りや悲しみも、全部自分の中で飲み込んできた。 でも、今ようやく気づいた。本当に人を好きになったら、「将来」と「今」を両立しようとするものなんだ。 仕事が忙しいからって、「誕生日おめでとう」の一言が言えないなんてことはない。 どれだけ緊急の電話でも、簡単に理由を説明してから離れることはできたはず。 今まさにそうだ。これ以上ここにいる時間が長くなれば、残業で帰宅はどんどん遅くなる。 それでも彼は、緋桐の「食べたい」という気持ちを優先し、彼女に付き合っている。 ――好きか、好きじゃないか、それはこんなにも分かりやすい。 彼の今の姿を見て、私はようやく理解した。 彼は、私のことをそこまで好きじゃなかったんだ。 甘寧は楽しそうに、二人の馴れ初めをどんどん聞き出していった。 緋桐はとても感じの良い子で、一つ一つ丁寧に答えてくれた。 「私たちは、学校で知り合ったの。彼、ディベート部の部長だったんだよ。そういえば、私たち、同じ大学だったんだね。 和也、何年も前から私のこと好きだったの?全然気づかなかった。彼は伝えてくれなかったし、ずっと友達としてしか見てなかったから。 今日が付き合い始めた初日なの。クリスマス、一緒に過ごさないかって、1ヶ月くらい前からずっと誘ってくれてて……さっき、花火の時に告白されたの」 はにかみながらも、とびきりの笑顔。 まるで恋する女の子そのもの。 私はぼんやりと、そのやりとりを聞いていた。 一目惚れ、密かな想い、そして実った恋。 もし、私が巻き込まれなかったら。きっと私は、この恋を素敵だと思っただろう。 でも現実は違った。この優しくて完璧な彼氏は、昨日の夜、私に「おやすみ、愛してる」とメッセージを送ってくれた人だ。 この食事は、本当に苦しかった。 ようやく食事が終わった時、和也が「まず彼女を家に送ってから、事務所に戻る」と言った。 事務所はうちに近いから、甘寧が私を和也の隣に押し出した。 「じゃ、私はここで帰るね。お兄ちゃん、事務所行く途中で言織を家まで送ってあげて」 和也は一瞬だけ、ほとんど分からないくらい小さく眉をひそめ、断ろうとした。でも、緋桐が笑顔で私の手を取った。 「一緒に行こうよ」 和也はそれ以上、何も言わなかった。 私も断るつもりだった。彼と彼女と私、三人だけの密閉された車内なんて、想像するだけで息が詰まりそうだった。 けれど、ふと思い直した。ここで恥をかくべきなのは、私じゃない。裏切られた私が、なぜ逃げなきゃいけないの? 私は、悲しんでもいい。怒ってもいい。でも――絶対に、逃げない。 第3話 和也は優しく緋桐のために助手席のドアを開け、身をかがめてシートベルトを締めてあげていた。 私は後部座席に座り、その様子を静かに見つめた。緋桐は私の好きだった曲をスキップし、自分のお気に入りのプレイリストに変えた。 手慣れた様子――きっと何度もこうしてこの車に乗ってきたのだろう。 熱烈に恋をしていた頃、和也もよく学校まで車で迎えに来てくれた。 でも、この一ヶ月、彼は仕事を理由にほとんど会ってくれなかった。 気づけば、私が手作りで編んだ可愛い車内の飾りもいつの間にか消えていて、神社で願いを込めて手に入れた交通安全のお守りも、いつの間にか外されていた。 私は流れゆく窓の外の景色をぼんやりと見つめ、込み上げる苦しさを必死で飲み込んでいた。 終始、一言も話さなかった。 緋桐が家に着き、後部座席のドアを開けた。 私が酔ったのだと思ったのか、にこやかに言った。「ねえ、前に座らない?後ろだと酔いやすいよ」 私は遠慮しようとしたが、彼女は笑いながら続けた。 「私、彼氏の車に女の子が助手席に座るのを気にするタイプじゃないから、気にしないで」 ――私はもう何度も助手席に座ったことがある、彼がまだ私の彼氏だった時に。 彼女が降りた後、車内には私と彼だけが残った。 和也はすぐには車を発進させず、指先でハンドルをトントンと叩き続けた。 彼が落ち着かない時の、癖だった。 しばらく沈黙が続いた後、低い声で口を開いた。 「言織、ごめん」 彼は私の目を見ようともしなかった。 私は静かに笑って、問いかけた。 「謝るだけ?それ以外に、何もないの?」 言い訳なんて、もう何を言われても意味がないことくらい分かっている。 だけど、ほんの数時間の間に、私は彼との思い出を何度も頭の中で反芻した。 彼は夜遅くに出張先から帰ってきて、私を驚かせようと家の下で待っていてくれたこともあった。 何気ない日常も、道路で見かけた小さな犬さえも、写真に撮って私に送ってくれた。 私たちは……確かに幸せだった。彼は私を大切にしてくれたはずだ。 ――そう信じてきた。だから、バカみたいに半年も内緒の恋を続けたりした。 ただ、聞きたかったのだ。私たちのこの、誰にも知られない関係に、彼自身がどう区切りをつけるかを。 彼は窓を少し開け、煙草に火をつけた。 しばらく何も言わず、煙が静かに消えていく。煙草が燃え尽きる頃、ようやく口を開いた。 「緋桐のことは、ずっと前から好きだったんだ。でも、緋桐には彼氏がいて、しかも同じ学科だったし、どう考えても叶わないと思ってた。だから、ずっと気持ちは隠してた。 でも、その後、お前と付き合うようになって、自分なりにちゃんと頑張ってたつもりだし、将来のことも考えてた。でも……彼女がまた一人になった。 彼女が泣きながら別れたことを話してくれた時、正直すごく複雑だった。彼女を可哀想だと思ったし、お前には申し訳なかった。でも……内心、ほっとしている自分もいた。 もしかしたら、今度こそ彼女と……ちゃんと可能性があるかもしれない。愛か、執着か、それはもう分からない。でも、これ以上、彼女を失いたくなかった。 お前に対してだけが……本当に、ごめん。言織、これからは……甘寧と同じ、妹として接していいかな」 私は思わず笑ってしまった。 「じゃあ、付き合い始めた時、『仕事が落ち着いたら公開しよう』って言ったのは、彼女との可能性を捨てきれなかったからなんだね?」 彼は、完全に黙り込んだ。 私は、確信した。やっぱり、そうだったんだ。 ――誰にも知られない秘密の恋なら、彼は安心して私と付き合えた。誰にもバレなければ、彼は好きな人への想いを手放す必要がない。終わらせる時も、簡単だ。 彼は、ずっと緋桐への期待を捨てきれなかった。彼女の前で「一途な男」でいるために、最初から私を騙したんだ。 彼が私に少しでも本気だったのか、それともただの暇つぶしだったのか――そんなことはもうどうでもよかった。 結果は同じ。 結局、私は人を見る目がなかっただけ。 車内に漂う煙草の匂いが、ようやく嫌悪感となって押し寄せた。私はドアを開けて、車を降りた。 彼は「家まで送るよ」と言ったが、私は黙って歩き出した。車は私の後ろをゆっくりついてくる。 私は、もう彼と言葉を交わしたくなかった。振り返って、思いきり車のドアを蹴った。 彼は慌てて車を発進させ、バックミラーに映る彼の表情は、とても苦々しかった。 賑やかなはずのこのクリスマスの夜。こんな寒い冬の夜に、目的もなく歩いている人なんて、私くらいだった。 頬を伝う熱い涙が、冷たい風に刺さって痛い。 あまりにも痛くて、私は泣きながら、声を上げた。どんどん、声が大きくなった。 第4話 一台の黒いスポーツカーが、私の横を通り過ぎていった。 数秒後、その車はバックして戻ってきた。 窓がゆっくり下がり、中の人が口を開いた。 「こんな夜中に……お化けでも見たのかと思ったよ」 どこか聞き覚えのある声。でも、誰なのか考える余裕もなかった。 私は無視して、そのまま歩き続けた。 すると、突然クラクションの音に驚いて、バランスを崩し、地面に転んでしまった。 もうどうでもよくなって、そのまま座り込んだ。 ふと、誰かの影が私の前の街灯を遮った。 逆光の中、私は顔を上げた。目の前はぼんやりとした光景。 長身のその人がしゃがみ込んだ。ようやく顔が見えた。 ――甘寧の元カレの友人、堀江行野(ほりえ ゆきの)だった。 甘寧と遊ぶ時に、何度か顔を合わせたことがある。 彼はほとんど喋らないタイプで、私も人見知りだし、二人で会話をしたことなんてなかった。 寒さで歯がガチガチと鳴り、頬に残った涙は乾いて風に刺され、痛みを残している。 「立てるか?」 私は首を横に振った。 彼は小さく舌打ちし、私のフードを引っ張ろうとした。 私は膝に顔を埋めたまま、どこにそんな力が残っていたのか、自分でも分からないくらいの勢いで叫んだ。 「ほっといて!」 背中に触れていた彼の手が離れ、静寂が訪れた。 私は声を震わせながら、どんどん泣き声を大きくしていった。 すると、ふわりと彼のダウンが頭にかぶさってきた。温もりと、ふんわりとしたいい香りが、冷たい夜風を遮ってくれた。 しばらく泣き続けていると、堀江行野がとうとう呆れたように言った。 「……車の中で泣いてくれない?ちょっと寒いよ」 私はダウンの中から顔を出し、彼のほうを見た。彼は腕を組み、ため息交じりに私を見下ろしていた。 行野は私を引き起こし、そのまま助手席に押し込んだ。 急に感じた車内の温かさに、私は何度もくしゃみをした。 彼は特に何も言わず、ティッシュを渡してくれた。 静かな車内に、彼の指先がハンドルを軽く叩く音だけが響いた。 どこか和也と似ている癖。でも、少し違う。 和也がその癖を見せる時は、必ず苛立っていた。 でも行野は、一定のリズムで、まるで考え事をしているかのように、あるいは私を落ち着かせるように、優しく叩いていた。 しばらくして、私の気持ちも少し落ち着き、彼に向かって、心からのお礼を言った。 「……ありがとう」 彼は一度だけ私を見て、すぐに目を逸らし、タバコを一本取り出した。 だが、火をつける直前に、そのままタバコを下ろした。 「もう遅いし、家まで送る」 私はもう一度礼を言い、車を降りた。 「橘言織(たちばな いおり)」彼は窓を開けて、私を呼び止めた。「今のお前、マジでお化けみたいだぞ」 なんて、変なことを言うんだろう。 窓が上がると、ガラスに映った私の顔が目に入った。 化粧はぐちゃぐちゃで、髪はボサボサ、目の下には濃いクマ。 ――ああ、確かにお化けにしか見えない。だから彼はわざわざ車を停めたんだ。本当に、お化けに見えたんだろう。 私は思わず駆け出した。だけど、家の下で、ここにいるはずのない人に出くわした。 残業中だったはずの和也が、じっと私を見つめ、冷たい声で言った。 「言織。さっき、高級車で送ってくれた男は誰だ?」