爆発で私を見捨てた男が、結婚を断られたら泣いた

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爆発で私を見捨てた男が、結婚を断られたら泣いた

GoodNovel Hoàn thành

研究室で爆発が起きた瞬間、恋人の黒瀬拓真(くろせ たくま)は、施設の一番外側にいた橘小春(たちばな こはる)に駆け寄り、彼女をしっかりと...

Chương (1)

第1章

研究室で爆発が起きた瞬間、恋人の黒瀬拓真(くろせ たくま)は、施設の一番外側にいた橘小春(たちばな こはる)に駆け寄り、彼女をしっかりと庇った。 爆発音が止むと、真っ先に彼女を抱えて病院へ向かった。 地面に倒れ、血まみれになっていた私のことなど、一度も振り返らなかった―― 十八年間も育ててきた「あの子」だけが、彼の心をすべて埋め尽くしていた。 他の誰かが入り込む余地なんて、最初からなかったのだ。 私は同僚に運ばれて、なんとか一命を取り留めた。 ICUを出たあと、泣き腫らした目で恩師に電話をかけた。 「先生、やっぱり私……秘密研究に同行します。一ヶ月後に出発して、五年間誰とも連絡を取れなくても大丈夫です」 その一ヶ月後、本来なら私の待ちに待った結婚式のはずだった。 だけど、もう結婚なんてしたくなかった。 第1話 研究室で爆発が起きた瞬間、恋人の黒瀬拓真(くろせ たくま)は、施設の一番外側にいた橘小春(たちばな こはる)に駆け寄り、彼女をしっかりと庇った。 爆発音が止むと、真っ先に彼女を抱えて病院へ向かった。 地面に倒れ、血まみれになっていた私のことなど、一度も振り返らなかった―― 十八年間も育ててきた「あの子」だけが、彼の心をすべて埋め尽くしていた。 他の誰かが入り込む余地なんて、最初からなかったのだ。 私は同僚に運ばれて、なんとか一命を取り留めた。 ICUを出たあと、泣き腫らした目で恩師に電話をかけた。 「先生、やっぱり私……秘密研究に同行します。一ヶ月後に出発して、五年間誰とも連絡を取れなくても大丈夫です」 その一ヶ月後、本来なら私の待ちに待った結婚式のはずだった。 だけど、もう結婚なんてしたくなかった。 …… 私が入院していた間、見舞いに来てくれた人は途切れることがなかった。 親戚や友人たちも、皆顔を見せてくれた。 だけど、恋人であるはずの拓真からは、たった一本の電話がかかってきただけだった。 「小春が泣き止まなくて、今どうしても手が離せないんだ。理咲(りさ)も自分のことは自分でなんとかしてくれ。小春は不機嫌でご飯も食べないから、俺が食べさせないとダメでさ……もう本当に困ったもんだよ」 ——なんて、情けない話なんだろう。 十年も付き合ってきたというのに、彼にとって私の命の心配よりもあの姪っ子の食事の方が大事だった…… そもそも最初に私を好きになって、必死にアプローチしてきたのは拓真のほうだったのに。 私のことを陰で中傷する噂が立った時には、その相手に殴りかかって、大問題になる寸前だった。 私が昔ながらの下町のエビの餃子を好きだと言えば、雨の日も風の日も構わず買いに走ってくれた。 数学が苦手で、いつもテストで足を引っ張ってばかりだった私のために、徹夜でミスノートを作り、苦手問題の分析と解説までしてくれた。 「一生一緒にいたい」って、しつこいくらいに私を追いかけて、告白してきたのは彼だったのに。 なのに今では、小春のこととなれば、私のことなんてお構いなしに見捨ててしまう……。 傷口からまだ血が滲んでいる。その痛みが教えてくれる。私のことを愛していない男なんて、もうとっくに捨ててしまえばよかったんだと。 私は涙を堪えながら、SNSにあった拓真に関する投稿をすべて削除した。それから、友人や親戚一人ひとりに結婚式のキャンセル通知を送った。 【一ヶ月後の挙式は中止になりました。どうかお間違えのないように】 それから二十五日後、私は自分で退院手続きを済ませ、タクシーで婚約者との新居へ戻った。 庭に植えていたバラはすっかり抜かれ、代わりにチシャ菜が並んでいた。 ブランコは撤去され、大きなキャラクター看板が立っていた。『小春と叔父のラブリーハウス』 その後ろには、二人のキャラがキスをしているイラストまで。 言わなくてもわかる。また小春の仕業だ。 こんなふざけたこと、これが初めてじゃない。 だけど彼女がどれだけ非常識なことをしても、拓真はいつだって彼女に甘かった。 私は自嘲気味に笑いながら、玄関の電子ロックに小春の誕生日を入力して家に入った。 出発まで、あと五日。先生と一緒に出張の準備をしなきゃいけない。 私は黙って階段を上り、荷物をまとめようと寝室のドアを開けた。——そこにいたのは、抱き合って寝ている二人の姿だった。 拓真は上半身裸で、トランクス一枚。唇の端には噛み跡、胸元には新しい引っかき傷が生々しく残っている。 小春はキャミソール姿で彼の胸に身を寄せ、豊かな胸元がぴたりと彼の体に密着し、まるで蔦のようにその身体に絡みついていた。 床の上には、黒のレースのTバックが無造作に放り出されていた。 覚悟はしていたつもりだった。 それでも、目にした瞬間、血が逆流するような衝撃に襲われた。 ここは私と婚約者の家。私たちの寝室だったはずなのに――彼らは、どうして平気でこんなことができるの……? 第2話 「理咲、いつの間に帰ってきたんだ?俺と小春は何もしてない、誤解しないでくれ!」 拓真は目を覚まして私に気づくと、慌ててベッドから飛び起き、手近にあった服を乱雑に身につけた。 騒がしさで目を覚ました小春は、眠たそうに目をこすりながら口を開いた。「私、小さい頃から雷が怖くて……雷の夜はいつも叔父に抱っこされてないと眠れないの。理咲さん、こんな些細なことで怒らないでくれるよね?」 ……もう、泣きそうだった。 でも、病院を出たとき私は決めたんだ。拓真の為に、もう二度と涙は流さないって。 「怒る理由なんてないよ。大丈夫。たとえあなたたちが私の目の前で何をしようと、止めたりしないから」 そう言い残して、私は背を向けた。 これ以上ここにいたら、涙がこぼれてしまいそうで。 だけど、拓真が後ろから追いかけてきて、私の腕を乱暴に掴んだ。 「小春とはやましいことなんて何もないんだ。大人のくせに、どうしてそんなひどいこと言えるんだよ?あんなこと言われたら、小春がどれだけ傷つくか分かってるのか?謝ってきてくれ!」 私は彼の手を振り払って、感情を抑えきれず叫んだ。「左から右まで『小春がご飯を食べない』だの『小春がトラウマになる』だの……黒瀬拓真、私は二十五日間も入院して、死にかけたのよ。あなた、少しでも私のこと心配したことある?」 私の言葉に、拓真の苛立ちは気まずさに変わった。「病院に行かなかったのは、行きたくなかったわけじゃない。小春が爆発のショックでパニックになって……俺が落ち着かせなきゃいけなくて、どうしても時間が取れなかったんだ」 その一言で、私の中にくすぶっていた未練はすべて吹き飛び、残ったのは、ただただ冷めきった心だった。 胸に詰まっていた想いも、込み上げる涙も、その瞬間すべて空っぽになった。 もう何も争う必要はない。 彼がもう私を愛していない——その事実だけで、すべての答えが出ていたた。 小春が拓真を呼ぶ声がして、彼は私を一瞥したあと、眉をひそめながら一言だけ吐き捨てた。「今日のところはそれでいい。でももう二度と、小春にあんなこと言うな」それだけ言い捨てて、去っていった。 ……最後まで、私のことなんて気にも留めていなかった。 「これで、ようやく吹っ切れたよね……」 私はそう呟いて、しばらくその場に立ち尽くしたあと、荷物をまとめ始めた。 身の回りのものをいくつか残して、あとはすべて捨てた。 最後に残ったのは、拓真がかつて私を想って描いてくれた何十枚もの肖像画。 あの頃、美大の友人が言っていたっけ。「この肖像画、技術はともかく、感情だけはすごいよ。私には真似できないね」 あの絵たちを見て、「この人はきっと私を本気で好きなんだ」と、そう信じていた。 私は自嘲気味に笑い、絵の入ったダンボール箱を抱えて外へ出た。そして、それに火をつけた。 ちょうどそのとき、拓真が現れた。 火に気づいて慌てて走り寄り、私を押しのけて燃えている箱の中からまだ燃え残っていた絵を取り出そうとした。熱さなんてお構いなしだった。 「な、なにやってんだよ……!」 声が震えていた。 「虫でも湧いてた」本当は「もういらない」と言いたかったけれど、口から出たのはその一言だった。 何度も何度もぶつかりあってきたこの関係、もう疲れ果てていた。 争うことすら、もうしたくなかった。 拓真は一瞬だけ躊躇ったあと、拾い上げた絵をまた火の中へ投げ込んだ。「小春、虫が大の苦手なんだ。また描いてあげるよ」 「……必要ないわ」 もう、「これから」なんて存在しない。 炎は勢いを増したあと、やがて静かに鎮まり、黒い灰だけが残った。 まるで、私と拓真の愛情のなれの果てみたいに—— 【今日を含めて、あと五日】 私はその灰をゴミ箱に捨て、SNSに一言だけ投稿した。そして寝室ではなく、主寝室から一番遠い客間で眠った。 翌朝、目を覚ますと、投稿を見た知人たちからのコメントが大量に届いていた。【まさか、もう新婦気取り?】 拓真もコメントを残していた。【俺も君がウエディングドレスで俺の元へ歩いてくる日が待ち遠しい】 あんなの、愛なんて語る資格すらない最低な男よ。 あんなにも私を踏みにじった人が、まだ恋人ごっこを続けようとしている。私はもう、彼に付き合ってあげる気力すら残っていない。 誰のコメントにも返信せず、顔を洗って下に降りた。 朝食の席で、拓真が問いかけてきた。「理咲、今日の午後に婚姻届出す予定だったよね?」 たしかに、予定はそうだった。でも、もう行くつもりはなかった。 第3話 でも、私が何かを言う前に、小春がすっと拓真に身を寄せた。 「叔父、思い出しちゃった!今日の午後、ずっと楽しみにしてたバスケの試合があるの」 拓真は彼女の頬をつまみながら笑う。「なんで先に言わないんだよ」 小春はぷくっと頬を膨らませて言った。「だって今思い出したんだもん、わざとじゃないし〜。もし付き添ってくれないなら一人で行くよ?イケメンに声かけられても損しないし、運命の人に出会っちゃうかも〜」 そう言って、彼女は立ち上がって出て行こうとした。 拓真は慌てて彼女の手を引き、腕の中に引き寄せた。「行かないなんて言ってないだろ!」 それから私を見て、困ったような顔で言った。「理咲……その……」 私は皮肉を込めて返す。「婚姻届って普通二人で出すよね?バスケの試合も、小春とセットじゃなきゃ行けない決まりでもあるわけ?」 拓真の顔色がサッと曇る。「小春はただちょっと遊びたい盛りなだけだ。あの試合、ずっと楽しみにしてたんだぞ。まさか俺たちが入籍するってだけのことで、彼女にそんな大きな心残りを抱えさせる気か?」 「私の意見聞く気ないなら、最初から聞かないで」 「理咲……」 「もういいって。止めてないでしょう?婚姻届、これで四回目のキャンセルよ?回数なんてどうでもいいわ、小春が一番大事なら、そうしてあげなさい」 以前の私なら、必死になって彼と口論していたかもしれない。でも今はもう、争う気力すら湧かない。 正直、もう拓真と籍を入れたいとも思わない。 私が黙っているのを見て、拓真の表情は少し和らいだ。「やっと大人になったって感じだな。大丈夫、結婚式まであと三日あるし、それまでには必ず婚姻届出しに行くから」 そう言って、小春を抱えたまま家を出て行った。 彼女は「歩くのやだ〜」と甘えて駄々をこねると、彼は笑いながら「ほんとに甘えん坊だな」と言って、彼女を軽々と抱き上げた。 彼女はその腕の中でケラケラ笑いながら、わざと私を振り返り、真っ直ぐ中指を立てて挑発的に笑った。「今夜は叔父と一晩中楽しむから、理咲さんはお邪魔しないでね〜!」 もう、あの二人のやりたい放題には本当にうんざりだった。 私はスマホを手に取り、小春と拓真のあまりに親密すぎる様子をこっそり動画に撮って、彼ら専用のフォルダに追加した――そこにはすでに、数えきれないほどの写真や動画が保存されていた。 そして、それらすべてをまとめて、結婚式の業者に送りつけた。 【こんにちは。結婚式当日に流す写真と動画を変更したいのですが。よろしくお願いします】 それから、SNSに一言だけ投稿。 【あと四日】 あれだけ私の前でラブラブを見せつけるのが好きなら、私も少し手助けしてあげよう。 あと四日、あの「感動的な親密さ」を、みんなに見てもらえばいい。 翌日、拓真から電話が来た。 「今日と明日も帰れない。試合は三日間あるし、小春がこんなに楽しそうにしてるの、久しぶりなんだ。あいつ、小さい頃から俺が見てきたからさ、放っておけない」 私は適当に「うん」とだけ答えて、彼の会社へ行き、退職の手続きを済ませた。 帰り道で、SNSにまた投稿した。【あと三日】 試合が終わっても、拓真は帰ってこなかった。代わりに、また電話が来た。 「今日も……今日も帰れない。小春がバチェラーパーティを開いてくれてさ、『結婚前の最後の羽目外し』なんだって。わかってるよ、明日は式のリハーサルで忙しいのも。でも、あいつの気持ちも汲んでやらないと……」 たぶん、拓真自身も、自分のやっていることがどれだけ非常識か気づいていたのだろう。普段は何をしても言い訳ばかりで堂々としているくせに、さすがに今回は言葉に詰まっていた。 電話の向こうから、小春の不満げな声がかすかに聞こえた。「叔父、ゲームで負けたからってキスの罰ゲーム、唇が切れるほど強くしなくてもいいでしょ!」 ——そして、電話は切れた。 私は何も言わなかった。 ただ、この家にある私が選んだ物——拓真のために買った服、生活雑貨、私が選んだ照明や家具……そのすべてを処分するよう業者に依頼した。 【最後の日】 空っぽになったこの家を見つめながら、私はまたSNSを更新した。 今日をもって、もう愛も、憎しみも、後悔も、全部終わりにする。拓真と小春、その名前すら、これ以上私の世界に存在させたくない。 拓真はまたコメントを残していた。【心配しなくていいよ、パーティーで羽目外しても、明日の結婚式にはちゃんと迎えに行くから。待ってて、必ず君を迎えに行く】 来ようが来まいが、私はもう嫁ぐつもりなんてない。 私は何も返さず、そのまま朝まで目を閉じなかった。 そして、結婚式当日。拓真が友人たちを連れて迎えに来たその瞬間、私は、スーツケースを持って、先生の手配したヘリコプターに乗り込んだ。